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熱帯夜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

熱帯夜(ねったいや)は、日本気象庁の用語で、「夜間(夕方から翌朝まで)の最低気温が25度以上のこと[1][2]。」をいう。

概要

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元々は、気象エッセイスト倉嶋厚による造語[3][4]

気象庁は、熱帯夜における「夜間」を「夕方から翌朝まで」としており、時刻何時から何時までを指すか定義しておらず、気温推移による「熱帯夜」の公式な統計はない。

1日(0時1分から24時まで)の最低気温が摂氏25度以上の日」の統計は公表されているので、これを新聞・放送などは便宜的に報道の根拠として用いている。「1日の最低気温が摂氏25度以上の日」を指す、気象庁の特別な用語はない[1][2]

俳句においてはの季語だが、近代気象学を前提とする語であるため、伝統的俳諧や明治など近代初年の俳句においては作例をもたない。

超熱帯夜

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「夜間の最低気温摂氏30度以上の夜」は、超熱帯夜(ちょうねったいや)と表現されることがある[5][6]。これは気象庁によって公式に定義された用語ではないが、日本気象協会においては2022年8月2日よりこのように呼ぶように定められた[7]。これは日本気象協会に所属する気象予報士130名からアンケートをとり決定したもので、中には「灼熱夜」「茹暑夜」といった回答もあった[7]

原理

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夏になると、日照時間の増加に伴って熱が地面や建物に伝導して蓄積され、コンクリートアスファルトなど熱容量が大きい物質から熱放射が発生し、日没以降も続くために夜間も気温が下がらず、ヒートアイランド現象の一因ともされる。

ヒートアイランド現象が広く都市一般に見られるのと異なり、熱帯夜は沿岸の都市に顕著という特徴がある。大気と海水では比熱が異なるため、日中に観測されることが多い最高気温は内陸のほうが高くなる傾向にあるが、夜間(早朝)に観測されることが多い最低気温は沿岸のほうが高くなる傾向にある。東京湾伊勢湾瀬戸内海大阪湾含む)、博多湾有明海鹿児島湾などの内海は、盛夏に表面水温が摂氏30度以上を推移することがあり、これら沿岸の都市である東京都区部、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市、岡山市、広島市、高松市、福岡市、佐賀市、鹿児島市などは、内海の海水が昼間の太陽熱で暖められた状態が夜半頃まで持続するため、夜間も日付が変わるごろまで30度以上を維持する日が見られる。

都市化や比熱の違いが関係しない、フェーン現象による熱帯夜もあり、北陸地方や山陰地方などで見られる。

観測

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東京において熱帯夜の日数は増加しており、2010年では56日であった[8]

本州は、以前は7月中旬から8月中旬頃までの観測が多かったが、近年は6月下旬から10月中旬まで記録することもあり、長期化傾向にある。2011年6月に東京で日最低気温25℃以上を4回記録し、2016年10月3日に広島越廼でそれぞれ25.2度と25.4度を、10月4日に福岡で25.0度、2018年10月6日と2019年10月2日に玉野で25.1℃を記録し、いずれの地点でも10月の最低気温の最も高い記録を更新した(玉野は両日とも同じ数値で一位タイ)[9][10][11][12]

極めて稀ではあるが、亜寒帯気候北海道でも熱帯夜を観測している。

年間日数の変化率 (1936 - 2007年)[13]
  観測所 変化率(日/10年) 都市率[注釈 1]
1 福岡県 福岡 +5.0日 62%
2 沖縄県 石垣島 +4.9日 5%
3 山口県 下関 +4.8日 32%
4 東京都 東京 +3.7日 92%
和歌山県 和歌山 +3.7日 35%
熊本県 熊本 +3.7日 51%
7 愛知県 名古屋 +3.6日 86%
三重県 津 +3.6日 24%
京都府 京都 +3.6日 64%
10 徳島県 徳島 +3.5日 27%
- 大阪府 大阪[15] +6.3日 -

日最低気温摂氏30度以上日数の推移

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それまでアメダスは10分ごとに気温の観測を行っていたが、2008年3月25日に新アメダスの運用を始めてからは、気象台などの気象官署と同じく10秒ごとの観測値から算出したものを10分ごとに配信している[16]

前日に異常な高温を記録したり、台風などの通過で発生するフェーン現象によって、まれに0時から翌朝9時の夜間に最低気温が摂氏30度以上になることはある。

日最低気温(日界24時)が摂氏30度以上
参考(アメダス観測)
31.4度 新潟県糸魚川市(2023年8月10日)[31]
31.3度 新潟県糸魚川市(2019年8月15日)[32]
30.8度 新潟県糸魚川市(1990年8月22日)[33]
30.6度 新潟県岩船郡粟島浦村(2023年8月10日)[34]
30.3度 石川県小松市(2000年7月31日)[35]
30.2度 島根県出雲市斐川(2023年8月9日)[36]
30.2度 富山県中新川郡上市町(1997年8月9日)[37]
30.0度 鳥取県鳥取市湖山(2023年8月10日)[38]
30.0度 鳥取県西伯郡大山町塩津(2023年8月10日)[39]
30.0度 沖縄県島尻郡久米島町北原(2022年8月26日)[40]
30.0度 長崎県南島原市口之津(2017年8月5日)[41]
30.0度 福井県丹生郡越廼村(2000年7月31日)[42]

脚注

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注釈

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  1. ^ 観測地点を中心とした半径7kmの円内に、建物用地・幹線交通用地などが含まれる割合[14]

出典

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  1. ^ a b 予報用語(熱帯夜) 気象庁
  2. ^ a b 気温について 気象庁 気象等の知識
  3. ^ 月刊地理』第44号、古今書院、1999年、12頁。
  4. ^ 倉嶋厚『日本の気候』、古今書院、1966年(1985年版では101頁)。
  5. ^ 森田正光ゼロから理解する 気象と天気のしくみ - よくわかる! 気象現象・天気予報・温暖化のメカニズム誠文堂新光社、2012年、109頁。
  6. ^ 饒村曜『天気と気象100 - 一生付き合う自然現象を本格解説オーム社、2014年、86頁。
  7. ^ a b tenki.jpチーム (2022年8月2日). “日本気象協会が選ぶ 暑さに関する新しい言葉”. tenki.jp. tenki.jpラボVol.22. 日本気象協会. 2022年8月7日閲覧。
  8. ^ 東京都環境局地球環境エネルギー部環境都市づくり課 (2019年1月). “夏の暑さ対策の手引” (PDF). p. 3. 2019年4月30日閲覧。
  9. ^ 観測史上1~10位の値(10月としての値) 広島(広島県) 気象庁 2019年1月2日閲覧
  10. ^ 観測史上1~10位の値(10月としての値) 越廼(福井県) 気象庁 2019年1月2日閲覧
  11. ^ 観測史上1〜10位の値(10月としての値) 福岡(福岡県) 気象庁 2019年1月2日閲覧
  12. ^ 観測史上1~10位の値(10月としての値) 玉野(岡山県) 気象庁 2019年1月2日閲覧
  13. ^ ヒートアイランド監視報告(平成19 年冬・夏-関東・近畿地方)” (PDF). 気象庁. p. 6. 2019年1月2日閲覧。
  14. ^ ヒートアイランド監視報告(平成19 年冬・夏-関東・近畿地方)” (PDF). 気象庁. p. 3. 2019年1月2日閲覧。
  15. ^ 統計期間: 1968-2007年 『ヒートアイランド監視報告 近畿版(平成20年)』 大阪管区気象台
  16. ^ 報道発表資料 アメダスデータ等統合処理システムの運用開始について”. 気象台 (2008年3月7日). 2019年5月1日閲覧。
  17. ^ 高田 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  18. ^ 相川 2019年8月(日ごとの値) 気象庁
  19. ^ a b 境 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  20. ^ 福岡 2018年8月(日ごとの値) 気象庁
  21. ^ a b 石垣島 2024年7月(日ごとの値) 気象庁
  22. ^ a b 松江 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  23. ^ 米子 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  24. ^ a b 相川 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  25. ^ 東京 2013年8月(日ごとの値) 気象庁
  26. ^ 浜松 2024年7月(日ごとの値) 気象庁
  27. ^ 高田 2019年8月(日ごとの値) 気象庁
  28. ^ 福岡 2024年7月(日ごとの値) 気象庁
  29. ^ 松山 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  30. ^ 富山 2000年7月(日ごとの値) 気象庁
  31. ^ 糸魚川 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  32. ^ 糸魚川 2019年8月(日ごとの値) 気象庁
  33. ^ 糸魚川 1990年8月(日ごとの値) 気象庁
  34. ^ 粟島 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  35. ^ 小松 2000年7月(日ごとの値) 気象庁
  36. ^ 斐川 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  37. ^ 上市 1997年8月(日ごとの値) 気象庁
  38. ^ 湖山 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  39. ^ 塩津 2023年8月(日ごとの値) 気象庁
  40. ^ 北原 2022年8月(日ごとの値) 気象庁
  41. ^ 口之津 2017年8月(日ごとの値) 気象庁
  42. ^ 越廼 2000年7月(日ごとの値) 気象庁

関連項目

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外部リンク

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