グフイグナイテッド

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グフイグナイテッド(GOUF IGNITED)は、テレビアニメ機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する、モビルスーツ(MS)に分類される架空の有人式人型ロボット兵器の一つ。劇中では主に「グフ」と呼称されており、これには「Guardian Of Unity Forerunner」(統一の守護たる先駆者)というバクロニムが設定されている。更に「イグナイテッド」は西川貴教(作中において本機の最初のパイロットであるハイネ・ヴェステンフルスキャラクターボイスを担当)が歌う本作のオープニングテーマ曲「ignited -イグナイテッド-」がもとである。

メカニックデザイン大河原邦男であり、そのデザインは『機動戦士ガンダム』に登場するジオン公国軍の「グフ」を参考にしている。

劇中ではハイネ・ヴェステンフルスが搭乗するオレンジ色の試作機が先行登場し、後に青いカラーリングの量産機や、イザーク・ジュールが搭乗する白い専用機などのパーソナルカラー機が多数登場する。本項では、関連作品に登場する派生機についても解説する。

機体解説

プラント」の軍事組織「ザフト」が開発した量産型モビルスーツ(MS)の一つ。同時期に開発されたザクウォーリアとの主力機争いに敗れたが、のちに再評価されて量産化されたという設定。剣や鞭などの接近戦に特化した武装を装備し、背中には高速飛行用の主翼と推進器を装備している。劇中ではハイネ・ヴェステンフルスが搭乗するオレンジ色の試作機が先行登場し、のちに青い量産機や、イザーク・ジュールが搭乗する白い専用機などのパーソナルカラー機が多数登場する。

劇中では主に「グフ」と呼称されており[1]、これには「Guardian Of Unity Forerunner」(統一の守護たる先駆者)というバクロニムが設定されている。「イグナイテッド」は、ハイネ役の声優も務めた西川貴教(T.M.Revolution)が歌う本作の第一期オープニング曲「ignited -イグナイテッド-」が由来となっている。

機体名および形状・設定は、宇宙世紀のガンダムシリーズに登場するジオン公国軍の「グフ」を参考にしており、メカニックデザインもオリジナルのグフを担当した大河原邦男が行っている。ただし、宇宙世紀のグフが陸上戦闘に特化しているのに対し、こちらのグフは大気圏内外での飛行能力を有している。

諸元
グフイグナイテッド
Gouf Ignited
型式番号 ZGMF-X2000、ZGMF-2000
全高 19.20m
重量 72.13t
武装 MMI-558 テンペスト ビームソード
MA-M757 スレイヤーウィップ×2
M181SE ドラウプニル 4連装ビームガン×2
対ビームシールド
(M68キャットゥス 500mm無反動砲)[2]
搭乗者 ハイネ・ヴェステンフルス(X2000)
アスラン・ザラ
イザーク・ジュール
ルドルフ・ヴィトゲンシュタイン
エルザ・ヴァイス(X2000)
ザフト一般兵士

ザフトのニューミレニアムシリーズに属する機体。最大の特徴は背部に固定装備されたフライトユニットで、宇宙空間のみならず大気圏内においてもディンに匹敵する飛行能力を発揮する。また、武装は対MS戦闘を前提とした接近戦用のものを多数装備している。

元々ザクウォーリアと同時期にザフトの次期主力MS選定コンペティションにおいて制式量産機の座を争うために当初から「ZGMF-X2000 グフイグナイテッド」として完成された機体であり、ユニウス条約の影響で設計を根本から変更したザクシリーズ、開発自体の凍結だけでなく後年に改変を経て製造されたドムシリーズとは違って、なんら変更を加えることなく首尾一貫したデザインモデルだった。従ってX2000を「グフイグナイテッドというMSの先行試作機」とするカテゴライズは後年に増産された2000型と区別する後付けの補足的なものであり、どちらかといえば、後者の方こそを「グフイグナイテッド制式量産機」などと呼称する方が相応しく、過去のYMF-01B ジンにおけるプロトジン呼称に近い現象が起こっているともいえる[3]

グフシリーズは両腕と両脚を容易に換装出来る機体構造を有し、多種多様な機能、武装を搭載した四肢を状況に応じて付け替えることであらゆる状況・用途に対応するという、ザクウォーリアのウィザードシステムとは異なる案の換装システムを提案した。この方式はウィザード以上に戦況・戦場の変化にきめ細かく対応できるとして優位性をアピールしたが、コストと整備現場の負担増を招くという指摘から、ザクウォーリアが次期制式量産機に決まった。しかし、機体自体の完成度は高く、それを惜しんだ上層部の根強い力添えで少数ながらロールアウトされることとなり、ハイネ・ヴェステンフルスを始めとするFAITHやザフトレッドといった最上級のエースパイロットに優先的に配備された。

その後、戦争の予想外の拡大・長期化により、開戦当初保有していたMSの数が想定以上に減少したため、ザフトは高性能MSの増産を余儀なくされ、ザク系統の生産体制が限界に達していたことや、主戦場が地球に移行していたこともあり、大気圏内での空戦能力を持つ本機が急遽量産機として生産された[4]。この際、コンペ提出期ゆえのナンバーだった「X」が外され、開発チームの悲願が名実ともに達成された。

武装

MMI-558 テンペスト ビームソード
大型のビーム発生デバイスから高出力のビーム刃を発生させる斬撃兵装。「テンペスト」とは英語で「暴風雨」の意味。
対艦刀と同型の兵器だが、両刃のビーム刃や片手で扱えるサイズなど、対MS用に特化された仕様となっている。ビーム刃を発生させずに実体剣として使用することもできる[5]。伸縮機構を備え、非使用時はシールド内に収納される。
MA-M757 スレイヤーウィップ
両前腕部に収納されている格闘戦用の鞭。超弾性鋼でできていて柔軟性に富み、叩きつける以外に敵機の一部や武器を絡め取ることができる。高周波パルス発生時は鞭全体が赤く発色し、接触した対象物に伝達し破壊することが可能。資料によっては「ウイップ」とも表記されている。
M181SE ドラウプニル 4連装ビームガン
両前腕に内蔵された4連装ビーム砲。「ドラウプニル」は北欧神話における最高神オーディンの腕輪の名前に由来する。
小型ゆえ射程距離は短いが、極めて速射性能に優れており、近接戦闘ではビームライフル以上の有効性を持つ。固定火器のため、他の武装を携行したまま使用できる。
対ビームシールド
対ビームコーティング仕様の専用シールド。表面に打突用の衝角を備え、MMI-558テンペストの鞘も兼ねる。

劇中での活躍

地球連合軍から解放された都市ディオキアにおいて、ラクス・クラインに扮したミーア・キャンベルのライブ用にピンク色に塗装されたザクウォーリアにともない、ハイネ・ヴェステンフルス搭乗機がディンと共に地上へ降下した。その後、ハイネ機はパイロットともにミネルバへ配属された。

ダーダネルス海峡での戦闘では地球連合軍のウィンダムオーブ軍のムラサメを多数撃破し、ステラ・ルーシェガイアを苦しめたが、キラ・ヤマトフリーダムが介入したことで戦闘を一度中断。標的をフリーダムに変えドラウプニルで応戦するが、高い機動力をフルに活かしたフリーダムはこれを全て回避、逆にドラウプニルのある右腕を破壊されてしまう。そしてフリーダムの攻撃よって怒りに満ちたステラがガイアのビームブレイドを展開し突撃、ハイネもふたたびフリーダムに攻撃を仕掛けようとするも、前方に気をとられていた本機は背後のガイアに気づかず、胴体を斬られパイロット共々爆散した。

対ロゴスを標榜したザフト・義勇同盟軍が発足した頃には量産体制が整ったため、エース級のパイロットから続々と配備され、その優れた機動性からザクと並ぶ主力MSとして戦った。

アスラン・ザラメイリン・ホークと共にジブラルタル基地から脱走する際、配備されたばかりの本機を奪取し、基地からの逃走を図るもこれを追撃するために発進したシン・アスカデスティニーレイ・ザ・バレルレジェンドに追いつかれ交戦、2機の挟撃に遭いながらも必死の抵抗を試みた。しかし、アスランの技量をもってしても量産型の本機と特別機の2機との性能差はいかんともできず、アスランの説得とレイの言葉との間で板挟みになったシンが正気を失ってSEEDを発動、スレイヤーウィップで反撃するも回避され、逆にパルマ・フィオキーナで破壊されてしまう。続けてシールドごと左腕を真っ二つにされたのち、右腕も斬り落とされ、最後はアロンダイトによる一撃を受けて胴体を貫かれ、機体が海に落下するとともに爆発した。

その後、地球軌道上でのエターナル攻略戦やオーブ侵攻戦、レクイエム攻防戦に次々と投入されるが、オーブ軍・クライン派や地球連合軍のMSによってことごとく破壊され、一定の活躍があったハイネ機とは違い一般兵搭乗機は終止「やられ役」として描写された。

ジュール隊隊長イザーク・ジュールスラッシュザクファントムからホワイトを基調とした塗装をまとった本機に乗り換え、隊員のディアッカ・エルスマンが搭乗するブレイズザクファントムとともにレクイエム攻防戦で多大な戦果をあげた。なお、『FINAL PHASE 最後の力』『FINAL PLUS 選ばれた未来』などのエンディングには、ボディに金色のラインらしき装飾を施されたグフが見られた。

専用機

ハイネ・ヴェステンフルス機
パーソナルカラーはオレンジ。
イザーク・ジュール機
パーソナルカラーは白。
ルドルフ・ヴィトゲンシュタイン機
『FRAME ASTRAYS』に登場。量産機。パーソナルカラーはゴールド。このカラーリングは純金を使用したもので、塗装費用はルドルフ個人が出している。戦闘で右腕と頭部を破壊されて以降はデフォルトカラーのパーツが修理移植されたため、彼はちぐはぐの色になった愛機を見るたびに不満をもらした。
エルザ・ヴァイス機
『DESTINY ASTRAY B』に登場。パーソナルカラーは真紅と紫。頭部のブレードアンテナと両肩のスパイクが延長され、より威圧的な外観となっている。
本機の型式番号は『電撃ホビーマガジン』2013年7月号66-68頁の模型作例記事では「ZGMF-2000」となっているが、公式HPの小説ロングバージョンでは「ZGMF-X2000」とされている。

グフクラッシャー

諸元
グフクラッシャー
Gouf Crasher
型式番号 ZGMF-X2000CQGB&S
武装 インパクトバイス
MA-M757 スレイヤーウィップ接続「破砕球」
搭乗者 アンリ・ユージェニー
エルザ・ヴァイス
グフクラッシャー改
Gouf Crasher Custom
型式番号 ZGMF-X2000CQGB&S
全高 19.20m
重量 79.66t
武装 インパクトバイス×2(左腕、右足)
MA-M757 スレイヤーウィップ接続「破砕球」
ランサー
搭乗者 エルザ・ヴァイス

対MS近接格闘・制圧戦に特化させた試作機。次期主力機コンペに出品中だったX2000グフのバリエーション機として、提案した四肢換装による汎用性の高さを誇示するためだけに造られた。一切の火器を持たないが、左腕はインパクトバイス展開用の駆動関節を備えさせた非武装マニピュレーターに、右腕は破砕球使用時の負荷をカバーする極太の出力向上タイプに換装されており、独特なアンバランス体形を成している。

ザフトの訓練用宇宙ステーション13-B02号内コンペティションで公開された際、真紅のグフクラッシャーを駆るFAITHのアンリ・ユージェニーにより、ジンシグーを相手にした模擬近接戦闘が行われ、良好な評価を得たと記録されている。制式採用は見送られたが、この機体は準即応状態の整備体制で、ザフト第5デポーに保管されることになった。また、のちにアンリは本機に搭乗してオペレーション・ラグナロクに参加し、その性能を遺憾なく発揮した。

武装(クラッシャー)

インパクトバイス
専用左腕の肘付近に装備された万力状の大型特殊装備。敵MSの機体を拘束して圧壊するためのもので、炸薬カートリッジの爆発力を利用して瞬間的に最大300万Gの圧搾力を発揮し、一気に敵機の構造部材を圧壊する。一般的な装甲材であれば一撃、PS装甲材でもフルオート点火モードで20〜30発の連撃により、粉砕が可能である。炸薬カートリッジは点火と同時に排莢される使い捨てタイプであり、使用時は肘関節が逆方向に曲げられ、万力を前腕部分に移動させて使用する。
破砕球
モーニングスターのようなトゲ突きの鉄球。普段はバックパック上部に装備されており、使用時はスレイヤーウィップ先端に増設したプラグと連結させ、投げ飛ばしたり回転させたりして活用する。鉄球にはスラスターが搭載されており、投擲後の軌道コントロールはもとより宇宙空間でも使用が可能である。その機能や特性などは、レイダーミョルニルに酷似している。

グフクラッシャー改

『D ASTRAY B』に登場。エルザ・ヴァイスが登場するカスタム機。サーペントテールとの戦闘で破損した脚部を、足裏に5輪式のローラーを備えた専用脚部に換装、地上での移動速度が大幅に向上している。右足には左腕と同機能のインパクトバイス、左膝には刺突用の大型ランスを装備する。換装作業は「一族」の施設で行われたが、この装備がザフトの正規品なのか、「一族」の独自開発なのかは不明。

グフギャラクティカ

諸元
グフギャラクティカ
Gouf Gyalactica
型式番号 ZGMF-X2000G2
武装 MA-M757 スレイヤーウィップ×2
M181SE ドラウプニル 4連装ビームガン(左腕のみ)
ソード
カレトヴルッフ
対ビームシールド(ビームスパイク×2)
ビームウイング×2
搭乗者 ナイト様

『D ASTRAY R』に登場。ユーラシア連邦領内の某村に雇われた傭兵、通称「ナイト様」が搭乗するカスタム機。パイロットの趣味に合わせた中世の甲冑騎士風の形状が特徴で、原型機以上に接近戦に特化している。ブラウカラミティと交戦し、破壊された。

武装(ギャラクティカ)

ソード
実体の刃を持つ両刃の片手剣。
カレトヴルッフ
ロウ・ギュールが設計し、ジャンク屋ギルドで販売されている組換え式の多目的ツール。本機の場合は、別途用意した柄を接続した長尺の斧槍(ハルバート)として使用される。
ビームスパイク
シールド先端に追加装備された衝角兵器。ユニットを分離してカレトヴルッフに組み付けることも可能。
ビームウイング
フライトユニットの主翼外縁に内蔵された斬撃武装。ガイアの装備するグリフォン2と用法は似ているが、2つの発生器の間に蛍光灯状に展開するグリフォン2と違い、マントのような放射形状となる。

脚注

  1. ^ フルネームで呼ばれたのは、初登場時にギルバート・デュランダルがハイネ機を「ゼットジーエムエフ、エックスツーサウザンド、グフイグナイテッド」と発音して紹介した時のみ。
  2. ^ 「PHASE-38 新しき旗」。3機で居並ぶデストロイの放ったスーパースキュラで撃墜された。
  3. ^ 段落始め〜終わりまでについて。「DESTINY MSV 『Vol.9 ZGMF-X2000CQGB&S 試作型近接格闘・制圧戦仕様モビルスーツ “グフクラッシャー”』」に詳しく、プラモデル『HG 1/144 グフイグナイテッド(ハイネ・ヴェステンフルス専用機)』においても先行試作機の名は見られない。一方、同『〃 グフイグナイテッド量産機』では「一部の先行試作機のバリエーション」の名でハイネ機を、『〃 イザーク・ジュール専用機』では「試作機に付けられるXは外された」と解説している。
  4. ^ プラモデル『HG 1/144 グフイグナイテッド量産機』組立説明書。
  5. ^ 漫画版『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』にて、ハイネ機があえて実体剣として使用しアビスガンダムのビームランスを切断している。これには、ビームランスが対ビームコーティング使用であることを見越した、ハイネによるこの武装を用いた高度な戦闘判断が伺える。

関連項目