真岡市立図書館

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真岡市立図書館
Moka City Library
外観
施設情報
正式名称 真岡市立図書館
専門分野 総合
事業主体 真岡市
管理運営 図書館流通センター
延床面積 2,555.41[1] m2
開館 1982年7月7日[2]
所在地 栃木県真岡市田町1341番地1
位置 北緯36度26分15.38秒 東経140度00分59.16秒 / 北緯36.4376056度 東経140.0164333度 / 36.4376056; 140.0164333座標: 北緯36度26分15.38秒 東経140度00分59.16秒 / 北緯36.4376056度 東経140.0164333度 / 36.4376056; 140.0164333
ISIL JP-1000520[3]
統計・組織情報
蔵書数 205,713冊(2021年3月31日[5]時点)
貸出数 180,832冊(2020年度[6]
来館者数 98,304人(2020年度[7]
年運営費 116,776,000円*(2021年度予算[8]
条例 真岡市立図書館並びに真岡市立二宮図書館の設置及び管理条例(昭和56年10月1日 真岡市条例第23号)
職員数 12人(2021年現在)[4]
公式サイト https://www.moka-lib.jp/
備考 * 二宮図書館を含む。
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真岡市立図書館(もおかしりつとしょかん)は、栃木県真岡市田町にある公立図書館指定管理者制度を導入しており、図書館流通センターが運営する[9]。「静と動の両立」を掲げ、さまざまな人が集う場としての図書館づくりを目指している[10]

歴史[編集]

市直営時代(1982-2009)[編集]

1977年(昭和52年)3月の第3次市勢発展長期計画で、図書館の建設計画が浮上し、1979年(昭和54年)6月に社会教育委員へ図書館建設が諮問された[2]。社会教育委員は同年9月に答申し、1980年(昭和55年)3月に図書館建設の実施計画が計上された[2]。翌1981年(昭和56年)3月に実施設計が完了し、同年6月に着工、9月には真岡市立図書館設置条例が制定された[2]

館舎は1982年(昭和57年)3月に完工し、同年4月に職員5人が配属され、7月6日の落成式に続き、7月7日から一般利用を開始した[2]。当時からコンピュータを導入していたが、システムはカタカナで運用していた[2]1983年(昭和58年)4月24日に入館者数が10万人、同年6月12日に貸出冊数が10万冊を突破した[2]1984年(昭和59年)8月7日移動図書館を導入し、公募により「ひばり号」と名付けた[2]。同年、真岡文芸協会が当時の図書館長である荒井宗明の呼びかけにより発足し、機関誌「真岡文湖」を毎年発行するようになった[11]

1985年(昭和60年)7月7日、コンピュータシステムが漢字対応となった[2]1988年(昭和63年)1月6日には移動図書館の貸出冊数が10万冊を突破し、1989年(平成元年)12月1日より市立図書館でビデオの貸し出しを開始した[12]。この頃、図書館の収蔵対策が図書館協議会に諮問され、1992年(平成4年)7月1日に安全祈願祭を挙行して増築工事に着手し、1993年(平成5年)2月15日に完了した[12]。増築部は同年3月16日から供用を開始した[13]

1995年(平成7年)7月1日、真岡市公民館真岡西分館図書室とオンラインで結ばれ、1996年(平成8年)7月1日には栃木県央地区と芳賀地区の公立図書館等広域利用が始まり、図書館ネットワークが拡大した[13]。一方、1998年(平成10年)3月31日をもって移動図書館が運用を終了した[13]1999年(平成11年)10月1日、コンピュータの入れ替えにより、それまでOCRだった貸出方式がバーコード式に変更された[13]2001年(平成13年)3月6日、5,103冊の寄贈を受けて元親文庫を開設した[13]。真岡市出身の著述家であった満川元親の遺族らから寄付された満川の蔵書と5000万円によって設立された文庫であり、図書館が開館して以来、最も大きな寄付であった[14]2002年(平成14年)7月7日にはインターネットによる蔵書検索の提供を開始した[13]

指定管理者制度導入以降(2009-)[編集]

2009年(平成21年)4月1日、指定管理者制度が導入され、図書館流通センターによる運営へ移行した[15]。県内では、大平町立図書館(現・栃木市大平図書館)、矢板市立図書館に次ぐ3番目の指定管理者制度導入館である[16]。このとき館長に就任した新井一郎は半導体関連企業の出身で、図書館利用者を「お客さん」と見なして業務に当たるよう指示し、貸出冊数制限を撤廃したり、館長室を授乳室として開放したりといった改革を実行した[17]。また、緊急雇用創出事業を利用して人員を確保し、3桁だった請求記号を4桁化するとともに、細かく見出しを付けて、来館者が本を探しやすくした[18]学校図書館への市立図書館司書の派遣や、栃木県立益子特別支援学校の生徒として図書館で職場体験し、卒業後に就職を希望した知的障害者を雇用するなど、栃木県や日本の公共図書館の中で先駆的な取り組みも実施した[18]

2011年(平成23年)4月1日、茨城県筑西市との間で図書館等広域利用の覚書協定書が締結され、真岡市民が筑西市立図書館で貸し出しできるようになった[15]2013年(平成25年)4月1日に子どもの読書活動優秀実践図書館として文部科学大臣表彰を受けた[15]。同年7月7日には、栃木県のキャラクター・とちまるくんが来館し、真岡市のキャラクター・コットベリーとともに七夕おはなし会&写真撮影会に参加した[19]2017年(平成29年)10月30日に第1回輝く“とちぎ”づくり優秀賞を受賞した[15]

2020年(令和2年)は新型コロナウイルス感染症の流行を受け、3月3日から3月24日までと、4月14日から5月10日まで臨時休館した[15]。これを受け、2021年(令和3年)1月29日電子図書館サービスを開始し、県内最大の4,637点がオンライン上で利用可能となった[15]。電子図書館の導入には、日本政府の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用した[8]

新館建設計画(2017-)[編集]

真岡市では2017年(平成29年)から新市庁舎の周辺整備事業の検討を開始し[20]2019年(令和元年)に図書館を含む複合施設を建設する計画を発表、同年8月に市民ワークショップを2回開催した[21]。2020年(令和2年)には、図書館に子育て支援センター、子ども広場、カフェ、地域交流施設などを併設した延床面積6,000 m2(うち図書館部分は3,000 m2)の施設を構想しており、PFIを導入して費用圧縮を検討していることが公表された[22]

2021年(令和3年)4月25日に投開票が行われた真岡市長選挙では、現職の石坂真一が再選を果たしたが、新図書館の建設中止を公約とした対立候補が1,247票差まで追い上げる接戦となった[23]。その後、設計から建設、管理運営を一括で委託するDBO(Design, Build, Operate)方式で建設することが決まり、同年の12月議会の審査を経て事業者が決定した[20]。複合施設は延床面積6,832 m2の3階建て、図書館の主要機能は3階に配置し、2階に子ども図書室、1階に新聞雑誌コーナーや学習室を置く計画である[20]。2022年(令和4年)2月、図書館を含む複合施設の整備として2億9711万円が予算計上された[24]

利用案内[編集]

真岡市教育委員会生涯学習課が所管し、係相当の組織と位置付けられている[26]。図書館の周囲には、真岡市民会館(市民“いちご”ホール)、真岡市民公園、真岡市総合体育館[18]真岡市科学教育センター[27] など公共施設が集中している[18]

施設[編集]

鉄筋コンクリート造2階建て、敷地面積6,934 m2、延床面積2,555.41 m2の、他の施設を併設していない図書館単独の施設であり、総工費は345,623千円であった[1]。1992年(平成4年)度に753.62 m2(総工費:258,581千円)の増築を行った[1]。開館当時はモダンな建築であったが、2010年代の感覚では威厳を感じさせる外観である[18]

館内[28]
面積(m2 主な施設
2階 465.18 学習室、会議室兼視聴覚室、倉庫
1階 2,090.23 一般開架、児童開架、こどもおはなし室、郷土資料室、福祉室兼ボランティア室、事務室、書庫、車庫

書架を低くし、子供でも本を取りやすくしている[19]。指定管理者に管理が移行する前は、この低書架の天板にも本を並べていたため、館内照明が反射せず、館内が暗くなっていた[18]

特色[編集]

静と動の両立[編集]

真岡市立図書館は「静と動の両立」を掲げている[10]。「静」は学生や大人が読書や勉強にいそしむ環境、「動」は親子連れが遊び場として利用する環境を意味し、さまざまな人が利用できる図書館を目指している[10]

「動」の環境として、2018年(平成30年)度から、平日の10時から12時までを「赤ちゃんタイム」と定め、赤ちゃんが泣いてもいい時間とした[10]。曜日によっては、この時間に読み聞かせを取り入れ、子供を持つ親同士の交流の場を作っている[10]

図書館プロジェクト[編集]

真岡市立図書館は、2015年(平成27年)より障害者就労支援施設「そらまめ食堂」や栃木県立真岡女子高等学校と連携し、毎年障害者週間に合わせて図書館で子供向けのイベントを開く「図書館プロジェクト」を展開している[29]。2018年(平成30年)11月2日に共生社会とちぎづくり表彰の栃木県知事賞(障害者差別解消部門)を受賞した[30]

例年は、そらまめ食堂で働く障害者が作ったキットを使って紙バッグを作る体験、真岡女子高の生徒による読み聞かせ[29]車いす体験、障害に対する理解を促すパンフレットの作成・配布などを行っている[30]。2020年(令和2年)は新型コロナウイルス感染症の流行を受けイベントを開けなかったため、キットを事前に配布し、紙バッグを作った子どもにプレゼントを進呈する企画に変更した[29]

市内の図書館・図書室[編集]

真岡市の図書館・図書室

以下の1館1室は、真岡市図書館基本方針に基づき、真岡市立図書館と一体的に運営されている[31]

二宮図書館[編集]

真岡市立二宮図書館(もおかしりつ にのみやとしょかん)は、栃木県真岡市石島893番地15の二宮コミュニティセンター1階にある公立図書館[32]。真岡市教育委員会の機構図上は、真岡市立図書館と同格である[26]が、館長は真岡市立図書館との兼任であり、職員は3人である[33]ISILはJP-1007126[3]。2021年3月31日時点の蔵書数は67,849冊、2020年度の貸出冊数は48,201冊、来館者数は30,571人であった[34]

芳賀郡二宮町は、久下田小学校にあった二宮公民館を独立館とすることを計画し、1972年(昭和47年)に鉄筋コンクリート造2階建ての二宮町中央公民館を建設・開館した[35]。館内には、茶道室・調理室・大会議室などと並んで、図書室が設けられた[35]。2009年(平成21年)3月23日に二宮町は真岡市に編入合併され、旧二宮町役場は二宮コミュニティセンターへ移行し、改修工事を行った上で、同センター内に公民館と図書室が設置されることになった[36]2014年(平成26年)4月1日、二宮公民館図書室は真岡市立二宮図書館に組織変更され、同時に指定管理者制度を導入、図書館流通センターの運営となった[15]

二宮図書館は、二宮コミュニティセンター1階(床面積3,110.01 m2)のうち、981.96 m2を占め、館内は一般書コーナー、児童書コーナー、雑誌・視聴覚・郷土資料・参考図書・学習コーナーに分かれている[32]。開館時間と休館日は、真岡市立図書館と共通である[37]

真岡市公民館真岡西分館図書室[編集]

真岡市公民館真岡西分館

真岡市公民館真岡西分館図書室(もおかしこうみんかん もおかにしぶんかんとしょしつ)は、栃木県真岡市西高間木539番地1の真岡市公民館真岡西分館1階にある公民館図書室[38]。ISILはJP-1007125[3]。2021年3月31日時点の蔵書数は23,559冊、2020年度の貸出冊数は7,602冊、来館者数は5,040人であった[39]

1994年(平成6年)10月1日に開室し、翌1995年(平成7年)7月1日より貸し出しを開始した[13]。同時に真岡市立図書館とオンラインで結ばれ、公民館図書室ながら、図書館と同様に運営されている[13]。(ただしコピーサービスは実施していない[40]。)

真岡西分館図書室は、真岡市公民館真岡西分館1階730.67 m2のうち、295.80 m2を占め、館内は一般開架室、児童開架室、こども絵本スペースなどに分かれている[38]。開館時間は9時から17時、休館日は、日曜日・月曜日・祝日と年末年始・特別整理期間である[38]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 11.
  2. ^ a b c d e f g h i 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 8.
  3. ^ a b c ISIL管理台帳ファイル(2021年12月16日現在)”. 国立国会図書館関西館図書館協力課 (2021年12月16日). 2022年3月21日閲覧。
  4. ^ 栃木県公共図書館協会 2021, p. 10.
  5. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 15.
  6. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 19.
  7. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 20.
  8. ^ a b 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 42.
  9. ^ 指定管理者制度”. 真岡市総務部総務課総務文書係 (2021年4月1日). 2022年3月29日閲覧。
  10. ^ a b c d e 真岡市立図書館”. 下野新聞社+日経テレコン. 下野新聞社・日本経済新聞社 (2020年1月). 2022年3月29日閲覧。
  11. ^ 「真岡文芸協会、地域文化担い20年 真岡市・芳賀郡」朝日新聞2004年9月30日付朝刊、栃木版29ページ
  12. ^ a b 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, pp. 8–9.
  13. ^ a b c d e f g h 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 9.
  14. ^ "真岡市立図書館 「元親文庫」開設 地元出身の著述家の寄贈受け"読売新聞2001年3月6日付朝刊、栃木2、33ページ
  15. ^ a b c d e f g 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 10.
  16. ^ 戸上文恵「真岡市 市立図書館、指定管理者制度を導入へ」毎日新聞2008年9月26日付朝刊、栃木版27ページ
  17. ^ "民と官が競う図書館 「顧客満足」目指して 「民力」検証、見直しも"朝日新聞2011年7月9日付朝刊、週末be4ページ
  18. ^ a b c d e f 諸山誠 (2015年6月6日). “【図書新聞連載】図書館に会いにゆく―出版界をつなぐ人々”. 図書新聞. 図書館流通センター. 2022年3月29日閲覧。
  19. ^ a b 『元気ニコニコとちまる隊』が「真岡市立図書館」に参上!”. とちまるくんブログ. 栃木県 (2013年7月29日). 2022年3月29日閲覧。
  20. ^ a b c 新庁舎周辺整備事業の概要が決定しました”. 広報もおか令和4年1月号. 真岡市. 2022年3月28日閲覧。
  21. ^ 図書館ワークショップ開催”. 真岡市総合政策部プロジェクト推進室新庁舎周辺整備推進係. 2022年3月28日閲覧。
  22. ^ 「真岡市 複合交流施設建設へ 22年度着工 図書館や子ども広場」読売新聞2020年6月4日付朝刊、栃木2、22ページ
  23. ^ 中野渉「真岡市長に石坂氏 再選、佐々木氏に辛勝」朝日新聞2021年4月27日付朝刊、栃木版21ページ
  24. ^ 鴨田玲奈「真岡市22年度341億円 3年ぶり増加 当初予算案」毎日新聞2022年2月10日付朝刊、栃木版23ページ
  25. ^ ご利用案内”. 真岡市立図書館. 2022年3月26日閲覧。
  26. ^ a b 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 7.
  27. ^ 真岡市科学教育センター - 真岡市の科学館”. 栃ナビ!. ヤマゼンコミュニケイションズ. 2022年4月9日閲覧。
  28. ^ 日光市 2008, pp. 29–30.
  29. ^ a b c 関根光夫「バリアフリーマップ完成 真岡 障害者支援施設と高校生ら連携 車椅子押し実際に店を訪問調査」朝日新聞2020年12月5日付朝刊、栃木版27ページ
  30. ^ a b 真岡市立図書館「図書館プロジェクト」が、「共生社会とちぎづくり」障害者差別解消部門で栃木県知事賞を受賞”. 図書館流通センター (2018年12月14日). 2022年3月29日閲覧。
  31. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 4.
  32. ^ a b 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 12.
  33. ^ 栃木県公共図書館協会 2021, p. 6, 10.
  34. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 16, 21.
  35. ^ a b 二宮町史編さん委員会 編 2008, p. 904.
  36. ^ 古源盛一「新・真岡市がスタート 二宮町を編入 人口8万3000人に 一時破談 やっと合併 生き残りへ規模を拡大」朝日新聞2009年3月24日付朝刊、栃木版28ページ
  37. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, pp. 11–12.
  38. ^ a b c 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 13.
  39. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 17, 22.
  40. ^ 真岡市教育委員会生涯学習課 編 2021, p. 22.

参考文献[編集]

  • 二宮町史編さん委員会 編 編『二宮町史 通史編III 近現代』二宮町、2008年3月31日、942頁。 NCID BA71478156 全国書誌番号:21515775
  • 真岡市教育委員会生涯学習課 編 編『真岡市の図書館 令和3年度』真岡市教育委員会生涯学習課、2021年7月1日、55頁https://www.moka-lib.jp/1255/wp-content/uploads/2021/07/R3mokatosyokan.pdf 
  • 『栃木県内の図書館 2021(令和3年度)』栃木県公共図書館協会、2021年、68頁。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]