マクロン

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マクロンダイアクリティカルマークの一つで、長音記号とも言う。これに対する伝統的な短音記号はブレーヴェである。

¯用例 : Ā ā Ē ē Ī ī N̄ n̄ Ō ō Ū ū

用途

長母音符号としての用途

マクロン (英語: macron) の名は古典ギリシャ語のμακρον (makron) 「長い」に由来する。 本来は俗ラテン語時代以降の欧州において、ラテン語を母語としない人々がラテン語を学習するにあたり、母音の長短を区別[1]するための補助記号として用いたのがその起源である。また、古英語など他の言語に関しても、同様の用途でマクロンを用いることがあった。

現代の日本語において、ラテン語古英語から引用をする際にマクロン付きの綴りが示されることがあるが、当時の話者(の中の識字層)が実際にマクロンを付けて書いていたわけではない。

近代以降、正書法の中で長母音符号としてマクロンを位置づける言語がいくつか登場した。サモア語タヒチ語マオリ語ハワイ語などのポリネシア諸語や、ラトビア語などである。

日本語のローマ字表記におけるマクロン

日本語ローマ字で表記する際にはいくつかの方式があるが、ヘボン式ローマ字に長音符としてマクロンを併用する方式が最も普及しており、行政や交通機関における地名表記、外国人向けの日本語教育など、多くの分野における事実上の標準となっている。Wikipedia の各国語版においても日本語の音写時にはこの方式が通用している。

ほかに、サーカムフレックス (ˆ) を使ったり、母音字を重ねたり、母音の後に h を添えることで長音を表現するような方式もある。詳しくは長音符ローマ字#ローマ字の規格などを参照のこと。

声調を表す用途

  • 中国語拼音では、「第一声」と呼ばれる高くて平らな声調の表記に用いている。
  • 国際音声記号では中平板(中程度のピッチ(音の高さ)で、上がりも下がりもしない)を表す。

文字一覧

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
¯ U+00AF 1-9-11 ¯
¯
¯
マクロン
̄ U+0304 1-11-59 ̄
̄
合成用マクロン
大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Ā U+0100 1-9-85 Ā
Ā
ā U+0101 1-9-90 ā
ā
Ā
Ǟ U+01DE - Ǟ
Ǟ
ǟ U+01DF - ǟ
ǟ
Ǟ
Ǣ U+01E2 - Ǣ
Ǣ
ǣ U+01E3 - ǣ
ǣ
Ǣ
Ē U+0112 1-9-88 Ē
Ē
ē U+0113 1-9-93 ē
ē
Ē
U+1E20 - Ḡ
Ḡ
U+1E21 - ḡ
ḡ
Ī U+012A 1-9-86 Ī
Ī
ī U+012B 1-9-91 ī
ī
Ī
U+004E U+0304 1-3-46 1-11-59 N̄
N̄
U+006E U+0304 1-3-78 1-11-59 n̄
n̄
[2]
Ō U+014C 1-9-89 Ō
Ō
ō U+014D 1-9-94 ō
ō
Ō
Ȫ U+022A - Ȫ
Ȫ
ȫ U+022B - ȫ
ȫ
Ȫ
Ū U+016A 1-9-87 Ū
Ū
ū U+016B 1-9-92 ū
ū
Ū
Ǖ U+01D5 - Ǖ
Ǖ
ǖ U+01D6 1-8-89 ǖ
ǖ
Ǖ
Ȳ U+0232 - Ȳ
Ȳ
ȳ U+0233 - ȳ
ȳ
Ȳ

脚注

  1. ^ ラテン語は母音の長短が最小対立を構成する。例えば、esse (エッセ、存在する事)に対して ēsse (エーッセ、食べる事)。
  2. ^ Unicodeに1文字として登録されていないため、文字合成で表記する必要がある。

関連項目

  • オーバーライン - 数学において否定を表す時にマクロンと同じような線を引くが、これは否定記号とも呼ばれる「オーバーライン」であり、マクロンとは異なる。