VZ Editor
VZ Editor(ヴイゼットエディタ)は、MS-DOS用文字編集ソフト(テキストエディタ)である。1989年発売、複数ファイルの同時編集対応、EMS対応。当時の定価は9800円。
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[編集] 概要
愛知県の名古屋工業大学出身のプログラマ、兵藤 嘉彦(ひょうどう よしひこ、c.mos)がアセンブラで記述し、1989年5月に株式会社ビレッジセンターから発売した。兵藤が設計したエディタ「EZ98(EZ Editor)」を基に[1]、兵藤が自ら改良・機能強化を施し、改称して出荷した。フロッピーディスクには、実行プログラムの他、アセンブラのソースコードも同梱されていた。
当時、ビレッジセンターは、アメリカフリーソフトウェア、シェアウェアの店を営業しており[2]、英語ソフトウェアの日本の機種への移植製品や、GNUなどのフリーソフトウェア関連製品の販売をしていた。そう言った経緯があり、開発者である兵藤の名が前面に出るといったユニークな販売スタイルとなった[3]。
1992年頃のVer.1.5の対応機種はPC-9801シリーズとその互換機用に東芝のJ-3100シリーズ、AXマシン用が添付、そのほかにDOS/Vマシン、日本IBMのPS/55シリーズ用を別途用意していた[4]。
1993年のVer.1.6は、1つのパッケージでいわゆる98フォーマット(1.25MB)の5インチおよび3.5インチとIBMフォーマット(1.44MB)の3.5インチの3枚のフロッピーディスクを含み、以上の全機種に対応した[5]。
当時、フリーウェアやシェアウェアにもテキストエディタが、PSEのような簡易なもの以外にほとんどなかった。他の市販のテキストエディタの定価がMifes,FINALのように数万円していたのに対して、VZ Editorは9800円という安価で発売された[6][7]。 1990年代前半は「MIFES」(メガソフト)と、MS-DOS用テキストエディタの市場を二分した。 小さな設計で軽快な動作を保ちながら[8]、優れた操作性と強力なマクロ機能を持つことで人気を呼んだ。これは本体の機能は少なめとして、必要な機能はユーザーが任意にマクロで実装すると言うコンセプトとにもよる[9]。マクロ機能は強力で、その画面上で簡単なアクションゲームを動作させ得るほどであり、同梱のマクロでは、ゲームのテトリスが動く事が、プログラマの賞賛の的となった[10]。出版社は、パソコン雑誌でVZ Editor使いこなしの記事を連載し、解説書を多数発行した。VZ Editorは数多くの賞を受賞し、MS-DOS時代のパソコン文化史に一時代を築いた。
パソコン通信 の会議室(日経MIXのv.c.会議およびNIFTY-ServeのFGALPK)でのユーザからの意見を積極的に取り入れ、様々な改良を加えた。利用者が開発したマクロプログラムをパソコン通信上で公開するなど、ユーザによって発展したソフトでもあった。パソコン通信では、高千穂遙などの文筆業の支持を得て、これまでプログラマの道具と思われていたテキストエディタが、執筆の道具として認知を受けることになった。マクロは記号の羅列なため難解で、マクロ制作者をマクロ師と呼ぶ人もいた。ソフトに同梱されているマクロファイルのいくつかも、パソコン通信のユーザが開発したものである[11]。さらに、製品にはソースコードが付属していたので[12]、ユーザアセンブルによるソフトウェアの小規模化、移植、改造版も存在していた。OPT-ASMというアセンブラでアセンブルし、同梱のリンカでリンクすると、数バイト小さくなる版があった。そのため、アセンブラプログラマは、好んでOPT-ASM を購入した。
関連ソフトとして、石田暢彦(wing)によりVWX、兵藤によりZCOPYなども開発された[13]。
grepによる検索やファイラと呼ぶファイル管理機能など後のテキストエディタで一般化した機能を先取りしたことも特徴である。
Mifes互換マクロは、当時名古屋工業大学にいた大野元久が書いたものである。
多くの当時のPCへの移植がある。NECのN5200への移植を書いたのが、名古屋工業大学出身の小川清である。それ以外にも富士通FMRシリーズおよびFM TOWNSシリーズ[14]、PC-88VAシリーズや、文豪やOASYSなどのワープロ専用機、N5200などのオフコンへの移植版パッチもパソコン通信で配布されていた。
書籍『VZ倶楽部』には、開発者のほか、マニュアル作成者の西田雅昭、マクロ作成者の大野元久、社長の中村満、SF作家高千穂遥、プログラマ中村正三郎はじめ、多くの文化人が執筆している。ただし、兵藤、大野、中村満は複数のペンネームで執筆しているため、誰がどれを書いているかを当てるのがマニアの間で興味の的となった。
一時期、兵藤がビレッジセンタでユーザサポートの電話に出たり、メールしたりすることもあった。Windowsへの移植を希望する声もあったが、DOS窓で動くので、敢えてWindowsで動作することが必要ではなかったかもしれない。
ビレッジセンターから出たWindows版のテキストエディタ Wz Editorは兵藤の作ではない。
[編集] 常駐モード
VZ Editorの大きな特徴のひとつは、常駐モードである。常駐させた状態では、MS-DOSのコマンドラインからEscキーを押すだけでVZ Editorを起動することができる[15]。まだハードディスクドライブが高価でフロッピーディスクのみでの運用が主流だった当時、エディタ用のディスクを抜いた状態で高速に起動できるというだけでも利点であった。ちなみに常駐に要するメモリサイズは110KB、EMSを使用するなどした場合は55KB程度、パフォーマンスを犠牲にした場合は2.5KB弱程度である[16]。
このVZ Editorの常駐モードは単にメモリ上で起動するだけではなく、コンソールの入出力をフックするという機能を持っている。この機能により、スクロールして画面から消え去った情報をバックスクロールで確認できることに加え、出力のうち必要な部分だけを後から選んでファイルに貼り付けることもできる。また入力のフックを利用して、入力ヒストリ機能を実現している[17]。
[編集] カスタマイズ
カスタマイズ機能も充実しており、設定ファイル(defファイル)を編集することで、画面表示のほか、メニューやほとんどのキー設定を変更でき、また後述する強力なマクロ機能で独自の機能拡張にも対応していた[18]。また、2ストロークキーにも対応しており[* 1]、標準ではこのキーはQとKに割り振られている[19]。
[編集] マクロ
マクロ機能は当時としては強力なものであり、シューティングゲームなどの作成も可能であった。また、キーボードマクロ機能も持っており、これをファイルに保存して通常のプログラマブルマクロとして恒常的に使用することもできた[20]。
マクロは、機械語のように文字数の非常に少ない構成となっており、可読性に著しい問題が有った[21]。一例として、文字列を画面下に表示するコマンドは&m("strings")であり、カーソルをファイル終端に移動させるには#_ #>と言った塩梅であった[22]。
しかし、VZ Editorの特徴の一つである豊富な短縮キーをほぼ全て記憶していたヘビーユーザにとっては、短縮キーとマクロが一対一に対応している機能が多かったため、マクロの読み書きが容易であった。例としては、リターンの短縮キー Ctrl+M のマクロは #m。↓の短縮キー ctrl+X のマクロは #x など。
[編集] 受賞歴
- 1991年 - 1993年 第4回~第6回日経バイト賞 ベストエディタ賞
- 1992年 - 1994年 第1回~第3回ベストヒットソフトウェア大賞 グランプリ
- 1993年 PC of the year ソフトウェア大賞
- 1994年 第7回日経バイト賞 ユーティリティソフト・ベスト評価賞
- 1994年 日本ソフトウェア大賞 アイコン賞、月刊アスキー賞、アプリング賞
[編集] 脚注
- ^ 例えば ctrl + Q -> S で行の先頭へ、など。
[編集] 出典
- ^ 村井 p.18
- ^ 1987年12月、アメリカのPDSを紹介するために、事務所の一角で起業した。(『ヒット商品物語』p.218)
- ^ 『ヒット商品物語』 pp.206-207
- ^ 『VZ Editor Version 1.5 ユーザーズマニュアル』ビレッジセンター、1992年12月第3版。
- ^ 村井 pp.16-17,24 または 『VZ Editor Version 1.6 ユーザーズマニュアル』ビレッジセンター、1993年12月第1版。
- ^ 村井 p.17
- ^ ピクニック企画, 堤大介, ed (1990-03-01). “漢字” (日本語). 『電脳辞典 1990's パソコン用語のABC』. ピクニック企画. pp. 45. ISBN 4-938659-00-X.
- ^ 兵藤によれば、フルアセンブラで作成したため自然と高速となっただけとのことである。『ヒット商品物語』p.209
- ^ 『ヒット商品物語』pp.212-215
- ^ 志村ら p.74
- ^ 『ヒット商品物語』pp.215-216
- ^ 村井 p.17
- ^ 村井 p.280
- ^ 村井 p.314
- ^ 志村ら p.14
- ^ 志村ら p.14
- ^ 村井 pp.76-78、p.141、p.187「DOSコマンドモード」
- ^ 村井 p.17、p.66、p.199「カスタマイズ」
- ^ 村井 p.68
- ^ 村井 p.239 - 、志村ら p.85、p.213, p.217
- ^ 志村ら p.82
- ^ 志村ら appendix
[編集] 参考文献
- THE COMPUTER編集部(編)、1991、『パソコンヒット商品物語』、ソフトバンク ISBN 4-89052-194-1.
- 志村拓、河辺正三、鷲北賢、1990、『VZを256倍使うための本』、アスキー ISBN 4-7561-0040-6.
- 村井祐一、1994、『はじめてのVZver.1.6』、秀和システムトレーディング.
[編集] 文献
- We love VZ editor 遠藤啓治 技術評論社 1989
- We love VZ editor II 遠藤啓治 技術評論社 1990
- 初歩からわかる「VZエディタver.1.5」 望月裕恭 ぱる出版 1990
- VZエディタ操作マニュアル 塚越一雄 ナツメ社 1990
- ワープロいらずのVZエディタ 西田雅昭、斎藤恵美 技術評論社 1990
- VZエディタ徹底活用マニュアル 武井一巳、藤沢稔 HBJ出版局 1990
- これならモノになるVZエディタ 塚越一雄 ナツメ社 1990
- 入門Vzエディタ 竹形誠司 エーアイ出版 1990
- それでもわからなかったひとのVzエディタワープロ術 森田慶子ほか ビー・エヌ・エヌ 1991 InterProg books No.4
- VZ 倶楽部 ビレッジセンター出版局 1991
- VZ Editor入門 堤大介 改訂増補 ピクニック企画 1991
- Vzエディタマクロプログラミング入門 武井一巳、藤沢稔 HBJ出版局 1991
- 入門Vzエディタ マクロ編 寺口俊伸 エーアイ出版 1991 ビジネスソフト教育出版シリーズ
- VZエディタカスタマイズブック 佐々木公志 秀和システムトレーディング 1991
- VZ Editorハンドブック 権平孝二 ソフトバンク出版事業部 1991 Softbank books
- わかりたい!VZエディタ 三羽英輝 学習研究社 1991 マイクロブックス
- はじめの一歩VZ Editor 藤堂信昭 ソフトバンク出版事業部 1992 Softbank books
- 早わかりVZエディタ実用マニュアル ヒットアンドメイク 新星出版社 1992
- 「VZ全機能」bible 宍倉幸則 技術評論社 1992 完全解説シリーズ
- VZ天国 ビレッジセンター出版局 1992
- 続VZ天国 見米快介 ビレッジセンター出版局 1994
- VZ Editorマクロコレクション 上村郁夫 ソフトバンク出版事業部 1993 Softbank books
- VZ Editorマクロコレクション2 上村郁夫 ソフトバンク出版事業部 1995
- VZ活用研究 北村隆志 電波新聞社 1993 ソフトウェア活用ブックス19
- VZ再履修 武井一巳 ビレッジセンター出版局 1993 VZ EDITOR Official books1
- VZエディタテクニカル・マニュアル 塚越一雄 ナツメ社 1993 ハンディ・リファレンス107)
- はじめてのVZエディタ 村井祐一 秀和システムトレーディング 1993
- VZエディター スタッフプロモーション 毎日コミュニケーションズ 1993 ポケットマニュアルシリーズ これだけで使えるコンパクトマニュアル6
- 一太郎ユーザーのためのVZエディタやさしい使い方のすべて 武井一巳 日本文芸社 1993
- VZマクロ道場 上村郁夫 秀和システムトレーディング 1993
- VZエディタver.1.6強化書 上村郁夫 ソフトバンク出版事業部 1994 Softbank books
- はじめてのVZ ver.1.6 村井祐一 秀和システムトレーディング 1994 はじめての…シリーズ33
- VZエディター1.6 ソレカラ社 毎日コミュニケーションズ 1994 ポケットマニュアルシリーズ これだけで使えるコンパクトマニュアル36
- HP100/200LXをVZで活用する本 麻生雅巳、見米快介 ビレッジセンター出版局 1995
[編集] 関連項目
- WZ EDITOR - 実質的な後継ソフト、Windows用
- テキストエディタの一覧
[編集] 外部リンク
- c.mosのホームページ - 兵藤嘉彦のホームページ
- VZ resource - VZ Editor関連情報の総合ページ
- 高橋版VZの導入
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