テントウムシ

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テントウムシ科
Cocccinella septempunctata
Coccinella septempunctata
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
上目 : 上目 Coleopterida
: コウチュウ目 Coleoptera
亜目 : カブトムシ亜目 Polyphaga
下目 : Cucujiformia
上科 : ヒラタムシ上科 Cucujoidea
: テントウムシ科 Coccinellidae
学名
Coccinellidae
Latreille1807
和名
テントウムシ科(天道虫科)
英名
Ladybird, ladybug, lady beetle
亜科

テントウムシ(天道虫・紅娘・瓢虫)は、コウチュウ目テントウムシ科(テントウムシか、学名: Coccinellidae)に分類される昆虫の総称。鮮やかな体色の小型の甲虫である。和名の由来は太陽に向かって飛んで行くことから、太陽神天道からとられた。

概要[編集]

成虫の体長は数mm - 1cm程度の小型の昆虫である。成虫は半球形の体型で、触角は短い。体は黒・赤・橙・黄・褐色など鮮やかな色で彩られ、体の模様も種類間で変異に富んでいる。日本では赤や黄の地色に黒い水玉模様、あるいは黄に白の水玉模様のものが多く、その多くはそれらの斑点の数で命名されている。

幼虫・成虫とも強い物理刺激を受けると偽死(死んだふり)をし、さらに関節部から体液(黄色の液体)を分泌する。この液体には強い異臭と苦味があり、外敵を撃退する。体色の鮮やかさは異臭とまずさを警告する警戒色といえる。このためなどはテントウムシをあまり捕食しないが、それでも寄生バチ寄生バエ菌類などの天敵が存在する。ニジュウヤホシテントウの幼虫はカマキリに捕食されることもある。

食性は種類によって大きく異なり、アブラムシカイガラムシなどを食べる肉食性の種類、うどんこ病菌などを食べる菌食性の種類、ナス科植物などを食べる草食性の種類の3つに分けることができる。このため農作物にとっては益虫害虫に大きく分かれることとなる。肉食性の種は近年では農作物の無農薬化を行う際、農薬代わりに使用される生物農薬の一つとして活用されている。

生活環[編集]

甲虫の仲間なので、 - 幼虫 - - 成虫という完全変態をおこなう。

成虫は交尾のあとに、食物の近くに数十個ほど固めて産卵を行う。孵化した幼虫はがなく、腹部が後方へ伸びる。さらに体には突起やとげをもち、成虫とは似つかない体型をしている。

甲虫類の中には幼虫と成虫で食性がちがうものもいるが、テントウムシ類は幼虫も成虫も同じ食物をとることが多い。なお、肉食性の種類の場合、餌が尽きると他の幼虫や蛹を共食いすることもある。

充分に成長した終齢幼虫は植物の裏などで蛹になる。蛹は楕円形で、翅こそ短いものの成虫の形に近い。腹部の先で壁面にくっつき、落下しないようになっている。蛹から羽化したばかりの成虫の翅は黄色だが、翅が固まるにつれ、特徴的な模様が現れる。

成虫はからまでよく見られる。トホシテントウなどは幼虫で越冬するが、多くのテントウムシは成虫で越冬する。越冬の際は石や倒木などの物かげで、数匹 - 数十匹の集団を作る。

人間との関わり[編集]

ナミテントウやナナホシテントウなど肉食性の種類は、農作物に被害を与えるアブラムシを食べることから、生物農薬として利用されているが、食べ終わるとどこかに飛んでしまうために、安定性に問題があった。農業の世界では、飛べないテントウムシの出現が望まれていたが、名古屋大学が飛べないテントウムシを人工的に作り出すことに成功した。遺伝子組み換えではなく、RNA干渉という手法でを小さくしているため、このテントウムシの幼虫は、通常に翅が形成され、戸外に放しても遺伝子汚染の心配がない利点がある[1][2][3]

また、成田市千葉県立成田西陵高等学校では、掃除機の吸い込み口に網を付けた装置でテントウムシを集め、接着剤で背中の羽を接着して飛べなくする方法で生物農薬に使う研究がされ、2013年11月の全国農業協同組合中央会主催の「全国高校生みんなDE笑顔プロジェクト」で優勝を成し遂げた。接着剤は簡単に取れ、近在に生息する個体を使うことから生態への影響が少ない点が挙げられ、タヒチ政府からの引き合いもあるとともに、特許の出願が計画されている。[4]

なお、テントウムシやその体液が大量付着されたブドウで作り出したワインの味が変わるので(「テントウムシ汚染」と呼ばれる)、テントウムシの大発生はワインの商品価値に悪影響を及ぼしている[5][6]

おもな種[編集]

肉食[編集]

ナナホシテントウ Coccinella septempunctata
アフリカヨーロッパアジアまで広く分布する代表的なテントウムシ。体長8mmほどで、翅は赤く、和名のとおり7つの黒い紋がある。個体間で模様の変異はない。アブラムシやハダニを食べるが、餌不足に陥った幼虫は共食いをすることもある。
ナミテントウ Harmonia axyridis
「テントウムシ」という和名を使用したこともある。アジアに広く分布し、ナナホシテントウと並ぶ代表的な種類。体長7mmほど。ナナホシテントウとはちがい、黒地に2つの赤い紋、黒地に4つの赤い紋、赤や黄色に多くの紋、赤や黄色の無地など体色に多くの変異がある。アブラムシを捕食する。
ダンダラテントウ Cheilomenes sexmaculatasyn. Menochilus sexmaculatus
体長5mmほどで、ナミテントウよりやや小型。翅は黒地に赤い紋が4つあるが、ナミテントウにも似た模様のタイプがいるので区別がつけにくい。アブラムシを捕食する。
カメノコテントウ Aiolocaria hexaspilota
体長12mmほどの大型のテントウムシ。翅は黒地に橙色の模様があるが、これがカメ甲羅の模様にも似ていることからこの和名がある。クルミハムシの幼虫を捕食する。
ヒメカメノコテントウ Propylaea japonica
和名のとおり、カメノコテントウに似た模様があるが、体長は4mmほどしかない小型の種類。翅の模様にはいくつかの変異がある。アブラムシを捕食する。
ジュウサンホシテントウ Hippodamia tredecimpunctata timberlakei
オレンジ色の翅に和名の通りの13個の黒い紋がある。また一般的なテントウムシと異なりハムシのような縦に長い体を持つ。アブラムシを捕食する。
ウンモンテントウ Anatis halonis
体長10mmほどの大型のテントウムシで、オレンジ色の翅に周囲が白い黒の紋を持つ。アブラムシを捕食する。
オオテントウ Synonycha grandis
体長12mmほどの大型のテントウムシだが、生息数は少ない。アブラムシを捕食する。
ベダリアテントウ Rodolia cardinalis
体長4mmほどの小型のテントウムシ。翅は赤く、黒い模様がある。ワタフキカイガラムシ(イセリアカイガラムシ)を捕食する。オーストラリアに分布するが、ワタフキカイガラムシ駆除のために日本に持ちこまれ、そのまますみついた外来種である。
アカホシテントウ Chilocorus rubidus
カイガラムシを捕食する。 ウメの木に良く付いている。学名の rubidusラテン語で暗赤色の意。
ベニヘリテントウ Rodolia limbata
カイガラムシを捕食する。和名の通り黒の翅に縁が紅色の模様を持つ。
アミダテントウ Amida tricolor
学名の tricolor (三色)の名の通り、茶色・黄色・黒の3色による特徴的な翅の模様を持つ。アオバハゴロモを捕食する。

菌類食[編集]

キイロテントウ Illeis koebelei
体長5mmほど。胸部は白地に2つの黒い斑点があるが、翅は和名どおり黄色一色である。うどんこ病菌などを食べる。
シロホシテントウ Vibidia duodecimguttata
体長4mmほど。和名どおり黄褐色の地に白っぽい斑点がある。うどんこ病菌などを食べる。
クモガタテントウ Psyllobora vigintimaculata
体長2.5mmほど。黒・茶・白の斑模様。うどんこ病菌などを食べる。アメリカなどからの帰化種とされる。

草食[編集]

テントウムシ科のうちマダラテントウ亜科のみが草食である。草食のテントウムシは肉食の種類に比べて鞘翅に毛が多いため、つやがないのが特徴である。

ニジュウヤホシテントウ Henosepilachna vigintioctopunctata
オオニジュウヤホシテントウ Henosepilachna vigintioctomaculata
この2種は体長7mmほどで、淡い褐色の地に名のとおり28個の黒い点がある。和名のとおりオオニジュウヤホシテントウのほうが少し体が大きく、黒点も大きい。集団でナスジャガイモの葉を食べるため、害虫として扱われる。オオニジュウヤホシテントウはマダラテントウの中でもっとも寒冷地に進出しており、沿海州周辺まで分布している。一方、ニジュウヤホシテントウは北海道以南から東南アジアまで分布している。この2種は益虫である肉食性のテントウムシと違って、ナスやジャガイモなどの葉を食害するため、別名「テントウムシダマシ」ともいわれる。しかし、テントウダマシ科というテントウムシ科とは別の分類群が存在するので注意が必要である。
ヤマトアザミテントウ Henosepilachna niponica
エゾアザミテントウ Henosepilachna pustulosa
ルイヨウマダラテントウ Henosepilachna yasutomii
オオニジュウヤホシテントウに近縁な日本固有種で、それぞれアザミなどのキク科ルイヨウボタンなどのメギ科植物の葉を食べる。関東地方などでは害虫化している例もある。本州と北海道の大部分にはいずれかが生息しているが、九州と四国からはこれまで見つかっていない。
ジュウニマダラテントウ Henosepilachna boisduvali
沖縄諸島に見られ、ウリ科植物の葉を食べる。
ミナミマダラテントウ Henosepilachna pusillanima
与那国島などの八重山諸島に見られる。最近南方から侵入・定着したと考えられる。
トホシテントウ Epilachma admirabilis
体長8mmほどで、北海道南部以南の日本全国と中国に分布する。カラスウリなどのウリ科植物の葉を食べる。巻き蔓の間に産卵する。
ツシママダラテントウ Epilachna chinensis tsushimana
シナマダラテントウの亜種とされ、日本では対馬でのみ見られる。アカネ科植物の葉を食べる。

脚注[編集]

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  1. ^ 飛べないテントウムシ期待大 名古屋大、害虫対策に開発 [リンク切れ] アサヒコム、2009年7月22日
  2. ^ 名古屋大学の発表 (PDF)
  3. ^ T. Ohde; et al. (2009). Vestigial and scalloped in the ladybird beetle: a conserved function in wing development and a novel function in pupal ecdysis”. Insect Molecular Biology (Royal Entomological Society) 18 (5): 571–581. doi:10.1111/j.1365-2583.2009.00898.x. ISSN 1365-2583. http://www3.interscience.wiley.com/journal/122518085/abstract. 
  4. ^ 飛べなくしたテントウムシの力拝借 害虫駆除アイデア 高校生特許出願へ東京新聞、2013年12月24日[リンク切れ]
  5. ^ Ladybird Contamination on the RiseThe Drinks Business、2012年2月2日
  6. ^ テントウムシの襲来swissinfo.ch、2008年10月15日

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]