共に市民党

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共に市民党
더불어시민당
英語の名称 Together Citizens' Party
共同代表 禹希宗
共同代表 崔培根
創立 2020年3月8日 (2020-03-08)
解散 2020年5月13日 (2020-5-13)
前身政党 共に民主党(一部党員のみ)
基本所得党
時代転換朝鮮語版
後継政党 共に民主党
基本所得党(一部党員のみ)
時代転換朝鮮語版(一部党員のみ)
本部所在地 ソウル特別市永登浦区国会大路72キル 6
政治的思想 自由主義
進歩主義[1]
政治的立場 中道 - 中道左派
公式カラー   青色
国会
17 / 300
(2020年4月15日)
広域団体長
0 / 17
(2020年3月23日)
広域議会
0 / 824
(2020年3月23日)
基礎団体長
0 / 226
(2020年3月23日)
基礎議会
3 / 2,927
(2020年3月23日)
大韓民国の政治
大韓民国の政党一覧
大韓民国の選挙
2020年3月18日に改名するまでは「市民のために」を党名としていた。
共に市民党
各種表記
ハングル 더불어시민당
漢字 더불어市民黨
発音 トブロシミンダン
日本語読み: ともにしみんとう
MR式 Tŏburŏ Simindang
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共に市民党(ともにしみんとう、朝鮮語: 더불어시민당)は、かつて短期間存在した韓国政党である。2020年3月8日市民のために(しみんのために、朝鮮語: 시민을위하여)という党名で発足、同年3月18日に共に市民党へ改名、同年5月13日共に民主党へ吸収される形で解散し消滅した。

概説[編集]

発足当初は、文在寅大統領を支持する人々が国政選挙比例代表制で議席を確保する為に結成した政党で、文在寅政権与党共に民主党(以下、民主党)とは組織的な関連性が無かった。だが、民主党が選挙対策を変更して比例代表への立候補に特化した新政党を必要としたため、途中から民主党へ比例代表で選挙協力する政党となった。両党の選挙協力は2019年に改正された公職選挙法朝鮮語版の新制度を無力化する面があった為、脱法的な政党という批判的な意味合いから韓国のマスメディアは共に市民党を「衛星政党」と表現する場合もあった[2]

歴史[編集]

共に民主党の方針転換[編集]

韓国では、文在寅政権が国会に上程した公職選挙法朝鮮語版の改正案が2019年12月27日に可決され、第21代総選挙から比例代表を「準連動型比例代表制」と呼ばれる新しい制度で配分することになった。新しい制度では、比例代表47議席のうち30議席[注 1]を「連動型比例代表制」(連動率50%)によって配分する。配分方法は、各党の小選挙区当選者数と政党得票率を公選法第189条の定める計算式に当てはめて算出するもので、政党得票率と比して小選挙区の獲得議席数が少なかった場合、政党得票率に見合った総議席数を保証する仕組みとなっている[3]

連動型比例代表制の議席配分方法は少選挙区で獲得した議席の数が多い政党に不利となる制度であるため、公選法改正案に強く反対していた自由韓国党2020年2月17日未来統合党へ改組)は連動型比例代表制を形骸化させる手段として比例代表に特化した衛星政党を分党する方策を採り[4]2020年2月5日未来韓国党を分党した[5]。公選法改正案に賛成した民主党は当初、自由韓国党の動きを「潔くない投票洗浄行為」と批判していたが、同時に党内では「このままでは最悪の場合10議席以上損をする」と現状を憂慮する声も少数意見として挙がった[4]。そして、総選挙への準備を進める中で 曹国の不正発覚や経済政策の不振を理由とした中道層の支持離れや若年支持層の離反が懸念されると[6][7]、民主党は「国会第1党死守」のために3月に入ってから従来の方針を覆して比例代表に特化した政党の活用を模索するようになった[8]

比例政党の設置に際し、一時は民生党緑色党との連携も模索されたが[9]、民主党は3月17日文在寅を支持するプラットフォーム政党「市民のために」を連携先とすることを決定した[10]

共に市民党の結成と選挙協力[編集]

一方のプラットフォーム政党「市民のために」は、ソウル大学校教授禹希宗建国大学校教授の崔培根を共同代表として2020年3月2日に結成宣言を出し[11]、他党との連合を前提とする政党として3月8日に結党された[12]。結党直後は正義党との連携も模索していたが[13]3月17日文在寅大統領与党である共に民主党、及び群小政党の基本所得党時代転換朝鮮語版行こう環境党朝鮮語版行こう平和人権党と連携することを決め、同日中に各党を協約書を調印した[10]。これを受け、「市民のために」は3月18日に党名を「共に市民党」(市民党)へと変更し、併せて総選挙の公認候補選出を各党と共同で進めていった[14]。そして3月23日に比例候補34名が発表されたが、その内訳は民主党から20名、市民党からの推薦者が12名、基本所得党と時代転換から各2名となり、行こう環境党と行こう平和人権党は比例公認から脱落した[15]。 その後、比例公認から脱落した行こう平和人権党は比例党連合を離脱した[16]

民主党と市民党の共闘決定により、正義党や緑色党といった韓国の進歩系少数派政党は支持率が軒並み急落し、選挙戦を闘う上で致命的な打撃を受けた[2]。そのため、 曹国の擁護等で共に民主党よりの論陣を張った左派新聞ハンギョレ[17]も、民主党と市民党の共同について自社のコラムで「政治の退行」であり「選挙法を無力化する行為」であると批判をしている[18]

市民党は4月1日に選挙公約を発表したが、その内容が民主党の公約と全く同じであると批判を浴びた為、発表から半日も経たずに公約の修正を迫られた[19]。また、母体政党と比例政党は選挙法上別の政党として共同運動が禁止されているにもかかわらず、民主党と市民党は様々な手法を駆使し実質一つのチームとして選挙運動を行った為、中央選挙管理委員会から警告を受けた[20]

選挙結果と政党解散[編集]

2020年4月15日、予定通り実施された第21代総選挙の比例代表制で未来韓国党の19議席(得票率33.84%)に次ぐ17議席(得票率33.35%)を獲得[21]し、民主党、未来統合党、未来韓国党に次ぐ国会第4党となった。総選挙直後の4月20日、民主党は市民党と統合する方針を明らかにし[22]5月12日に統合に関する党員投票を行い賛成多数で可決された。そして翌13日に両党合同会議で両党指導部が統合に合意し、市民党は民主党へ吸収される形で解散した[23]。なお、基本所得党と時代転換から参加して当選した2人については、議員職を維持するために合同に先立つ12日に除名措置がとられた後、元いた政党に復党した[24]

党指導部[編集]

初代指導部[25]

選挙結果[編集]

国会議員選挙
年月日 議席数と
政党得票率
備考
合計 地域区 比例区 政党
得票率
第21代 2020年4月15日 17 - 17 33.35% 比例代表のみに候補者擁立

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 残る17議席は、従来通り政党得票率のみに基づいて配分される。

出典[編集]

  1. ^ “범진보 비례연합 윤곽..'시민을 위하여' 첫 합류 "주내 후속통합"(종합)”. https://news.v.daum.net/v/20200317171648147 2020年3月26日閲覧。 
  2. ^ a b “巨大二党の「衛星政党」の横暴で、少数政党の居場所むしろ狭まる”. ハンギョレ. (2020年3月26日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36139.html 2020年3月27日閲覧。 
  3. ^ “韓国国会で公選法改正案可決 「準連動型比例代表制」初導入=最大野党は猛反発”. 聯合ニュース. (2019年12月27日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191227005000882 2020年3月26日閲覧。 
  4. ^ a b “比例制を突き崩すか、自由韓国党が崩れるか”. ハンギョレ. (2020年1月5日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/35371.html 2020年3月26日閲覧。 
  5. ^ “미래한국당 창당대회…초대 당 대표 한선교 만장일치 추대”. newsis. (2020年2月5日). https://newsis.com/view/?id=NISX20200205_0000909271 2020年3月26日閲覧。 
  6. ^ “韓国・文政権、正念場 4月総選挙、敗北なら死に体に”. 西日本新聞. (2020年1月4日). https://www.nishinippon.co.jp/item/n/573126/ 2020年3月18日閲覧。 
  7. ^ “韓国総選挙へ政党再編 投票まで2カ月 大統領選「前哨戦」対決も”. 産経新聞. (2020年2月17日). https://www.sankei.com/article/20200217-AKJXCQCWU5IJ5IQIO5M6E5TKD4/ 2020年3月19日閲覧。 
  8. ^ “現実論を追った「比例連合政党」、民主党の前に「3つの沼」”. ハンギョレ. (2020年3月10日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/35980.html 2020年3月27日閲覧。 
  9. ^ “「議席要求された」「していない」…見苦しい「比例連合政党」”. ハンギョレ. (2020年3月19日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36061.html 2020年3月27日閲覧。 
  10. ^ a b “結局民主党が牛耳る比例連合党…親文団体と連携”. ハンギョレ. (2020年3月18日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36047.html 2020年3月27日閲覧。 
  11. ^ “플랫폼 정당 '시민을 위하여' 창당 기자회견”. 聯合ニュース. (2020年3月2日). https://www.yna.co.kr/view/PYH20200302093200013 2020年3月27日閲覧。 
  12. ^ “[세계타임즈TV 시민을 위하여 플랫폼 정당 창당대회”]. http://m.thesegye.com/news/newsview.php?ncode=1065613256918735 2020年3月27日閲覧。 
  13. ^ “시민을위하여 "정의당 빼고 비례연합 할 수도...최후통첩"”. 聯合ニュース. (2020年3月10日). https://www.ytn.co.kr/_ln/0101_202003100054447940 2020年3月27日閲覧。 
  14. ^ “民主党、共に市民党に「議員貸し出し」開始”. ハンギョレ. (2020年3月23日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36095.html 2020年3月27日閲覧。 
  15. ^ “더불어시민당 비례후보 34명 확정…소수정당 두군데는 탈락(共に市民党 比例候補34名確定・・・少数政党2個は脱落)”. 中央日報. (2020年3月23日). https://news.joins.com/article/23736967 2020年3月31日閲覧。 
  16. ^ “「共に市民党」公認漏れ団体が李容洙さんをけしかけたって?”. 朝鮮日報. (2020年5月9日). http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/05/09/2020050980025.html?ent_rank_news 2020年5月12日閲覧。 
  17. ^ 【日韓経済戦争】疑惑のタマネギ男「検察が捜査すると反乱が起こる?」「追及記者56人の実名がネットでさらされる」韓国紙で読み解く” (2019年9月7日). 2020年3月26日閲覧。
  18. ^ “[コラム]「チョ・グクの教訓」忘れた危うい民主党”. ハンギョレ. (2020年3月19日). http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/36058.html 2020年3月27日閲覧。 
  19. ^ “与党の比例党が公約を修正、「共に民主党」の公約の書き写し”. 東亜日報. (2020年4月2日). http://www.donga.com/jp/article/all/20200402/2027380/1/%E4%B8%8E%E5%85%9A%E3%81%AE%E6%AF%94%E4%BE%8B%E5%85%9A%E3%81%8C%E5%85%AC%E7%B4%84%E3%82%92%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E3%80%81%E3%80%8C%E5%85%B1%E3%81%AB%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%85%9A%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%85%AC%E7%B4%84%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8D%E5%86%99%E3%81%97 2020年4月2日閲覧。 
  20. ^ “選挙法を作った韓国与党、「法を守れ」と言った選管を攻撃”. 朝鮮日報. (2020年4月4日). https://news.chosun.com/site/data/html_dir/2020/04/04/2020040400247.html 2020年4月16日閲覧。 
  21. ^ “比例で最大野党系が19議席獲得 与党系17=韓国総選挙”. 聯合ニュース. (2020年4月16日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20200416004200882 2020年5月8日閲覧。 
  22. ^ “[社説]与党の「衛星交渉団体」作り放棄、野党も倣うべき”. ハンギョレ. (2020年4月21日). http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/36394.html 2020年4月27日閲覧。 
  23. ^ “韓国最大野党が比例政党と合併合意 103議席に=与党は177議席”. 聯合ニュース. (2020年5月14日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20200514005700882 2020年5月15日閲覧。 
  24. ^ “민주, 시민당 합당 가결…용혜인·조정훈 원적복귀(民主、市民党合同可決・・・ユヘイン・チョジョンフン原籍復帰)”. 聯合ニュース. (2020年5月12日). https://www.yna.co.kr/view/AKR20200512099700001 2020年5月22日閲覧。 
  25. ^ “더불어시민당 공관위 구성…시민단체·검찰개혁 지지 교수 등(共に市民党の公認管理委員会構成・・・市民団体・検察改革支持教授など)”. 聯合ニュース. (2020年3月20日). https://www.yna.co.kr/view/AKR20200320087752001 2020年3月31日閲覧。 

外部リンク[編集]