ピンクの豹

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ピンクの豹
The Pink Panther
監督 ブレイク・エドワーズ
脚本 モーリス・リッチマン
ブレイク・エドワーズ
製作 マーティン・ジュロー
出演者 デヴィッド・ニーヴン
ピーター・セラーズ
音楽 ヘンリー・マンシーニ
撮影 フィリップ・H・ラスロップ
編集 ラルフ・E・ウィンタース
製作会社 ミリッシュ・カンパニー映画
配給 アメリカ合衆国の旗 ユナイテッド・アーティスツ
公開 日本の旗 1964年2月29日
アメリカ合衆国の旗 1964年3月20日
上映時間 125分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
興行収入 アメリカ合衆国の旗 $10,878,107
次作 暗闇でドッキリ
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ピンクの豹』(The Pink Panther)は、1963年製作のアメリカコメディ映画。イタリアを舞台に展開する5大スター競演のロマンティック・コメディである。ピーター・セラーズ演ずるクルーゾー警部が活躍するピンク・パンサーシリーズの第1作にあたるが、主演はデヴィッド・ニーヴンで、クルーゾーは準主役格であった。監督ブレイク・エドワーズ。音楽ヘンリー・マンシーニ

クルーゾー警部」、「アニメキャラクターのピンクパンサー」、主題曲『ピンク・パンサーのテーマ』の3大ヒットを生み出した伝説的作品である。

ストーリー[編集]

中東某国の王女・ダーラは母国の革命から逃れ、イタリアのスキーリゾート、コルティーナ・ダンペッツォに身を寄せていた。王女は内部にピンクの豹が浮かび上がるというダイヤモンドピンク・パンサー」を所有していたが、革命政府からはダイヤの返還を求められていた。そのダイヤを狙ってイギリス貴族のチャールズ・リットン卿(実は希代の怪盗ファントム)が王女に接近する。リットンは手下に王女の愛犬をさらわせ、それを追跡したための怪我を装って王女の同情と信頼を得た。やがて王女はリットンに恋愛感情をも持つようになる。

一方、ファントム逮捕に執念を燃やすパリ警察のクルーゾー警部はファントム出現を予想し、愛妻シモーヌを伴ってコルティーナを訪れた。しかし、実はシモーヌはリットンの愛人で、クルーゾーの捜査方針はリットンに筒抜けであった。そこにリットンの甥で、アメリカに留学していたジョージも現れる。叔父が怪盗ファントムである事も、シモーヌが叔父の愛人である事も知らないジョージはシモーヌに夢中になる。白銀のリゾートを舞台に恋とダイヤの争奪戦が繰り広げられる。騒動のさなか、クルーゾーはリットンがファントムであると確信する。

舞台はローマへ。王女邸を訪れたクルーゾーはファントムの正体がリットンだと王女に告げる。そして王女邸で行われる仮装パーティーの夜に警官を配備し、自らも仮装してファントムを待ち構える。リットンとジョージはそれぞれダイヤを狙い忍び込むが、ダイヤは王女により隠されていた。王女にはダイヤを盗まれた事として、革命政府の返還要求から逃れようという意図があったのだ。リットンとジョージは王女邸から逃走、それをクルーゾー率いる警官隊が追跡する。市街でのカーチェイスの末にリットンとジョージは逮捕され、裁判にかけられる事となった。クルーゾーは2人の有罪を確信し、自信満々である。

シモーヌは王女を訪ね、リットンらを救うよう懇願する。リットンへの思いを断ち難い王女はシモーヌに何事か提案をする。裁判が開廷され、被告側の弁護人からクルーゾーこそファントムではないかとの疑義が示される。思わぬ追求に狼狽したクルーゾーはジャケットの胸ポケットからハンカチを取り出そうとして、盗まれた筈のダイヤを一緒に引っ張り出してしまう。シモーヌによりダイヤがポケットに忍ばされていたのだ。ダイヤを盗み隠し持っていた事にされたクルーゾーはファントムの正体として逮捕されてしまった。

一方、リットンとジョージは無実となって釈放された。リットンがファントムとして活動を再開すればクルーゾーの無実は証明される。それまでしばらくは囚われの身となるクルーゾーは最初は必死に無実を主張した。しかし、ファントムの人気は凄まじく、法廷には女性ファンが押し掛け、連行に当たる警官からも畏敬の目を向けられる。満更でもないクルーゾーは、ついつい自分が本当のファントムであるかのような発言をしてしまうのであった。

概要[編集]

デヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、ロバート・ワグナーキャプシーヌ、そしてクラウディア・カルディナーレの、セラーズ以外は美男美女の5大スター競演によるロマンティック・コメディ。白銀のスキーリゾートから文化の都ローマへと舞台を移しながら、再三のパーティーシーンも華やかに物語が展開する。セラーズはコメディリリーフで、彼の登場シーンはドタバタ喜劇の要素が強くなる。

ヘンリー・マンシーニによる主題曲『ピンク・パンサーのテーマ』も大ヒットし、スタンダードナンバーとなった。加えて、やはりマンシーニによる哀愁漂う挿入曲『今宵を楽しく』が時に妖しく、時に切なく全編を彩っている。リゾートホテルのラウンジで主要出演者を観客に、歌手兼女優のフラン・ジェフリーズが『今宵を楽しく』を歌い踊るシーンも人気が高い。

本作でセラーズが演じたクルーゾー警部はファントムの引き立て役で、哀れな道化者ともいえる役回りであった。しかし、その個性溢れるエネルギッシュなキャラクターが好評であったため、翌1964年には早くもクルーゾーを主役としたスピンオフ作品暗闇でドッキリ』が製作される。さらに多くの後継作が製作され、ピンク・パンサーシリーズは20世紀後半を代表するコメディ映画の大ヒットシリーズとなっていく。

またオープニングアニメーションに登場したピンクの豹のキャラクターも人気を得た。本作シリーズを離れ、映画やテレビにおいてこのキャラクターを主役とした多くのアニメーション作品が製作された。

備考[編集]

  • 製作国アメリカでは1964年5月20日に公開されたため、本作を1964年度の映画とする記述が見られるが、西ドイツ等では1963年に先行して公開されている。ゆえに1963年度の作品とするのが一般的。
  • 当初、クルーゾー警部にはピーター・ユスティノフ、シモーヌにはエヴァ・ガードナーが予定されていたが、両者の出演キャンセルによりセラーズとキャプシーヌが起用された。特にユスティノフの降板はローマでのクランクイン直前で、セラーズは急遽の代役として生涯の当たり役を手に入れる事となった。
  • 本作でのクルーゾーはコメディリリーフとして全編で大ボケを繰り返すが、冷静な推理でファントムの正体をリットンと見抜くなど、名探偵の顔も見せる。次作以降に見られる見当違いの思い込みで捜査に邁進して、結果的に事件を解決してしまうという行動パターンとは異なる面もある。
  • 第2作以降はセラーズ演じるクルーゾーが主役となる為、ニーヴンら他の4人の主要キャストはシリーズから離れるが、セラーズの死後、ニーヴンとキャプシーヌは第6作と7作に、ワグナーは第7作に同じ役で出演した。
  • シリーズを通して人気を得た、クルーゾーの助手のケイトー(演、バート・クウォーク)とクルーゾーの上司のドレフュス署長(演、ハーバート・ロム)は今作には登場せず、ともに初登場は次作(スピンオフ作品「暗闇でドッキリ」)になる。
  • 本作においてダーラ王女の出身国名は明らかにされていない。しかしシリーズ第3作で、本作の続編的位置付けである『ピンク・パンサー2』(1975年)において「ダイヤモンドのピンク・パンサー」は中東の国・ルガシュの博物館に展示されている。この事から、王女の出身国は名はルガシュで、ダイヤは革命政府の求めによりルガシュに返還されたものと推測できる。しかし『ピンク・パンサー2』では、革命で王家が海外に追われたはずのルガシュに国王がいる設定となっており、矛盾もある。王家が復権したとの解釈も不可能ではないが、王女の消息について後のシリーズで語られる事はない。セラーズの没後に製作されたシリーズ最終作『ピンク・パンサーの息子』(1993年)にカルディナーレは30年振りに再出演を果たすが、ダーラとは別の役であった。
  • 上述の歌手フラン・ジェフリーズの歌唱シーンについて、ジェフリーズが王女役のクラウディア・カルディナーレと似ている為、ネット等にカルディナーレによる歌唱との誤記述が見られる。このシーンで王女は聴衆の中にいるが、ほとんどアップで映らない故に誤解が生じ易い。
  • クルーゾー警部の夫人シモーヌ役はエヴァ・ガードナーの予定であったが、ガードナーが降りたため、チャールズ・フェルドマンが監督のブレイク・エドワーズキャプシーヌを推した。この交替により、クルーゾー警部役で出演する予定だったピーター・ユスティノフが、キャプシーヌと共演することを拒否して土壇場で降板したため、急遽、ピーター・セラーズがクルーゾー警部をやることになった[1]。なお、フェルドマンは、当時ハリウッドで有力なプロデューサー/エージェントで、キャプシーヌをパリでスカウトした人物。
  • クラウディア・カルディナーレは撮影当時は英語が十分に話せなかったため、声は他の声優による吹き替えであった、とヘンリー・マンシーニは書いている[2]。ただし、カルディナーレの唇の動きを観察すると、英語の発音をしており、英語ができなかったことが理由だったのかどうかは微妙だ。(例えば、カルディナーレの声はしわがれているので、若いダーラ王女の声にふさわしい音声に吹き替えた、など。)
  • 今日、『ピンク・パンサーのテーマ』として知られる有名な曲は、主演のデヴィッド・ニーヴン演ずるチャールズ・リットン卿こと怪盗ファントムの忍び足をテーマにしたものであった[3]。すなわち、この曲が「誰」のテーマ音楽なのかといえば、『ピンクの豹』ではなく、ピーター・セラーズ(クルーゾー警部)でもなく、デヴィッド・ニーヴンのテーマ音楽なのであった。

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹き替え
テレビ朝日版 テレビ東京版
チャールズ・リットン卿 デヴィッド・ニーヴン 中村正 谷口節
ジャック・クルーゾー警部 ピーター・セラーズ 大塚周夫 稲葉実
ジョージ・リットン ロバート・ワグナー 広川太一郎 宮本充
シモーヌ・クルーゾー キャプシーヌ 藤波京子 高島雅羅
アンジェラ・ダニング夫人 ブレンダ・デ・バンジー 火野カチコ
タッカー コリン・ゴードン 塩見竜介 田口昂
サルード ジェームズ・ランフィアー 乃村健次
歌手 フラン・ジェフリーズ
ダーラ王女 クラウディア・カルディナーレ 小原乃梨子 水谷優子

外部リンク[編集]

  1. ^ Mirisch, Walter (2008) 「I Thought We Were Making Movies, Not History」
  2. ^ Did They Mention the Music?: The Autobiography of Henry Mancini
  3. ^ Did They Mention the Music?: The Autobiography of Henry Mancini