Mスポーツ

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2012年WRCラリーGB

Mスポーツ (M-Sport) は、イギリスカンブリアコッカーマスに拠点を置くモータースポーツ関連企業。競技用車両の製造・販売・整備、ラリーチームの運営などを行う。世界ラリー選手権 (WRC) にはマニュファクチャラー(製造者)チームとして参戦している。代表はマルコム・ウィルソン

沿革[編集]

WRC[編集]

マルコム・ウィルソン(2011年)
フォードのサービスパーク

1979年、ラリードライバーのマルコム・ウィルソンがマルコム・ウィルソン・モータースポーツ (Malcolm Wilson Motorsport,MWM) を設立。個人のガレージチームに始まり、やがて他国の選手権出場者のサポートも請け負うようになる。ウィルソンはフォードとの関わりが深く、開発ドライバーを務めたり、1994年にはエスコートRSコスワースに乗ってイギリスラリー選手権 (British Rally Championshipを制覇している。

イギリス・フォードエセックスボアハム (Borehamにモータースポーツ部門の拠点を置いていたが、1996年末に体制を見直し、WRCのワークス活動をウィルソンのチームに委託することを決めた。

1997年、MWM改めMスポーツは暫定的なワールドラリーカー(WRカー)エスコートWRCを投入し、カルロス・サインツユハ・カンクネンが2度のワンツーフィニッシュを飾る。1999年にはコリン・マクレーが加入し、新車フォーカスWRCをデビューさせる。2000年にはウィルソンの地元コッカーマス近郊にあるカントリーハウス「ドベンバイホール  (Dovenby Hall」の敷地に大型ファクトリーが開設される。2000年から2002年にかけてサインツ・マクレーのコンビで計9勝を挙げるも、マニュファクチャラーズ選手権では王者プジョーの牙城は崩せなかった。

2003年スバルから移籍したデザイナー、クリスチャン・ロリオーが手がけたフォーカスWRC 03を投入。ドライバーも若手主体に切り替え、マルコ・マルティンが新エースに台頭する。

2006年マーカス・グロンホルムミッコ・ヒルボネンを擁し、フォードにとっては1979年以来2度目のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。翌2007年もタイトルを連覇する。また、2006年よりマニュファクチャラー2規定が導入されると、ストバート (Stobart Groupの支援を受けるセカンドチーム(ストバート・フォード)を設立し、ヘニング・ソルベルグやマルコムの息子マシュー・ウィルソンが所属する。さらに、2007年からアルゼンチンのミュンヒス・フォード (Munchi's Fordの運営も引き受ける。

グロンホルムの引退後、ヤリ=マティ・ラトバラがストバートからワークスチームへ昇格し、ヒルボネンとのコンビで4年間戦うが、セバスチャン・ローブ擁するシトロエンの強さは揺るがず。2011年は三代目のWRカーフィエスタRS WRCがデビューする。

2012年はストバートやミュンヒスの撤退に続き、本体のフォード・ヨーロッパもこの年限りでワークス活動を終了すると表明[1]2013年以降はフォードからベース車両の提供と技術面の支援を受けながら[2]、独立採算チームとしてWRC参戦を継続することになった。この年より「フォード」の名称を用いず、Mスポーツ名義でマニュファクチャラーチーム登録される[3]2014年以降はメインスポンサーなしでの参戦が続き、車両の開発・ドライバー起用において資金力に勝るワークス相手に苦戦が続く。2016年はフルシーズン参戦を確約できるだけの資金調達が難航し、開幕戦直前までマニュファクチャラー登録が遅れた[4][5]

2017年は前年末にWRC撤退を表明したフォルクスワーゲンから4年連続王者セバスチャン・オジェを引き入れることに成功[6]。オジェは開幕戦モンテカルロで優勝し、チームにとって2012年以来5年ぶりの勝利を記録した。開発に投じる予算は限られているものの、新マシンは信頼性・安定性・速さ全てに優れており、オット・タナクエルフィン・エバンスの二人にも初優勝をもたらした。そして地元のラリーGBにおいてオジェのドライバーズタイトル5連覇とチームのマニュファクチャラーズタイトル獲得が決定。マニュファクチャラーズ制覇はフォードワークス時代の2007年以来となるが、メーカーの直接支援を受けないプライベーターとしてはWRC史上初めての快挙であった[7]

GTレース[編集]

ベントレー・コンチネンタルGT3

ベントレーGT3規格のコンチネンタルGT3を共同開発[8]。2014年よりブランパン・GTシリーズ (Blancpain GT Seriesに「ベントレー・チーム・Mスポーツ」として参戦している。このマシンは2017年より日本のSUPER GTのGT300クラスにも登場する[9]

ラリークロス[編集]

フォードはWRC撤退後、ラリークロス競技への関与を深めている。MスポーツはWRカーをベースにラリークロス用に改装したフィエスタST RXを開発し、2013年よりグローバル・ラリークロス (Global Rallycross世界ラリークロス選手権 (WorldRX) に供給している。

2016年は人気レーサーのケン・ブロック擁するフーニガン・レーシング・ディヴィジョンとフォード・パフォーマンス、Mスポーツが共同企画でフォーカスRS RXを開発[10]。ブロックのチームメイト、アンドレアス・バックラッドがWorldRXシリーズランキング3位を獲得した。

ビジネス[編集]

フォード・フィエスタR5

Mスポーツの企業経営を支える基盤として、プライベーター向けのラリーカー販売や、メンテナンスサポート、アフターパーツの供給といったカスタマービジネスがある。現行の主力車種フォード・フィエスタに関しては、入門クラスのグループR1からR2・R5・S2000・RRC(リージョナル・ラリーカー)・WRC(ワールドラリーカー)までランナップを揃えている。

2013年からデリバリーを始めたフィエスタR5は世界各地の選手権で活躍し、製作台数が200台に達するヒットモデルとなっている[11]。これらの取扱いはポーランドクラクフに設立したMスポーツ・ポーランドでも行われている[12]

JWRCのプロモーターにも就任しており、フィエスタR2は若手育成シリーズジュニア世界ラリー選手権 (JWRC) のワンメイクマシンとなっている[13]。またJWRCの成績優秀者に与えられるWRC2への参戦権についても、MスポーツがオペレーションするR5マシンをドライブすることになっている。

脚注[編集]

  1. ^ “フォード、WRCスポンサーから撤退…事実上のワークス参戦終了へ”. レスポンス. (2012年10月16日). http://response.jp/article/2012/10/16/183204.html 2017年4月4日閲覧。 
  2. ^ “オジェのモンテ勝利がフォードを動かす”. J SPORTS. (2017年1月29日). http://www.jsports.co.jp/motor/wrc/news/news_20170129_01.html 2017年4月4日閲覧。 
  3. ^ “Mスポーツのマニュファクチャラー登録が正式発表”. RallyXモバイル. (2013年1月14日). http://rallyx.net/news/M%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%BC%E7%99%BB%E9%8C%B2%E3%81%8C%E6%AD%A3%E5%BC%8F%E7%99%BA%E8%A1%A8-8658/ 2017年4月4日閲覧。 
  4. ^ “Mスポーツ、未だWRC全戦エントリーを確約できず”. AUTOSPORTweb. (2016年1月18日). http://archive.as-web.jp/news/info.php?c_id=03&no=70582 2017年10月29日閲覧。 
  5. ^ “Mスポーツが資金調達。WRC全戦への参戦確定”. AUTOSPORTweb. (2016年1月21日). http://archive.as-web.jp/news/info.php?c_id=3&no=70632 2017年10月29日閲覧。 
  6. ^ “【正式】WRC王者オジエはMスポーツへ。2017年の契約が発表”. AUTOSPORT.web. (2016年12月13日). http://www.as-web.jp/rally/72887?all 2017年4月4日閲覧。 
  7. ^ プライベーターのドライバーがドライバーズタイトルを獲得したケースは、1981年アリ・バタネン(ロスマンズ・ラリーチーム)という前例がある。
  8. ^ “ベントレー、GT3カーの開発へMスポーツと協力”. AUTOSPORT.web. (2012年12月18日). http://archive.as-web.jp/news/info.php?c_id=9&no=45599 2017年4月4日閲覧。 
  9. ^ “EIcars BENTLEY TTOによるベントレーのGT300参戦が決定! 井出/阪口のコンビに”. AUTOSPORT.web. (2017年2月18日). https://www.as-web.jp/supergt/91888?all 2017年4月4日閲覧。 
  10. ^ “フォード、フォーカスRSで世界RX選手権へ”. ラリーXモバイル. (2016年3月3日). http://rallyx.net/news/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E3%80%81%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%B9RS%E3%81%A7%E4%B8%96%E7%95%8CRX%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9%E3%81%B8-12955/ 2017年4月4日閲覧。 
  11. ^ “Mスポーツ、今季後半にフィエスタR5 EVO2を投入”. Rally+.net. (2017年1月13日). http://www.rallyplus.net/27489 2017年4月6日閲覧。 
  12. ^ M-Sport Poland”. M-Sport. 2017年4月6日閲覧。
  13. ^ “WRCアカデミーのカレンダーが決定。JWRCの半分のコストで6戦に参戦可能”. Rally+.net. (2010年11月28日). http://www.rallyplus.net/8400 2017年4月6日閲覧。 

外部リンク[編集]