13の月の暦

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13の月の暦(じゅうさんのつきのこよみ)は、1990年頃にニューエイジであるホゼ・アグエイアスとロイディーン・アグエイアス(Lloydine Arguelles)の夫妻によって提案された暦法ドリームスペルとも呼ばれる。この暦法は、1かを28、1を13か月とすることを主体として構成されている太陽暦である。13の月の暦はグレゴリオ暦の不合理を改める暦法として提案されたが、同種の13か月の暦法は歴史上何度も改暦案として提案されている。本項では「13の月の暦」以外の13か月の暦法についても述べる。

28日と13か月の意義

28日の暦月は1朔望月(約29.53日)と近似ではない。したがって、暦月は朔望月とは必ずしも一致しない。暦月として28日が採用されたのは、暦月を7日の周期()の倍数としたからである。7日周期はバビロニア以来の数千年の伝統を持ち、またアブラハムの宗教において神との契約とされている安息日を取るべき周期として神聖視されている。また、アグエイアスは女性の月経周期が約28日であることなどを理由に、13か月と28日が自然に適応したリズムであると主張している。なお、暦注のひとつである二十八宿は28日で循環する周期だが、13の月の暦とは関係がない。

28日と13か月の積は364日となる。太陽暦なので太陽年(約365.2422日)との差を調整することが必要となる。このため、13の月の暦では13か月のほかに「時間をはずした日」を年末(7月25日)に1日付加する。

概要

マヤ文明の思想を取り入れているが、この暦法自体はマヤ文明では用いられていない。日本においてこの暦法が発表されたのが「マヤン・カレンダー」という題名の本であったため、その後、13の月の暦を「マヤ暦」と誤解した出版物や記述が増えている。

ドリームスペル暦(ハーモニック・インデックス)の構成単位であるキン(Kin)には1から13までの数字に対応する「銀河の音(Galactic Tone)」と20種類のマークからなる「太陽の紋章(Solar Seal)」の組み合わせが与えられ、全体として13×20=260の周期をもつ。キンには1日、4日、1週間、1か月、1年、20年……とさまざまな長さの時間を当てはめることができるとされるが、このうち1日を単位としたものが260日周期の暦として用いられる。

13の月の暦はグレゴリオ暦の7月26日を1年の始まりとして閏年を置かないのが基本であり、グレゴリオ暦でいう閏日に相当する部分は、52年に一度13日にわたって消化されるのが本来であるとされる。ただし、現実の13の月の暦の運用ではグレゴリオ暦と日付を1対1に対応させるために、グレゴリオ暦で2月29日に当たる日(閏日)は「0.0フナブ・クの日」とよび、13の月の暦の枠組みからはずれたもうひとつの時間をはずした日として処理される。

ドリームスペル暦(ハーモニック・インデックス)は365日周期の暦とも複合的に用いられる。例えば、13ある月はそれぞれ銀河の音の数字に対応し、それぞれの年は1年を単位とする13の月の暦に対応した呼び名がつけられる。銀河の音と太陽の紋章にはそれぞれ固有の性質があるとされ、260種類のキンにはそれぞれの性質の組み合わせを簡潔にまとめた「キンの書(Book of Kin)」が添えられている。このキンの性質の考え方はその日やその年などの時間だけでなく人間に対しても用いられ、各人の誕生日におけるキンが「銀河の署名(Galactic Signature)」と呼ばれてその人の性質に対応するとされる。

また、銀河の音のもつ13の周期の中にも4を周期とする「パルサー(次元パルサー、Dimension Pulserとも)」や5を周期とする「倍音パルサー(Overtone Pulser)」が存在したり、太陽の紋章にも赤・白・青・黄色の4色の周期が存在する。これらは日ごとや月ごとなどの様々な時間単位に当てはめられ、さまざまな時間のリズムを作り出す原動力となるとされる。このように13の月の暦には様々な種類の周期がさまざまな長さの時間単位について存在し、時間や人間の持つ(キンに由来する)性質なども考慮しながら、それらのリズムのありかたを提案する。

現在日本において13の月の暦は商品化もされており、カレンダーや手帳、日記も発売されている。

利点と欠点

利点
  • 毎月が同じ暦表(カレンダー)なので1か月分の暦表が永久に使え、そのつど作りなおす必要がない。
  • 1か月の日数が(余日を除いて)すべて同じであること。違う月でも同じ日は必ず同じ曜日であり、毎年同じ日付が同じ曜日にあたる。
欠点
  • 1年の月数が13という素数のため半期や四半期で日数が均等にならず不便になる。
  • 13という数がキリスト教徒忌避されているため、キリスト教徒の共感が得られにくいこと。
  • グレゴリオ暦の不合理を改める暦法として提案されているものの、7月26日にあたる日を1年の始まりとする合理的かつ客観的な根拠が存在しない。

なお欠点のうち、グレゴリオ暦の7月26日を1年の始まりとする件に関して、「13の月の暦」では以下の点をその根拠に主張している。

  • マヤの伝統では7月26日が正月である。
  • 7月26日はシリウスヘリアカル・ライジング(日の出の直前に太陽を伴うかのようにシリウスが地平線から昇る現象)にあたり、地球と太陽、銀河のリズムを同期させる日という意味合いがある。
  • 7月26日は太陽の南中時刻の変化点にあたる(それまで日々遅くなっていた太陽の南中時刻が7月26日を境に今度は早まっていく。「13の月の暦」を最初に日本に紹介した天体周期研究家 高橋徹が唱えた説)。

しかしながら次のとおり、そのいずれもが事実誤認や客観性、合理性のない主張であることが指摘されている。

  • マヤの伝統において、7月26日が年の始まりであるという事実は存在しない。マヤの太陽暦にあたるハアブ暦では、春分が年の始まりである。
  • シリウスのヘリアカル・ライジングはエジプトで重要視されていた現象であり、マヤ暦とは関係がない。古代エジプトでヘリアカル・ライジングと1年の始まりを関連づけていた事実はあるが、これは豊穣をもたらすナイル川の氾濫がこの時期にあたっていたためであり、マヤの思想をベースにした暦に脈絡を無視してエジプトの伝統を組み込むのは合理性を欠く。さらに地球の歳差運動やシリウス固有の運動により、現在のヘリアカル・ライジングは7月26日ではない。
  • 南中時刻が遅くなる、あるいは早くなる境にあたる日は正確に7月26日というわけではなく、また南中時刻変化点は年に4度あり、その中から特別に7月26日を選択する合理的理由がない。仮にコンマ秒以下の単位まで計算して7月26日を特定できたとしても、それをもって年の始まりとするにはあまりにも根拠が薄く、無理がある。

他の13か月の暦法

以下に、本項の「13の月の暦」以外の1年を13か月とする暦法を示す。太陰太陽暦では、およそ19年に7回の周期(メトン周期)で閏月が付加されることにより1年が13か月となるが、日本の旧暦をはじめそれらのほぼ全てで「13の月」ではなく「うるう6月」のように直前の月の重複とされるので、本項ではそれらは対象とせず、太陽暦において月の数を13とするものを示した。

13の月の暦と異なり、閏年には閏日としてさらに1日(計2日)を付加し、1暦年を365日または366日とするのが一般的である。暦法によっては平年364日、閏年371日として7の倍数を固守するものもある。

実証暦

実証暦英語版は、1849年フランス哲学者オーギュスト・コントによって提案された暦法。余日と閏日を除くすべての月と日に、歴史に強い影響を与えた人物の名がつけられている。月の名前は1月から順にモーセホメロスアリストテレスアルキメデスカエサル聖パウロカール大帝ダンテグーテンベルクシェイクスピアデカルトフリードリヒビシャー英語版である。余日は「死者を祭る日」、閏日は「聖なる女性を祭る日」として年末に付加される。

国際固定暦

国際固定暦は、1930年代に提唱された暦法。アメリカ合衆国ニューヨークおよびイギリスロンドンにおいて、イーストマン・コダック社の創業者ジョージ・イーストマンにより国際固定暦連盟(The International Fixed Calendar League)が結成され、その団体により提唱された。6月と7月の間に「新しい月」ソル(Sol)またはミディ(Midi)を置く。余日は年末に、閏日は6月と「新しい月」の間に置かれる。曜日が固定されており、各月の1日は常に日曜日であり、28日は常に土曜日である。余日および閏日には曜日が置かれない。国際固定暦連盟は全世界的な暦法改革をめざし、国際社会において世界暦を提唱する世界暦協会と対立していたが、現在に至るまでどちらも国際社会に採用されていない。

パックス暦

パックス暦英語版は、1930年ジェームズ・A・コリガンにより提案された暦法。11月と12月の間に「新しい月」コロンブス(Columbus)を置く。余日を置かず、平年を364日とし、閏年には丸ごと1週間を増やして371日とすることによって7日周期を固守する。この1週間はパックス(Pax)と呼ばれてコロンブスの後に置かれる。やはり曜日が固定されており、各月の1日は常に日曜日であり、28日は常に土曜日である。閏年の置き方も独特で、西暦紀元を100で割った余りが6で割り切れる年のうち400の倍数でない年と、西暦紀元を100で割った余りが99となる年である。

参考

外部リンク