失敗の本質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
失敗の本質 日本軍の組織論的研究
著者 戸部良一
寺本義也
鎌田伸一
杉之尾孝生
村井友秀
野中郁次郎
発行日 1984年昭和59年)5月
発行元 ダイヤモンド社
ジャンル 軍事
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 290ページ
コード ISBN 978-4478370131
ISBN 978-4122018334中公文庫
Portal.svg ウィキポータル 軍事
Portal.svg ウィキポータル 戦争
Portal.svg ウィキポータル 日本
[ Wikidata-logo-en.svg ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(しっぱいのほんしつ にほんぐんのそしきろんてきけんきゅう)とは、社会科学面での旧日本軍戦史研究。6名の研究者(戸部良一寺本義也鎌田伸一杉之尾孝生村井友秀野中郁次郎)による共著である。

初版は1984年昭和59年)5月ダイヤモンド社ISBN 978-4478370131)より刊行され、1991年平成3年)に中公文庫ISBN 978-4122018334)で文庫本にて再刊された。

概要[編集]

ノモンハン事件ミッドウェー作戦ガダルカナル作戦インパール作戦レイテ沖海戦沖縄戦と、第二次世界大戦前後の「大日本帝国の主要な失敗策」を通じ、日本軍の失敗の原因を追究すると同時に、歴史研究と組織論を組み合わせたノモンハン事件・太平洋戦争の学際的研究書である。

大前提として「大東亜戦争は客観的に見て、最初から勝てない戦争」であったとする。それでも各作戦においてはもっと良い勝ち方、負け方があるのではないか、というのが著者等の考え方である。各作戦は失敗の連続であったが、それは日本軍の組織特性によるのではないかと考えた。「戦い方」の失敗を研究することを通して、「組織としての日本軍の遺産を批判的に継承もしくは拒絶」することが出版の主目的であった(「本書のねらい」)。

戦史研究(事例研究)を中心とする防衛大学校研究者と、野中郁次郎などの組織論研究者(帰納法の思考に重点を置く)との、両者の共同研究によって生まれた。

結論で、日本軍は環境に過度に適応し、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(かつて学んだ知識を捨てた上での学び直し)を通して、自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかったとした。

評価[編集]

著者の一人である野中郁次郎によれば、出版当初は著者たちもダイヤモンド社も「大して売れる」とは考えていなかったが、週刊文春外務省官僚の岡崎久彦による「非常に好意的な書評」が掲載されたことが、広く読まれるようになるきっかけのひとつとなったという[1]

2010年(平成22年)には勝間和代[2]2012年(平成24年)には新浪剛史(現・サントリー社長)が本書を推薦している[3]。2012年(平成24年)時点で、中公文庫版では56万部に達している。

一方で、その内容の一部については批判もある。例えば森本忠夫は、物質的・技術的格差を重視する立場を取っており、本書でのレイテ海戦への評価について、組織論に重きを置きすぎ、日本側に勝機があったかのような記述や、戸部の栗田健男に対する評価(「戦略不適応」で「作戦全体の戦略的目的と自分に課せられた任務とを十分に理解していたとはいえなかった」)に対して「全く的を得ていないと筆者は思う。栗田提督は作戦の目的や任務を理解していなかったのではなくて、作戦と任務そのものに反対していたのだ」と「主観主義的な観点から栗田の"退却"を無批判に非難する所論」の一つとして、批判を行っている[4]

著者[編集]

補足[編集]

上記6人の著者は、2005年(平成17年)に『戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ』(ISBN 978-4532194628)を日本経済新聞社から刊行した(2008年日経ビジネス人文庫で再刊)。

防衛大学校校長だった猪木正道の承認と激励で、野中郁次郎は防衛大学校に異動し、資料の自由利用が保障された[9]

『組織は人なり』(ナカニシヤ出版、2009年)(野中郁次郎監修・東京電力技術開発研究所ヒューマンファクターグループ編著)の第4章(咲川孝・成田康修著)では、『失敗の本質』に関する解説がなされている[10]

2012年(平成24年)7月には、ダイヤモンド社より本書の続編として『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』(野中郁次郎編・杉之尾宜生、戸部良一、土居征夫、河野仁、山内昌之菊澤研宗著)が刊行され、2014年(平成26年)11月には、日本経済新聞出版社より『国家経営の本質―大転換期の知略とリーダーシップ―』(戸部良一、寺本義也、野中郁次郎編著)が刊行された。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 三菱総研倶楽部Vol.5 No.5(2008年5月1日発行) 野中郁次郎 「私と経営学05:書籍『失敗の本質』」 2010年2月6日閲覧
  2. ^ 勝間和代のクロストーク feat.瀧波ユカリ毎日新聞2010年12月8日
  3. ^ 野中郁次郎のリーダーシップ論・第15回 新浪剛史・サントリーHD社長×野中郁次郎 ローソンプロジェクト成功の影に「失敗の本質」を共有した仲間がいた
  4. ^ 森本忠夫「レイテ沖"謎の反転"の真相」『潮』1986年9月 pp.253-254
  5. ^ 1947年生まれ。1976年上智大学大学院博士課程経済制度・組織専攻満期退学
  6. ^ 鎌田伸一防衛大学校人文社会学群公共政策学科教授
  7. ^ 1981年 東京大学大学院社会学研究科博士課程国際関係論専攻満期退学
  8. ^ 防衛大学校人文社会学群国際関係合学科教授
  9. ^ 三菱総研倶楽部Vol.5 No.5(2008年5月1日発行) 野中郁次郎 「私と経営学05:書籍『失敗の本質』」 2010年5月2日閲覧
  10. ^ 挿画には、東京藝術大学出身の画家である竹内久美子により、グラマンが描かれている。なお、野中郁次郎は、幼少時代にグラマンによる機銃掃射を受けた過去がある。