逮捕

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現行犯逮捕 から転送)

逮捕(たいほ)とは、被疑者の逃亡及び罪証隠滅の防止の為に強制的に身柄を拘束する処分を言う。

目次

[編集] 逮捕の種類

現行法上、逮捕には次の四種類が存在する。

通常逮捕(憲法第33条刑訴法第199条)
逮捕状を提示してから被疑者を拘束する(執行という)。一般的な逮捕。逮捕状が破棄・隠滅された場合は再発行が必要となるため、そのおそれがある場合には必ずしも逮捕状を手渡す必要はなく、呈示または口頭で逮捕状の内容を伝達すれば足りる(判例)。また執行されたからといって手錠が必ず掛けられるわけではない。
緊急逮捕(刑訴法第210条)
死刑または無期若しくは長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、逃亡などのおそれのある被疑者について、逮捕令状請求が間に合わない場合に容認される逮捕。ただし、拘束後直ちに令状交付を受ける事が必要で、裁判所により令状請求が却下された場合は直ちに被疑者を釈放しなければならない(なお刑訴法第210条の合憲判決は、最大判昭和30年12月14日刑集9巻13号2760頁PDF参照)。
準現行犯逮捕(刑訴法第212条第二項)
犯罪および犯人が明白な場合、時間的・場所にも密着している場合、被逮捕者が犯罪の事実の認識をしていることなど、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる場合。例えば犯人が明白であり、逃走を続けたあげくに逮捕された、というような事例を想起されよ。現行犯逮捕であるので、私人でも許され、無令状でよい。
現行犯逮捕(日本国憲法第33条刑訴法第213条)
犯罪の現場にあった犯人、もしくはそう断定するに足る人物の逮捕。無令状でよい(一般私人によっても許される逮捕行為 私人逮捕 英:civil arrest)。非番、休暇、または管轄区域外であるなど公務外の警察官が行なう場合も、逮捕状を執行するのではないため現行犯逮捕である。

準現行犯・現行犯逮捕について、私人が逮捕を行った場合は、直ちに警察や検察などの捜査機関に通報するなどし、引き渡さなければならない(刑訴法214条、詳しくは現行犯項目参照)。

[編集] 逮捕と人権

[編集] 無罪推定の原則

逮捕された被疑者は、国際人権規約人権」を参照のこと)の一部を成す「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第14条2項にもあるように、刑事上の事実認定や法上の取り扱いにおいて無罪を推定されている立場である(詳しくは、「推定無罪」を参照のこと)。

[編集] 逮捕と大衆意識

しかし、日本人の大衆意識としては、逮捕は有罪判決と同然、すなわち「逮捕(すること)=有罪(にすること)」が一般的であるとされ、「逮捕された時点で既に有罪が確定」したも同然として認識されている、ともいえる。日本におけるこのイメージが根強いのは、以下が理由が考えられる。

  • 相当程度確実な証拠が得られなければ逮捕しないことが多いこと、現実に逮捕・起訴された場合の有罪率(起訴有罪率)の高さ(別件逮捕」「精密司法」「無罪」も参照のこと)。実際に検察は、間違いなく公判維持・有罪に出来る事件以外は送致を受けても起訴便宜主義により微罪・起訴猶予処分で済ませる。
  • 裁判所が警察・検察から逮捕状捜査令状の請求を受けた場合、その請求を却下するのはわずか1%未満でしかなく、99%以上で間違いなく請求が受け入れられる。
  • 被疑者が心神喪失など精神面での障害がない成年であれば、ほぼ全員があらゆるメディアによって全国へ実名報道される。後日冤罪などで無罪が確定したとしても、被疑者としての氏名が世間に知られた以上、大きな社会的制裁を受けたのに等しいものであり、中堅以上の企業へ就職することが不可能になったりなど、事実上職業選択の自由が剥奪されてしまう場合もある(ホワイトカラーへの就職はまず不可能であり、ブルーカラーへの就職すら困難になることもある。この価値観自体が名誉毀損という刑法解釈上外部的名誉の毀損にあたるし、名誉感情そのものをあまりにもストレートに侵害しているわけで侮辱罪に該当する可能性もある)。
  • マスメディアによる犯人視報道(メディアパニッシュメント)
    • 刑事裁判においては、裁判官に予断を抱かせるような証拠を提出すること自体が制限されているが(例:伝聞証拠の禁止)、メディアにおいてはそのような制約がないため、法廷では証拠能力が認められないような情報源に基いたものも含んだ被疑者・被告人の犯人視報道が野放しとなっている[1]。近年はインターネットのブログ匿名掲示板において同種の現象が見られ、それが「ネット―」と呼ばれたりしている。
  • 犯罪を取り上げた映画テレビドラマ小説の影響(あらかじめ犯人が設定されていないと物語が成り立たない。また、特に刑事ドラマでは「犯人を逮捕した時点」で事件解決との筋立てであり、検察送致、裁判を省略しているため、誤解を生じやすい。)
  • 警察官検察官裁判官の役割分担が、大衆意識のレベルで未分化である[2]

[編集] 逮捕の基準

逮捕の手段として最も一般的である通常逮捕は、裁判官の発付する令状(逮捕状)によってのみ執行することができる。いずれの逮捕も拘束時間は原則として警察で48時間・検察で24時間の最大72時間(検察官による逮捕の場合は48時間)である。

その後、必要に応じて上記時間内に勾留請求がなされ、裁判所がこれを認めればさらに10日間(延長されれば20日間)の勾留がなされる(マスコミ用語では「拘置」と呼ばれる)。

逮捕は逃亡および罪証隠滅の恐れがある場合に行われるので、逆に言えばそれらの恐れがなければ本来は被疑者を逮捕する必要は無い。その場合は任意調べの後に、訴追相当と考えられれば関係書類をまとめて検察庁に送り、移管する。これをマスコミ用語で書類送検と呼ぶ(訴訟手続上、実務上は身柄の有無にかかわらず検察官送致という)。

殺人罪傷害致死罪といった人命に関わる犯罪の場合や、強制わいせつ罪のような性犯罪などはほぼ逮捕され、自動車を運転して死亡事故を起こした場合(危険運転致死傷罪自動車運転過失致死傷道路交通法違反など)も逮捕されることが多い。

[編集] 逮捕の目的

法上の目的は、罪証隠滅の恐れ、もしくは逃亡のおそれがある場合における被疑者の身柄の確保にあるが、捜査員の主観においては被疑者の取調べが主な目的であり、また、マスメディアで取り上げられるような著名な事件では、見せしめを狙った逮捕や、権力に逆らう人物を弾圧目的で逮捕する例も見られるといわれる。

1970年頃には、警察が赤軍派メンバーを徹底的にマークして、通常人ならば微罪として黙認や注意で終わるような行為を現行犯逮捕する手法で身柄を確保した。例えば、青信号横断中に信号が変わると道交法違反、警察官が意図的に体をぶつけて反抗すると公務執行妨害罪(いわゆる「転び公妨」)、つばを吐くと軽犯罪法違反といった具合であったので、赤軍派だけに適用される赤軍罪なる罰条が存在すると揶揄された。

1995年に起きたオウム真理教事件では、捜査を進めるために、オウム真理教信者を、前述のような違法ではあるが普段は罪に問われない、もしくは現行犯逮捕には至らないような行為、たとえば、カッターナイフの所持で銃刀法違反で逮捕、マンションの駐車場に侵入するだけで住居侵入罪(しかも実刑判決がでた)などの微罪逮捕や別件逮捕と疑われるような逮捕手法が人権問題となったことがある。

[編集] 再逮捕

[編集] 再逮捕の定義

再逮捕さいたいほ)とは、既に逮捕されている者を釈放した直後に、または釈放することなく引き続き勾留した状態で再度逮捕することである。具体的な手続きは逮捕状を示し、再逮捕する旨の告知で終わる。再逮捕の被疑事実は、前の逮捕の被疑事実と異なる場合と同一の場合とがある。

[編集] 異なる被疑事実での再逮捕

マスコミ報道などでよく耳目にするのは、異なる被疑事実での再逮捕である。見出しでは単に「再逮捕」となっていても、本文では例えば「死体遺棄容疑で身柄拘束中の被疑者殺人容疑で再逮捕した」などと記されている。このような再逮捕は疑いなく合法であり、後述のようにマスコミによる法律用語の誤用とする指摘もある。

[編集] 同一の被疑事実での再逮捕

同一の被疑事実での再逮捕は「一罪一逮捕一勾留の原則」との関係で問題があるため、法律学においてはもっぱらこちらのケースの「再逮捕」が論議の対象となっている。そのため、法律学において単に「再逮捕」と言った場合は、この同一の被疑事実による再逮捕のみを意味することが多い。

逮捕には身柄拘束期間の上限が規定されているが、もしも同一の被疑事実での再逮捕を許したのならば、捜査機関は逮捕を繰り返すことで好きなだけ身柄拘束期間を延ばすことが可能となってしまい、この上限規定を無意味なものにしてしまう。そこで、同一の犯罪事実については、逮捕は1回しか許されないというのが、刑事訴訟における原則となっている(一罪一逮捕の原則)。

ここで問題となるのは、同一の被疑事実か否かの判定方法である。また、釈放後に重大な新証拠の発見があった場合や逮捕後に被疑者が逃亡したような場合にも二度と逮捕できないとするのは不合理であるため、一罪一逮捕の原則の例外が認められる条件が講学上、問題となる。

[編集] マスコミ用語と法律用語

マスコミが法律用語を誤用したり、あらたに法律用語のような言葉を作り出すのはよくあることで、この様な例としては、「更改」「容疑者」「被告」などが挙げられている。「再逮捕」についてもこのような例として挙げられることがあるが、マスコミだけでなく法実務の現場においても両方のケースが「再逮捕」と呼ばれているという指摘もある。

[編集] 脚注

  1. ^ そのため、後日に被疑者・被告人による名誉毀損損害賠償請求が認められるケースもある。
  2. ^ 江戸時代においては、警察署検察庁裁判所は、例えば江戸においては江戸町奉行というように一体化していた。そのイメージが時代劇などを通じて現在の大衆意識にも影響を及ぼしている

[編集] 関連項目