Extensible Messaging and Presence Protocol

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Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP) (旧称 Jabber[1])は、オープンソースインスタントメッセンジャーのプロトコルおよび、クライアント、サーバの総称である。

TCP/IP群
アプリケーション層

BGP / DHCP / DNS / FTP / HTTP / IMAP / IRC / LDAP / MGCP / NNTP / NTP / POP / RIP / RPC / RTP / SIP / SMTP / SNMP / SSH / Telnet / TFTP / TLS/SSL / XMPP

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トランスポート層

TCP / UDP / DCCP / SCTP / RSVP / ECN

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ネットワーク層

IP (IPv4, IPv6) / ICMP / ICMPv6 / IGMP / IPsec

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リンク層

ARP/InARP / NDP / OSPF / トンネリング (L2TP) / PPP / MAC (イーサネット, IEEE 802.11, DSL, ISDN, FDDI)

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特徴[編集]

Jabber は Jabber 社が開発した XML ベースのプロトコルである XMPP を採用している。他のメジャーなインスタントメッセンジャーはその仕様もプロトコルも非公開となっているのが普通だが、Jabber はサーバもクライアントもオープンソースであり、その仕様は全て公開されている(オープン標準)。そのため、たとえばメールサーバと同じように、ドメインサーバさえあれば自分専用の XMPP サーバを立ち上げることができる。この点でほかのインスタントメッセージと異なる。

他のインスタントメッセージングサービスゲートウェイとなる機能も持つ。この機能を利用し、Jabber クライアントから AOL Instant MessengerMSN Messenger(.NET Messenger Service)、Yahoo!メッセンジャーIRCICQ などのネットワークへメッセージを送ることができる。ただしサービスを提供しているサーバによっては、日本語が通らないこともある。

Google Talk は、Jabber を核にしたものである。

歴史[編集]

ジェリミー・ミラー英語版1998年に Jabber テクノロジーに取り組み始め、1999年1月4日に jabberd英語版 の最初のバージョンをリリースした[2]。初期の Jabber コミュニティはオープンソースソフトウェアに焦点を当てており、主に jabberd の開発をしていた(2000年5月にバージョン1.0、2000年10月にバージョン1.2、2001年2月にバージョン1.4を発表)が、一番の成果は XMPP プロトコルを作ったことである。

1999年から2000年に開発された初期の Jabber プロトコルは XMPP の基礎となり、XMPP は RFC 3920RFC 3921 として公表されている。(IETF の XMPP Working Group による規格化の際に主に変わった部分は、伝送路の暗号化用に TLS の追加と認証用に SASL が追加されたところである。)XMPPはよく SIMPLE英語版 の競合相手とみなされる。SIMPLE は Session Initiation Protocol (SIP) プロトコルを基礎とする、インスタントメッセージングとプレゼンス通知の標準プロトコルである[3][4]

XMPP をベースにした最初の IM サービスは Jabber.org であり、1999年以降連続稼動していて XMPP のアカウントをフリーで提供している[5]。1999年から2006年2月まではサービスに jabberd を使用していたが、それ以降は ejabberd英語版 に移行した。(どちらもフリーソフトウェアのサーバアプリケーションである。)2010年1月には Isode Ltd. によるプロプライエタリの M-Link へ移行する予定である[6]

2005年8月に GoogleGoogle Talk を発表した。これは VoIP と IM システムをあわせ持ち、インスタントメッセージングの機能に XMPP を使用していて、音声とファイル転送のシグナリングプロトコルのベースに XMPP を使用している。(最初のリリースにはサーバ間通信は含まれていなかったが、2006年1月17日にこの機能は有効になった。)[7]

2008年9月にシスコシステムズは Jabber, Inc. と商用プロダクトである Jabber XCP の開発者を買収した[8]

2010年2月、ソーシャルネットワーキングサイトの Facebook は XMPP を通してチャット機能をサードパーティのアプリに開放した[9]。Facebook の開発者のサイトでは、次のように注意を呼びかけている。Facebook のチャットは内部で実際に XMPP サーバを稼働させているわけではなく、単にクライアントに XMPP のインターフェースを提供しているだけである。したがって、ユーザリストの編集など、サーバサイドの機能は XMPP 経由ではできないことがある[10]

Google Talk だけでなく、多くの公共 IM サービスが XMPP を採用しており、Live Journal の LJ Talk[11] や Nokia の Ovi[12] などがそうである。さらに、企業の IM ソフトウェアプロダクトには、ネイティヴでは XMPP を使用できなくても XMPP へのゲートウェイを含むものがある。例えば、IBM Lotus Sametime[13][14]Microsoft Office Communications Server (OCS)[15]などである。

長所[編集]

  • 中央サーバを持たない : XMPP ネットワークの構造は電子メールに似ており、誰でも自分の XMPP サーバを立てることができるので、中央サーバが存在しない。
  • オープン標準 : XMPP はインスタントメッセージングサービスとプレゼンス技術として XMPP という名前で IETF により承認された。XMPP の仕様は RFC 3920RFC 3921 として公表されている。これらを実装するのにロイヤルティーは一切かからず、特定のベンダーに縛られることがない。
  • 歴史 : XMPP は1998年から利用されている。XMPP 標準のクライアント、サーバ、コンポーネント、ライブラリの実装は数多くあり、サン・マイクロシステムズや Google などの大きな企業に支えられている。
  • セキュリティ : XMPP サーバは公共の XMPP ネットワークから切り離してもよく(例えば、会社でのイントラネットなど)、強固なセキュリティ(SASL や TLS を使用)が XMPP のコアに組み込まれている。伝送路の暗号化を促進するために、2009年10月30日まではXMPP Standards Foundationxmpp.netに中間認証局の設置も行っており、XMPP サーバの管理者にフリーのデジタル証明書を提供していた。また、PGPによるエンドツーエンドの暗号化にも対応している。
  • 柔軟性 : XMPP に加えてカスタムの機能を実装できる。相互運用性を保つために、一般的な拡張は XMPP Software Foundation により管理されている。IM 以上の機能を持つ XMPP アプリケーションとして、ネットワークマネージメント、コンテンツ配信、グループウェア、ファイル共有、ゲーム、リモートシステムの監視などがある。

短所[編集]

  • プレゼンスデータのオーバーヘッド : 一般にサーバ間通信の70パーセントがプレゼンスデータで[16]、そのうちの60パーセント近くが冗長であるので[17]、現在 XMPP はプレゼンスデータを複数のレシピエントへ転送する際に大きなオーバーヘッドがある。この問題を緩和する新しいプロトコルが考えられている[要出典]
  • インバンドによるバイナリデータの転送は非効率 : XMPP は単一の長い XML ドキュメントとして符号化されるので、バイナリデータはインバンドで転送する前にまず Base64 でエンコードしなければならない。このため巨大なバイナリデータ(例えば、ファイル転送など)はアウトオブバンドで転送するのがもっとも良く、インバンドによる通信は制御用に用いる。最も良い例は XMPP の拡張プロトコルであるJingle英語版XEP-0166)である。

サーバの分散とアドレッシング[編集]

XMPP ネットワークはクライアントサーバアーキテクチャを採用している(クライアントは直接通信しない)が、中央サーバを持たない。権威ある中央サーバが存在しないように設計されており、これはAOL Instant MessengerWindows Live メッセンジャーとは対照的である。 jabber.org で動作している公共の XMPP サーバが存在しており、ここに多くのユーザが登録されているので、この点などでよく混乱されるが、誰でも自分のドメインで自分の XMPP サーバを立てることができる。XMPP の標準のTCP ポートは5222である。

ネットワーク上のすべてのユーザはユニークな Jabber ID(よく省略され JID と呼ばれる)を持つ。ID のリストを持つ中央サーバを不要にするため、JID はメールアドレスのような構造を持っている。ユーザ名と、ユーザの存在するサーバのあるドメイン名があり、アットマーク(@)で仕切られる。例えば、username@example.com のようになる。

ひとりのユーザは複数の場所からログインするかも知れないので、クライアントでは更に追加でストリングを指定する。例えば、home、work、mobile など。このリソースで、ユーザのどのクライアントなのかを特定する。そしてこのリソースは、JID のあとにスラッシュに続けてリソース名を指定することで JID に含めることができる。リソースには優先度という数値を指定しても良い。例えば、あるユーザのモバイルアカウントの完全な JID は、username@example.com/mobile である。単に username@example.com に対して送られたメッセージはもっとも優先度の高いクライアントへ行くが、username@example.com/mobile に対して送られたものはモバイルクライアントのみへ行く。

メッセージ転送の仕組み[編集]

juliet@capulet.comromeo@montague.net へチャットをしたいとする。Juliet と Romeo はそれぞれ capulet.com と montague.net にアカウントを持っている。 Juliet がタイプしてメッセージを送ると、一連のイベントが以下のように続く。

  1. Juliet のクライアントがメッセージを capulet.com のサーバへ送る。
    • capulet.com で montague.net がブロックされていると、メッセージは破棄される。
  2. capulet.comの サーバは montague.net へ向けてコネクションを張る。
    • montague.net で capulet.com がブロックされていると、メッセージは破棄される。
    • このとき Romeo が接続していなかったら、メッセージは後で送るために保存される。
  3. montague.net のサーバは Romeo にメッセージを送る。
Juliet capulet.com montague.net Romeo

他のプロトコルへの接続[編集]

Alice は XMPP ネットワークを通して ICQ トランスポートへメッセージを送る。次にメッセージは ICQ ネットワークを通じて Bob へ送られる。

XMPP の他の便利な特徴はトランスポートである。ゲートウェイという名前でも知られていて、他のプロトコルを使うネットワークにアクセスすることが可能になる。インスタントメッセージングのプロトコルだけでなく、SMS電子メールなどのプロトコルでも可能である。マルチプロトコル対応のクライアントと違って、リモートコンピュータで動作する特別なゲートウェイサービスを通して通信することで、サーバレベルでアクセス出来るようにしている。ユーザは、これらのゲートウェイのひとつにネットワークのログインに必要な情報を提供して「登録」する。すると、そのユーザは、 XMPP のユーザと同じようにそのネットワークのユーザと通信できる。つまり、XMPP を完全にサポートしたクライアントであれば、ゲートウェイが存在するどんなネットワークのアクセスにも使えるということである。クライアントに一切コードを追加する必要がなく、クライアントが直接インターネットに接続できる必要もない。こういった機能は、使っているプロトコルの利用規約に違反する可能性があるが、国によって何カ国かでは、そのような利用規約は法的拘束力を持たない。

関連項目[編集]

  • RFC 3920 - Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP): Core
  • RFC 3921 - Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP): Instant Messaging and Presence
  • RFC 3922 - Mapping the Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP) to Common Presence and Instant Messaging (CPIM)
  • RFC 3923 - End-to-End Signing and Object Encryption for the Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP)

脚注[編集]

  1. ^ Jabber Inc. - About Us
  2. ^ Open Real Time Messaging System
  3. ^ "XMPP rises to face SIMPLE standard", Infoworld magazine, April 17, 2003 XMPP rises to face SIMPLE standard
  4. ^ "XMPP vs SIMPLE: The race for messaging standards", Infoworld magazine, May 23, 2003 Infoworld.com
  5. ^ Chatting Up the Chef Linux Journal March 1, 2003 by Marcel Gagné
  6. ^ Jabber.org - XMPP Server Migration” (2009年8月12日). 2009年12月14日閲覧。
  7. ^ Burd, Gary (2006年1月17日). “XMPP Federation”. 2007年11月30日閲覧。
  8. ^ Cisco Announces Definitive Agreement to Acquire Jabber”. 2010年1月2日閲覧。
  9. ^ Facebook Chat Now Available Everywhere”. 2010年2月11日閲覧。
  10. ^ Integrating with Facebook Chat”. 2010年2月21日閲覧。
  11. ^ Question FAQ #270
  12. ^ Ovi Contacts
  13. ^ "Lotus Sametime 7.5 Interoperates with AIM, Google Talk", eWeek, December 6, 2006 Eweek.com
  14. ^ "Lotus ships gateway to integrate IM with AOL, Yahoo, Google", Network World, December 6, 2006 Networkworld.com
  15. ^ "Unified Communications: Uniting Communication Across Different Networks", Microsoft Press Release, October 1, 2009 Microsoft.com
  16. ^ [Standards-JIG] Distribution of stanza types
  17. ^ [Standards-JIG] proto-JEP: Smart Presence Distribution

外部リンク[編集]