オオクワガタ

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オオクワガタ


オオクワガタ

種の保全状態評価
絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト
Image:Status jenv VU.png
分類
界: 動物界 Animalia
門: 節足動物門 Arthropoda
綱: 昆虫綱 Insecta
目: コウチュウ目 Coleoptera
亜目: カブトムシ亜目 Polyphaga
上科: コガネムシ上科 Scarabaeoidea
科: クワガタムシ科 Lucanidae
属: オオクワガタ属 Dorcus
種: hopei
亜種: binodulosus
学名
Dorcus hopei binodulosus
和名
オオクワガタ
オオクワガタのオスとメス
オオクワガタのオスとメス

オオクワガタ大鍬形)は、昆虫綱コウチュウ目(甲虫目、鞘翅目)クワガタムシ科オオクワガタ属に属する昆虫の一亜種。体長は大アゴを含めて35~76mm(人工飼育下では80mmに達することもある)にもなり、クワガタムシ科のなかでは日本最長である。 ただし、野生で見つかった個体の大きさではミヤマクワガタが最大。しかしミヤマクワガタは人工飼育・繁殖が難しく、野生個体より大きな個体は未だ作出されていない。このため、人工飼育での大きさはオオクワガタが最長である。

飼育・繁殖共に容易で、クワガタ飼育の入門種とも言える。

性格は比較的臆病である。

目次

[編集] 体の構造

雄は大きな内歯1本と、先端部分に小歯を1つ備えた太く内側に湾入した大アゴを持つ。

内歯の位置は体長によって変化し、大型個体から順に、第1内歯が大アゴの中央部分から前方に向かって生える「大歯型」・第1内歯が大アゴの中央部分からほぼ直角に内側に向いて生える「中歯型」・第1内歯が大アゴの基部に生える「小歯型」という個体変異があるが、他のクワガタムシと比べ変異は連続的であるため、そこまで違いは目立たない。雄の小型個体では大アゴ先端の小歯は消失するが、内歯はかなり小型の個体でも見られ、この種群の特徴となっている。

野生個体は全身黒褐色~黒色の個体が多い。雄の小型個体や雌の鞘翅上面には明瞭な点刻列がある。

[編集] 分布と分類

日本全土に分布するが、分布はブナ帯の原生林やクヌギの台木(台場クヌギ)林に集中し、局所的である。島嶼部では対馬のみに分布していることから、中国大陸・朝鮮半島・対馬・日本本土が陸続きだった最終氷河期の頃に南下分布した可能性が高い。

元来オオクワガタはhopei,binodulosus が共にcurvidens亜種とする考え方が支持されていた。しかし、curvidens 基亜種とhopei中国の同じ産地で採集されるなど、この考え方に疑問を持つ声が高まり、オオクワガタを巡る分類の議論は紛糾した。

国立環境研究所の主任研究員である五箇公一と小島が2002年に行った、ミトコンドリアDNAの解析による分子系統樹が発表され、従来博物学的知見などから述べられていた通り、日本産のオオクワガタは朝鮮半島中国の一部に産するビノデュロサスオオクワガタと同じ亜種であることが分かった。

近縁種は、台湾に棲むタイワンオオクワガタと、ラオスインドベトナム等に棲むグランディスオオクワガタであり、中国本土のホペイオオクワガタとも近い。しかし従来日本産の学名になっていたクルビデンスオオクワガタとは、ミトコンドリアDNAの解析からも、また交雑試験からも全くの別種と分かり、亜種関係を見直した結果、現在はDorcus hopei binodulosus の学名で呼ぶのが適当とされる。なおcurvidensbinodulosus も、雄成虫に見られる1対の眼上突起に基づく命名である。

和名でオオクワガタと呼ばれる種にはこの他にも、クルビデンスオオクワガタ・リツセマオオクワガタ(旧名パリーオオクワガタ)・アンタエウスオオクワガタシェンクリングオオクワガタなどが知られるが、雄の大アゴの発現型とそのニッチ以外に遺伝的共通点は意外に少ないようだ。

なおオオクワガタ属Dorcus  の属名の元となったヨーロッパオオクワガタは小型種で、オオクワガタ属に統合されるまで別属扱いだった。Macrodorcus は大きなDorcus の意味だったと思われる。

また、同じDorcus属のコクワガタとの間に雑種(オオコクワなどと呼ばれる)ができることが知られており、ごく稀に採集される。人工飼育で作出することもできるが幼虫での死亡率が非常に高く、また性別が極端に雄に偏る。

[編集] 生活環

日本産オオクワガタの成虫はゴールデンウイークから梅雨明け頃に活動を始め、ほとんど夜行性で、昼間はクヌギアベマキナラ類・カシ類・ニレ類・ヤナギ類などの樹液が出る大木の樹洞やうろに隠れている。こうした樹洞をなわばりとした雄の元に、雌が次々と訪れる生活を夏の間送り、雌は大木の立ち枯れなどに飛来し、産座を築いたりトンネルを掘ってその内壁に産卵する。

9月末から10月くらいになると、成虫は早々と越冬態勢に入り、越冬成虫は翌年の5月頃まで活動を休止する。このことからオオクワガタは温帯での生活に適応したクワガタであることが示唆される。

性質は臆病で、危険を感じるとすぐにうろに隠れる。飛ぶことも滅多になく、何らかの理由で住処を変えざるを得なくなった場合に限る。野生個体の生活環は生息域により異なるが、関東甲信越では、2年1化1越年(幼虫で2年過ごし夏に羽化後翌年まで静止する)で孵化から3年目の初夏に活動を開始し、成虫は繁殖活動後も越冬を繰り返し、飼育下では5~6年生きる個体もいる。

幼虫は堅めの白色腐朽材に見られ、ニクウスバタケカワラタケがついたクヌギエノキカシ類の硬い大木や朽ち木の地上部に多い。

[編集] ブーム

クワガタブームの先駆けになった種で、以前は "黒いダイヤ" と呼ばれて大型個体が高値で取引された。体長の1mmの差で何千円も違うこともあり、マスコミなどでしばしば取り上げられた。しかし、現在では体長よりも美形・顎幅などが一番重視されている。その後続いたブームも、アンタエウスオオクワガタ・中国産のホペイオオクワガタと、いずれも海外の近縁種である。

近年飼育技術の発達によりペットショップでも数千円程度で見られるようになったが、ブームによる乱獲や生息地の破壊などで野生での個体数は年々減っており、2001年にはレッドリストにも入ってしまった。ブリーダーによる人工飼育が大変盛んに行われているため種としての絶滅の恐れはないが、やはり野生種を守るという意味で、主に生息環境の保護を含めた対策が必要である。

山梨県韮崎市大阪府豊能郡能勢町は、大都市に近いこともあり、オオクワガタの有名な採集地となっていたが、乱獲の影響からかあまり見られないと言われる。また福島県桧枝岐村も新産地として知られるようになり、それに佐賀県筑後川流域、岡山県を加え、これらは五大名産地とも呼ばれる。なお十和田湖周辺や東海地方木曽三川流域なども注目されてきており、これらは○○産として半ばブランド化している。能勢町や兵庫県川辺郡猪名川町阿古谷産に極太個体が多いとされるが、それらが野生個体であるかどうかの検証は十分なされていない。

外来種であるタイワンオオクワガタ・グランディスオオクワガタ・ホペイオオクワガタなどと交雑し、遺伝子汚染をもたらす可能性が指摘されているため、外来種・国産を問わず、飼育個体は野外に放ってはならないと呼びかけられている。

灯火にもあまり飛来せず、洞にすぐ隠れる臆病な性格と、強靱な脚で幹にしっかりとしがみつき無理して剥がすことができないために、採集が非常に難しい。

[編集] 参考文献

  • 小島啓史「オオクワガタの近縁種と雑種の見分け方」『BE・KUWA』No.27、むし社、2008年、66-69頁。