キャシー・グリフィン

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キャシー・グリフィン
Kathy Griffin
キャシー・グリフィン Kathy Griffin
本名 Kathleen Mary Griffin
生年月日 (1960-11-04) 1960年11月4日(63歳)
出生地 イリノイ州シカゴ
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
職業 コメディアン女優
活動期間 1980年 -
配偶者 Matt Moline(2001-2006)
主な作品
映画
パルプ・フィクション
ケーブルガイ
ゴンゾ宇宙に帰る
テレビドラマ
となりのサインフェルド
ブルック・シールズのハロー!スーザン
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キャシー・グリフィン: Kathleen Mary "Kathy" Griffin, 1960年11月4日 - )は、アメリカ合衆国コメディアン女優声優である。

経歴[編集]

生い立ち[編集]

イリノイ州シカゴに生まれ、シカゴ近くのフォレスト・パーク及びオークパークで育つ。グリフィンの家族はアイルランドカトリック[1][2]、母親のマギーは病院の事務員、父親のジョン・パトリック・グリフィンは電気店のマネージャーだった。

フォレスト・パークにあるセントバーディーン小学校とオーク・パーク・リバーフォーレスト高校に通学し、1978年に同高校を卒業した。その後はイリノイ州リバーグローブにあるトリトン・カレッジに入学するものの、中途退学している。

キャリア[編集]

1980年代前半にロサンゼルス即興コメディ集団「ザ・グラウンドリングス」で演技のキャリアを始動し[3]1990年代にはスタンダップコメディアンとして数々の舞台やテレビ番組に出演した。1996年1月にNBCシットコムとなりのサインフェルド』にゲスト出演したことをきっかけに有名となり、同年9月からはNBCのシットコム『ブルック・シールズのハロー!スーザン』にレギュラー出演するようになる。

2005年から2010年まではNBC傘下のブラヴォーリアリティ番組Kathey Griffin: My Like on the D-list』を受け持ち、この番組のエグゼクティブプロデューサーとしてエミー賞リアリティ番組賞を2度受賞している[4]2014年には6年連続でのノミネートの末、スタンダップコメディ公演の模様を収録したアルバム『Calm Down Gurrl』で第56回グラミー賞において最優秀コメディ・アルバム賞を獲得した。

家庭環境[編集]

グリフィンは5児の末っ子だった。3人の兄ケニー(故人)、ジョン、ゲイリー(2014年没)、そして姉のジョイス(2017年没)がいる。

2009年に発表した自伝で、グリフィンはトラブルの多かった兄ケニーの人生に初めて言及した。ケニーは麻薬乱用者であり、ドメスティックバイオレンスをよく起こしていた。また、一度も逮捕されたことはなかったものの、グリフィンはケニーが児童を性的に虐待していたとも信じている。この推測はケニーの周りにいた多くの女児の証言によっても裏付けられている。グリフィンが8歳の時には、ケニーがベッドに潜り込んできて耳元に甘い言葉を囁いてきたりくっ付いてきたりしたという。しかし、ケニーがグリフィンに対して実際の虐待を行うことはなかったという。兄が未成年者と不適切な関わりを持っていることを知ったグリフィンは、その後はケニーと関わりを断つことを選んだ。

自伝の中では、この決断がいかなる意味を持ったかについて述べている。グリフィン家の中にはケニーが児童虐待に手を染めていることを信じようとしない者もおり、家族間には亀裂が入ることになった。何年も後になってグリフィンの父親は牢獄に入っていたケニーに電話し、事の真偽を確かめたところ、ケニーは肯定するでも否定するでもなく、「俺は自分のやることをやるだけさ」と答えたという。この答えによって、この問題についてのグリフィン家内での論争は終わった[5]

グリフィンはそれからさらに数年後、ケニーが道端にダンボールに書かれたサインを持って物乞いをしているところに通りかかった。グリフィンは、そのダンボールに書かれていたメッセージが一般的に見られる「仕事があればするので食べ物をください」ではなく単に「食べ物を恵んでください」だったことにショックを受けたという。この経験はグリフィンの仕事に対する姿勢に影響を与えた。ケニーはその後は両親の家に戻り、救急車を待つ間に母親の腕の中で死亡した。

LGBTの権利擁護[編集]

LGBTの権利の積極的な支持者として、グリフィンは同性婚の権利保障[6]同性愛者軍務禁止規定の撤廃[7]などを主張してきた。ウェスト・ハリウッドワシントンD.C.でのデモ活動に参加したり、同じくLGBTの権利を支持する母マギーとともに自らのテレビ番組内で発言したりしている。カリフォルニア州提案第8号の投票前には、ロサンゼルス・ゲイ・アンド・レズビアン・センターが主催した「平等への一票」キャンペーンの一環としてボランティア活動に取り組み、同性婚の権利を守るべく戸別訪問などを行った[8]

エイズ基金「Aid for AIDS」の資金集めイベント「Best in Drag Show」を長い間支持しており、オープニングイベントのホストも5年以上に渡って担当している[9]2009年11月、「Aid for AIDS」はグリフィンに対してAFAエンジェル賞を授与した[9][10]

騒動[編集]

番組への出演禁止[編集]

グリフィンはクレイグ・キルボーンビル・マーハワード・スターンらが司会を務めるトーク番組には好意的に迎えられてきた一方で、『ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノ』をはじめとする複数のテレビ番組から出演禁止を言い渡されてきた[11]2005年には当時11歳だったダコタ・ファニング薬物依存症のリハビリ施設に入所したとのジョークを発言したため、E!が企画する番組の司会から降板させられている[12]。ただし、のちにE!は『Kathey Griffin: My Like on the D-list』をイギリスで放送する権利を購入し、グリフィンとの関係を回復させている。

エミー賞での発言[編集]

2007年9月、『Kathey Griffin: My Like on the D-list』のプロデューサーとしてエミー賞リアリティ番組賞を受賞した際、壇上に上がったグリフィンは「この賞を受賞した多くの人々がジーザスへの感謝を口にするが、実際には受賞とジーザスは関係がないことを誰もが理解しているはずだ。彼はちっとも手助けしてくれてなどいない。だから私は『クソ野郎、ジーザス』と言うことにする。いまこの瞬間、この賞こそが私のだ!」とスピーチした[13]。のちにグリフィンは無意味にジーザスへの感謝を連発するセレブリティを風刺したものだったと説明したが[14]カトリック連盟がグリフィンを非難する書簡をエミー賞の主催者に寄せたため[15]、主催者は授賞式のテレビ中継ではグリフィンの当該発言がカットされると発表した[16]。この決定を受け、グリフィンは「ユーモアのセンスがあるカトリック教徒は私だけなのかしら?」とコメントした[17]

トランプに関する表現[編集]

2017年5月、第45代大統領ドナルド・トランプの切断された血まみれの首人形を持った写真をTwitterInstagramに投稿したため、各方面から批判を受けた。ドナルド・トランプ・ジュニアは「これが彼らの支持者には許されていると思っている。オバマ大統領にオバマ批判派はこのようなことをしたか」と強く批判し、2016年大統領選挙でのトランプの対抗馬だったヒラリー・クリントンの娘チェルシー・クリントンも不適切だと批判した[18]。騒動の結果、グリフィンは2007年よりタイムズスクエアからアンダーソン・クーパーとともに生中継していたCNNの名物年越し番組の共同司会者を降板させられた[19]

出演作品[編集]

映画[編集]

公開年 邦題
原題
役名 備考
1980 宇宙の7人
Battle Beyond the Stars
エイリアン
1985 ストリート・オブ・ファイヤー
Streets of Fire
観客
1991 チャイルド・ショック
The Unborn
コニー
殺人ピエロ狂騒曲
Shakes the Clown
ルーシー
1994 パルプ・フィクション
Pulp Fiction
ひき逃げの目撃者
いとしのパット君
It's Pat
本人役 カメオ出演
1995 フォー・ルームス
Four Rooms
ベティ
新・ハダシの重役/ねらえ!高視聴率
The Barefoot Executive
メアリー テレビ映画
1996 ケーブルガイ
The Cable Guy
母親
1999 ゴンゾ宇宙に帰る
Muppets from Space
武装した警備員
2000 インターン
The Intern
コーネリア・クリスプ
ヴァネッサ・ウィリアムズのクリスマス・キャロル
A Diva's Christmas Carol
過去の幽霊 テレビ映画
2003 ベートーベン5
Beethoven's 5th
イーヴィー・キング オリジナルビデオ
2005 エステラ・ウォーレンの知られたくない私のヒ・ミ・ツ ヴァージン・ラプソディー
Her Minor Thing
マギー
アマンダ・バインズ in Sweet Paradise
Love Wrecked
ベリンダ
2010 サミーとシェリー 七つの海の大冒険
A Turtle's Tale: Sammy's Adventures
ヴェラ 声の出演
シュレック フォーエバー
Shrek Forever After
踊る魔女 / 歯車の魔女 声の出演
ジョアン・ リバース〜75歳の女下ネタ芸人 カムバックへの戦い!〜
Joan Rivers: A Piece of Work
本人 ドキュメンタリー映画
2011 ザ・マペッツ
The Muppets
本人役 劇場未公開シーン
ホール・パス/帰ってきた夢の独身生活<1週間限定>
Hall Pass
本人役

テレビシリーズ[編集]

放映年 邦題
原題
役名 備考
1995 ER緊急救命室
ER
ドロレス・ミンキー シーズン1 第24話 "母親"
あなたにムチュー
Mad About You
ブレンダ シーズン4 第9話 "時間よ止まれ!"
1996 キャロライン in N.Y.
Caroline in the City
車両管理局職員 シーズン1 第19話 "Caroline and the Movie"
1996-1998 となりのサインフェルド
Seinfeld
サリー・ウィーヴァー 2エピソード
1996-2000 ブルック・シールズのハロー!スーザン
Suddenly Susan
ヴィッキー・グロナー 93エピソード
2000 X-ファイル
The X-Files
ベティ・テンプルトン / ルル・ファイファー シーズン7 第20話 "ファイトクラブ"
ラリーのミッドライフ★クライシス
Curb Your Enthusiasm
本人役 シーズン1 第1話 "ズボンのテントでトラブル"
2003 スパイダーマン 新アニメシリーズ
Spider-Man: The New Animated Series
ロクサーヌ 声の出演
第12話 "ロクサーヌとローランド"
第13話 "さらばスパイダーマン"
2007 アグリー・ベティ
Ugly Betty
テレビ司会者 シーズン1 第13話 "暴かれた正体"
2010 LAW & ORDER:性犯罪特捜班
Law & Order: Special Victims Unit
バブス・ダッフィー シーズン11 第13話 "闘う女"
2011 ディフェンダーズ 闘う弁護士
The Defenders
サリー・スコット 第17話 "疑惑の夜"
glee/グリー
Glee
タミー・ジーン・アルバートソン シーズン2 第16話 "目指せ! 悲願の初優勝"
私はラブ・リーガル
Drop Dead Diva
ジェナ・カズウェル=ベイリー シーズン3 第8話 "チアリーダーの復讐"
2012 アメリカン・ダッド
American Dad!
ケリー 声の出演
シーズン8 第16話 "The Kidney Stays in the Picture"
2015 ル・ポールのドラァグ・レース
RuPaul's Drag Race
ゲスト・ジャッジ シーズン7 エピソード1 "Born Naked"
シーズン7 エピソード5 "The DESPY Awards"

参照[編集]

  1. ^ Griffin 2010, p. 7
  2. ^ Griffin 2010, p. 11
  3. ^ Performers: KATHY GRIFFIN: Alumni”. The Goundlings. 2018年11月6日閲覧。
  4. ^ Television Academy: Kathy Griffin”. National Academy of Television Arts and Sciences. 2018年6月3日閲覧。
  5. ^ Griffin 2010, pp. 20–21, 26
  6. ^ Alexander, Bryan (2010年12月30日). “EXCLUSIVE: Kathy Griffin Dares to Be Thrown Off CNN's Live New Year's Eve Broadcast”. Hollywood Reporter. http://www.hollywoodreporter.com/news/kathy-griffin-dares-thrown-cnns-67142 
  7. ^ Wieselman, Jarett (2010年7月13日). “Griffin Fights Don't Ask Don't Tell”. New York Post. オリジナルの2011年11月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111128195707/http://www.nypost.com/p/blogs/popwrap/kathy_griffin_Ketvm6Gg3oIOvClbA1vrJJ 
  8. ^ AKA William (2009年4月10日). “Kathy Griffin Goes Door-to-Door For Gay Rights”. AKA William. 2012年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月3日閲覧。
  9. ^ a b Kathy Griffin asks Mom to Take a Side”. TheInsider.com (2009年11月6日). 2009年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月3日閲覧。"
  10. ^ AFA Silver Anniversary Reception & Awards” (PDF). Aid for AIDS. 2010年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月3日閲覧。
  11. ^ Kathy Griffin: Barbara Walters Will Cut A Bitch!” (英語). TeamCoco. 2017年5月31日閲覧。
  12. ^ Sternbergh, Adam (2005年8月8日). “Dorothy Snarker”. New York. http://nymag.com/nymetro/arts/tv/12299 2007年7月1日閲覧。 
  13. ^ “Kathy Griffin's Jesus Remark Cut from Emmy Show”. Reuters. (2007年9月17日). https://www.reuters.com/article/idUSN1144512920070911 2007年9月25日閲覧。 
  14. ^ “Larry King Live” (video). YouTube. (2007年9月17日). オリジナルの2008年3月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080307144609/https://www.youtube.com/watch?v=cbziBwi489Q 2007年9月19日閲覧。 
  15. ^ Elber, Lynn (2007年9月11日). “Griffin's Emmy remarks to be censored”. AP. CelebrityMound.com. オリジナルの2011年7月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110708131757/http://www.celebritymound.com/kathy-griffins-emmy-remarks-to-be-censored 2007年9月11日閲覧。 
  16. ^ “Kathy Griffin's Emmy Remarks About Jesus to Be Censored”. Associated Press. Fox News. (2007年9月11日). http://www.foxnews.com/story/0,2933,296382,00.html 2007年9月11日閲覧。 
  17. ^ “'Offensive' Jesus remarks cut from Emmys”. News.com.au. Reuters. (2007年9月12日). オリジナルの2007年10月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071013101310/http://news.com.au/story/0%2C23599%2C22404898-23109%2C00.html 2007年9月18日閲覧。 
  18. ^ 血まみれトランプ大統領の首人形写真を投稿、炎上…米女性タレントが謝罪 Livedoor NEWS 2017年5月31日
  19. ^ CNNが女性タレントの契約解除、米大統領の首人形写真投稿で”. ロイター (2017年6月1日). 2018年7月11日閲覧。

参考文献[編集]

  • Griffin, Kathy (2010). Official Book Club Selection: A Memoir According to Kathy Griffin (paperback ed.). Ballantine Books. ISBN 978-0-345-51856-9 

外部リンク[編集]