シデコブシ

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シデコブシ
シデコブシ(愛知県春日井市指定天然記念物「築水池のシデコブシ自生地」
シデコブシ(愛知県春日井市築水池の自生地)
保全状況評価[1]
準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト
Status jenv NT.png
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: モクレン目 Magnoliales
: モクレン科 Magnoliaceae
: モクレン属 Magnolia
: シデコブシ M. stellata
学名
Magnolia stellata (Siebold & Zucc.) Maxim.[2][3]
シノニム
  • Magnolia tomentosa[3]
和名
シデコブシ
英名
Star Magnolia[4]
雑種
  • 詳細は本文の雑種を参照

シデコブシ(幣辛夷、四手拳、学名:Magnolia stellata (Siebold & Zucc.) Maxim.シノニムM. tomentosa )は、モクレン科モクレン属落葉小高木。別名がヒメコブシ[2]

特徴[編集]

日本固有種であり[3][5][6]愛知県[5]岐阜県[7]三重県[8]の一部に分布する「周伊勢湾要素(東海丘陵要素植物群)」の1種[7][9]第三紀鮮新世のころにできた東海湖の沿岸地帯と、シデコブシの分布域がほぼ-致している[10]養老山地東麓の扇状地木曽川庄内川流域、渥美半島などに分布し、丘陵地域の水が浸み出す湿地などに自生している[6]。連続的に分布する東濃地域以外は、ごく限られた場所に隔離分布している[11]。同属のタムシバが付近に生育していることがある[6]。園芸用の苗木などが市販されていて、庭木や公園樹として見かけることがあるが、自生個体群は準絶滅危惧に指定されている[1]。岐阜県では1995年(平成7年)12月に「大気環境推奨木」のひとつに選定され、栽培品が環境浄化や鑑賞用として利用されている[12]

花は両性花[13]、花期は3-4月頃で、葉が出る前に白(ときにピンクを帯びる)の直径6-11 cmくらいの花を咲かせる[11]花被片は9-30個くらい[11]雄蕊雌蕊は約30-50個[13]。雌蕊は雄蕊よりも早く機能するため、自家受粉しない自家不和合性である[13]。花の香りは弱い[14]。1本の木から数株に分かれて生育することがある。種子は赤色。和名は花の形が四手(しで)に似たコブシのような花を付けることに由来する[15]

種の保全状況評価[編集]

環境省によりレッドリストの準絶滅危惧の指定を受けている[注釈 1][1]。総個体数は1万個程度と推定されていて、湿地の開発、土地造成、ゴルフ場建設などによる減少と絶滅が危惧されている[16]。保全対策のために遺伝的多様性の観点から研究がなされている[13]。以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[17]。愛知県の尾張東部と名古屋市モクレンとの交雑種外来種が確認されている[18]。愛知県岡崎市では絶滅した[19][注釈 2][20]知多半島道路の拡張工事により知多郡武豊町の二ツ峯湿地は破壊されて、この自生地で絶滅した[5]

  • 絶滅危惧IB類 - 三重県(県内で確認されている自生地は10地点以下)[8]
  • 絶滅危惧II類 - 愛知県[5]、岐阜県[7]

雑種[編集]

コブシとシデコブシとの交雑種

主な自生地など[編集]

愛知県[編集]

椛のシデコブシ自生地(国の天然記念物)
伊川津のシデコブシ自生地(愛知県指定天然記念物)
  • 伊川津のシデコブシ - 田原市伊川津(いかわづ)のシデコブシは、1967年(昭和42年)10月30日に県の天然記念物に指定された[22]
  • 藤七原湿地植物群落 - 田原市の藤七原湿地植物群落は、1991年(平成3年)2月22日に市の天然記念物に指定された[22][25]
  • 東海丘陵湧水湿地群 - 2012年(平成24年)7月3日にラムサール条約に登録された豊田市矢並湿地、上高湿地、恩真寺湿地の総称[26][27]
  • 琴平町のシデコブシ自生地 - 豊田市琴平町の自生地は、2003年(平成15年)に県の天然記念物に指定された[28]
築水池のシデコブシ自生地の多数の花をつけた木(春日井市指定天然記念物)

岐阜県[編集]

  • 飯地町大根シデコブシ自生地 - 恵那市飯地高原[35]の自生地には290本ほどが自生し、1992年(平成4年)7月27日に市の天然記念物に指定された[36]標高500-600 mほどの確認されている最も標高の高い自生地[6]
  • シデコブシ自生地 - 恵那市岩村町飯羽間に10本の自生地があり、1994年(平成6年)3月1日に市の天然記念物に指定された[37]
  • 岩屋堂のシデコブシ群生地 - 中津川市千旦林には500本ほどの群落があり、2008年(平成20年)1月15日に県の天然記念物に指定された[38]
  • 会所沢のシデコブシ群生地 - 中津川市手賀野には66株(181本)の群落があり、1983年(昭和58年)8月18日に市の天然記念物に指定された[39]
  • 若山のシデコブシ - 中津川市高山字若山には花弁数18-24枚のものがあり、1995年(平成7年)4月1日に市の天然記念物に指定された[40]
  • 矢渕のシデコブシ - 中津川市坂下字矢渕(やぶち)には樹高15 mのものがあり、1997年(平成9年)3月3日に市の天然記念物に指定された[41]
  • 井汲のシデコブシ - 中津川市井汲(いぐみ)のため池沿いには樹齢100年を越えると思われる樹高約11 mの木があり、2006年(平成18年)8月31日に市の天然記念物に指定された[42]
  • 中津川市福岡町下野 - シデコブシの北限[23]
  • 子野のシデコブシ自生地 - 中津川市子野の自生地はシデコブシの東限[23]
  • 鳩吹山 - 可児市
  • 竜吟湖周辺、大湫 - 瑞浪市[43]
  • 細野のシデコブシ自生地 - 土岐市鶴里町細野の西斜面脇の湿地には樹高3-6 mのものが数10株群生し、1993年(平成5年)1月22日に市の天然記念物に指定された[44]
  • 土岐市泉 - 約7,500本の最大規模の群落[6][23]
  • 下迫間のシデコブシ自生地 - 関市迫間字大下の自生地は、2012年(平成24年)5月に市の天然記念物に指定された[6][45]
  • 虎渓山シデコブシ群生地 - 多治見市虎渓山永保寺周辺には870株2,356本の大群落があり、1974年(昭和49年)7月24日市の天然記念物に指定された[15][46]。シデコブシは1982年(昭和57年)8月1日に多治見市の「市の木」に指定された[47]
  • 各務原市須衛[6][48]
三重県三重郡菰野町の田光のシデコブシの群落(国の天然記念物)

三重県[編集]

指定文化財一覧[編集]

以下のシデコブシの自生地や植物群落は、国、自治体により天然記念物の指定を受けている。

指定区分 名称 所在地 指定日 備考
椛のシデコブシ自生地 愛知県田原市 1970年6月19日 [22]
田光のシデコブシ及び湿地植物群落 三重県三重郡菰野町田光 2005年3月2日 [49]
黒河湿地植物群落 愛知県田原市大久保町 1971年2月8日 [24]
伊川津のシデコブシ 愛知県田原市伊川津 1967年10月30日 [22]
琴平町のシデコブシ自生地 愛知県豊田市琴平町 2003年8月22日 [28]
岩屋堂のシデコブシ群生地 岐阜県中津川市千旦林 2008年1月15日 [38]
川島町のシデコブシ群落 三重県四日市市川島町 1991年3月26日 [50]
桜町のシデコブシ群落 三重県四日市市桜町 1982年2月16日 [51]
市町村 藤七原湿地植物群落 愛知県田原市藤七原 1991年2月22日 [22]
築水池のシデコブシ自生地 愛知県春日井市廻間町 2003年3月24日 [30]
飯地町大根シデコブシ自生地 岐阜県恵那市飯地町大根 1992年7月27日 [36]
シデコブシ自生地 岐阜県恵那市岩村町飯羽間 1994年3月1日 [37]
会所沢のシデコブシ群生地 岐阜県中津川市手賀野 1983年8月18日 [39]
若山のシデコブシ 岐阜県中津川市高山字若山 1995年4月1日 [40]
矢渕のシデコブシ 岐阜県中津川市坂下字矢渕 1997年3月3日 [41]
井汲のシデコブシ 岐阜県中津川市井汲 2006年8月31日 [42]
細野のシデコブシ自生地 岐阜県土岐市鶴里町細野 1993年1月22日 [44]
下迫間のシデコブシ自生地 岐阜県関市迫間字大下 2012年5月 [45]
虎渓山シデコブシ群生地 岐阜県多治見市 1974年7月24日 [46]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 2007年(平成19年)8月3日に環境省による発表で、絶滅危惧II類から準絶滅危惧へカテゴリー変更がなされた。
  2. ^ 1993年以前には岡崎市の小湿地の1箇所のみで8株の成木の自生が確認されていた。
  3. ^ 周辺を含めると700本以上のシデコブシが自生している。
  4. ^ 1995年(平成7年)3月に菰野町のの天然記念物に指定され、1996年(平成8年)3月に三重県の天然記念物に指定された。

出典[編集]

  1. ^ a b c 植物絶滅危惧種情報”. 生物多様性情報システム (2012年8月28日). 2013年5月1日閲覧。
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “シデコブシ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年5月1日閲覧。
  3. ^ a b c Magnolia stellata” (英語). ITIS. 2013年5月4日閲覧。
  4. ^ Magnolia stellata (Siebold & Zucc.) Maxim.” (英語). ITIS. 2013年5月4日閲覧。
  5. ^ a b c d レッドデータブックあいち2009 (PDF)”. 愛知県. pp. 344 (2009年). 2013年5月1日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g シデコブシの写真を撮影した市町村”. 岐阜県森林研究所. 2013年5月1日閲覧。
  7. ^ a b c 岐阜県レッドデータブック「シデコブシ」”. 岐阜県 (2001年). 2013年5月1日閲覧。
  8. ^ a b 三重県レッドデータブック2005「シデコブシ」”. 三重県 (2005年). 2013年1月16日閲覧。
  9. ^ a b 海上の森自然環境保全地域”. 愛知県. 2013年5月2日閲覧。
  10. ^ a b 田光のシデコブシ群落 国の天然記念物に指定”. 菰野町. 2013年5月4日閲覧。
  11. ^ a b c 中島美幸. “シデコブシを絶滅から守るために”. 岐阜県森林研究所. 2013年5月1日閲覧。
  12. ^ 中島美幸. “里山の春を彩るシデコブシ”. 岐阜県森林研究所. 2013年5月1日閲覧。
  13. ^ a b c d 石田清 (2006年12月13日). “絶滅危惧種シデコブシの現状との遺伝的管理の可能性 (PDF)”. 森林総合研究所. pp. 62-64. 2013年5月4日閲覧。
  14. ^ かおりの環境分野について (PDF)”. 環境省. pp. 98. 2013年5月4日閲覧。
  15. ^ a b 第4章:自然環境の保全 (PDF)”. 多治見市. pp. 29,35 (2012年10月30日). 2013年5月1日閲覧。
  16. ^ 植物絶滅危惧種情報検索「シデコブシ」”. 生物多様性情報システム. 2013年5月1日閲覧。
  17. ^ 日本のレッドデータ検索システム「シデコブシ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年1月16日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  18. ^ 外来種を探す”. 愛知県. 2013年5月2日閲覧。
  19. ^ 岡崎市版レッドリスト (PDF)”. 岡崎市. pp. 1 (2013年3月). 2013年5月4日閲覧。
  20. ^ 菅沼良則 (2013年3月16日). “北山だより”. 岡崎市環境部自然共生課. 2013年5月4日閲覧。
  21. ^ a b 国指定文化財等データベース「シデコブシ」”. 文化庁. 2013年5月1日閲覧。
  22. ^ a b c d e f g シデコブシ開花状況”. 田原市教育委員会文化財課. 2013年5月2日閲覧。
  23. ^ a b c d e 中島美幸. “東濃地域のシデコブシ自生地”. 岐阜県森林研究所. 2013年5月1日閲覧。
  24. ^ a b 黒河湿地植物群落”. 愛知県. 2013年5月1日閲覧。
  25. ^ シデコブシ自生地 (椛、伊川津、藤七原、黒河)”. 愛知県. 2013年5月1日閲覧。
  26. ^ ラムサール条約湿地の登録”. 豊田市 (2012年7月30日). 2013年5月1日閲覧。
  27. ^ 東海丘陵湧水湿地群 (PDF)”. 環境省. 2013年5月4日閲覧。
  28. ^ a b 指定・登録文化財一覧”. 豊田市. 2014年6月14日閲覧。
  29. ^ シデコブシ自生地”. 春日井市 (2008年8月29日). 2013年5月1日閲覧。
  30. ^ a b 指定文化財種別一覧(記念物)”. 春日井市 (2011年4月1日). 2013年5月4日閲覧。
  31. ^ “[八曽国有林犬山ふれあいの森「八曽湿地の概要」(現地案内板) 真田神社・杉山]”. 犬山市アメニティー協会 (2010年1月). 2013年5月2日閲覧。
  32. ^ 水と緑”. 名古屋市守山区役所 (2011年2月14日). 2013年5月4日閲覧。
  33. ^ 幸田町に生育生息する貴重な動植物について (PDF)”. 幸田町. pp. 19. 2013年5月4日閲覧。
  34. ^ 真田神社・杉山”. 豊橋市. 2013年5月2日閲覧。
  35. ^ 地図閲覧サービス「飯地高原」”. 国土地理院. 2013年5月1日閲覧。
  36. ^ a b 飯地町大根シデコブシ自生地”. 恵那市 (1992年7月27日). 2013年5月1日閲覧。
  37. ^ a b シデコブシ自生地”. 恵那市. 2013年5月4日閲覧。
  38. ^ a b 岩屋堂のシデコブシ群生地”. 中津川市 (2013年1月21日). 2013年5月4日閲覧。
  39. ^ a b 会所沢のシデコブシ群生地”. 中津川市 (2010年11月28日). 2013年5月4日閲覧。
  40. ^ a b 若山のシデコブシ”. 中津川市 (2011年11月7日). 2013年5月4日閲覧。
  41. ^ a b 矢渕のシデコブシ”. 中津川市 (2011年2月4日). 2013年5月4日閲覧。
  42. ^ a b 井汲のシデコブシ”. 中津川市 (2012年11月8日). 2013年5月4日閲覧。
  43. ^ 釜戸地区 (PDF)”. 瑞浪市. 2013年5月1日閲覧。
  44. ^ a b 細野のシデコブシ自生地”. 土岐市. 2013年5月4日閲覧。
  45. ^ a b 下迫間のシデコブシ自生地(関市天然記念物)”. 関市. 2013年5月4日閲覧。
  46. ^ a b 指定文化財一覧”. 多治見市. 2013年5月4日閲覧。
  47. ^ 市章・木・花”. 多治見市 (2012年10月30日). 2013年5月1日閲覧。
  48. ^ 各務原市の特徴的な植物”. 各務原市 (2013年3月12日). 2013年5月4日閲覧。
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  50. ^ a b 川島町のシデコブシ群落”. 三重県教育委員会. 2013年5月4日閲覧。
  51. ^ a b 桜町シデコブシ群落”. 四日市市. 2013年5月4日閲覧。
  52. ^ 鈴鹿山麓のシデコブシ群落保全活動”. 四日市大学環境情報学部. 2013年5月8日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]