S&W M39

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
S&W M39
Smith and Wesson model 39 IMG 3063.jpg
S&W M39
概要
種類 自動拳銃
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計・製造 スミス&ウェッソン
性能
口径 9mm
銃身長 102mm
使用弾薬 9mmパラベラム弾
装弾数 8発
作動方式 ダブルアクション
ショートリコイル
全長 192mm
重量 780g

S&W M39は、アメリカ銃器メーカースミス&ウェッソン社が開発した自動拳銃である。

目次

特徴[編集]

1954年に発売された同社初(アメリカ初)のダブルアクション式オートマチックピストルで、その後の自動拳銃シリーズの基本となった。 ショートリコイル方式を採用し、現在西側で主流となっている9mmパラベラム弾を使用するダブルアクションハンドガンであるが、これといって目立った特徴はない。

トリガーメカニズムはDAオートの先駆であるワルサーP38の物を多く借用している。 全体的な意匠やショートリコイル機構においてはM1911FN ブローニング・ハイパワーの影響が見られる。 変わったところではハイパワーに採用されていたマガジンセイフティ(マガジンが装填されていないとハンマーが落ちず発砲できなくなる安全装置)も受け継いでいる。 オリジナリティでいえば、反射防止セレーションの入ったフロントサイトや同社のM19リボルバーを彷彿させるアジャスタブル式リアサイトS&Wらしさが現れている点が挙げられる。

量産品として軽量なアルミフレームを採用した初期のモデルでもある。同時期に開発されたSIG P210ベレッタM1951がスチールフレームで1000g前後の重量だったことを考えると当時としては軽量な自動拳銃に仕上がっていた。 また、後年においてはDAO(ダブルアクションオンリー)やシングルアクションモデル、.45ACPを始め.40S&Wや10mm Autoに対応したモデルが発売されるなど、古い設計ながらもそれなりの汎用性を持っている。

S&W社のオートマチックピストルは、早い段階で9mmパラベラム弾やアルミ製フレームを採用したり、ダブルアクションやダブルカラムマガジン(M59タイプ)を採用するなど、近代オートマチックピストルとしての機能や性能を十分に備えているが、45口径の支持者の多い米国ではなかなか人気を獲得できない時期があった。

一方で警察等の公用としてはある程度の評価を得ており、米国を中心とした警察機関などで多数採用されている。マニュアルセフティであることを買われ、正式採用をグロックなどの最新オートからあえてS&Wの第三世代に戻す市警察も存在するなど、半世紀以上が経った近年でも少なからず使用されている。 ただ、現在はS&W M&Pが登場したことによりM39/59シリーズは全てカタログ落ちしているため、正式採用している機関も今後は最新のポリマーオートに切り替えていくと予想される。 軍隊においてはベトナム戦争時に軽量なことを評価されてアメリカ空軍が同社のリボルバーとあわせて部隊単位でM39を使用した。 アメリカ海軍特殊部隊Navy SEALsにも専用サプレッサーが装着可能なカスタムモデル、MK22 Mod0が採用されていた。 日本でも海上保安庁などで採用されている。また、日本警察でも第3世代のステンレスモデルであるM3913などが採用され、警視庁や各県警の警察官や銃器対策部隊のサイドアームとしてメディアによく登場する。

初期のバリエーションとしては、シングルアクションモデルの「M44」、M44をベースにリボルバー用の.38スペシャル弾を使用できるようにした競技用拳銃「M52」、ダブルカラムマガジンを採用して装弾数を14発に増やした「M59」などがある。代表的なカスタムモデルとしてはクリーブランドのデベルコーポレーションでカスタムされた「デベルカスタム」が挙げられる。

M59はダブルアクション・ダブルカラムマガジンの9mmパラベラム拳銃としてはベレッタM92SIG SAUER P226に先行して発売された。 しかし、FNブローニング・ハイパワーに比べ太いグリップは手の小さい人には評判は余り芳しくなく、角材のような握り心地と形容されることが多かった。 先見の明こそあったものの、銃身の短さや基本設計の古さも相まってXM9トライアルではマイナーチェンジモデルM559があえなく落選している。

バリエーション[編集]

このM39を基本とした様々な自動拳銃が同社から発売されている。基本的に型番が2桁であれば第一世代型、3桁であれば第二世代型、4桁であれば第三世代型に分類されるが、M945やM910などの例外もある。 なお、いずれの世代においても40口径や45口径、10mm口径のダブルカラムマガジンは存在しない。

第二世代は基本的にスライド/フレームの材質1桁(4ならスチール/アルミ、5ならスチール/スチール、6ならステンレス/ステンレス……など) + ベースモデル2桁(M39/M59、45口径なら45……など)による数字の組み合わせで表記される。

例えばM439なら「アルミフレーム、9mmシングルカラムマガジン」、M659なら「オールステンレス、9mmダブルカラムマガジン」、M645なら「オールステンレス、45口径」となる。
ガードの付いた特徴的なリアサイトの形状をしている。

第三世代はベースモデル2桁 + バリエーション1桁(0がフルサイズ、1がコンパクト、4がフルサイズDAO……など) + スライド/フレームの材質1桁による数字の組み合わせとなっている。

例えばM4505なら「45口径、フルサイズモデル、オールスチール」、M4013なら「40口径、コンパクトモデル、ステンレス/アルミ」、M5946なら「9mmダブルカラムマガジン、フルサイズDAOモデル、オールステンレス」となる。
90年代後半からはアンダーマウントレイルやノバックタイプのリアサイトなど現代的な装備を備えるものも発売された。

このように多数のバリエーションがある上に数字の順序も世代ごとに入れ替わっており、ユーザーの混乱を招きがちである(リボルバーなどでは型番が3桁止まりであった同社製品で4桁が出た初の例)。

以下は有名なバリエーションである。

S&W MK22 Mod0
M39ベースの特殊部隊向け暗殺用拳銃。別名は「ハッシュパピー」[1]。これを与えるとうるさく吠える狩猟犬でもおとなしくなるように、この銃で撃たれた人間は死んで静かになるということからこう呼ばれるようになった。発射音を極力抑えるために、亜音速特殊弾Mk144 Mod0と専用のWOX-1Aサイレンサーが使われ、スライド音を抑えるために、強制的にスライドを固定するスライド・ストップ機能を備えている。また、サイレンサーの装着を前提をしているため、非常に大型なアイアンサイトが備えられている。
これらの組み合わせにより消音能力は非常に良好だったが、サイレンサー内部のインサートの寿命が22発で限界だったため、交換用インサートも合わせて支給された。
S&W M459 / M559 / M659
M59の第二世代型。M459はアルミ合金フレーム、M559はスチールフレーム、M659はステンレスフレームを採用している。M559はアメリカ軍の制式拳銃トライアルに参加したが、ベレッタM92に敗れて不採用となった経緯がある。その後、1980年からはアメリカ市場で販売された。
S&W M645
S&W社が初めて開発したダブルアクション方式の.45口径自動拳銃。コルト・ガバメントの使用弾である.45ACP弾を使用する。後にM645ベースのシングルアクション式競技用拳銃として「M745」が発売された。M645の第三世代型は「M4506」と呼ばれる。
S&W M3913
M39に若干の改良を加えて短縮したモデルで、アメリカにおける女性の護身用として開発された「M3913 レディスミス」というモデルも存在する。M3913は日本警察が制式採用[2]しており、 2005年には、北海道警察SATと見られる部隊が訓練で使用している。また、2008年6月に埼玉県川越市で発生した立てこもり事件で埼玉県警察RATSが使用、静岡県警銃器対策部隊が近年の訓練で使用しているほか、制服警官への配備も確認されている。
S&W M4506
M645の第三世代型。ブラックのモデルのM4505も存在する。
S&W M5906
基本的にはM59の第三世代型であるが、グリップが握りやすいワンピースグリップとなるなど、従来のモデルと比べると全体的にスタイリッシュなデザインとなった。日本では海上保安庁が採用している。コンパクトモデルの「M6906」も製造された。
S&W 3566
1993年にバリエーション追加された、M59ベースの競技用拳銃。S&W本社ではなく、カスタム部門である「S&Wパフォーマンスセンター」の手によるもので、その事から「PC356」とも呼ばれる。専用開発の.356TSW弾を発射し、9mm程度の口径ながら45口径と同程度のストッピングパワーを発揮するとされる(.40S&W弾10mmオート弾の考え方に近い)。しかしながら現在、本体・弾薬ともにカタログ落ち状態である(そのため、実銃の世界では非常にレアな銃と化している)。ただし、日本ではエアガンとして「PC356」の名で本銃をモデルアップしており、日本での知名度は高い。
S&W M4006TSW
カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールのオフィサーのみに支給される特注品で市販されていない。口径.40S&W、銃身下部にタクティカルライトレール、左側面に「CHP」の文字と携行者のバッジナンバーが刻まれている。

登場作品[編集]

補足[編集]

  1. ^ ハッシュパピー(Hushpuppy)とはトウモロコシ粉で作るドーナツのようなアメリカ独特の軽食。狩猟の際にも野外で作られる事があり、その際は狩猟犬に与える事もあるという。
  2. ^ 採用当初は暴力団担当の捜査員に配備していた

外部リンク[編集]