NVIDIA Tegra
NVIDIA Tegra(エヌビディア テグラ)は、NVIDIAによるARM系の省電力統合型プロセッサのシリーズ。スマートフォンやタブレット型コンピュータ、自動車のインフォテインメントシステムなどに使用されている。2011年11月に、最新版となるTegra 3を発表した。
構成
Tegraには独立したプロセッサが機能別に搭載されており(ARMプロセッサ、GPU、2Dエンジン、HD動画のエンコーダ・デコーダ、オーディオ処理、画像処理)、使っていない機能のプロセッサは電源が遮断される。これにより消費電力を格段に下げることを可能とした(100~500mW程度)[1]。 現在Tegraの最新版となるTegra 3は、4つのARMプロセッサと1つのコンパニオンコアを搭載する。利用するアプリケーションに応じて、駆動するコア数を動的に切り替えることで、Tegra 2に比べて動画再生時に最大60%、ブラウザ利用時に最大30%の消費電力を抑えられる[2]。
特徴
- 省電力でありながらグラフィック性能が高い
- コンピュータに必要な機能が1枚のチップに収まっているので、チップセットの面積が非常に小さい
- 世界初のクアッドコアARM Cortex A9 CPUを搭載 (Tegra 3)
- 低周波数で低消費電力動作を実現する第5のコンパニオンCPUコアを搭載 (Tegra 3)
仕様
仕様は次の通り[3]。
Tegra APX 2500 Tegra APX 2600 |
Tegra 600 | Tegra 650 | Tegra 230 | Tegra 250 | Tegra 3 | |
---|---|---|---|---|---|---|
アーキテクチャ | ARM11 | Cortex-A9 | ||||
CPUクロック(GHz) | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 1.0 | 1.5 (シングルコア) 1.4 (クアッドコア) | |
CPUコア数 | 1 | 2 | 4 + 1 (バッテリーセーバーコア) | |||
GPUコア数 | 8 | 12 | ||||
画面解像度 | 854x480 (LCD) 1280x1024 (CRT) 1280x720 (HDMI) |
1280x1024 | 1680x1050 | 1024x600 (LCD) 1280x1024 (CRT) 1920x1080 (HDMI) |
1680x1050 (LCD) 1600x1200 (CRT) 1920x1080 (HDMI) |
2048x1536 (LCD) 1920x1200 (CRT) 1920x1080 (HDMI) |
動画デコード (H.264, WMV9/VC-1) |
720p@30fps | 1080p@24fps | 1080p | 1600p | ||
メモリ | Mobile DDR-333 166MHz |
Mobile DDR-400 200MHz |
シングルチャネル Mobile DDR2-600 |
シングルチャネル Mobile DDR2-600 DDR2-667 |
シングルチャネル DDR3-L 1500 LPDDR2-1066 | |
浮動小数点 | VFPv3-D16対応 (通常のVFPv3に対してレジスタ数が半分) |
VFPv3 | ||||
SIMD | 対応 | |||||
NEON (Advanced SIMD) |
未対応 | 対応 |
3Dグラフィック性能
Tegra 650の3Dグラフィック性能は「GeForce 6」シリーズ相当で、『Quake III Arena』を46fpsで実行できる[4]。Tegra 250は1024x600の解像度を60fpsで実行できる[5]。
Tegra 3は12コアのGeForce GPUを搭載することで、Tegra 2の3倍程度のグラフィックス性能を持つとされる[6]。また、最新のビデオ・エンジンを実装することで、1080pのビデオを40Mbps程度で再生することが可能[6]。このほか、ステレオスコピック3Dにも対応する。
メモリ帯域
ARM でデュアルコアで DDR2 SDRAM を利用している CPU はデュアルチャネルを採用しているのが多い中、Tegra 2 と Tegra 3 はシングルチャネルを採用している。
省電力性能
- 「4-PLUS-1」
メインとなる4つのコアに加え、低性能・低消費電力のコンパニオンコアを状況に応じて活用する技術。端末のパフォーマンスが必要なときは4つのコアから必要な数のコアを使い、不要なときは低消費電力のコンパニオンコアだけで動作して全体の消費電力を削減する。ビデオ再生時では最大61%、Web閲覧では最大30%の消費電力の削減が可能[7]。
- PRISM Display Technology(プリズム・ディスプレイ・テクノロジ)
液晶の消費電力を低減するための技術。液晶に表示される画像・動画のピクセル1つ1つを分析して、色を明るい色に塗り替えることで、バックライトを暗くしても同じ明るさを維持することで、バックライトの消費電力を最大40%削減できる[8]。
- DirectTouch(ダイレクト・タッチ)
タッチパネルの消費電力を削減するソリューション。タッチパネルを制御する専用コントローラーの機能をTegra 3に内蔵することで、消費電力を低減する。また、タッチパネルの制御にTegra 3のパフォーマンスを活用できるため、タッチレスポンスが向上する[8]。
用途
Tegra APX 2500は携帯電話などの搭載に適しており、Tegra 600/650はUMPCなどの搭載に適している。また、Tegra 3はスマートフォンやタブレット端末への搭載に適している。同チップを搭載する端末では、テレビに繋いで大画面に出力できるほか、対応するPS3、Wii、Xboxなどのゲームコントローラーをつなげて、家庭用ゲーム機レベルの3Dゲームが楽しめる[8]。
なお、Tegraシリーズは、クアルコム社のモバイル向けプロセッサSnapdragonや、TI社のモバイル向けプロセッサOMAPなどと競合するものと考えられる。
サポートするOS
Windows CE 6とAndroid[9]、Linux[10]、Windows RT[11]。
Tegraを搭載した製品
- Tegra 2
- スマートフォン
- タブレット端末
- ASUS Eee Pad Transformer TF101・Eee Pad Slider SL101・Eee Pad TF101-WiMAX
- Motorola XOOM(TBi11M)
- Acer Iconia Tab A500・A100
- シャープ GALAPAGOS A01SH・EB-A71GJ-B
- ソニー Sony Tablet S・P
- 東芝 REGZA Tablet AT3S0/35D・AT300/24C
- LG OputimusPad(L-06C)
- ノート型端末
- ポータブルメディアプレイヤー
- ソニー WALKMAN Z
- 埋め込み用
- Avionic Design 多聞天 (Tamonten) Processor Module[12]。
- Tegra 3
- スマートフォン
- HTC HTC One X
- LG Optimus 4X HD
- 富士通MC ARROWS Z (ISW13F)
- 富士通 ARROWS X F-10D
- タブレット端末
- ASUS Asus Eee Pad Transformer Prime TF201
- ASUS ASUS Pad TF300T[13]
- 東芝 REGZA Tablet AT830/T6F・AT570/46F,36F・AT500/46F,36F,26F
- スマートフォン
引用・参照
- ^ 【PC Watch】 【COMPUTEX 2009レポート】NVIDIA、Tegraベースのネットブックなど多数のデザインウインを明らかに ~国内キャリアからも登場か
- ^ IT MEDIA - Tegra3が実現する「最高の性能と最小の消費電力」
- ^ NVIDIA Tegra FAQ
- ^ 4Gamer.net ― NVIDIAのMichael Rayfieldゼネラルマネージャーに聞く,Tegraの現在と今後(Tegra)
- ^ NVIDIA Tegra Multi-processor Architecture
- ^ a b IT MEDIA ― NVIDIA、「Tegra3」を正式に発表
- ^ NVIDIA - 低消費電力と高性能を両立させるマルチコCPUーキテクチャー
- ^ a b c MYNAVI NEWS - 最小消費電力で最大パフォーマンスを目指す「Tegra3」 - NVIDIAが説明会を解説
- ^ NVIDIA Tegra
- ^ Downloads | Tegra Developer Zone
- ^ Microsoft,「次期Windows」におけるARMサポートを公表 - 4Gamer
- ^ “Avionic Design Tegra 2 (T290) Tamonten Processor Module - Product Brief”. Avionic Design. 2012年5月30日閲覧。
- ^ “ASUSTeK、「Eee Pad」を「ASUS Pad」に改名~第1弾はTegra 3搭載の「TF300T」”. Impress PC Watch. (2012年5月17日) 2012年5月17日閲覧。