干物

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天日干し風景

干物(ひもの)は、などの魚介類の身を干した乾物である[1]。「干物」は「乾製品」(dried product) と同義とされている[2]

干物は干すことで水分含有量を減らすと共に表面に膜を作ることにより、保存性が高まり、独特の食感とそれに伴う食味が形成される。生魚と比べて保存性があることから全国の海辺では土産品としてよく売られている。魚が豊富に捕れる地域で行われる加工法であり、日本のみならず世界各国で作られている。

和食においては、ご飯味噌汁漬物卵焼き海苔と並んで朝食には欠かせない一品である。

製法

ノルウェーでの干物作り。

干物(乾製品)は魚介類の水分を乾燥によって減らすことで貯蔵可能なように加工した食品である[2]。干物の乾燥方法は天日乾燥と人工乾燥に大別される[2]。天日乾燥は「天日干し」とも呼ばれている。

干物は、素材を乾燥させる風が重要であり、適度な湿度や温度など(海風など)が必要とされる。また、夏場は日光に当てると煮立ってしまうため日陰干しをする場合もある。天日干しは、1時間程度干すだけであとは影にて干す事が多い。本稿の写真では天日で干しているが、その時間も短時間で、干したあと1時間程度で直ぐに販売される。

ほとんどの干物では天日乾燥が基本であり、最近では虫付きを防ぎ乾燥を早めるため、つり下げた魚を回転させる干し台が作られている。工場など大量生産などを行う所では人工乾燥機が使われており、生干しでは水分を保つため低温の乾燥機を使うこともある。

青色などのネットでできており中が数段に仕切られている干物ネット(ドライバスケット)は、主に家庭での干物作りに利用される。

干物の分類

干物の種類

干物(乾製品)は、素干し、塩干し、煮干し、焼干し、凍乾品、燻乾品、節類などに分類される[2][3]

名称 方法 具体例
素干し
(素干品)
魚介類を生のままあるいは一定の調理を行った状態で水洗いし乾燥させたもの[2][4] スルメ[2][4]身欠きニシン[2][4]
塩干し
(塩干品)
魚介類を生のままあるいは一定の調理を行った状態で塩漬けして乾燥させたもの[2][5] 目刺[6]カラスミ[6]
煮干し
(煮干品)
魚介類を煮熟した上で乾燥させたもの[2][7] ちりめんじゃこ[6]
焼干し
(焼干品)
魚介類を焼いた上で乾燥させたもの[2]
調味干し 魚介類を調味液に漬けた上で乾燥させたもの[2] 味醂干し[2]
燻製品
(燻乾品)
魚介類を塩漬け又は調味液に漬けた上で燻して乾燥させたもの[2] 鮭とば[6]
節類 魚介類を堅くなるまで培乾を繰り返して乾燥させたもの[2] 鰹節[2]
凍干し
(凍干品)
魚介類を凍結した上で融解し水分を除去することで乾燥させたもの[2][8] 寒天[8]
灰干し 紙などの中で上下に火山灰を敷き詰め、身の水分を吸収させたもの。
文化干し 透水性のあるセロハンなどに挟み吸湿剤の中で乾燥させたもの[2]

丸干し・開き干し・切干し

サンマの丸干し

干物は魚の下処理の状態によって、丸干し(魚を丸のまま干物にしたもの)、開き干し(魚を開いた状態で干物にしたもの)、切干し(魚を切り身にした状態で干物にしたもの)に分けられる[2]

丸干し
内臓を取らずに生干ししたもの。イワシなど小型の魚はそのまま干して「丸干し」として食用に供することもある。代表例としてめざしがある。
開き干し
内臓を取り開いて干したもの。サンマアジサバホッケカマスなど。魚種等や地域によって、背開きと腹開きのものがある。
切干し
内臓を取り、切り身にしてから干したもの。

全乾品と半乾品

干物は除去する水分の程度によって本干しなどの全乾品と生干しなどの半乾品に分類される[2]。生干し(若干し)や一夜干しは軽く水分を抜くだけにとどめたもので、保存が効かないため、冷蔵庫での貯蔵が必要となっている。乾燥度を上げたものは上乾○○などと呼ばれる。

干し方による分類

干物は干し方によって、吊り干し、張り干し、糸貫干し、串干しなどの種類に分けられる[2]

魚種別の加工法

  • イワシ - 主にカタクチイワシを使い、しらす干しや煮干し、目刺、ゴマメにする。
  • - 内臓を取り除いて開き干しにしたり、小型のものは丸干しにも
  • - 2枚卸しにした身を乾燥させる。文化干しにも。
  • さんま - 開き干しにしたり、小型のものは丸干しにも。稚魚の丸干しは特に「針子」(ハリゴ)ともいう。
  • キンキ - キチジ、メンメとも。開き干しにする。

干物の具体例

アジアアフリカヨーロッパなど、漁業の盛んな地域では、さまざまなタイプの干物が製造されている。

栄養価

干物は栄養価に優れカルシウムに富み干すことでイノシン酸も増している[9]。干物の塩分は魚種や加工法により幅がある。シシャモの干物(国産)が1%程度、アジの干物が2%程度、ウルメイワシの丸干しが4.9%程度であるとされる[9]

脚注

  1. ^ 広辞苑第5版
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『丸善食品総合辞典』丸善 p.254 1998年
  3. ^ 星名桂治著『乾物の事典』東京堂出版 p.187 2011年
  4. ^ a b c 星名桂治著『乾物の事典』東京堂出版 p.193 2011年
  5. ^ 星名桂治著『乾物の事典』東京堂出版 p.194-195 2011年
  6. ^ a b c d 家森幸男、奥薗壽子 監修『すべてがわかる!「乾物」事典』 世界文化社、2013年。ISBN 9784418133420、pp.111-132.
  7. ^ 星名桂治著『乾物の事典』東京堂出版 p.195 2011年
  8. ^ a b 星名桂治著『乾物の事典』東京堂出版 p.197 2011年
  9. ^ a b マルハ広報室編 『お魚の常識非常識「なるほどふ~ん」雑学』 p.108 講談社プラスアルファ文庫 2000年

関連項目