日本国際フォーラム

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公益財団法人日本国際フォーラム(にほんこくさいフォーラム、The Japan Forum on International Relations, JFIR)は、日本の民間・非営利の外交問題・国際関係に関する、会員制の政策志向のシンクタンクである。

概要

設立

1977年外務省を退官した伊藤憲一は、その後青山学院大学教授の傍ら、米国戦略国際問題研究所(CSIS)の東京代表や民間国際交流組織四極フォーラム日本会議の事務局長を兼務していたが、それらの活動を通じて「欧米の外交国際問題のシンクタンクが市民社会の側から、つまり民間・非営利・独立の基本的立場から発言しているのに対して、日本には真の意味でそのカウンターパートとなるような性格のシンタンクがほとんど存在していない。このままではこれからの国際社会における日本の発言力が損なわれるのではないか」と痛感するようになっていた。そこで、「外交・国際問題に関する総合的な研究・提言機関を日本にも設立する必要がある」として経済界、政界、言論界など各界の有力者に呼びかけて、12名の代表発起人と51名の発起人の賛同を得て財団法人日本国際フォーラムを設立したものである。1987年3月12日の設立発起人会には、来賓として倉成正外務大臣(当時)も臨席している。代表発起人の中から、初代会長には元外務大臣の大来佐武郎が、初代理事長にはセイコーエプソン社長の服部一郎が、そして初代専務理事には伊藤がそれぞれ選任された。

組織

本部所在地: 東京都港区赤坂2丁目17番12号 1301
設立: 1987年
代表理事: 今井敬(会長)、伊藤憲一(理事長)
理事: 渡辺繭(常務理事)、神谷万丈清原武彦田久保忠衛半田晴久森本敏
評議員: 有馬龍夫、石垣泰司、伊藤剛、井上明義、大宅映子、畔柳信雄、小池百合子坂本正弘佐藤謙袴田茂樹服部靖夫広中和歌子、廣野良吉、山口範雄、渡辺利夫
監事: 島田晴雄内藤正久
最高参与: 金森久雄田中明彦
(2015年6月現在)

会員制度

日本国際フォーラムは、その趣旨に賛同する「会員」の参加と貢献によって維持されている。「法人正会員」「法人準会員」「個人正会員」「個人準会員」の4種の会員からなり、それぞれに個別の入会資格と特典が設けられている。

沿革

1987年 03月12日 - 倉成正外務大臣の臨席を得て、設立発起人会を開催し、大来佐武郎会長、服部一郎理事長、伊藤憲一専務理事を選任
04月28日 - 外務大臣より財団法人設立を許可される 
05月23日 - 服部一郎氏より財団法人に対し基本財産2億円を出捐
05月26日 - 服部理事長急逝。伊藤専務理事、理事長代行に就任 
1990年 04月03日 - 第4回理事会開催、伊藤憲一理事長を選任
1992年 03月12日 - 設立5周年記念国際シンポジウム「新世界秩序と日本の役割」を開催
1993年 02月09日 - 大来佐武郎会長、逝去
1994年 02月28日 - 第12回理事会開催、今井敬会長を選任
1997年 07月11日 - 設立10周年記念シンポジウム「21世紀世界における日本の役割」および記念レセプションを開催
2002年 01月24日 - 設立15周年記念シンポジウム海洋国家日本:文明とその戦略」を開催
2003年 08月12日 - 日本政府より「東アジア・シンクタンク・ネットワーク (NEAT)」および「東アジア・フォーラム (EAF)」の「日本側国内調整窓口」に指定される 
2004年 05月18日 - 「東アジア共同体評議会」設立総会において伊藤憲一日本国際フォーラム理事長が同評議会議長に選任される
2007年 03月12日 - 麻生太郎外務大臣の臨席[1]を得て、設立20周年祝賀夕食会を開催
2011年 03月28日 - 内閣総理大臣より公益財団法人に認定される
04月01日 - 「公益財団法人日本国際フォーラム」に移行登記

姉妹団体

日本国際フォーラムには以下の二つの姉妹団体がある。

東アジア共同体評議会
2003年ASEAN+3首脳会議の要請を受けて、その傘下に東アジア研究所連合(Network of East Asian Thinktanks)と東アジア・フォーラム(East Asia Forum) が 設立された。東アジア共同体評議会は、その際、日本を代表して上記の智的共同体の活動に参加し、さらには東アジア全域における地域統合の動向をフォローするために設立されたオール・ジャパンの知的プラットホームである。日本国内のシンクタンク、企業、関係省庁の代表者および有識者が集まって、2004年5月に設立された。この評議会は、「東アジア共同体」の研究団体ではあるが、推進団体ではない。つまり、「東アジア共同体」について特定の定義を前提にしておらず、「東アジア」の地理的範囲や「共同体」の具体的形態については、いろいろの考え方があるとした上で、それぞれの考え方の意味を研究し、日本の戦略的対応のあるべき姿を模索することを目的としている。

グローバル・フォーラム
グローバル・フォーラムは、冷戦時代の1982年に西側内部(日米欧加)の非公式な意思疎通のパイプとして設立された四極フォーラム(Quadrangular Forum) の日本会議(Japan Chapter)に淵源をもつ知的国際交流組織である。冷戦の終焉にともない、1996年に四極フォーラムがその活動を停止したので、四極フォーラム日本会議は、四極フォーラムから独立した独自の知的国際交流組織として、日本を中心に全世界的に放射線状の対話を組織、展開してゆくことになり、名称もグローバル・フォーラム(Global Forum of Japan) と改めた。

活動

以下の6つの柱からなる活動を行っている。

政策提言
公開討論
調査研究
国際交流
広報啓発
国際政経懇話会・外交円卓懇談会

政策提言

このフォーラムの内部に設置された「政策委員会」および「緊急提言委員会」による外交・国際問題に関する政策研究およびそれを踏まえた政策提言作成等の活動を行っている。「政策委員会」は比較的中長期的な問題を取り上げているのに対し、「緊急提言委員会」は時々の内外情勢に対応した時局的な問題を取り上げている。これら委員会は、テーマに応じてときに合同し、随時「拡大政策委員会」もしくは「拡大緊急提言委員会」として開催されることもある。これら委員会の活動成果は、時の内閣総理大臣に対して提出される他、場合によっては全国紙や英字紙に意見広告として発表されている。両委員会のこれまでの実績は、それぞれ以下のとおりである。

【政策委員会】
  1. 1988年03月03日、「日、米、アジアNICS間の構造調整」渡辺利夫起草。
  2. 1989年03月15日、「北東アジアの長期的安定と協力のビジョン」、神谷不二起草。
  3. 1989年07月25日、「日本の経済力を世界経済の発展のためにいかに活用するか」、金森久雄 起草。
  4. 1990年04月05日、「日米協力のあり方-責任分担を中心として」、猪口孝起草。
  5. 1990年08月14日、「国際通貨貿易システムの安定化への貢献」、真野輝彦起草。
  6. 1991年04月10日、「変貌するソ連と日本の対応」、田久保忠衛起草。
  7. 1992年02月27日廃案、「新段階を迎える市場開放」、竹中一雄起草
  8. 1992年10月07日、「国連の平和機能の強化と日本の役割」、佐藤誠三郎起草。
  9. 1993年06月08日、「アジア社会主義経済の変化と日本の対応」、佐藤経明起草。
  10. 1993年11月16日、「日欧政治関係:21世紀への展望」、中西輝政起草。
  11. 1994年06月17日、「地域経済圏形成の動きと日本の対応」、小林寛起草。
  12. 1995年01月25日、「中国の将来とアジアの安全保障:新しい日中関係をめざして」、小島朋之起草。
  13. 1995年08月03日、「日米経済摩擦の本質と対応 」、島田晴雄起草。
  14. 1996年06月05日、「アジア・太平洋地域における安全保障体制の可能性と役割」、渡邉昭夫起草。
  15. 1996年11月27日、「WTO体制と日本」 、坂本正弘起草。(1996年12月1日付 読売新聞朝刊15面掲載)
  16. 1998年03月05日、「発展途上国支援の新方向を探る」 、草野厚起草。(1998年3月10日付 読売新聞朝刊14面掲載)
  17. 1998年08月24日、「情報革命時代における世界と日本」 、公文俊平起草。(1998年8月27日付 読売新聞朝刊27面掲載)
  18. 1999年04月19日、「対米中露関係の展望と日本の構想」 、伊藤憲一起草。(1999年5月1日付 読売新聞朝刊11面掲載)
  19. 2000年05月26日、「グローバル化経済とアジアの選択」、トラン・ヴァン・トゥ起草。(2000年6月2日付 読売新聞朝刊17面掲載)
  20. 2001年07月06日、「新しい国際主義:集団的人間安全保障を目指」、猪口邦子起草。(2001年7月16日付 読売新聞朝刊13面掲載)
  21. 2001年10月24日、「リオ+10と日本の環境外交」 、山本良一起草。(2001年11月11日付 読売新聞朝刊14面掲載)
  22. 2002年12月18日、「東アジアにおける安全保障体制の構築」 、田中明彦起草。(2002年12月22日付 読売新聞朝刊8面掲載)
  23. 2003年06月20日、「東アジア経済共同体構想と日本の役割」 、吉田春樹起草。(2003年6月26日付 読売新聞朝刊17面掲載)
  24. 2004年04月28日、「新しい世界秩序と日米同盟の将来」 、伊藤憲一起草。(2004年5月2日付 読売新聞朝刊11面掲載)
  25. 2004年12月13日、「世界の中の日本:その文化と教育」 、袴田茂樹起草。(2004年12月23日付 読売新聞朝刊13面掲載)
  26. 2005年08月10日、「新しい脅威と日本の安全保障」 、佐瀬昌盛起草。(2005年8月15日付 読売新聞朝刊11面掲載)
  27. 2006年05月18日、「国際エネルギー安全保障体制の構築」、内藤正久起草。(2006年5月19日付 読売新聞朝刊 28面掲載)
  28. 2006年10月30日、「変容するアジアの中での対中関係」、小島朋之起草。(2006年11月5日付 読売新聞朝刊 13面掲載)
  29. 2007年09月07日、「インドの躍進と日本の対応」、榊原英資起草。(2007年9月14日付 読売新聞朝刊 15面掲載)
  30. 2008年02月20日、「ロシア国家の本質と求められる日本の対露戦略」、袴田茂樹起草。(2008年2月26日付 読売新聞朝刊15面掲載)
  31. 2009年01月14日、「グローバル化の中での日本農業の総合戦略」、本間正義起草。
  32. 2009年10月22日、「積極的平和主義日米同盟のあり方」、伊藤憲一起草。(2009年10月23日、全国紙3紙と英字紙2紙に掲載)
  33. 2010年11月24日、「外国人受入れの展望と課題」、平林博井口泰起草。(2010年11月25日 全国紙3紙掲載)
  34. 2011年01月07日廃案、「グローバル・テロと日本の対応」 、山内昌之起草。
  35. 2012年01月20日、「膨張する中国と日本の対応」 、伊藤憲一起草。(2012年1月27日、全国紙3紙と英字紙1紙掲載)
  36. 2012年06月18日、「グローバル化時代の日本のエネルギー戦略」 、伊藤憲一起草。(2012年6月20日、全国紙3紙と 英字紙1紙掲載)
  37. 2014年08月05日、「積極的平和主義と日本の針路」、伊藤憲一起草。(2014年8月6日、全国紙3紙掲載)
  38. 2015年07月30日、「『戦後70年安倍首相談話』に関する意見交換」(「緊急提言委員会」と合同し「拡大政策委員会」として開催)


【緊急提言委員会】
  1. 1993年02月05日、緊急アピール「コメ輸入の関税化受け入れを決断しよう」
  2. 2001年06月29日、「対露政策に関する緊急アピール」
  3. 2003年02月20日、「イラク問題について米国の立場と行動を支持する」(2003年2月20日付新聞掲載。翌21日読売、産経、ジャパンタイムズ等各紙が本件を報道し、雑誌『世界週報』にもアピール全文と署名者名が掲載)
  4. 2007年03月22日、「『歴史認識』問題に関する意見交換」(「政策委員会」と合同し「拡大緊急提言委員会」として開催)
  5. 2009年04月30日、「緊急アピール『対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない』」(2009年5月11日、 北方領土問題に関する谷内正太郎の「3.5島発言」、麻生太郎の「向うが2島、こちらが4島では進展しない」との発言について、「主権国家としての我が国の存立基盤を掘り崩しかねない由々しい事態」として、日本政府の「4島返還」という基本的立場の堅持を求める緊急アピール[2]を発表し全国紙4紙に意見広告を掲載)
  6. 2010年10月06日、「『尖閣諸島沖での漁船衝突事件』に関する意見交換」(「政策委員会」と合同し「拡大緊急提言委員会」として開催)

公開討論

ホームページ上に「百花斉放」と題する「e-論壇」が設置され、誰でも政策提言やその他このフォーラムの成果物に対するコメントが行なえる他、自由に政策論議を展開することが可能である。この「e-論壇」はこのフォーラムの内外の著名な言論人や専門家が実名で投稿していることでも知られている。
なお、姉妹団体のグローバル・フォーラムおよび東アジア共同体評議会でも、各ホームページ上に、それぞれ「議論百出」「百家争鳴」と題する「e-論壇」が設置されている。

調査研究

外交・国際問題で特に注目すべきテーマにつき、各種研究プロジェクトを企画して、研究を行うとともに、その成果を世に問うている。個別の研究員による「研究員活動」と、複数の研究員から構成される研究会による「研究会活動」からなり、その活動成果はそれぞれ「研究員報告」、「研究会報告」として取りまとめられ、各方面に配布されている。

国際交流

国内外において単独で、あるいは共催により、さまざまな形式の国際的な対話、会議シンポジウムワークショップセミナー等を開催し、また交流あるいは親善を目的とした使節団や代表団を受け入れ、あるいは派遣している。その規模は、十数名の専門家だけのセミナーから数百名の各国各界の人士の参加するシンポジウムまでとさまざまである。

広報啓発

紙媒体では、『会報』が季刊で発行されており、最新の活動内容を紹介すると同時に、「『百花斉放』から」等のコラムをつうじて会員を中心とした有識者の意見も随時掲載している。このフォーラムの会員の他、各界の指導者3,000人に配布されている。 電子媒体では、国内向けに「メルマガ日本国際フォーラム」、海外向けに「JFIR E-Letter」(英文)と題する無料メール・マガジンをそれぞれ隔月で配信されており、最新の活動内容を紹介している。「メルマガ日本国際フォーラム」ではe-論壇「百花斉放」の最新掲載分が、「JFIR E-Letter」では、「JFIR Commentary」と題する英文コラムの最新掲載分がそれぞれ全文閲覧可能である。いずれもホームページ上から配信登録ができる。内外約1万人に配信されている。なお、姉妹団体のグローバル・フォーラムおよび東アジア共同体評議会でも、同様に『会報』、和英メール・マガジン、がそれぞれ発行・配信されている。
その他、出版刊行も行い、このフォーラムの研究、審議、提言活動の成果を各種形式の出版物として印刷に付し、各方面に配布する他、一部は全国書店でも販売している。

国際政経懇話会・外交円卓懇談会

国際政経懇話会では、原則月例にて、国際情勢に精通した権威者を講師に迎えて研究会を開催し、時局を中心とした外交・国際問題について、インフォーマルかつコンフィデンシャルな懇談を行っている。
外交円卓懇談会では、政治経済文化社会等いろいろの分野で活躍する海外の専門家(日本人を含む)の来日の機会をとらえて意見を交換することを目的とする懇談会を開催し、インフォーマルかつコンフィデンシャルな懇談を行っている。

出典

外部リンク