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OK コンピューター

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OK コンピューター (Ok Computer)
レディオヘッドスタジオ・アルバム
リリース
録音 1996年7月~1997年3月
ジャンル オルタナティヴ・ロック
時間
レーベル パーロフォン
キャピトル
プロデュース ナイジェル・ゴッドリッチ
レディオヘッド
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 16位 (日本)
  • 1位 (UK)
  • 21位 (US)
  • レディオヘッド アルバム 年表
    ザ・ベンズ
    1995年
    OK コンピューター
    1997年
    Kid A
    2000年
    テンプレートを表示

    OK コンピューター』はイギリスロックバンドレディオヘッドの3rdアルバム。1997年にリリースされ、同アルバムからは"Paranoid Android"、"Karma Police"、"No Surprises"がシングルカットされた。また、『No Surprises - Running From Demons(JP)』や『Airbag/How Am I Driving(US)』などの各国限定のEPもいくつかリリースされた。UKアルバムチャート初登場1位、そしてアメリカのアルバムチャートでは初登場21位を記録し、デビュー以来のチャート最高記録を更新。600万枚以上売り上げる。この『OK コンピューター』でレディオヘッドは世界的な人気を得ることとなり、文字通りバンドの出世作となった。

    2008年現在までイギリスではトリプル・プラチナ、アメリカではダブル・プラチナに認定されている。2005年にチャンネル4が行なった「偉大なアルバム・トップ100」視聴者投票では一位を記録。ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500では162位(2011年現在まで活動している90年代以降のバンドのアルバムとしては『ザ・ベンズ』に続いて2位)。

    制作

    無理なツアープロモーションのおかげで難産だった前作『ザ・ベンズ』の二の舞を避けるため、EMIは制作権限の多くをバンドに譲り、アルバムはナイジェル・ゴッドリッチ&バンドのセルフ・プロデュースという形で、バンド自身が改築したキャンド・アプローズ(拍手喝采の缶詰の意)スタジオと、借用した大邸宅セント・キャリンズ・コートの二ヶ所で制作された(メンバーによれば、「トイレすらない場所とトイレが7つもある場所で作った」)。

    トムの頭の中には、大々的にアルバム制作に取り掛かる以前から、今作に対する凝り固まったいくつかのアイデアがあった(Exit Music/エドの発言)という。特にアルバム全体を貫く歌詞の象徴的な論旨については、アルバム制作時点から完成まで大きな路線変更はなかったとされる。逆に音楽的な面では二転三転し、制作半ばにおいて「いわゆる商品になるレベルにはとっくに達していたが、そこから三分の二近くをぶち壊して再構成することになった」(同/ナイジェルの証言)という。また、「ナイジェルがミキサーの前でいろんなパラメータをいじくって、トムがそれに対して偏執的に質問をぶつけているんだ。そしてある瞬間で「これだ、今の音だ」ということになるわけさ。傍から見ていると笑える光景だよ。」(同/コリン)「OK コンピューターは、素晴らしい土台の上にアクシデントを詰めて一時間にパックしたもの」(同/ジョニー)という発言に裏付けされるように、ゴールを決めてそこに接近していくというよりも、ある種の実験性を伴って作品の制作が進められた。

    この時期に制作されたデモ音源は『OK コンピューター』やB面に入らなかったものを含めて相当数あり、その多くは何度もライブで演奏されつつ、大きくリアレンジされたり歌詞が全く変わったり、時にはタイトル以外全てが変わったりなどして、これ以降のアルバムに収録され続けている。

    リリース

    制作開始から一年弱で『OK コンピューター』は出来上がった。制作終了時、メンバーは仕上がりに大いに満足した(同Exit Musicより)という。

    しかし、アルバムがビッグヒットを狙った大衆に分かりやすいコマーシャルなものではなかったことに対し、主に一部の契約レーベル関係から非難の声が上がった。このような動きに対して、メンバーは自信を幾分喪失したという。トムは2001年Q誌に次のように語った。「やっている時は、もの凄く特別なことをやっているように思えたんだけど、作ってみたらレーベルの反応が良くない。だからとても心配になる。僕らは一度成功しているし、ここで躓いたら「そうか、失敗したのか。それじゃやり方をもう一度教えてやるよ」って、首輪をはめられるのは分かっていたからね。」

    しかしながら、発売直後のメディア/プレスの評価自体は軒並み高かった。セールス的には、イギリスでは初めてチャート初登場1位となり、1997年のアルバムセールスランキングで年間ベスト8を記録した。アメリカでは初登場21位から徐々にチャートを下げていったものの、年明けに圏外から100位以内に復帰し、最終的には発売からちょうど一年後にビルボード37位まで再浮上するなど、1997~98年に渡って前作以上のロングセールスを記録した。結果的に、少なくともセールス的にはメンバーの心配は杞憂に終わり、OK コンピューターはレディオヘッド初めての世界的なヒット作となった。

    1997年のグラストンベリー・フェスティバルにおいて初めてフェスのトリを務め、その評判があまりに圧倒的であった(後年のランキングなどでもこのライブはよく上位にランクインする。しかしながら、メンバーは諸々の事情で、この年のグラストンベリーは心から楽しめた公演ではないと明かしている。)ことなども、その驚異的なロングセールスの要因となった。

    プロダクション

    冒頭曲"Airbag"、"Paranoid Android"などに顕著なジャンルを跨いだ複雑な音楽性と、元来バンドが持つ叙情的メロディ、そして第三世界を無視する中産階級事なかれ主義新自由主義に対する異論を含んだ歌詞との融合は、多くのメディアから高い評価を受けている。ナイジェル・ゴッドリッチによる、自家製スタジオでのレコーディングとは思えないほどのクリアかつダイナミックな音処理も評価が高く、しばしばミキシングにおけるハウツー盤としても挙げられる。

    タイトルを「コンピューターが(は)OK」のように文章として想起するのは非英語圏のニュアンスであり、ネイティブイングリッシュのニュアンスで考えると「OKと発音する(許可を出す)コンピューター」という架空の固有名詞として読むのが自然である。よって、本来はコンピューター賛美とは全く無縁で、むしろ疑問を呈すようなシニカルな意味合いが強いタイトルなのだが、日本では様々な雑誌メディアや音楽ライターに誤解/曲解されて解説されることがよくある。

    音楽的には、ほぼすべての曲ではエレクトリックギターピアノ/シンセサイザー、ベース、ドラムストリングスまたはそれらのサウンドの加工によって音像を構築しており、ラップトップハードディスクプリセットなどの本格的なコンピューターサウンドは次作『Kid A』とは違い、一部を除いてほとんど使われていない。そのため、その特徴的な音像とは裏腹に、基本的には有機的な楽器で作られたアルバムであると言える。

    収録曲

    作詞/作曲は全てトム・ヨークジョニー・グリーンウッドフィル・セルウェイエド・オブライエンコリン・グリーンウッド

    1. エアバッグ - "Airbag" – 4:44
    2. パラノイド・アンドロイド - "Paranoid Android" – 6:23
    3. サブタレニアン・ホームシック・エイリアン - "Subterranean Homesick Alien" – 4:27
      フェンダー・ローズ・ピアノのバッキングで歌われる3拍子の曲。トムはマイルス・デイヴィスビッチェズ・ブリューからの影響が色濃いと語っている。完成まで何度かタイトルが変わっているが、最終的にはボブ・ディランの曲をもじったこのタイトルになった。
    4. エグジット・ミュージック - "Exit Music (For a Film)" – 4:24
      バズ・ラーマン監督作品『ロミオ+ジュリエット』のエンドロールのために書かれた曲。元は映画のサウンドトラック行きの曲だったがバンドは拒否し、同アルバムに収録されることになった。ちなみに同じくロミオとジュリエットを題材としているフランコ・ゼフィレッリ監督の同名の映画をトムはスクール時代に見た経験があり、それを思い出しながら歌詞を書いたという。伝記作家ジェイムズ・ドヘニーの評では「まさに墓場のような響き」。トムはこの曲を「目眩がするほど素晴らしい」と評している。
    5. レット・ダウン - "Let Down" – 4:59
      最後のシングル用の曲だったが、PVの採算が合わないことから撮りやめになった。「フィル・スペクター賛歌(厚い音の仕上がりを評して)」とエドとコリンは語っている。歌詞のイメージは「"Let Down"はスピードと移動が人の心に及ぼすもの」(ジョニー)だという。歌詞は難産で、特に「Crushed like~(虫のように地面に叩きつけられて)」「Wings twitch~(羽は痙攣し、脚は腐っていく)」の部分は何度も書き直したという。最終テイクはセント・キャリンズコートでナイジェルがいない中、夜中の3時頃に録音された。Mojo誌のキース・オールディンのレビューにおいての今曲の評は「とろけるようなアルペジオ。最後の一分間のまたたきは、およそこの世のものとは思えない」。
    6. カーマ・ポリス - "Karma Police" – 4:22
    7. フィッター・ハッピアー - "Fitter Happier" – 1:57
      コンピューターボイスに歌詞を読ませる曲。発音がやや不自由だが、あえてそれをメンバーが気に入って利用している。アルバムのターニングポイントになっているほか、その歌詞がかなり鮮烈である(いわゆる典型的イギリス人中産階級の「望みリスト」を長々と挙げたのち、それに対するシニカルなオチが待っている)ため、当初はプロモーションの一環としてPVが作られる構想があった。
    8. エレクショネアリング - "Electioneering" – 3:51
      アルバム中BPMが最も速い曲。歌詞はノーム・チョムスキーの著作から大きく影響されている。「選挙期間中は正論を吐きます。諸君の一票に期待しています。単なるビジネスなのですよ。牛肉加工品、国際通貨基金。諸君の一票に期待しています」というヴァースの歌詞で、現代政治家を大いに皮肉っている。
      「音楽的に単なるイギー・ポップソング」とはジョニーの弁。トムはこの曲のフィルのドラムを気に入っているという(共に当時のロッキング・オン)。アルバムリリース前から、同アルバムの曲の中で最も早い時期にほぼ完成版に近い状態でライブで演奏されていた曲。(1996年オランダピンクポップフェスティバルなど)
    9. クライミング・アップ・ザ・ウォールズ - "Climbing Up the Walls" – 4:45
      ストリングストランジスタラジオフットベースが使われ、ノイズと叫びの不協和音でクライマックスを迎える曲。家庭内殺人をモチーフにした歌詞を「閉所恐怖症的」とメンバーは語っている。Mojo誌のキース・オールディンのレビューにおいての今曲の評は「黒ぐろしいかたまりのような音」。
    10. ノー・サプライゼズ - "No Surprises" – 3:49
    11. ラッキー - "Lucky" – 4:20
      元は戦争孤児チャリティ用コンピレーションアルバム用の曲として先行リリースされた曲。日本ツアー中にエドが何気なく弾いた、ナット上のを鳴らした時の高音をヒントに生まれた。収録曲の中では最も古くに完成された曲。前作『ザ・ベンズ』後に今まで陰鬱な歌詞ばかりを書いてきたトムが内省し、なるべくポジティブな事柄を曲にしようと試していた期間に書かれている。「"Lucky"は完全な解放の歌」(トム/ロッキンオン誌の記事=NMEのインタビュー)として仕上がったが、「アルバム全体としてはそうはならなかった」(同)という。ちなみにチベタン・フリーダムコンサートではR.E.M.のメンバーとこの曲をデュエットし、2003グラストンベリー・フェスティバルではそのこともあってか、この曲の前にトムはMCで「あっちで演奏しているR.E.M.に捧ぐ」と語った。
    12. ザ・ツーリスト - "The Tourist" – 5:25
      ジョニーがほぼ一人で完成させた3拍子の曲。最後はベルの音で曲とアルバムが締めくくられる形になっている。トムの評は「愉快なくらいにピンク・フロイドっぽい」。

    外部リンク

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