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メーベルワーゲン

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メーベルワーゲン(後期型)
性能諸元
全長 5.92 m
車体長 5.92 m
全幅 2.95 m
全高 2.73 m
重量 24 t
懸架方式 リーフスプリング方式
速度 38 km/h
行動距離 200 km
主砲 3.7cm FlaK43/1
装甲 10〜80 mm
エンジン マイバッハ HL 120 TRM
ガソリンV型12気筒
300 HP
乗員 6 名
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メーベルワーゲン (Möbelwagen) は、第二次世界大戦中のドイツ軍の対空戦車。最終的な正式名称はFlakpanzerkampfwagen IV Möbelwagen=「IV号対空戦車メーベルヴァーゲン」。制式番号 : Sd.Kfz.161/3 。 Möbelwagen のカタカナ表記はドイツ語の発音に忠実にすれば“メーベルヴァーゲン”であるが、日本では Wagen のカタカナ表記は“フォルクスワーゲン”に代表されるように“ワーゲン”が広く知られているため本稿では“メーベルワーゲン”と記す。

概要

当初、本車はIV号戦車の車体を流用し2cm Flakvierling38を搭載したIV号対空戦車として1943年9月に試作されたが、2cm砲の威力不足から1943年12月に量産化は見送られ、より強力な3.7cm対空機関砲 (3.7cm FlaK43/1)一門を搭載する計画に変更された。クルップ社ではヒトラーへのプレゼンテーションに向けて、足回りを再設計したIV号戦車車台に同機関砲を搭載した形で図面を作成したが、最終的には通常のIV号戦車車台を使用しての量産が決定され、クルップ社製IV号戦車H型車台を供給されたドイッチェ・アイゼンヴェルケ社(Deutsche-Eisenwerke AG)により、1944年3月から1945年3月までの一年間に240輌が生産された。

車体上部は新たに設計された横幅の広いもので、IV号戦車にあった車体前方のボールマウント式機銃架は無くなっている。砲周囲の装甲板は4方向への起倒式で、通常時の立てられた状態では背の高い箱型となる事から、その外観から連想されるメーベルワーゲン(家具運搬車)の名称が付けられた。戦闘時に砲の低仰角が必要とされる場合は、装甲板を全開して砲員の足場とし、十分な射界を確保する構造となっていた。その状態では車体に対空砲が乗っただけの無防備に等しい姿となり、砲員を保護するのは砲自体の小さな防盾だけとなった。側面装甲板は最初の20輌では12mmの軟鋼(防弾処理されていない)の二枚重ね、続く25輌は10mm装甲板の二枚重ね、最終的には25mm一枚板となり、このタイプでは装甲上端の曲げられた部分が無くなっている。またこの側面装甲板にはピストルポートが設置されている。車体下部前面部分はIV号戦車H型のまま(ただし、J型同様に後部の砲塔旋回用エンジンのマフラーは無く、また後期型はJ型車体となる)であったので、80mmと厚くなっている。

1944年夏、北フランスで撮影されたメーベルワーゲン
1944年9月、オランダのアーネム周辺で撮影されたメーベルワーゲンの後ろ姿
3.7cm Flak43 操作プラットホーム。ここに砲手、装填手2名、車長の4名を収容する(ソミュール戦車博物館)

本車は1944年6月15日付けで、ドイツ陸軍の第9、第11、第116の三つの戦車師団に一個対空戦車小隊として8輌ずつ配備され、全て西部戦線に送られた。(したがってノルマンディー上陸作戦の当初は配備されておらず、フランス内陸の戦いになった9月からの実戦参加となる。)続く16輌が7月に第6、第19戦車師団に配備され東部戦線に送られた。この後も各戦車旅団に配備されたが、武装SS師団で本車を装備したのは第10SS装甲師団フルンズベルクだけであった。

本車およびヴィルベルヴィントオストヴィントも含め、あくまでクーゲルブリッツやケーリアン配備までの暫定的措置と考えられていた。しかし本命となるべきそれらの車輌は実戦に間に合わず、当初月産20輌だったのが30輌に引き上げられ終戦の前々月まで生産が継続し、最後まで対空戦車の主力はメーベルワーゲンであった。

文献

  • Thomas L. Jentz, Hilary Doyle : PANZER TRACTS No.12 Flak Selbstfahrlafetten and Flakpanzer, Darlington Productions, Inc., 1998
  • Peter Chamberlain, Hilary Doyle : ENCYCLOPEDIA OF GERMAN TANKS OF WORLD WAR TWO - 『月刊モデルグラフィックス別冊・ジャーマンタンクス』, 大日本絵画, 1986