リアリティ番組

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

リアリティ番組(リアリティばんぐみ、Reality television)とは、事前の台本や演出のない、現実に起こっている予測不可能で困難な状況に、よく知られたプロの俳優などではない素人出演者たち(無名の芸能人なども含む)が直面するありさまを、ドキュメンタリードラマのように楽しめると謳ったテレビ番組のジャンル。視聴者が参加する双方向番組の一種で、1990年代末以降、世界各地のテレビを席巻する人気を博している。多くは「演技台本やらせのない出演者の行動をカメラが追う形式のテレビ番組」であるとしているが、演技・台本・やらせのある「リアリティ風番組」であるケースも含まれる。

概要[編集]

90年代末の世界各地での大ヒット以降、従来型の視聴参加型のクイズ番組やバラエティ番組もリアリティ番組を名乗るようになったため、現在は非常に意味が拡散した言葉となっている。視聴者参加型のクイズ番組・トーク番組恋愛バラエティ番組をはじめ、視聴者から選ばれた代表を孤島や旅先に隔離してカメラで監視したり、毎週課題を与え最後の一人になるまで勝ち抜きさせたりするものまで、さまざまな種類のものがある。これらの番組の多くは、固定カメラや隠しカメラ、手持ちカメラなどといったドキュメンタリー番組の撮影手法を用いて出演者に密着し、独特の臨場感を視聴者に与え、撮影対象となる出演者のドラマを「本物らしく」見せる事を売りとしている。

番組の焦点は、参加している素人同士のメロドラマ的人間関係や恋愛・苦闘であり、視聴者はこれを楽しむだけでなく電話投票などで彼らに対し審判を下すこともある。

起源[編集]

その起源は、1948年のアレン・フントによる「キャンディード・カメラ」(「どっきりカメラ」の元祖)など、素人の即興的で意外な反応を楽しむテレビ番組にまでさかのぼる。こうした、練られた脚本や俳優の演技よりも面白い素人のリアクションに焦点を当てた番組は、1960年代から1980年代にかけてヨーロッパ、日本、アメリカなど世界各地で製作されていた。今日的なリアリティ番組は、PBS1973年に放送された、離婚寸前の核家族に密着した「アメリカン・ファミリー」(An American Family)が最初とされる。

一般のテレビドキュメンタリートーク番組にもリアリティ番組的な要素が入るようになった。1960年代から1970年代にかけて、チャック・バリス(Chuck Barris)のプロデュースによる「デート・ゲーム」(The Dating Game)、「新婚ゲーム」(The Newlywed Game)、「ザ・ゴングショー」などの視聴者参加ゲーム番組が全米で人気を博した。1989年放送開始の警官密着型番組「コップス(COPS)」は、警官の日常や、逮捕され抵抗する犯人といったシーンが人気を集めたが、これらは素人である警官や犯人のインパクトの強さも話題となった。またカムコーダシネマ・ヴェリテ(Cinéma vérité)的な手法を使って、警官たちの日常シーンや逮捕シーンなどの臨場感を高めていた。1991年放送開始のトーク番組、「ジェリー・スプリンガー・ショー」(The Jerry Springer Show)はレッドネックなど貧困家庭の出演者が司会者ジェリー・スプリンガーや視聴者の前で家族の恥部をさらしケンカを始める様が評判を呼び、視聴者に他人の人生を覗き見る衝撃や快感を与えた。

リアリティ番組のフォーマット[編集]

完全に素人に焦点をあわせたリアリティ番組は1990年代に世界各地で放送開始された。アメリカでは、1992年MTVで、視聴者から募った数人の若者が一軒家で共同生活するさまを隠しカメラで数ヶ月にわたり追った「リアル・ワールド」が放送開始された。オーディションで選ばれた視聴者、限られた場所・限られた期間での生活、時々挿入される参加者へのインタビュー(この生活に対する感想、人間関係や他の参加者に対する感想など)、といったフォーマットは後の世界中のリアリティ番組の基礎となり、1990年代末から2000年代にかけてリアリティ番組が山のように生み出されるきっかけとなった。

こうした番組の中にはイギリスやオランダなどヨーロッパで最初に放送され、その後フォーマットがアメリカを経由して世界に販売されたものも多い。

変身・メイクオーバー[編集]

1996年イギリスで放送された「チェンジング・ルーム」(Changing Rooms)はカップルが互いの部屋を改造するもので、視聴者の容姿や視聴者の部屋をおしゃれに変身(メイクオーバー)させるリアリティ番組のさきがけとなった。

特殊な環境への隔離[編集]

1997年スウェーデンで放送された「エクスペディション・ロビンソン(ロビンソン遠征隊)」(Expedition Robinson)は視聴者から選ばれたメンバーが孤島でサバイバルするという内容で、「リアル・ワールド」が完成させたリアリティ番組のフォーマットに「生き残り」(毎回一人ずつ脱落し、最後に一人が勝ち残る)という要素を追加して人気番組となった。また、後に世界各地にこのフォーマットが販売され「サバイバー」として放送された。

1999年オランダで放送された「ビッグ・ブラザー」は完全に外部から隔離され、すべての場所にカメラとマイクが仕掛けられた家に十数人の男女を3ヶ月入れるというもので、彼らの生活はケンカやセックス、互いの脱落させ合いに至るまですべてが収録される極端なものである。これも世界中にフォーマットが販売され、オランダの制作会社エンデモルはこのヒットをきっかけに世界各国でリアリティ番組を制作する大手企業となった。

スター育成[編集]

2001年にはイギリスで「ポップアイドル」という視聴者勝ち抜き型歌手育成番組が作られた。これは予選を勝ち抜いた参加者に徹底的なトレーニングを施し、視聴者の判断で一人ずつ脱落させつつ最後には一人のスターを生み出すというもので、世界各地にフォーマット販売されたり(アイドルシリーズ)参考にした番組が製作されたりした。たとえばアメリカの「アメリカン・アイドル」、中国の「超級女声」などは国民的関心を集める怪物番組となっている。この派生系として、スーパーモデル育成番組、ファッションデザイナー育成番組、スポーツ選手育成番組、コメディアン育成番組、子役スター育成番組、シェフ育成番組、ドナルド・トランプ指導による経営者育成番組「アプレンティス」なども誕生している。

有名人の生活[編集]

リアリティ番組は出演料の安い、または不要な素人が多数出演するものだったが、有名人の生の生活を覗き見る番組も登場した。たとえば2002年にMTVで放送開始された「オズボーンズ」は、オジー・オズボーンとその一家の生活を見せるものだった。2003年のFOXテレビによる「シンプルライフ」では、ハリウッドきってのパーティー好きセレブのパリス・ヒルトンニコール・リッチーがゴージャスな生活とは無縁な農村や荒野へ旅して質素な生活を体験するもので、その奇天烈な反応が人気となった。

その他[編集]

その他、

  • 恋愛・結婚・就職など視聴者の人生をかけてデートやスポーツや面接などに挑む勝ちぬきゲーム番組
  • 視聴者や芸能人が本格的なスポーツやダンスなどに挑戦するゲーム番組
  • 視聴者が相談を持ち込むトーク番組
  • 法律相談や法廷対決や法執行を題材にした法廷リアリティ番組
  • 警察・消防・救急ほか特殊な職業に密着した番組
  • 少数民族や少数派宗教や障害者などマイノリティ集団に密着した番組
  • 視聴者が夫婦や身分をしばらくの間交換する社会実験番組
  • 視聴者や芸能人に超常現象や心霊スポットを捜索させる超常現象番組
  • 事件や事故に遭遇した被害者や家族本人が出演して事件を再現する実話再現番組
  • 「億万長者とデートし一人だけが結婚できる」という名目で出演者を集めるが、億万長者として登場する人物の正体は貧乏人であったりするなど、番組の真の目的を知らない出演者の悪戦苦闘を司会者や視聴者が笑って楽しむ偽リアリティ番組

など、バリエーションは広がりを見せている。

アメリカ[編集]

リアリティ後進国だったアメリカでは、出演者のセリフやリアクションなどがあらかじめ一字一句決められ、完全な演出の基に作られた番組が主流を占めていた。しかし1990年代後半頃から急速にキャッチアップを始め、今日では「アメージング・レース」、「アメリカン・アイドル」、「サバイバー」、「シンプルライフ」などの「視聴者参加・勝ち抜き戦」や「視聴者依頼番組」が主流にあり、拡大解釈して視聴者参加のクイズ番組「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」や投稿ビデオ番組 "アメリカズ・ファニエスト・ホーム・ヴィデオズ"(America's Funniest Home Videos) もリアリティ番組のうちに数えるようになった。

こうした番組が主流になった背景には、リアリティ番組はルールなどの「フォーマット」さえあれば、あとは脚本を練る手間も高いギャラの俳優を集める費用もかからず、素人による濃い人間模様を見せて高い人気を得ることができることにある。ゲスト出演者は豪華になる傾向にあり、最終的に勝ち残った素人には巨額の賞金が与えられることもあるが、これでもテレビドラマでの人気俳優の1シーズンあたりの出演料に比べれば安いものといえる。

日本[編集]

近年の日本ではお笑いブームによって出演料が安く視聴者と同じ地平にある若手タレントが大量に起用されていることや、こうしたタレントのトークを補強するテロップなどの演出・編集技術が頻繁に使われるため、視聴者を出演させるメリットが少なくなり視聴者参加番組の減少が続いている。このため、日本国外のオリジナルのフォーマットそのままではなかなか人気を得づらく、演出方法を変更したり、視聴者ではなくタレントが出演するなど、日本特有の味付けがされている。

日本のテレビ番組でリアリティ番組と位置づけられるのは、ドキュメントバラエティヒューマンバラエティなどと称される種類のバラエティ番組だろう。本格的な欧米スタイルのリアリティ番組の先駆けとして、「進め!電波少年」(日本テレビ)が挙げられるほか、それ以前にも「アメリカ横断ウルトラクイズ」や「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ)が部分的に欧米スタイルのリアリティ番組の要素を取り入れている。それ以前の「どっきりカメラ」(日本テレビ)、「スターどっきり(秘)報告」(フジテレビ)などもアメリカに元ネタのあるリアリティ番組の一種である。

「進め!電波少年」の初期の頃は、番組の主旨が視聴者に完全に理解されず、まったくのドキュメンタリーと思いこむ視聴者も多かった。その後、「進め!電波少年」のヒッチハイク騒動の際に制作者サイドが「バラエティであり、ドキュメンタリーではない。演出は存在する」と公言したことや、「ガチンコ!」(TBS)での台本発覚や出演者の告発などにより、ようやく、リアリティ番組がドキュメンタリーではないことが一般に認知されるようになった。ただし、「ガチンコ!」の場合、制作者サイドは「番組はドキュメンタリーだが、ドキュメンタリーでも多少の演出はある」という言い方をしたため、問題は残った。なお、TBSの番組審議会や、BPOへの苦情に対しては、担当プロデューサーは、事実のドキュメントである旨しか回答していない。

ただし現在も「ドキュメンタリーと誤解されるような演出はすべきではない」と言う批判もあり、一方制作者サイドもドキュメンタリーと誤解されるような表現を使ったり、そのことから視聴者の一部が相変わらずドキュメンタリーと思いこんでいたりと、問題がないわけではない。やらせについては「どっきりカメラ」(日本テレビ)、「スターどっきり(秘)報告」(フジテレビ)と言った、古典的な番組でもしばしば演出が行われていたことは、スタッフや当時の出演者の証言から明らかになっている。

その他「あいのり」(フジテレビ)や「未来日記 (ウンナンのホントコ!)」(TBS)「しあわせ家族計画」(TBS)「ASAYAN」(テレビ東京)「愛の貧乏脱出大作戦」(テレビ東京)「愛する二人別れる二人」(フジテレビ)「キスイヤ」(読売テレビ)などもリアリティ番組と位置づけられる。

また1980年代よりも前から、日本では独自に多くの視聴者参加番組が製作されてきた。「パンチDEデート」、「上海紅鯨団が行く」、「ねるとん紅鯨団」(共に関西テレビ)、「新婚さんいらっしゃい!」、「プロポーズ大作戦」、「ラブアタック!」、「探偵!ナイトスクープ」(共にABC)、「笑っていいとも!」(フジテレビ)、「スター誕生!」、「お笑いスター誕生!!」(共に日本テレビ)などである。

日本では視聴者参加による恋愛ゲーム番組やアイドル育成番組や悩み事相談番組、芸能人参加によるスポーツなどへのチャレンジ番組など、世界各地で人気を博しているリアリティ番組と同じようなフォーマットが早くから人気を博し、すでに山を越えている。また日本以外のリアリティ番組に見られる「参加者同士の脱落させ合い」、「参加者に対する民主主義的投票」などといった部分が日本の国民性にとって強烈すぎるため、海外のフォーマットになかなか人気が出ないともいえる。しかし、これは、番組フォーマットを地域の文化に合わせて制作するというローカリゼーションの能力による問題でもあり、今後、番組フォーマットの流通が世界的に広がっていく中で、制作者たちの交流も進むだろう。一方で、より多くの日本のフォーマットが海外に出ていく機会が増えるとともに、海外のフォーマットがより巧妙に日本にローカライズされていくということが期待されている。

批判と反響[編集]

サバイバー」、「スター・アカデミー」、「アイドルズ」、「Xファクター」、「ゴット・タレント」、「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」、「トップ・モデル」、「マスターシェフ」といったリアリティ番組の人気シリーズは数十か国にフォーマットが販売され、世界各国版が制作されるなど国際的に成功を収めている。アメリカの場合だと4大ネットワークのプライムタイムに放送される番組の主だった部分がリアリティ番組に占められ、MTVVH1ヒストリーE!TLCなどといった音楽チャンネルや教育チャンネルまでもリアリティ番組に力を入れる状況になった[1]。一方で、素人の人生をのぞき見たりかき回したりするようなリアリティ番組は中身がなく低俗だとの批判も浴びている。リアリティ番組に出演した参加者の中には、一夜にして有名人となり人気芸能人や人気ミュージシャンになる者も出た反面、視聴者の憎悪や嘲笑を集め悪い意味で有名になってしまう者も多数いる。

リアリティ番組がどこまでが「リアリティ(現実)」なのかについても強い批判がある。多くの番組は日常生活ではなく、秘境や閉鎖された部屋など非日常的な空間、歌手やスポーツ選手・経営者になるトレーニングなど非日常的な状況、巨額の賞金のかかったクイズなど、およそ「リアリティ」とは遠いところを舞台としている。出演者は能力の限界を試され、普段出さない自分の姿を出させられている。こうした姿も「リアリティ」なのかどうかには議論がある。

また、こうした番組は編集の段階で多くの部分がカットされたり、時間を前後させてつなぎ合わされたりしており、実際に起こったこととは違うものを視聴者は見せられていることが多い[2][3]。このため視聴者から叩かれた参加者の中には番組に対し「この編集では私が悪者のように見えてしまう」と抗議・反論する者もいる。やらせの疑惑も絶えず、実際にやらせであることを明らかにした番組も存在する。2007年6月、オランダで「De Grote Donorshow 」(すばらしいドナーショー、De Grote Donorshow)というリアリティ番組が放送されることが事前に発表された。この番組では3人の腎臓病患者から視聴者投票で1人が選ばれ、余命わずかな女性から提供を受けた腎臓が贈られるというもので、ヨーロッパで放送の是非をめぐる論議を巻き起こした。しかし実際に放送された番組のラストで「これは臓器移植問題に関心を持ってもらうためのやらせであり、患者は本物だがドナーの女性は俳優である」ことが明らかにされた[4]。製作者側も参加者の勝ち抜き過程などを透明化するなどやらせの起こらない状況を作る努力を払っている。

視聴者投票を伴うリアリティ番組が世界各地に広まるにつれ、民主主義的な政治の行われていない権威主義的な国の国民が、生まれて初めて重要な物事を決める投票を体験することになり、その政治的影響も注目されている。汎アラブ版「ビッグ・ブラザー」(الرئيس)は未婚の男女が共同生活することや赤裸々さから社会に衝撃を与えた[5]。また中国版「ポップアイドル」といえる「超級女声」が、2005年のシーズンにおいて4億人の視聴者を得て800万票の投票が殺到するセンセーションを起こした後、政府系英字新聞のペキン・デイリーは「超級女声は民主主義への圧力なのか?」と題する記事を一面に載せている[6]

創作物内のリアリティ番組[編集]

このほかにも、1940年代以降多くの小説や映画がリアリティ番組を予言してきた。多くは独裁政権が支配するディストピア視聴率競争が進みすぎた世界を舞台としたものであり、国民の不満を解消するためにローマ帝国の闘技さながらのバトルが行われるなど、殺人ゲームを中継する番組が血に飢えた視聴者の前に差し出される。

  • 48億の妄想 - 1965年の筒井康隆の小説。日本の至る所にテレビカメラが取り付けられ、人々がみなカメラの向こうで観ているテレビ局や視聴者を意識して振舞う社会を描く。
  • バトルランナー1982年の小説)・バトルランナー (映画)1987年の映画) - 独裁政権が支配する未来のアメリカを舞台とし、1ヶ月の間国民の追跡の手を逃れてアメリカ国内を逃げ回ることに成功すれば多額の賞金を手にできるという生死をかけたゲームに平凡な男が挑む。映画版では犯罪者と処刑人たちが殺しあう人気テレビ番組に出演させられた政治犯の主人公が登場する。
  • ネットワーク - 1976年の映画。視聴率至上主義の放送局で、首を言い渡されたキャスターが番組内で自殺予告をし、逆に人気が上がる様を描く。テレビ局は彼を人気司会者に祭り上げる一方、過激派相手に破壊活動を中継する番組製作を持ちかける。
  • 世にも奇妙な物語 秋の特別編(2001年10月4日) 仇討ちショー - 家族を殺された遺族が加害者を殺すまでの様子を放送する番組。

脚注[編集]

関連項目[編集]