臨床検査技師
臨床検査技師(りんしょうけんさぎし、英: Medical technologist, Medical laboratory technician)は、病院などの医療機関において種々の臨床検査を行う技術者である。日本においては、臨床検査技師等に関する法律により規定される国家資格である。
古くは医師自らが検査を行っていたものであったが、医療の分業化と検査の高度化が進み、現在の医療に臨床検査技師は不可欠の存在となっている。コ・メディカルの一種。
目次 |
業務 [編集]
法律上の位置づけ [編集]
を行うことを業とする。
生理学的検査の定義 [編集]
(臨床検査技師等に関する法律施行規則第1条)
- 心電図検査
- 心音図検査
- 脈派検査
- 超音波検査
- 脳波検査
- 呼吸機能検査
- 筋電図検査
- 熱画像検査
- MRI(磁気共鳴画像検査)
- 重心動揺計検査
- 基礎代謝検査
- 眼振電図検査
- 眼底写真検査
- 毛細血管抵抗検査
- 経皮的血液ガス分圧検査
- 聴力検査
この生理学的検査のうち、MRI(磁気共鳴画像検査)と、超音波検査は診療放射線技師も、また眼底写真検査(無散瞳)は視能訓練士および診療放射線技師も業とすることができる。
その他 [編集]
検体検査については業務独占とされていないので、法的には全くの無資格者でも行うことは可能とされているが、実際には無資格者が職を得ることは困難である。
この他に、臨床検査技師は診療の補助としての採血(臨床検査技師等に関する法律第20条の2)も業務の一環として認められている。 採血については、政令で定められた部位(耳朶、指頭及び足蹠の毛細血管並びに肘静脈、手背及び足背の表在静脈その他の四肢の表在静脈)から検査目的に限り採取できる。この場合の採取量については法令に記載はないが、検査に供する為の採血という性質から省庁通達でおおむね20ml以内とされた[1]。しかし採血量については、法制定当時に比べ必要量が通達を超えることも増えてきたため、日本臨床検査医学会からの疑義照会の回答として厚生労働省医政局医事課長通知[2]により、20ml以上の採血量も可能と解釈されている。
さらには病理学的検査の一部として死亡した患者の病因解明を目的として病理医が行う病理解剖の助手を務めることもある。病理解剖助手の資格とは別であるものの、1988年に医道審議会死体解剖資格審査部会がまとめた病理解剖指針の中で、解剖の補助者は臨床検査技師が行うべきであり、死体からの血液採取、摘出臓器の標本作成、縫合等の医学的行為についても臨床検査技師等が行うべきであるとした[3]。
自動血圧計による血圧測定も、原則として医行為でないと回答されており実施可能である[4]。
臨床検査は元来医師が行っていたものであり、法的には医師は(「医業と重複しない歯科医業」を除く)全ての医療行為を「医業」として行うことができ、看護師は診療の補助の範囲で検査を行うことができるとされているため、現在でも上記の臨床検査業務のうち一部検査については、医師や看護師が行うこともある。
死体検案業務 [編集]
監察医が行う解剖の補助として、胸腹腔開検の際に、臓器の摘出の他、切開、縫合、検体の採取、薬化学、病理組織学的検査などをおこなう。 これらは、東京都監察医務院の場合である。がおおむね全国的に準じた業務となっている。
日本における資格 [編集]
| 臨床検査技師 | |
|---|---|
| 英名 | Medical technologist, Medical laboratory technician |
| 実施国 | |
| 資格種類 | 国家資格 |
| 分野 | 医療 |
| 認定団体 | 厚生労働省 |
| 等級・称号 | 臨床検査技師 |
| 根拠法令 | 臨床検査技師等に関する法律 |
臨床検査技師国家資格 [編集]
日本において臨床検査技師として業務を行うために合格する必要のある臨床検査技師国家試験を受験するには、臨床検査に関わる3年制の短期大学、3年制・4年制(夜間部)の専門学校、4年制の大学(臨床検査技術学科および医療衛生学部や保健学部など)を修業あるいは卒業することが必要である。ほとんどの学校が昼間部だが、東京の東京医学技術専門学校と京都の京都保健衛生専門学校が4年制課程の夜間部を開講し教育をしている。近年は医療の現場において臨床検査技師として即戦力として活躍させる専門学校教育に期待が寄せられている。 しかし傾向として、4年制大学を志望する学生が増えてきており、大学院への進学もまた多くなってきている。
このほか、薬学部、獣医学部、理学部などにおいて薬学、獣医学、理学などの課程に加えて臨床検査に関わる一定の科目を取得した者や、医学部医学科、歯学部歯学科(生命歯学部生命歯学科)の卒業者および医師・歯科医師免許取得者も臨床検査技師国家試験の受験資格を有するが、合格率は総じて低い。
平成16年末現在における臨床検査技師免許取得者累計は、154,501人である。
認定資格 [編集]
国家資格である臨床検査技師を対象、または臨床検査技師が資格要件となる認定資格を以下に記す。いずれも学会の認定資格であり法的な規定があるわけではないが、実質的に独占業務資格となっているものもある。主立ったものを以下に示す。
一級・二級臨床検査士 [編集]
臨床検査技師の上級資格で各分野に細分化されている。経験と、高度な知識を持つことを証明するもので、一級試験は非常に難しい。
細胞検査士・国際細胞検査士 [編集]
細胞検査士は、日本臨床検査医学会と日本臨床細胞学会が臨床検査技師から認定し、指導医の監督指導のもと細胞診スクリーニングを行うことができる。学会認定資格であり国家資格(免許)ではないが、この資格を保有していない臨床検査技師はこの業務に携わる事が出来難く(就業し難い)、実質的に独占業務資格となっている。 資格試験受験には1年以上の業務経験が必要であるが、北里大学などの特別に認定を受けた大学では大学在学中に国家資格取得見込みで細胞検査士資格試験を受検することができる。
超音波検査士 [編集]
超音波検査士は、臨床検査技師として、臨床経験を有し超音波認定医の推薦を受けた上で筆記試験合格者に日本超音波医学会が認定し与えられる。対象臓器ごとにより、さらに細分化されている。
緊急臨床検査士 [編集]
日本臨床検査医学会所定の緊急臨床検査資格認定制度。生化学検査、血液検査、血清検査、微生物検査、輸血検査、生理検査の幅広い知識と技術が必要。
認定臨床微生物検査技師・認定血液検査技師・認定一般検査技師・認定臨床化学者 [編集]
各検査分野に関して高い専門性を有することを証明するための認定資格である。
認定輸血検査技師 [編集]
認定輸血検査技師は認定の合格率が低い難関となっている。
第一種・二種消化器内視鏡技師 [編集]
内視鏡業務に携わる。
日本糖尿病療養指導士 [編集]
資格維持にかかる費用等を施設が支援してくれないことも多いため、看護師や管理栄養士に比べて資格取得者は少ない。
NST専門療法士 [編集]
薬剤師、管理栄養士、看護師についで取得者が多く栄養サポートチームに参加することの望ましい職種となっている。
臨床検査技師と関連のある資格 [編集]
認定臨床エンブリオロジスト [編集]
産婦人科領域で人工授精に携わる胚培養士。従事者には臨床検査技師であるものも多い。
衛生検査技師 [編集]
衛生検査技師は、臨床検査技師の業務のうち、生理学検査以外の検査、すなわち検体検査を行うことができる。業務独占部分のない名称独占資格である。 かつては医学、歯学、獣医学又は薬学の正規の課程を修めた(卒業した)者であれば、申請により無試験で厚生労働大臣から免許を受けることができた。 しかし、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第39号)により、平成23年4月からは新規の免許は交付されなくなった。 今までの免許取得者はこれまで同様に業務を行うことができる。
労働衛生コンサルタント [編集]
臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律(昭和33年法律第76号)第2条第1項の臨床検査技師又は同条第2項の衛生検査技師として10年以上その業務に従事した者は労働衛生コンサルタントの受験資格が付与される。
日本における現状 [編集]
業務の拡大 [編集]
心電図検査や超音波検査などのいわゆる「生理機能検査」の需要が増加している。 機械化されているいわゆる検体検査も医療の高度化に伴い項目が増えることで、検査法の原理をしっかりと理解し、検査値を読み取ることができる高度な知識を持った人材が求められている。特に、輸血検査や病理検査といった分野は、認定資格の取得も積極的に支援されることが多い。
また、チーム医療の精神の普及により、患者への検査内容の説明、糖尿病療養指導や院内感染対策チーム、栄養サポートチームへの参加など業務内容は拡大している。
さらに、体外受精に関わる胚培養の業務にも多くの施設では臨床検査技師のみが携わっている。大きな施設では内視鏡検査の補助及び摘出検体の処理などを行う施設もある。 また、国境なき医師団の参加資格としても認められており、日本だけにとどまらず世界で活躍する臨床検査技師も増えつつある。
就職 [編集]
臨床検査技師は、診療放射線技師と同様に就職難であると言われることが多いが、総合的に見ると安定していると言える。医療施設における結婚や出産に伴う女性の離職率が他の医療職に比べて低い。
総合病院や大手検査センターなどの採用は多くの場合、定年などによる退職者の欠員補充であるため毎年一定量の採用はコンスタントにある。
新卒でも医療機関に就職せずに、治験関連企業、生物科学系企業での研究職、知識を生かしてのMR、衛生関連の公務員などの別の進路を選ぶ人もいる。つまり、他の医療職に比べて就職に関していろいろな選択肢があるとも言える。 また、医療関係の正職員を志望していたが就職できなかった新卒者は、契約職員などの非正規で就職し経験を積んで認定資格を取った後に正規職員を目指すものいる。
機械化の進行により人員がいらなくなったことが医療施設への就職難の原因だという見方もあるが、実際には業務の高度化や拡大に伴って現場での必要性は増している。医療施設への就職試験の倍率がたかくなる原因は機械化よりもむしろ、診療報酬点数の改正による点数の引き下げが大きな原因だといった見方をする人は少なくない。採算がとれないことから経営側が検査職の採用枠の増数を渋り、人手が足りず現場も人員を求めているのに採用枠がないという矛盾が生じている。
臨床検査技師は、国家試験に合格して就職したとしても、実際の現場で使えるようになるまでには数年かかるといわれている。近年は就職先の多くが即戦力を求める傾向が強い上に、医師における研修医制度のような育成システムが臨床検査技師にはないため、知識や技能を得て一人前になるまでの採用後数年間は多くの新卒採用者にとってハードなものになることが予想される。卒後教育の重要性は議論されている。
今後は団塊世代の大量退職、衛生検査技師廃止(2011年3月より)により、就職状況の改善が期待されている。団塊の世代の大量退職は、求職者にとっては喜べるものではあるが、病院にとっては団塊世代退職後の優秀な人材確保と、新卒採用者をいかにしていち早く一人前の戦力に育てるかが大きな課題となっている。