鯨偶蹄目
鯨偶蹄目 (Cetartiodactyla) | |||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Cetartiodactyla Montgelard et al., 1997 | |||||||||||||||||||||||||||
下位分類群 | |||||||||||||||||||||||||||
鯨偶蹄目(くじらぐうていもく・げいぐうていもく)は、哺乳綱の1目。クジラ偶蹄目とも書く。鯨偶蹄類、鯨偶蹄上目などとすることもある。
遺伝子手法で明らかになった系統にもとづく新しい目で、旧来の偶蹄目(ウシ目)とクジラ目からなる。鯨偶蹄目を置くばあい、単系統のクジラ目は(分類階級を目より下げて)存続するが、側系統の偶蹄目は廃止される。
学名 Cetartiodactyla は、Cetacea(クジラ目)と Artiodactyla(偶蹄目)の合成語である。
歴史
従来より偶蹄目とクジラ目は、左右一対の気管支とは別に、右側のみ気管から分岐し右肺へと達する管が存在するという共通した特徴をもっている事が知られていた[1]。そのためこの両者は近縁と考えられていて、この2目を姉妹群とする説はあった(ただし、必ずしも広く認められていたわけではない)。これら2目からなる系統の名として Cetartiodactyla が使われ、分類階級は上目、または、下門と目の間の名前の無い階級とされた。
1994年以降、ミトコンドリアDNA法などにより、クジラ目の姉妹群はカバである可能性が示唆されていた。クジラ目とカバからなる系統は Cetancodonta と名づけられた。
1997年、島村満らは、偶蹄目とクジラ目が姉妹群なのではなく、クジラ目が偶蹄目の内系統であり、偶蹄目は側系統であることを明らかにした。[2]
1999年、二階堂雅人らは、SINE法(反復配列の違いを比較する方法の一種)により、偶蹄目とクジラ目の詳細な系統を明らかにした。従来から示唆されていた通り、クジラ目の姉妹群はカバだった。[3]
SINE法による結果は、その後の研究でも支持された。これらに従い、側系統となった偶蹄目は廃し、Cetartiodactyla を目とみなすことが多くなった。なおこのような場合、クジラ目を偶蹄目に含めて偶蹄目を単系統にして存続させることも考えられるが、上記のように、偶蹄目とクジラ目を合わせた系統にすでに名前が付いていたため、このようになった。
新しい系統による新しい知見
クジラとカバの共通点
以下のような共通の特徴は、従来は水生化などにともなう収斂進化と考えられていたが、新しい系統により、水生依存の強い祖先を同じくすることによる共通派生形質であることが明らかになった。
- 水生。特に、カバと初期のクジラは淡水生である。
- 水中で育児をする。
- ほとんど毛がない(カバはほとんど無毛、クジラは一部の種を除き完全に無毛である)。
- 皮脂腺が無い。
- 水中で音を使ってコミュニケートする。
- 睾丸は陰嚢にない(カバでは鼠蹊部、クジラでは腹腔内にある)。
メソニクスの位置づけ
絶滅哺乳類であるメソニクス目は、骨格の特徴から偶蹄目及びクジラ目に近縁といわれており、また歯の形態が初期のクジラ類に似ている事などから、従来クジラの祖先か、祖先に近縁と考えられていた。しかし、後肢のかかとの関節にある距骨の上下端に偶蹄目の特徴である滑車状の構造が無いため、鯨偶蹄目に属する系統ではなく、クジラの祖先ではないという見方が強まった。さらにまた、パキスタンから出土したパキケトゥス・アトッキ Pakicetus attocki (West, 1980) が完全に陸上を走り回ることができる陸上動物としての体制をもち、距骨に滑車状の構造が確認されたこと、内耳の耳骨に鯨目の特徴である肥厚が出現していることの2点から、陸上生活をしていたクジラの祖先が偶蹄目の形質を持っていたことがほぼ確実視されるようになった。こうして、現在ではメソニクス類とクジラとの共通点は、収斂進化によるものであるとみなされている。
系統と分類
鯨偶蹄目の系統はほぼ明らかになっているが、いくつかの系統の名称や分類階級は確立していない。以下の分類には、分類階級について整合性のない部分があることに注意。
- 鯨偶蹄目 (Cetartiodactyla)
- ラクダ亜目 (核脚亜目, Tylopoda)
- 名前の無いクレード
- イノシシ亜目 (猪豚亜目, Suina)
- 鯨反芻亜目 (Cetruminantia)
- ウシ亜目 (ウシ下目、反芻亜目 Ruminantia)
- 鯨凹歯下目 (Cetancodonta) または 鯨河馬形類 (Whippomorpha)
出典
- ^ 遠藤秀紀 『解剖男』講談社 161 - 163頁
- ^ Molecular evidence from retroposons that whales form a clade within even-toed ungulates. Shimamura, M., Yasue, H., Ohshima, K., Abe, H., Kato, H., Kishiro, T., Goto, M., Munechika, I. And Okada, M. 1997. Nature. 388
- ^ Phylogenetic relationships among cetaritodactyls based on insertions of short and long interspersed elements: Hippopotamuses are the closest extant relatives of whales. Nikaido, M., A.P. Rooney and N. Okada 1999. Proc. Natl. Acad. Sci. 96: 10261-10266.