セルトラリン

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セルトラリン
IUPAC命名法による物質名
(1S,4S)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミン
臨床データ
胎児危険度分類 C
法的規制 Prescription only
投与方法 経口
薬物動態的データ
生物学的利用能 44%
代謝 N-脱メチル化 (肝臓)
半減期 約26時間
排泄 腎臓
識別
CAS登録番号 79617-96-2
ATCコード N06AB06
PubChem CID 68617
DrugBank APRD00175
ChemSpider 61881
KEGG D02360
化学的データ
化学式 C17H17Cl2N 
分子量 306.229 g/mol
ジェイゾロフト錠25mg

セルトラリンもしくはサートラリン (sertraline) は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) と呼ばれる第三世代抗うつ剤の一つである。

不安障害心的外傷後ストレス障害 (PTSD)、全般性不安障害強迫性障害社交不安障害)、月経前不快気分障害双極性障害の治療にも応用されることがある。

塩酸セルトラリンとして「ゾロフト」(Zoloft) の商品名でファイザーより発売されている。アメリカ食品医薬品局は1991年に承認。日本においては、「ジェイゾロフト錠」の商標で2006年7月7日より薬価収載されている。

他害行為と抗うつ剤との因果関係が否定できない症例が確認されたことから、2009年5月に厚生労働省より添付文書の改定を指示され、[重要な基本的注意]「自殺企図」の中に「攻撃性」のリスクが明示された。同年同月、パロキセチンとともに添付文書の改訂が指示され、「慎重投与」の項の「躁病の既往歴のある患者」が「躁うつ病患者」となった。

適応はうつ病・うつ状態、パニック障害

性質[編集]

セルトラリンは無臭白色でやや水に溶ける結晶で、セロトニン再取り込み阻害作用はSSRIの中で最も強い。

セルトラリンは主にCYP2D6で代謝され、活性代謝物にはN-脱メチル体があるが、濃度や活性価が低く、臨床では問題にならない。

また、セルトラリンのチトクローム P450 (CYP450) の阻害能はSSRIの中で最も弱く[1]、薬物相互作用も比較的少ないとされる。

禁忌[編集]

  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • モノアミン酸化酵素阻害薬を投与中あるいは投与中止後14日間以内の患者
  • ブチロフェノン系抗精神病薬ピモジド(商品名オーラップ)を投与中の患者
    • 併用により血中薬物濃度が延長された結果、心電図でQT延長をきたすおそれがある。

併用注意[編集]

本剤は肝臓で代謝されるため、肝機能障害は体内から本剤の排出に影響を与えることがある。肝機能に障害を持つ者への投与は、より少ない量を投与するか、頻度を減らすべきである。また、本剤を服用中の患者は、飲酒を避けることが望ましいとされる(本剤との相互作用は認められていないが、他の抗うつ薬で作用の増強が報告されているため)。

剤形及び規格[編集]

剤形及び規格

  • 錠剤(フィルムコート): 25mg, 50mg(割線入り)
各国の塩酸セルトラリン錠の剤形及び規格
ゾロフト®錠 50mg, 25mg
(米国) 
ゾロフト®錠 100mg
(スウェーデン) 
ジェイゾロフト®錠 50mg
(日本) 
ゾロフト®錠 50mg
(中国) 

用法[編集]

通常、成人に対して1日25mgを初期用量として1日100mgまで漸増し、1日1回投与するが、医師の判断により複数回に分割投与する場合もある。
また、年齢、症状により1日100mgを上限として増減する。

米国では適応に以下の用量が用いられる。

  • 月経前不快気分障害に対して、最大用量150mg
  • 早漏に対して、最大用量50mg

副作用[編集]

重大な副作用[編集]

セロトニン症候群 
精神症状として意識障害不安など。神経症状としてミオクローヌス、腱反射亢進、筋強剛など。自律神経症状として発熱発汗、下痢、頻脈などが生じる。治療にはセロトニン拮抗薬のシプロヘプタジンが有効とされるが、重度の場合、後述の悪性症候群との判別が重要になる。
悪性症候群 (NMS) 
発熱を伴う錐体外路症状 (EPS) が主な症状であり、意識障害や自律神経症状やEPSによる筋強剛が生じるためにセロトニン症候群と誤診されることがある。一般的にCK値の上昇が見られ、ミオクローヌスや腱反射亢進などの神経症状は稀である。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 (SIADH) 
抗うつ剤の口渇による多量の水分補給と利尿ホルモン (ADH) の不適合分泌により、低ナトリウム血症を起こす。

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ Stahl, Stephen M. (2000). Stahl's Essential Psychopharmacology Neuroscientific Basis and Practical Applications 3rd Edition. Cambridge University Press. ISBN 0521646154. 
  2. ^ 2ページ目上段のグラフ (PDF)
  3. ^ 「セロトニン作動薬におけるSSRIの位置づけ」、『PROGRESS IN MEDICINE』第19巻第11号、ライフ・サイエンス、1999年、 pp. 2558-2562。