ギリシア文字及びコプト文字

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ギリシア文字及びコプト文字
Greek and Coptic
範囲 U+0370..U+03FF
(144 個の符号位置)
基本多言語面
用字 ギリシア文字
主な言語・文字体系
割当済 135 個の符号位置
未使用 9 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
1.0.0 100 (+100)
1.1 105 (+5)
3.0 110 (+5)
3.1 112 (+2)
3.2 115 (+3)
4.0 120 (+5)
4.1 124 (+4)
5.0 127 (+3)
5.1 134 (+7)
7.0 135 (+1)
テンプレートを表示

ギリシア文字及びコプト文字(ギリシアもじおよびコプトもじ、英語: Greek and Coptic)は、Unicodeの8つ目のブロック

解説[編集]

ギリシャ及びキプロス公用語であるギリシア語数学物理学などで用いられるギリシア文字に加え、エジプトにおけるキリスト教徒コプトの聖典言語であるコプト語で用いられるコプト文字の一部を収録している。

Unicodeの表音文字ブロックにおいては珍しく、2種類の文字体系を同一のブロックで扱っている。これは、元々Unicodeのバージョン1.0においてコプト文字をギリシア文字と同一の文字体系と見做しており、コプト文字のうちギリシア文字に由来しない文字だけを追加文字としてギリシア文字ブロックに収録していたためであるが、後のバージョンアップデートにより両者が別々の文字体系であると見做され、現在ではギリシア文字に由来するコプト文字については後述の別ブロックに収録されている。

現代ギリシア語については当ブロック内の文字のみで表記することが可能だが、気息記号などを伴う古典ギリシア語についてはギリシア文字拡張英語: Greek and Coptic、U+1F00..U+1FFF)ブロックも参照する必要がある。

また、コプト文字については元々ギリシア文字にない発音を表記するために追加文字として導入された古代エジプトデモティック(民衆文字)を由来とする一部の文字のみが収録されており、コプト語を表記するためにはギリシア文字から派生した文字を収録しているコプト文字英語: Coptic、U+2C80..U+2CFF)ブロックも参照する必要がある。

Unicodeのバージョン1.0では単に「ギリシア文字(Greek)」というブロック名で制定されていた。[1]

収録文字[編集]

本節における日本語名称は特記がない限りWorld Wide Web Consortiumより[2]

コード 文字 文字名(英語) JIS名称 用例・説明
古代の文字
U+0370 Ͱ GREEK CAPITAL LETTER HETA
U+0371 ͱ GREEK SMALL LETTER HETA
U+0372 Ͳ GREEK CAPITAL LETTER ARCHAIC SAMPI
U+0373 ͳ GREEK SMALL LETTER ARCHAIC SAMPI
数字用記号
U+0374 ʹ GREEK NUMERAL SIGN δεξιά κεραία dexiá keraía、デクシア・ケレアと呼ばれる、イオニア式のギリシア数字において、書かれたギリシア文字が音素文字ではなく数字として扱われていることを示すために末尾に書かれる記号。
U+0375 ͵ GREEK LOWER NUMERAL SIGN αριστερή κεραία aristerí keraía、アリステリ・ケレアと呼ばれる、イオニア式のギリシア数字において、4桁の数を表すために数字の先頭に書かれ、直後に書かれた文字の数価を1,000倍にする記号。
古代の文字
U+0376 Ͷ GREEK CAPITAL LETTER PAMPHYLIAN DIGAMMA
U+0377 ͷ GREEK SMALL LETTER PAMPHYLIAN DIGAMMA
下書きのイオータ
U+037A ͺ GREEK YPOGEGRAMMENI
校正記号の小文字
U+037B ͻ GREEK SMALL REVERSED LUNATE SIGMA SYMBOL ἀντίσιγμα antísigma、アンティスィグマと呼ばれる、正しくない場所にある行を示す校正用の記号。三日月形のシグマを由来とする。
U+037C ͼ GREEK SMALL DOTTED LUNATE SIGMA SYMBOL σίγμα περιεστιγμένον sígma periestigménon、スィグマ・ペリエスティグメノンと呼ばれる、正しくない場所にある行を示す校正用の記号。三日月形のシグマを由来とする。
U+037D ͽ GREEK SMALL REVERSED DOTTED LUNATE SIGMA SYMBOL ἀντίσιγμα περιεστιγμένον antísigma periestigménon、アンティスィグマ・ペリエスティグメノンと呼ばれる、後ろにある行を並べ直す必要があるか、優先度の明らかでない異読があることを示す校正用の記号。三日月形のシグマを由来とする。
約物
U+037E ; GREEK QUESTION MARK ギリシア文字における疑問符ερωτηματικό erōtēmatikó、エロティマティコと呼ばれる。

ギリシャ語用文字コード規格との互換性のために収録されたが、現在Unicodeにおいては通常欧文用のセミコロン(U+003B ;)を使用することが推奨されている。[3]

追加の文字
U+037F Ϳ GREEK CAPITAL LETTER YOT
前進を伴うアクセント記号
U+0384 ΄ GREEK TONOS 鋭アクセント記号。母音字に付き、高音(または強アクセント)を表す。

特に現代ギリシア語においては鈍アクセント記号が用いられないため、書体によっては単純な縦線として書かれることもある。

U+0385 ΅ GREEK DIALYTIKA TONOS 分音符号に鋭アクセント記号が付いた形。
字母
U+0386 Ά GREEK CAPITAL LETTER ALPHA WITH TONOS
約物
U+0387 · GREEK ANO TELEIA ラテン文字におけるセミコロンと同様の役割を持つ約物。[3]

ギリシャ語用文字コード規格との互換性のために収録されたが、現在Unicodeにおいては通常欧文用の中黒(U+00B7 ·)を使用することが推奨されている。[3]

字母
U+0388 Έ GREEK CAPITAL LETTER EPSILON WITH TONOS
U+0389 Ή GREEK CAPITAL LETTER ETA WITH TONOS
U+038A Ί GREEK CAPITAL LETTER IOTA WITH TONOS
U+038B <未割り当て。U+03B0 ΰまたはU+0390 ΐの大文字に対応。将来の追加のために予約済み。>
U+038C Ό GREEK CAPITAL LETTER OMICRON WITH

TONOS

U+038D <未割り当て。U+03B0 ΰまたはU+0390 ΐの大文字に対応。将来の追加のために予約済み。>
U+038E Ύ GREEK CAPITAL LETTER UPSILON WITH TONOS
U+038F Ώ GREEK CAPITAL LETTER OMEGA WITH TONOS
U+0390 ΐ GREEK SMALL LETTER IOTA WITH DIALYTIKA AND TONOS
U+0391 Α GREEK CAPITAL LETTER ALPHA ギリシア大文字ALPHA
U+0392 Β GREEK CAPITAL LETTER BETA ギリシア大文字BETA
U+0393 Γ GREEK CAPITAL LETTER GAMMA ギリシア大文字GAMMA Unicode公式のチャートにおいてガンマ関数が言及されている。[3]
U+0394 Δ GREEK CAPITAL LETTER DELTA ギリシア大文字DELTA
U+0395 Ε GREEK CAPITAL LETTER EPSILON ギリシア大文字EPSILON
U+0396 Ζ GREEK CAPITAL LETTER ZETA ギリシア大文字ZETA
U+0397 Η GREEK CAPITAL LETTER ETA ギリシア大文字ETA
U+0398 Θ GREEK CAPITAL LETTER THETA ギリシア大文字THETA
U+0399 Ι GREEK CAPITAL LETTER IOTA ギリシア大文字IOTA
U+039A Κ GREEK CAPITAL LETTER KAPPA ギリシア大文字KAPPA
U+039B Λ GREEK CAPITAL LETTER LAMDA ギリシア大文字LAMBDA
U+039C Μ GREEK CAPITAL LETTER MU ギリシア大文字MU
U+039D Ν GREEK CAPITAL LETTER NU ギリシア大文字NU
U+039E Ξ GREEK CAPITAL LETTER XI ギリシア大文字XI
U+039F Ο GREEK CAPITAL LETTER OMICRON ギリシア大文字OMICRON
U+03A0 Π GREEK CAPITAL LETTER PI ギリシア大文字PI
U+03A1 Ρ GREEK CAPITAL LETTER RHO ギリシア大文字RHO
U+03A2 <未割り当て。U+03C2 ςの大文字に対応。将来の追加のために予約済み。>
U+03A3 Σ GREEK CAPITAL LETTER SIGMA ギリシア大文字SIGMA
U+03A4 Τ GREEK CAPITAL LETTER TAU ギリシア大文字TAU
U+03A5 Υ GREEK CAPITAL LETTER UPSILON ギリシア大文字UPSILON
U+03A6 Φ GREEK CAPITAL LETTER PHI ギリシア大文字PHI
U+03A7 Χ GREEK CAPITAL LETTER CHI ギリシア大文字CHI
U+03A8 Ψ GREEK CAPITAL LETTER PSI ギリシア大文字PSI
U+03A9 Ω GREEK CAPITAL LETTER OMEGA ギリシア大文字OMEGA
U+03AA Ϊ GREEK CAPITAL LETTER IOTA WITH DIALYTIKA 分音記号の付いたイオタ。現代ギリシア語では通常、母音字の後にイオタが書かれた場合一つの母音扱いとなり、音が変化するが、外来語などにおいて元の単語の発音を表現するために分音記号が用いられる。
U+03AB Ϋ GREEK CAPITAL LETTER UPSILON WITH DIALYTIKA
U+03AC ά GREEK SMALL LETTER ALPHA WITH TONOS
U+03AD έ GREEK SMALL LETTER EPSILON WITH TONOS
U+03AE ή GREEK SMALL LETTER ETA WITH TONOS
U+03AF ί GREEK SMALL LETTER IOTA WITH TONOS
U+03B0 ΰ GREEK SMALL LETTER UPSILON WITH DIALYTIKA AND TONOS
U+03B1 α GREEK SMALL LETTER ALPHA ギリシア小文字ALPHA
U+03B2 β GREEK SMALL LETTER BETA ギリシア小文字BETA IPAでは有声両唇摩擦音を表す。
U+03B3 γ GREEK SMALL LETTER GAMMA ギリシア小文字GAMMA
U+03B4 δ GREEK SMALL LETTER DELTA ギリシア小文字DELTA
U+03B5 ε GREEK SMALL LETTER EPSILON ギリシア小文字EPSILON
U+03B6 ζ GREEK SMALL LETTER ZETA ギリシア小文字ZETA
U+03B7 η GREEK SMALL LETTER ETA ギリシア小文字ETA
U+03B8 θ GREEK SMALL LETTER THETA ギリシア小文字THETA IPAでは無声歯摩擦音を表す。
U+03B9 ι GREEK SMALL LETTER IOTA ギリシア小文字IOTA
U+03BA κ GREEK SMALL LETTER KAPPA ギリシア小文字KAPPA
U+03BB λ GREEK SMALL LETTER LAMDA ギリシア小文字LAMBDA
U+03BC μ GREEK SMALL LETTER MU ギリシア小文字MU
U+03BD ν GREEK SMALL LETTER NU ギリシア小文字NU
U+03BE ξ GREEK SMALL LETTER XI ギリシア小文字XI
U+03BF ο GREEK SMALL LETTER OMICRON ギリシア小文字OMICRON
U+03C0 π GREEK SMALL LETTER PI ギリシア小文字PI 数学では円周率を表す記号として用いられる。
U+03C1 ρ GREEK SMALL LETTER RHO ギリシア小文字RHO
U+03C2 ς GREEK SMALL LETTER FINAL SIGMA ギリシア小文字ファイナルSIGMA 小文字のσが語末に書かれた時、この字形で書かれる。
U+03C3 σ GREEK SMALL LETTER SIGMA ギリシア小文字SIGMA
U+03C4 τ GREEK SMALL LETTER TAU ギリシア小文字TAU
U+03C5 υ GREEK SMALL LETTER UPSILON ギリシア小文字UPSILON
U+03C6 φ GREEK SMALL LETTER PHI ギリシア小文字PHI 書体によってはアセンダが丸い部分を上に突き抜けるU+03D5 ϕの形で書かれる。

Unicode標準字形では上部がループ状の字形をしており、U+03D5と区別する際に英語ではこちらをloopy glyph、日本語では「柔らかいファイ」や「バルファイ」と呼ぶことがある。 数学記号においては基本的にはこちらの「柔らかいファイ」を使うことになっている。[3]

U+03C7 χ GREEK SMALL LETTER CHI ギリシア小文字CHI IPAでは無声口蓋垂摩擦音を表す。
U+03C8 ψ GREEK SMALL LETTER PSI ギリシア小文字PSI
U+03C9 ω GREEK SMALL LETTER OMEGA ギリシア小文字OMEGA
U+03CA ϊ GREEK SMALL LETTER IOTA WITH DIALYTIKA
U+03CB ϋ GREEK SMALL LETTER UPSILON WITH DIALYTIKA
U+03CC ό GREEK SMALL LETTER OMICRON WITH TONOS
U+03CD ύ GREEK SMALL LETTER UPSILON WITH TONOS
U+03CE ώ GREEK SMALL LETTER OMEGA WITH TONOS
異体字
U+03CF Ϗ GREEK CAPITAL KAI SYMBOL ギリシア語において「及び」を意味するκαι kai、ケという単語の略字であり、アンパサンド記号(&)として用いられる。
U+03D0 ϐ GREEK BETA SYMBOL curled betaとも呼ばれる。
U+03D1 ϑ GREEK THETA SYMBOL
U+03D2 ϒ GREEK UPSILON WITH HOOK SYMBOL
U+03D3 ϓ GREEK UPSILON WITH ACUTE AND HOOK SYMBOL
U+03D4 ϔ GREEK UPSILON WITH DIAERESIS AND HOOK SYMBOL
U+03D5 ϕ GREEK PHI SYMBOL Unicode標準字形においてはアセンダが丸い部分を上に突き抜ける。U+03C6 φと区別する際に英語ではこちらをstroked glyph、日本語では「硬いファイ」や単に「ファイ」と呼ぶことがある。

素粒子物理学におけるファイ中間子電気工学における単相交流三相交流を表す技術用記号として用いられる。

U+03D6 ϖ GREEK PI SYMBOL omega piとも呼ばれる。近日点黄経レムニスケート周率などを表す記号として用いられる。
U+03D7 ϗ GREEK KAI SYMBOL ギリシア語において「及び」を意味するκαι kai、ケという単語の略字であり、アンパサンド記号(&)として用いられる。[3]
古代の文字
U+03D8 Ϙ GREEK LETTER ARCHAIC KOPPA
U+03D9 ϙ GREEK SMALL LETTER ARCHAIC KOPPA 通常のアルファベット文字であり、古典および古典以前のテキストでは90の数値を持つ記号としても使用される。[3]
U+03DA Ϛ GREEK LETTER STIGMA 起源はディガンマの草書体とされている。

Stigmaという文字名は、もともと中世で用いられたΣとΤの合字に対して使われていたもので、その形状が草書体のディガンマと紛らわしいほど似ていたことに由来する。[3]

U+03DB ϛ GREEK SMALL LETTER STIGMA
U+03DC Ϝ GREEK LETTER DIGAMMA
U+03DD ϝ GREEK SMALL LETTER DIGAMMA
U+03DE Ϟ GREEK LETTER KOPPA
U+03DF ϟ GREEK SMALL LETTER KOPPA 現代ギリシャ語では、法的文書の日付などにおける90の数値を持つ記号として使用される。[3]
U+03E0 Ϡ GREEK LETTER SAMPI
U+03E1 ϡ GREEK SMALL LETTER SAMPI
デモティック由来のコプト文字
U+03E2 Ϣ COPTIC CAPITAL LETTER SHEI
U+03E3 ϣ COPTIC SMALL LETTER SHEI
U+03E4 Ϥ COPTIC CAPITAL LETTER FEI
U+03E5 ϥ COPTIC SMALL LETTER FEI
U+03E6 Ϧ COPTIC CAPITAL LETTER KHEI
U+03E7 ϧ COPTIC SMALL LETTER KHEI
U+03E8 Ϩ COPTIC CAPITAL LETTER HORI
U+03E9 ϩ COPTIC SMALL LETTER HORI
U+03EA Ϫ COPTIC CAPITAL LETTER GANGIA
U+03EB ϫ COPTIC SMALL LETTER GANGIA
U+03EC Ϭ COPTIC CAPITAL LETTER SHIMA
U+03ED ϭ COPTIC SMALL LETTER SHIMA
U+03EE Ϯ COPTIC CAPITAL LETTER DEI
U+03EF ϯ COPTIC SMALL LETTER DEI
異体字形
U+03F0 ϰ GREEK KAPPA SYMBOL 技術用記号として用いられる。[3]
U+03F1 ϱ GREEK RHO SYMBOL 技術用記号として用いられる。[3]
U+03F2 ϲ GREEK LUNATE SIGMA SYMBOL 日本語では「三日月形のシグマ」と呼ばれる。
追加の文字
U+03F3 ϳ GREEK LETTER YOT
異体字形及び記号
U+03F4 ϴ GREEK CAPITAL THETA SYMBOL
U+03F5 ϵ GREEK LUNATE EPSILON SYMBOL
U+03F6 ϶ GREEK REVERSED LUNATE EPSILON SYMBOL
バクトリア語用の追加の古代文字
U+03F7 Ϸ GREEK CAPITAL LETTER SHO
U+03F8 ϸ GREEK SMALL LETTER SHO
異体字形
U+03F9 Ϲ GREEK CAPITAL LUNATE SIGMA SYMBOL 日本語では「三日月形のシグマ」と呼ばれる。
古代の文字
U+03FA Ϻ GREEK CAPITAL LETTER SAN
U+03FB ϻ GREEK SMALL LETTER SAN
記号
U+03FC ϼ GREEK RHO WITH STROKE SYMBOL ρを含む単語の略語を表す記号として使用される。[3]
校正記号
U+03FD Ͻ GREEK CAPITAL REVERSED LUNATE SIGMA SYMBOL ἀντίσιγμα antísigma、アンティスィグマと呼ばれる、正しくない場所にある行を示す校正用の記号。三日月形のシグマを由来とする。
U+03FE Ͼ GREEK CAPITAL DOTTED LUNATE SIGMA SYMBOL σίγμα περιεστιγμένον sígma periestigménon、スィグマ・ペリエスティグメノンと呼ばれる、正しくない場所にある行を示す校正用の記号。三日月形のシグマを由来とする。
U+03FF Ͽ GREEK CAPITAL REVERSED DOTTED LUNATE SIGMA SYMBOL ἀντίσιγμα περιεστιγμένον antísigma periestigménon、アンティスィグマ・ペリエスティグメノンと呼ばれる、後ろにある行を並べ直す必要があるか、優先度の明らかでない異読があることを示す校正用の記号。三日月形のシグマを由来とする。

小分類[編集]

このブロックの小分類は「古代の文字」(Archaic letters)、「数字用記号」(Numeral signs)、「下書きのイオータ」(Iota subscript)、「校正記号の小文字」(Lowercase of editorial symbols)、「約物」(Punctuation)、「追加の文字」(Additional letter)、「前進を伴うアクセント記号」(Spacing accent marks)、「字母」(Letter)、「異体字形」(Variant letterforms)、「デモティック由来のコプト文字」(Coptic letters derived from Demotic)、「異体字形及び記号」(Variant letterforms and symbols)、「バクトリア語用の追加の古代文字」(Additional archaic letters for Bactrian)、「記号」(Symbol)、「校正記号」(Editorial symbols)の14個となっている。[3]本ブロックでは、Unicodeのバージョン更新時の文字追加が隙間を埋める形で行われた影響で、同一の小分類に属する文字が飛び飛びの符号位置に割り当てられていることがある。

古代の文字(Archaic letters[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、古典ギリシア語で用いられていたが、後に廃字となり現代ギリシア語では使用されていない18文字を収録している。このうちUnicode1.0に含まれていたのはスティグマディガンマコッパサンピの大文字4文字で、これらの小文字がUnicodeのバージョン3.0で、Q形のコッパの異体字がバージョン3.2で、サンがバージョン4.0で、ヘータ及びディガンマとサンピの異体字がバージョン5.1で追加された。

数字用記号(Numeral signs[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、イオニア式のギリシア数字を表記する際に用いられる2つの記号を収録している。Unicodeのバージョン1.1で追加された。

下書きのイオータ(Iota subscript[編集]

この小分類には下書きのイオータと呼ばれる、古典ギリシア語の表記に使用された記号1文字のみが属している。Unicodeのバージョン1.1で追加された。

校正記号の小文字(Lowercase of editorial symbols[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、校正記号として用いられる記号の小文字3文字を収録している。後述する小分類「校正記号」に対応する小文字として、Unicodeのバージョン5.0で追加された。

約物(Punctuation[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、句読点などの約物2文字を収録している。ギリシア語用文字コードの互換用としてUnicodeのバージョン1.1で追加されたが、現在はいずれも通常の欧文用の約物を用いることが推奨されている。[3]

追加の文字(Additional letter[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、Yot ヨットと呼ばれるラテン文字Jと同形の字母を大文字・小文字合わせて2文字収録している。Unicodeのバージョン1.0では小文字のみが収録されており、バージョン7.0で大文字が追加された。

前進を伴うアクセント記号(Spacing accent marks[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字で用いられるアクセント記号のうち、結合文字とならないもの2文字を収録している。Unicode1.0の時点で収録済みであった。なお、結合文字については別ブロックである合成可能なダイアクリティカルマークに収録されている。

字母(Letter[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、現代ギリシア語で用いられている69文字が収録されている。全てUnicode1.0の時点で収録済みであった。

異体字形(Variant letterforms[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、数学物理学工学などの技術用記号などで用いられるギリシア文字の異体字13文字を収録している。このうちUnicodeのバージョン1.0に収録されていたのは10文字で、通常欧文のアンパサンドに相当する記号ϗがUnicodeのバージョン3.0で、三日月形のシグマの大文字がバージョン4.0で、ϗの大文字に相当するϏがバージョン5.1で追加された。

デモティック由来のコプト文字(Coptic letters derived from Demotic[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、コプト語において元々ギリシア語にない音を表現するために導入されたデモティックを起源とする追加文字を収録している。元々Unicodeのバージョン1.0においてコプト文字はギリシア文字の変種として見做されていたためギリシア文字と同一のブロックで扱われていたが、のちにバージョン4.1においてコプト文字がギリシア文字とは別の文字体系と見做されるようになり、元々ギリシア文字と統合されていた分の文字体系は別ブロック「コプト文字」として分離された。本ブロックの名称が「ギリシア文字及びコプト文字」となっているのはこの小分類が影響している。

異体字形及び記号(Variant letterforms and symbols[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、記号として用いられるギリシア文字の異体字3文字が収録されている。Unicodeのバージョン3.1で2文字が追加され、その後バージョン3.2で03F6 ϶ GREEK REVERSED LUNATE EPSILON SYMBOLが追加された。

バクトリア語用の追加の古代文字(Additional archaic letters for Bactrian[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、バクトリア語においてギリシア語にない[ʃ]の音価を表すために導入された字母ショーの大文字・小文字合わせて2文字を収録している。Unicodeのバージョン4.0で追加された。

記号(Symbol[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、ρを含む単語の略語を表す記号として使用される記号ϼの1文字のみを収録している。Unicodeのバージョン4.1で追加された。

校正記号(Editorial symbols[編集]

この小分類にはギリシア文字及びコプト文字のうち、校正記号として用いられる記号3文字を収録している。Unicodeのバージョン4.1で追加された。

文字コード[編集]

ギリシア文字及びコプト文字(Template:Greek and Coptic)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+037x Ͱ ͱ Ͳ ͳ ʹ ͵ Ͷ ͷ ͺ ͻ ͼ ͽ ; Ϳ
U+038x ΄ ΅ Ά · Έ Ή Ί Ό Ύ Ώ
U+039x ΐ Α Β Γ Δ Ε Ζ Η Θ Ι Κ Λ Μ Ν Ξ Ο
U+03Ax Π Ρ Σ Τ Υ Φ Χ Ψ Ω Ϊ Ϋ ά έ ή ί
U+03Bx ΰ α β γ δ ε ζ η θ ι κ λ μ ν ξ ο
U+03Cx π ρ ς σ τ υ φ χ ψ ω ϊ ϋ ό ύ ώ Ϗ
U+03Dx ϐ ϑ ϒ ϓ ϔ ϕ ϖ ϗ Ϙ ϙ Ϛ ϛ Ϝ ϝ Ϟ ϟ
U+03Ex Ϡ ϡ Ϣ ϣ Ϥ ϥ Ϧ ϧ Ϩ ϩ Ϫ ϫ Ϭ ϭ Ϯ ϯ
U+03Fx ϰ ϱ ϲ ϳ ϴ ϵ ϶ Ϸ ϸ Ϲ Ϻ ϻ ϼ Ͻ Ͼ Ͽ
注釈
1.^Unicode バージョン 15.1 現在

履歴[編集]

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
1.0.0 U+0384..0386, 0388..038A, 038C, 038E..03A1, 03A3..03CE 71 X3L2/92-065 E. Melagrakis; Kl Larson (10 June 1999), Combined CD registration and FCD ballot on WD 8859-7, Information technology -- 8-bit single-byte coded graphic character set -- Part 7: Latin/Greek alphabet (Revision of ISO 8859-7: 1987) (英語)
U+03D0..03D6, 03DA, 03DC, 03DE, 03E0, 03E2..03F0 29 (to be determined)
1.1 U+0374..0375, 037A, 037E, 0387 5 (to be determined)
3.0 U+03D7, 03DB, 03DD, 03DF, 03E1 5 (to be determined)
3.1 U+03F4..03F5 2 (to be determined)
3.2 U+03D8..03D9, 03F6 3 (to be determined)
4.0 U+03F7..03FB 5 (to be determined)
4.1 U+03FC..03FF 4 (to be determined)
5.0 U+037B..037D 3 (to be determined)
5.1 U+0370..0373, 0376..0377 7 (to be determined)
7.0 U+037F 1 (to be determined)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典[編集]

  1. ^ 3.8: Block-by-Block Charts”. The Unicode Standard. Unicode Consortium. 2023年6月12日閲覧。
  2. ^ "附属書A.27:欧文用文字(cl-27)", 日本語組版処理の要件, World Wide Web Consortium, 12 June 2023, 2020年5月9日閲覧
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n "The Unicode Standard, Version 15.1 - U0370.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2023年10月9日閲覧

関連項目[編集]