最強伝説 黒沢
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『最強伝説 黒沢』(さいきょうでんせつ くろさわ)は、福本伸行の漫画作品。副題は "The Legend of A Strongest Man" 。ビッグコミックオリジナル2003年1号から2006年18号まで連載された。単行本は全11巻。44歳の土木作業員・黒沢の、哀愁と苦難の日々を描く。
目次 |
[編集] 概要
2002年12月、穴平建設に勤務する現場監督・黒沢は、ふとした事を切っ掛けに自分の人生が余りにも満ち足りていないという事実に気付き、焦りを覚え始めていた。おりしも44歳の誕生日、その日を誰にも祝って貰えなかった黒沢は「人望が欲しい」という欲求を抱き、これを機に人生を変えようと奮闘する。
紆余曲折の末、後輩らの信任を勝ち得た黒沢の元に次から次へと新たな騒動が舞い込み、図らずも黒沢は様々の修羅場を潜り抜けてゆくこととなる。
[編集] 特徴
今までの多くの福本作品の主人公が非凡な才能やカリスマ性を持った(程度の差やそれを見せる場合の違いはあるが)少年か青年だったのに対し、この作品では冴えない44歳の中年男(黒沢曰く「ただ齢を重ねただけの齢男(としお)」)が主人公となっている事が大きな特徴。話も「カイジ」「アカギ」の様な大金や命が遣り取りされる非日常的なものではなく、日常的な悩みや人間臭いエピソードが中心になっている。こうした作風はビッグコミックオリジナルの読者層である中高年の読者を意識したものと解釈される事が多い。だが初期の福本作品にもこういった「人情もの」は少なくなく、作品中のギャグやコメディも含めて一種の原点回帰と呼べる。またバトルシーンの要素が多いのも異色で、その格闘理論は福本の格闘技経験(キックボクシング)がいかんなく発揮されている。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。
[編集] 登場人物
- 黒沢
- 主人公。1958年12月10日生まれの44歳独身男。下の名前は最後まで不明のままで、仲間からは「黒沢さん」「クロさん」「クロちゃん」等と呼ばれていた。高校卒業時より穴平建設に勤めているベテラン作業員で現場監督を任されているが、実情としては同僚が昇進か退職(リストラ)かで現場を離れる中、上にも上がれず、かといって辞める訳にもいかず、一人安月給を呑んで残っているという感が強い。取り立てて特別な資格も持たず、人望も(特に作品初期は)無かったために、交通整理の助っ人とという名目で現場を外されるなど冷遇されてしまうことも。
- 冴えない日々をただ黙々と過ごして行く人生を送っていたが、ワールドカップで活躍する選手を見て表面上は感動しつつも「自分の感動ではない」ことに激しい焦りを募らせた事がその人生を大きく変える。自分の人生をより良いものにしようと決意した黒沢は、様々な苦難に遭遇しながらもこれらを自力で解決し、仲間を増やすと共に次第に自らの中に眠っていた器量に目覚め始めていく。
- 180cmを超える大柄な体をしており、仕事がら体力自慢でもあるが、中年太りにより著しく見栄えの悪い体格になってしまっている。性格も基本的には小市民的だが、自らの誇りに関わる部分では命すら投げ捨てられる度胸を内に秘めている。対人関係はどこか不器用で、周囲の人間と打ち解けようとしたり、逆に敵を追い払おうとするために、しばしば奇抜な発想や行動を行い、運の悪さも相まってかえって周囲の誤解を招いたり警察の厄介になることも多い。
- 坂口義明
- 黒沢の後輩。スタイリストの姉がいる。20代と思われる若手社員で、言動から元不良であったことを窺わせている。小野とは違ってそれを前面に出さないクールな性格だが、簡単に人を認めない反骨心があり、物語初期の一時期には黒沢を(誤解もあって)嫌っていた。だがある日、黒沢が仕事に奮闘した事から、仕事仲間の浅井・有田・中西ら共々黒沢と親交を結ぶ。以降は最初の冷静なキャラクターよりも、どちらかと言えば破天荒な黒沢に振り回される常識人としての立場が目立った。しばしば黒沢の騒動に巻き込まれるが、嫌がるのをなし崩し的に黒沢に協力させられることが多い。終盤では黒沢にほとんど全面的に協力していた。
- 浅井純一
- 黒沢の後輩。見た目も性格も子供っぽい。趣味はテレビゲーム。気が弱く、黒沢や小野のためによく散々な目にあっている。過去にイジメを受けていた経験があり、中学生に襲撃された黒沢を真剣に心配していた。坂口と共に、黒沢を見守ることが多い。カラオケの十八番は浜田省吾らしい。
- 有田
- 黒沢の後輩。坂口とよく行動を共にする。
- 中西
- 黒沢の後輩。坂口とよく行動を共にする。最後の戦いにはなぜか呼ばれなかった。
- 赤松修平
- 黒沢の後輩で、28歳の現場監督。美人の妻と2人の子供がいる。1級土木施工管理技士をはじめ数々の資格を持ち、実際の業務でも的確な指示を行う非常に優秀な若手の現場監督である。さらに自ら進んで重作業もこなし、それを誇ることもしない謙虚な性格のために人望も厚く、次期社長論や独立待望論まである。また、一度に4人の早退を認めるなど、かなり大胆な決断をすることもある。連載当初は黒沢の好敵手のような位置づけであったが、黒沢のバトルシーンが多くなってからは出番が少なくなった。
- 穴平社長
- 黒沢が勤務する穴平建設の社長。黒沢が警察に拘留される度に、深夜に警察から電話で起こされている。趣味はサイクリング。
- 足立
- 穴平建設の現場に派遣される職工の一人。黒沢の噂に尾ひれをつけるのは主に彼。勘違いで自分で話を大きくしておきながら、黒沢を怖れゴマをすったり、陰口を叩きながら反撃の機会をうかがうなど、黒沢の立場を危うくする。
- 小野
- 穴平建設と共に作業を行う型枠工。田舎では番長だった。当初は黒沢を敵視していたが、武勇伝をあげつつも謙虚な黒沢の姿勢に心を打たれ(勘違いして)、黒沢を「親分」と呼ぶようになる。その後は周囲の人間にも黒沢への服従や忠誠を強要するようになり、ますます黒沢の立場を危なくする問題児となる。
- しづか
- ヤンキー少女。男の不良仲間3人と共に黒沢をオヤジ狩りしようとリンチする(最初、黒沢は逆ナンパをされたと勘違いした)。金属バットで黒沢の頭を殴るよう指示する。
- 仲根秀平
- 中学生にして約190cmの長身の持ち主。藤沢二中に乗り込んだ黒沢と決闘を演じた時は、本気で黒沢を撲殺しようとするなど常軌を逸した行動を見せた。しかし、その闘いに敗れた後は一転して打ち解け、黒沢を「兄さん」と呼んで心から尊敬し慕うようになる。実はイギリスに3年間滞在した帰国子女で、ノミ屋を運営することで毎月80万円を荒稼ぎしている。その金で会員制のバーやハワイで遊んでいる。黒沢は「火星人のような顔」と思っていたが、女の娘には非常にモテる。
- 中谷安晴
- 28歳のレンタルビデオ店のアルバイト店員。黒沢が中学生との決闘の決起集会をした店に居合わせ、たまたま耳に入った黒沢の主張に感動する。そして黒沢をなだめようとする坂口らを一喝し、さらに周囲の人間も勝手に巻き込んでしまう。黒沢を「先生」と呼び心酔している。
- 孝志
- 不登校の中学生。黒沢が決闘を決起した店に居合わせ、影響を受けていく。不登校の理由は、学校に行く理由がわからないというものだったが、実際はイジメや恐喝によるもの。
- 営業の男
- 氏名不詳。黒沢が決闘を決起した飲み屋に偶然居合わせていた。中谷が決起集会を盛り上げる姿を見て、自らも仕事を合間を縫って参加する事を決意。当日は、黒沢の一挙一動を冷静かつ的確に分析して実況解説のような役割を務めていたが、悪ノリで盛り上がっていた色合いも強かった。最終的に黒沢が勝つと涙を浮かべて彼を迎えにいった。
- 徳さん
- 公園に居住するホームレスの一人。ホームレスと呼ばれることを嫌い、自らをホープレス、またはロジョー(路上生活者の略)と称している。口では希望を捨てたといいながら、一方では未練がましく以前就職のために着用していたスーツを保存している。
- 茜
- ホームレスと一緒に暮らすおばあさん。未亡人。名前のことでいつも「あじゃなくてお(お金)だったらよかったのに…」と嘆いている。黒沢とホームレス達が決起するきっかけとなった。
- 御木涼一
- 病院の院長の息子であり、自身も医大の一年生でありながら、その資金力と人身掌握の手腕で暴走族「ガロンキッズ」のリーダーとなる。気分次第で公園に寝泊りするホームレスを襲撃し、わずかな金をも巻き上げている。たまたま黒沢が暴走族のメンバーに歯向かったため、約50人もの軍勢を率いて黒沢とホームレスの集団との抗争を繰り広げる。
[編集] 補足
- 作者の福本伸行は、主人公の黒沢と同じ生年月日(1958年12月10日)であり、漫画家になる前は建設会社で働いていた。
- 副題に "The Legend of A Strongest Man" とあるが、通常 "~est" といった最上級の形容詞には「a」のような不定冠詞は付けないので、言語学的には誤訳である。適切な訳としては"Legend of The Strongest" などが挙げられる。
- なお、「最強伝説」について、作者の福本すらも何を持って「最強」としているのか決めておらず、結局最後まで明らかにならなかった。
- 連載初期は毎号、作品欄外等のコピーにおいて主人公を「平成の武蔵」と形容していた。
- この作品の舞台は2002年12月または2003年のはずであるが、連載の長期化につれ、作中では2003年当時は流行していない「ヨン様」や、制作すら発表されていなかった「ハウルの動く城っ・・・」といった言葉が出てくる。
- 最終回の内容は黒沢の死亡を連想させるもの(本当に黒沢が死んだか否かは明言されていないが、黒沢の呼吸と脈が止まり、流れ星などによって死を暗示する描写が行われている)であった。


