金峰山晴樹

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金峰山 晴樹
基礎情報
四股名 金峰山 晴樹
本名 Ерсін Балтағұл
バルタグル・イェルシン
愛称 イェルシン、キンちゃん、サモハン
生年月日 (1997-06-24) 1997年6月24日(26歳)
出身 カザフスタンの旗 カザフスタンアルマトイ州
身長 192.0cm
体重 174.0kg
BMI 47.2
所属部屋 木瀬部屋
得意技 突き、押し[1]
成績
現在の番付 東前頭7枚目
最高位前頭5枚目
生涯戦歴 111勝72敗2休(15場所)
幕内戦歴 52勝51敗2休(7場所)
優勝 幕下優勝1回
三段目優勝1回
敢闘賞1回
データ
初土俵 2021年11月場所
入幕 2023年3月場所
趣味 散歩、映画鑑賞
備考
カザフスタン出身者初の幕内力士
2024年3月24日現在

金峰山 晴樹(きんぼうざん はるき、1997年6月24日 - )は、カザフスタン共和国アルマトイ州出身[2]で、木瀬部屋所属の現役大相撲力士。本名はバルタグル・イェルシン。身長192.0cm、体重174.0kg。最高位は東前頭5枚目(2023年5月場所)。

来歴[編集]

来日前は柔道をしていたが、ドルゴルスレン・ダグワドルジ(元横綱・朝青龍)の紹介で18歳の時に日本の日出高校(現・目黒日本大学高校)に編入学し、相撲を始めた[3]日本大学スポーツ科学部競技スポーツ学科に進学後は日本大学相撲部に所属した[2]。3年次(2019年度)に学生選手権団体優勝、全日本選手権個人準優勝の実績を残す[3]。4年次(2020年度)には学生選手権で3位になり、全日本選手権ではベスト16に入った[3]

大学卒業後は日大の勧めで大相撲の世界へ進むことになり[2]、日大OBが師匠の木瀬部屋に入門した[3]。木瀬部屋としては臥牙丸ジョージア(旧グルジア)出身)の後継の外国出身力士である。カザフスタン出身力士としては風冨山以来2人目である。入門後は研修期間を経て2021年9月場所の新弟子検査に合格[3]。興行ビザの取得を待って同年11月場所で初土俵を踏んだ。四股名は、師匠・11代木瀬(元幕内・肥後ノ海)の故郷にある金峰山[注 1]と、日大在学中に死去した元高校横綱で11代木瀬とは大学の同期だった成田晴樹に由来する[1]。本人は四股名の由来となった金峰山を富士山ぐらいのスケールだと想像していたが、実際に足を運んで高尾山ぐらいのスケールと知ってガッカリしたという[4]。2020年全国学生相撲選手権ベスト4のため三段目最下位(100枚目)格付出でのデビューとなり[5]、この場所は7戦全勝で三段目優勝を果たした[6]

新幕下に昇進した2022年1月場所は5勝2敗で勝ち越し。翌3月場所は7戦全勝で幕下優勝を飾った[7]。翌5月場所は西幕下4枚目に番付を上げ、成績次第で十両昇進が見える地位となった。この場所では6番相撲で5勝1敗とこの時点で新十両昇進の可能性が生まれた[8]。千秋楽の7番相撲で初めて十両の土俵に上がり、東十両5枚目の北の若と対戦。"入れ替え戦"の意味合いが強かった一番だったが突き落としで敗れ5勝2敗となり、新十両は見送られた[9]。翌7月場所は西幕下筆頭の地位で6連勝、7番相撲で吉井に敗れ優勝こそ逃したものの6勝1敗の好成績で終え、場所後の7月27日に開催された番付編成会議にて新十両昇進が発表された[10]。新十両昇進の際に「世界的に関取はいるけど、カザフスタンで初めてが一番大事。うれしいなあ」と誇らしげに笑い「『けがをしないように』と師匠の言うことをちゃんと聞いて、上がることができてよかった」と振り返った。9月場所から15日間相撲を取ることになる上でのアドバイスとして師匠は「心のスタミナをつけてほしい」と訴えた。本人は「(目標は)何もないですけど、上ばかり考えて上がれなかったらアウトなので、幕内なら幕内で1つずつ考えたい」と抱負を語った[11]。その9月場所は13日目に勝ち越しを確定させ、勝ち越しを決めた際にはこの場所で初めての十両の土俵を「やっぱり疲れるなと。幕下とは全然違う。慣れるしかないなと思う」と初々しく語った[12]。千秋楽に栃武蔵との新十両対決を制して10勝5敗と二桁勝利を挙げた[13]。初めて髷を結って迎えた11月場所では千秋楽に勝ち越した。2023年1月場所では東十両5枚目の地位で11勝4敗の成績を挙げ、場所後の新入幕が濃厚となった[14]。3月場所で新入幕し東前頭14枚目に昇進、カザフスタン出身初の幕内力士となった。日本国外出身としては2022年9月場所の水戸龍(モンゴル)以来52人目で、日本大学出身としては同じく水戸龍以来40人目、木瀬部屋としては2019年5月場所の志摩ノ海以来の新入幕となる[15]。新入幕会見では「できれば1、2場所ぐらいは早く上がりたいなと思っていた」と語り、師匠の木瀬も「突っ張りを磨けば9割は勝てますから。三役ぐらいまでは突っ張っていってほしいですね。勝ちにこだわらず、小手先で取らない相撲をしてほしい」と願った。本人は「関取を目指して、また若い衆が来てほしいです」と期待していた[16]。この場所は11勝4敗で自身初の三賞である敢闘賞を受賞[17]。翌5月場所の番付は東前頭5枚目と9枚上昇し、この場所の関取(十両以上)の中では最大の上昇幅となった[18]

取り口[編集]

基本は突き押しを得意とするが、四つや投げなど多彩な技もある。新十両となる2022年9月場所の前には自ら相撲の型を「右四つでも左四つでも。つっぱりでも」と説明し、決して定まっていないわけではなく「相撲は何とかなったら、何とかしないといけない。どっちでもいけるようにしている」と土俵上で柔軟に対応するために四つも突き押しも磨いているという[19]

主な成績[編集]

2024年3月場所終了現在

スピード記録[編集]

  • 三段目付出デビューから新入幕までの所要場所数:8場所(歴代2位)

通算成績[編集]

  • 通算成績:111勝72敗2休(15場所)
  • 幕内成績:52勝51敗2休(7場所)

各段優勝[編集]

  • 幕下優勝:1回(2022年3月場所)
  • 三段目優勝:1回(2021年11月場所)

三賞・金星[編集]

  • 三賞:1回
    • 敢闘賞:1回(2023年3月場所)

場所別成績[編集]

金峰山 晴樹
一月場所
初場所(東京
三月場所
春場所(大阪
五月場所
夏場所(東京)
七月場所
名古屋場所(愛知
九月場所
秋場所(東京)
十一月場所
九州場所(福岡
2021年
(令和3年)
x x x x x 三段目付出100枚目
優勝
7–0 
2022年
(令和4年)
西幕下59枚目
5–2 
西幕下34枚目
優勝
7–0 
西幕下4枚目
5–2 
西幕下筆頭
6–1 
西十両12枚目
10–5 
西十両7枚目
8–7 
2023年
(令和5年)
東十両5枚目
11–4 
東前頭14枚目
11–4
東前頭5枚目
4–11 
東前頭10枚目
7–8 
東前頭10枚目
9–6 
西前頭7枚目
8–7 
2024年
(令和6年)
東前頭6枚目
7–8 
東前頭7枚目
6–7–2[注 2] 
x x x x
各欄の数字は、「勝ち-負け-休場」を示す。    優勝 引退 休場 十両 幕下
三賞=敢闘賞、=殊勲賞、=技能賞     その他:=金星
番付階級幕内 - 十両 - 幕下 - 三段目 - 序二段 - 序ノ口
幕内序列横綱 - 大関 - 関脇 - 小結 - 前頭(「#数字」は各位内の序列)

合い口[編集]

2024年3月場所終了現在

(以下は最高位が横綱・大関の現役力士)

(以下は最高位が関脇以下の力士)

力士名 勝数 負数 力士名 勝数 負数 力士名 勝数 負数 力士名 勝数 負数
関脇
碧山 0 1 阿炎 1 0 隆の勝 1 2 大栄翔 0 1
宝富士 3 0 玉鷲 2 2 明生 0 2 妙義龍 3 1
小結
遠藤 2 1 阿武咲 1 2 翔猿 0 2 錦木 1 3
北勝富士 0 3 竜電 0 2
前頭
熱海富士 0 3 一山本 1 1 王鵬 1 0 大の里 0 1(1)
1 0 北の若 1 0 琴恵光 2 2 琴勝峰 0 2
豪ノ山 1 0 佐田の海 2 1 湘南乃海 4 0 大翔鵬 0 2
千代翔馬 2 0 剣翔 2 3 錦富士 2 2 平戸海 3 0
武将山 1 0 北青鵬 1 2 水戸龍 1 0 翠富士 3 2
※カッコ内は勝数、負数の中に占める不戦勝、不戦敗の数。太字は2024年3月場所終了現在、現役力士

改名歴[編集]

  • 金峰山 晴樹(きんぼうざん はるき)2021年11月場所 -

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 道路標識ガイドブックでは、英語表記で「Kinpozan」などという表記も見られるが、金峰山の所在地である河内地区では「きんうざん」と呼ばれている。
  2. ^ 頸椎捻挫のため5日目から途中休場、中日から再出場。

出典[編集]

  1. ^ a b 「十両以下各段優勝力士喜び詳報」『相撲』2021年12月号、ベースボール・マガジン社、69頁。 
  2. ^ a b c 「令和3年秋場所 全新弟子名鑑」『相撲』2021年10月号、ベースボール・マガジン社、97頁。 
  3. ^ a b c d e 「欧勝馬、金峰山が11月場所でデビュー」『相撲』2021年10月号、ベースボール・マガジン社、98頁。 
  4. ^ “大相撲”人気力士所属部屋「ガサ入れ」大騒動!(3)四股名の由来の山を見てガッカリ Asagei+ 2023年11月12日 17:56 (2024年3月6日閲覧)
  5. ^ 学生横綱デルゲルバヤルの幕下、イェルシンの三段目付け出しを承認”. 日刊スポーツ. 2021年11月26日閲覧。
  6. ^ 今場所デビュー金峰山、三段目優勝「ここからという感じ」全勝対決を制す」『日刊スポーツ』、2021年11月26日。2021年11月26日閲覧。
  7. ^ 【幕下】カザフスタン出身の金峰山が7戦全勝でV 千代の海を押し出し、来場所は幕下上位へ」『日刊スポーツ』、2022年3月25日。2022年3月25日閲覧。
  8. ^ カザフスタン出身の金峰山5勝目、十両昇進へ望み「もっと1番、1番集中していけたら」」『日刊スポーツ』、2022年5月18日。2022年5月18日閲覧。
  9. ^ 31歳・千代栄が新十両昇進有力「頑張ってやってきてよかった」“入れ替え戦”制す」『スポニチ Sponichi Annex』、2022年5月22日。2022年5月22日閲覧。
  10. ^ “金峰山と菅野改め栃武蔵が新十両昇進決定 貴健斗は再十両 秋場所番付編成会議”. スポニチ Sponichi Annex. (2022年7月27日). https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2022/07/27/kiji/20220727s00005000249000c.html 2022年7月27日閲覧。 
  11. ^ 金峰山が新十両昇進、カザフスタン出身初の関取に誇らしげ「初めてが一番大事。うれしいなあ」 日刊スポーツ 2022年7月27日12時8分 (2022年7月27日閲覧)
  12. ^ 新十両の金峰山「うれしい」勝ち越し「幕下とは全然違う。慣れるしかないな」初々しく語る 日刊スポーツ 2022年9月23日15時49分 (2022年9月24日閲覧)
  13. ^ “金峰山が栃武蔵との新十両対決制して10勝 ともに2桁勝利の好成績締め”. スポニチ Sponichi Annex. (2022年9月25日). https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2022/09/25/kiji/20220925s00001173374000c.html 2022年9月25日閲覧。 
  14. ^ 十両・金峰山 カザフスタン出身力士で初の幕内入り濃厚 大相撲 毎日新聞 2023/1/22 15:05 (2023年1月22日閲覧)
  15. ^ “【春場所新番付】朝乃山あと1歩で再入幕逃す…フレッシュな新入幕一挙3人も/平幕以下関取編”. 日刊スポーツ. (2023年2月27日). https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/202302260002082.html 2023年2月27日閲覧。 
  16. ^ カザフスタン初の金峰山、所要8場所での新入幕「できれば1、2場所くらい早く上がりたかった」 日刊スポーツ 2023年2月27日16時43分 (2023年2月28日閲覧)
  17. ^ 敢闘賞は金峰山が初受賞、11勝すれば翠富士も初 技能賞は大栄翔と霧馬山 殊勲賞は候補者なし 日刊スポーツ 2023年3月26日13時38分 (2023年3月26日閲覧)
  18. ^ 【夏場所新番付】朝乃山は東前頭14枚目、金峰山は関取最大9枚番付アップ/幕内十両番付 日刊スポーツ 2023年5月1日6時0分 (2023年5月2日閲覧)
  19. ^ カザフスタン出身初の関取金峰山に大器の風格、スピード出世の証し「ザンバラ」姿で秋場所に臨む 日刊スポーツ 2022年9月5日14時16分 (2022年9月6日閲覧)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]