ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
識別情報
CAS登録番号 53-84-9
PubChem 925
KEGG C00003
ChEBI CHEBI:13389
特性
化学式 C21H27N7O14P2
モル質量 663.425
外観 白色粉末
融点

160 ℃

危険性
主な危険性 Not hazardous
NFPA 704
NFPA 704.svg
1
1
0
RTECS番号 UU3450000
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (nicotinamide adenine dinucleotide) とは、全ての真核生物と多くの古細菌真正細菌で用いられる電子伝達体である。さまざまな脱水素酵素補酵素として機能し、酸化 (NAD+) および還元 (NADH) の2つの状態を取り得る。二電子還元を受けるが、中間型は生じない。略号であるNAD+(あるいはNADでも同じ)のほうが論文や口頭でも良く使用されている。

かつては、ジホスホピリジンヌクレオチド (DPN)、補酵素I、コエンザイムI、コデヒドロゲナーゼIなどと呼ばれていたが、NAD+に統一されている。別名、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドなど。

NAD+の構造や諸特性[編集]

NAD+ニコチンアミドヌクレオチドおよびアデノシンからなる物質であり、ヌクレオチドの5'がそれぞれリン酸結合によって結合している構造を取る。アデノシンの2'には-OH基が付属しており、これがリン酸基に置換されると、NADP+となる。

酸化還元反応に関与しているのは、ニコチンアミドであり、酸化型および還元型の構造は図の通りである。(還元型は4位の炭素に立体特異性がみられる。)

NAD- to NADH.png

ヌクレオチドが基本骨格となるために、DNAの光吸収極大域である波長260nmの紫外線を良く吸収する。また、波長340nmの紫外線をNADHのみが良く吸収し、NAD+ ⇔ NADHの変化は波長340nmあるいは339nmの吸光度の測定によって容易に調べることができる。脱水素酵素活性測定にはこの方法が良く用いられている。

NAD+およびNADHの二電子酸化還元反応については以下の通りである。

  • NAD+ + 還元物質 (2e- + 2H+) ⇔ NADH + H+ + 酸化物質

NADHのニコチン酸アミドの還元状態では一見、水素原子(1電子+1つのプロトン)が1つだけ付加されたように見えるが、ニコチン酸アミドのN+が電子によって還元されるために、結果として2つの水素原子を運搬しているのと同じ状態となる。

酸化還元電位 (Eo') は-0.32Vである。

NAD+およびNADHの生理学的意義[編集]

NAD+は生物のおもな酸化還元反応の多くにおいて必須成分(補酵素)であり、好気呼吸酸化的リン酸化)の中心的な役割を担う。解糖系およびクエン酸回路よりあるいは脂肪酸の酸化によって還元物質NADHが得られる。還元物質NADHを生産する好気呼吸反応系は以下の通りである。なお、酸化物質および還元物質を太字で表記する。

エムデン-マイヤーホフ経路

クエン酸回路

なお、嫌気呼吸時はグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素の関与する反応系でのみNADHが発生する。NADHの好気呼吸時における酸化経路については以下の通りである。 呼吸鎖複合体I(NADH脱水素酵素複合体)

  • NADH → NAD+ + H+ + 2e-(プロトン濃度勾配形成)

嫌気呼吸時の酸化経路は以下の通りである。

還元的クエン酸回路が作動した場合、上記のクエン酸回路NADH生産反応の逆反応となる。還元的クエン酸回路の作動はNADHの回路への添加によるところが大きく、そのまま炭酸固定反応の駆動力となる。

エネルギー代謝以外にもNADHは多くの機能を持っている。代表的なものでは一部の真正細菌古細菌が持つDNAリガーゼATPの代わりにNADHを用いる活性中間体を生じる。

NAD+の合成系[編集]

NAD+はヌクレオチド骨格であるために、ヌクレオチド合成系を基本とするがニコチンアミドの付加については、

の二つの経路が考えられる。ニコチンアミド自体はビタミンB群のナイアシンを原料としている。

関連項目[編集]