痴漢
この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。(2009年8月) |
痴漢(ちかん)とは、公共の場所で相手に羞恥心を抱かせ、不安にさせる行為を行う者もしくは行為そのものをいう。日本では刑法に抵触する場合は少なく、主に迷惑防止条例などで罰する。具体的定義が法的に存在しない。
概要
痴漢は列車内で行われることが多いが、大きくは人気のない暗い夜道など被害者が対応をとりにくい環境で行なわれるものも含まれる。そのため"痴漢罪"のようなものは存在せず、主に地方公共団体ごとの迷惑防止条例と刑法第176条(強制わいせつ罪)が適用される。
実務上は迷惑防止条例の「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為として、公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」に対する刑事罰が適応される場合が多い。なお、迷惑防止条例は施行当初は痴漢等の保護対象が女性のみに限定されていたが、男性も被害にあうことが考えられることから、1999年に鹿児島県が性別を限定しない迷惑防止条例を施行すると、2001年に東京都が「女性」にあたる部分を「人」に改正・施行したのを皮切りに、順次各都道府県で改正迷惑防止条例が施行され、2014年4月1日に岡山県が改正迷惑防止条例を施行したことで、全都道府県の迷惑防止条例が保護対象となる性別を限定しなくなった[1]。
その他にも行為の種類や程度によって、軽犯罪法第1条第5号(公共の場所や公共交通機関で著しく粗野な言動により公衆に迷惑をかける行為)、わいせつ物頒布罪、公然わいせつ罪、暴行罪、鉄道事業者への威力業務妨害などにより処罰される。
2008年の警視庁による統計では、迷惑防止条例による卑わい行為にあたる件数だけで2000を超えている [2]。また、2004年の公明党の調査では、20代から30代までの女性の6割位が痴漢被害を受けているとのアンケートの結果が出ている。
近年では痴漢冤罪が問題になることも多い。『それでもボクはやってない』という痴漢冤罪をテーマにした映画は話題になり、多数の映画賞を受賞した。
具体的な手口
衣服越しに胸や尻、性器等に触れたり、スカートやズボンの中に手を入れて下着、性器等に触れる、相手に自分の性器を触れさせるなどがある。公衆の前で性器を露出するなどの行為も痴漢と考えられる。一般的に被害者は女性、加害者は男性というケースが大半だが、稀に男性の被害者、女性の加害者という場合もあり得る。
個人で痴漢行為を行なう者のほかに、組織的に痴漢行為に及ぶ痴漢集団の存在が確認されている[3]。実行犯が痴漢行為を行なっている間、その仲間が周囲から見えないよう壁になったり、被害者に騒がれた場合に第三者を装い、冤罪を主張する虚偽の発言で擁護したり、あるいは逆に現行犯逮捕するふりなどして実行犯を連れ出して逃走させる、といった役割を果たす。なお、性行為にまで及んだ場合には、強姦罪(準強姦罪)が成立する。
対策
- 埼玉県警察鉄道警察隊は、犯人への警告及び犯行の証拠残しを目的とした「チカン抑止シール」を無料配布している[4](使い方はこちらを参照)。ネット上では「悪用されたら怖い」「冤罪が増えるのでは」などの声もあるが、県警鉄警隊は「シールの印はあくまでも補強証拠で、捜査は従来通り被害者や目撃者の証言、防犯カメラの映像などを精査して行う」としている[5]。大宮駅で配布を始めたところ、女子高生や学校からの問い合わせが相次いだ[6]。
- 実際に被害に遭ったある女子高生は、「私たちは泣き寝入りしません」などと書かれたバッジを作成して身に付けたところ、被害に遭わなくなったという[7]。
備考
- 「痴漢されているなら周りの人に助けを求めればいい」など言う人もいるが、実際に自分の胸や尻が露出した状態を他人の目にさらすのは屈辱的なことであり、実際これを避けて声を上げない女性が多いのも特徴である。
- 飲酒等により正常な判断が出来ない状況において痴漢行為を犯した場合でも、今日の司法では酒に酔っていたことが免責の理由と認められることはない。
- 同一被害者が同一犯人に連続して狙われるような事案以外、痴漢は現行犯でなければ容疑者を特定しづらい。被疑者の現行犯逮捕には、周囲に居合わせた目撃者などの協力が必要となる場合もある。
- 被害者の供述のみで有罪となったり、無実を指摘する目撃者がいても容疑者を数日間拘留するなどの事例もある。
- これまでに恋人男性に教唆された女性による示談金目的の冤罪、携帯電話使用を注意されたことによる逆恨み[8]からの痴漢冤罪事件がニュースとして取り沙汰されたことがある。また、被害者の誤認などにもよって起こる痴漢冤罪が着目され、社会問題になっている。
- 痴漢問題は日本独自ではなく、韓国やブラジルの地下鉄でも発生している。韓国でも女性専用車両導入是非の議論が発生した[要出典]。
- 痴漢と類似の単語に痴女があるがこれは必ずしも対義語ではない。詳細は該当項目を参照。
脚注
- ^ 男性も痴漢から保護対象に この春、全都道府県で改正条例施行 - Spork!、2014年4月5日、2014年4月7日閲覧。
- ^ 警視庁の統計(20年)
- ^ ZAKZAK 集団痴漢の卑劣な実態 インターネットで仲間を公募
- ^ “痴漢やめて「×」シール、相手に印も 埼玉県警が考案”. 朝日新聞デジタル. (2015年4月17日7時5分) 2016年1月25日閲覧。
- ^ “「痴漢路線」にブレーキ シール、特殊インク…埼玉県警が対策(2/2)”. 産経ニュース. (2015年8月31日9時47分) 2016年1月25日閲覧。
- ^ “痴漢にインク付けるシール、埼玉県警が配布 注文相次ぐ”. 日本経済新聞. (2015年5月8日11時31分) 2016年1月26日閲覧。
- ^ “痴漢防止へ新バッジ”. テレビ東京. (2016年1月26日) 2016年1月26日閲覧。
- ^ 夕刊フジ特捜班 痴漢冤罪の恐怖
参考文献
- 岡部千鶴「女性専用車両に関する一考察」久留米信愛女学院短期大学研究紀要第27号、2004年
関連項目
- アダルトビデオ - 痴漢(車内痴漢)がジャンルとして確立している(フィクション)
- 変態性欲
- 制服フェティシズム
- 窃触症
- 露出狂
- 盗撮
- 窃視症
- 通り魔
- 鉄道警察
- イメージクラブ
- おっとCHIKAN!
- 女性護身術
外部リンク
- 警察庁 : 電車内の痴漢防止に係る研究会の報告書について 平成23年3月10日(pdf)
- 警視庁 : 安全な暮らし 性犯罪から身を守る
- 都道府県の迷惑防止条例
- 痴漢盗撮の実体と手口
- 「痴漢」の文化史 岩井茂樹『日本研究』No. 49(2014)