ヒラタクワガタ

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ヒラタクワガタ
Dorcus titanus sjh.jpg
ヒラタクワガタ♂の標本(大・小)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目 Coleoptera
亜目 : カブトムシ亜目 Polyphaga
上科 : コガネムシ上科 Scarabaeoidea
: クワガタムシ科
Lucanidae
: オオクワガタ属
Dorcus
亜属 : ヒラタクワガタ亜属
subgen. Serrognathus
: ヒラタクワガタ
D. titanus
学名
Dorcus (Serrognathus) titanus
(Boisduval1835)[1]

ヒラタクワガタ(平鍬形 Dorcus titanus)は、コウチュウ目クワガタムシ科オオクワガタ属ヒラタクワガタ亜属の1で、19亜種に分類されている。 オオクワガタ属の中で最大種である。 ヒラタとは平べったい体型をしていることから名付けられ、種小名titanusはギリシア神話の神々であるティターンに由来している。 また、日本では外国産亜種などの放虫による遺伝子汚染が問題となっている。

目次

[編集] 形態

体長はオスが19 - 110mm、メスが21 - 52mm。

生息地域(亜種)や、個体差によって、大きさに幅があるが、110mmもの野生個体が見つかっているオオクワガタ属の最大種である。 体型は平べったく、幅広く、体色は黒から黒褐色である。 オスの大アゴは太く、平べったく、根本にある大きな内歯が一対と、ノコギリ状の小歯を持つ。小型個体では小歯が消失していることもある。 足は短く、前足は幅広く、やや内側に曲がっている。 メスや小型オスでは背面の艶が強く、上翅には、うっすらと点でできている弱い縦スジが見られる。 メスの腹には細かい黄色の毛がある。

[編集] 分布

日本インドネシアボルネオ島フィリピンマレー半島タイベトナムラオスミャンマーインド中国台湾朝鮮半島

ヒラタクワガタは、かつて氷河期に、スンダランドと呼ばれる大陸で派生し、南と北の2方向に分布拡大したと考えられている。 南へ向かった個体群は、その後の地殻変動や氷河期後の海面上昇による島々の成立とともに分断され、東南アジアの島々で分化したと考えられている。 北に向かった個体群は、さらに東アジアを進み、朝鮮半島経由、および南西諸島を経由して、日本列島に たどり着いたと考えられている。

[編集] 生態

低地から山地までの広葉樹の森林に生息している。 生息数は、日本の本州などでは やや少ないが、南方では やや多い傾向にある。 湿度の高い環境を好むようで、日本では河川敷や、河川近くの林などで多く生息している。 成虫は、夜行性であり、広葉樹の樹液をとしている。 樹木のなどに隠れて生活している。 成虫での寿命は1 - 3年である。 南方に生息する大型亜種では、昼間であっても、オスが縄張りやメスを争っている姿が見られるという。 気性は荒く、大顎で挟む力は強烈であり、この大顎が凶器となってオスがメスを殺すことも多いため、飼育には注意が必要である。 大型種はその気性の荒さと体格のため、他の甲虫との戦いでは優位に立ちやすい。反面、体の硬さと力の強さと引き換えに体が重く、あまり敏捷ではない。全く飛べない訳ではないが飛翔性は低く、めったに飛ばないので生息範囲を拡げにくい。

メスは、広葉樹の立枯れの地中部や倒木の下部などに産卵し、は約1ヵ月ほどで孵化する。 幼虫は、やや湿度の高い朽木の中で生活し、その朽木を食べて育つ。幼虫期間は約1年である。 になるために、蛹室を作り、約1ヵ月かけて蛹となる。蛹から約1ヵ月ほど経ってから羽化する。 さらに、羽化から約1ヵ月ほど経ってから蛹室を出て活動を開始する。

近年、外国原産のヒラタクワガタや、別地域の日本産亜種が自然に放され、別亜種どうしの交配種が数多く確認され、日本元来のヒラタクワガタへの遺伝子汚染や、生態系への影響が心配されている。

[編集] 分類

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19亜種分類され、日本では12亜種が特定されている。 また、未特定の個体群も確認されていて、今後も整理されると予想されている。

ヒラタクワガタ(原名亜種) Dorcus titanus titanus (Boisduval, 1835)
スラウェシ島北部、ペレン島バンガイ島。オス32 - 100.5mm、メス36.5 - 52mm。オオヒラタクワガタと呼ばれる。
パラワンオオヒラタクワガタ D. t. palawanicus (Lacroix, 1984)
パラワン島。オス54 - 110mm、メス42 - 46.5mm。 最長の亜種。
ヒガシルソンヒラタクワガタ D. t. typhon (Boileau, 1905)
ルソン島東部、カタンドゥアネス島。オス38 - 103.5mm、メス34 - 48mm。
インドヒラタクワガタ D. t. westermanni Hope, 1842
インドシナ北部、インド北東部、雲南省南部、海南島。オス36 - 86mm、メス31 - 39.5mm。
ウンナンヒラタクワガタ D. t. typhoniformis (Nagel, 1924)
広西壮族自治区北西部、貴州省、雲南省北部。オス31.5-80mm、メス32 - 34mm。
チュウゴクヒラタクワガタ D. t. platymelus (Saunders, 1854)
D. t. platymelus
中国東部。オス36 - 82mm、メス34 - 40mm。ホンドヒラタを大型にした体型。
タイワンヒラタクワガタ D. t. sika (Krirache, 1920)
台湾本島、緑島。オス29.5 - 71mm、メス33 - 35mm。
ダイトウヒラタクワガタ D. t. daitoensis
大東諸島。オス23.5 - 53.5mm、メス21 - 33mm。日本最古の亜種。
ツシマヒラタクワガタ D. t. castanicolor
対馬など。オス31 - 81.4mm、メス30 - 42mm。日本最長の亜種(野生)。
イキヒラタクワガタ D. t. tatsutai Shiokawa, 2001
壱岐諸島(壱岐、長島、大島)。オス31 - 80.5mm、メス30-42mm。
ゴトウヒラタクワガタ D. t. karasuyamai Baba, 1999
五島列島。オス30 - 78mm、メス24.5 - 38mm。
タカラヒラタクワガタ D. t. takaraenis (Fujita et Ichikawa, 1985)
宝島小宝島。オス32 - 70mm、メス34 - 35.5mm。
アマミヒラタクワガタ D. t. elegans (Boleau, 1899)
奄美群島の5島。オス23.5 - 75mm、メス28.5 - 43mm。
トクノシマヒラタクワガタ Dorcus tinanus tokunoshimaensis (Fujita et Ichikawa, 1985)
徳之島(奄美群島)。オス31 - 78.5mm、メス25 - 43mm。
オキノエラブヒラタクワガタ D. t. okinoerabuensis (Fujita et Ichikawa, 1985)
沖永良部島(奄美群島)。オス26.5 - 65mm、メス25 - 35mm。
オキナワヒラタクワガタ D. t. okinawanus (Krieshe, 1922)
沖縄諸島の16島。オス28 - 71.5mm、メス25 - 37mm。
サキシマヒラタクワガタ D. t. sakishimanus
先島諸島。オス28 - 79mm、メス25 - 30mm。日本最長の亜種(飼育)。
ホンドヒラタクワガタ D. t. pilifer Vollenhoven, 1861
本州(山形県以南)、四国九州甑島列島、他14島。オス19 - 75mm、メス28.5 - 41mm。
ハチジョウヒラタクワガタ D. t. hachejoensis (Fujita et Okuda, 1989)
八丈島(伊豆諸島)。オス23 - 60mm、メス22 - 33mm。
特定されていない個体群
スラウェシヒラタクワガタ スラウェシ島中部から南部
ボルネオヒラタクワガタ ボルネオ島
ニシルソンヒラタクワガタ ルソン島西部、シブヤン島
マリンドックヒラタクワガタ マリンドック島
サマールヒラタクワガタ サマール島レイテ島
ミンダナオヒラタクワガタ ミンダナオ島
マレーヒラタクワガタ マレー半島
スマトラオオヒラタクワガタ スマトラ島
ニアスヒラタクワガタ ニアス島
ニシチュウゴクヒラタクワガタ 中国西部
上記に名前がない個体
セレベスオオヒラタクワガタ
ダイオウヒラタクワガタ
テイオウヒラタクワガタ
アルキデスオオヒラタクワガタ

[編集] 分岐図

ミトコンドリアDNAを解析した結果、分岐の順序が明らかとなっている。






ヒラタクワガタ(原名亜種)



スマトラヒラタクワガタ




パラワンヒラタクワガタ





ヒガシルソンヒラタクワガタ



ミンダナオヒラタクワガタ






インドヒラタクワガタ




ダイトウヒラタクワガタ





ツシマヒラタクワガタ





アマミヒラタクワガタ



タカラヒラタクワガタ






オキノエラブヒラタクワガタ




トクノシマヒラタクワガタ



オキナワヒラタクワガタ







サキシマヒラタクワガタ



タイワンヒラタクワガタ





ホンドヒラタクワガタ



ハチジョウヒラタクワガタ











[編集] 日本産ヒラタクワガタについて

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「ヒラタクワガタ」という名称は、日本に広く分布する亜種Dorcus titanus pilifer和名としての印象が強いが、分類学上では、日本産亜種、外国産亜種を含めた「」の和名とされている。 現在でも、分類等については、研究者によって意見が分かれるところである。

体長はオスの場合、大アゴを含めて24から74ミリメートルに達するが、これは対馬、八重山諸島の亜種に限った場合である。黒から黒褐色の頑強で平たい身体を持ち、大顎も他のクワガタに比べると薄く平たい。この体型がヒラタクワガタの語源と思われる。オオクワガタに次いで[要出典]飼育が容易であり、 日本だけも数多くの亜種が存在するため、飼育でも標本でも愛好者が多い。

和名でヒラタクワガタと呼ばれる種群は、近年国立環境研究所の五箇浩一と現代のクワガタ飼育技術の草分けである昆虫研究家の小島啓史が共同で行った、ミトコンドリアDNAに基づく分子系統樹により、現在ホンドヒラタなどと仮称[要出典]されている原名亜種群と、九州地方北部と山口県西部の一部に産する本土型のツシマヒラタ(ツシマ系ホンドヒラタと仮称)の混生群を指している事がわかってきた。 ホンドヒラタのオスの大アゴは、湾曲が弱く、基部から2/3は直線的で、下方への湾曲も少ない。第一内歯は根元から1/3にあり、先端部分の小歯は弱く小さい。内歯から小歯の間に一連の鋸歯を備えるが小型個体では消失する。頭楯は幅が広く中央部が緩やかにくぼむ。ツシマ系ホンドヒラタのオスの大アゴは細長く、ほぼまっすぐで先端のみ湾入する。第一内歯は大アゴの基部1/4にあり、大アゴ先端の小歯は大型個体では良く発達する、第一内歯と小歯の間には、一連の鋸歯があるが小型個体では消失する。頭楯はホンドヒラタより狭く両端がやや突出し、中央部はやや強くくぼむ。

ホンドヒラタとツシマ系ホンドヒラタでは、内歯の位置は体長によって変化しない。近年70ミリメートルを大きく超え、第一内歯が中央部付近にあるオスが本州各地で発見されているが、五箇と小島がミトコンドリアDNAをもとに調べた範囲では、沖縄島嶼部に産するサキシマヒラタや外国産ヒラタクワガタの遺棄個体であることが確認された。従って従来の知見通り九州・本州四国と周辺島嶼に元々産するホンドヒラタは、第一内歯の位置が体長によって上下しない点が特徴と思われる。

ホンドヒラタは本州・四国。九州・種子島屋久島伊豆諸島に産するが、伊豆諸島の内八丈島産はハチジョウヒラタとして別亜種とされる。この亜種には、第一内歯が大アゴ先端に近づくオスが存在するため、ホンドヒラタとは別亜種とされるようになった。

また、遺伝的に識別できるツシマ系本土ヒラタの分布は、九州の北部と山口県の北西部のみから知られる。ただし、形態的には山口県南部から福岡県北部にかけて生息しているヒラタクワガタの一部がツシマヒラタの様に第一内歯が大アゴの根本付近に位置し、体全体が細め。甑島列島の個体にもこの特徴が現れている。

通常、同所的に二群の昆虫が存在するとき、その二群は別種とすることが多い。ホペイオオクワガタはかつてクルビデンスオオクワガタの亜種とされたが、同所的に産することが確認され、現在は別種扱いになっている。ホンドヒラタとツシマ系ホンドヒラタを東南アジア全域のヒラタクワガタ・オオヒラタクワガタ群の中に置いて、ミトコンドリアDNAを元に分子系統樹を描くと、どちらも中国本土のチュウゴクヒラタの子孫に当たることがわかっている。しかし分布経路は大きく異なり、ホンドヒラタが、タイワンヒラタ・サキシマヒラタ・ハチジョウヒラタの子孫系で、ツシマ系ホンドヒラタはチュウゴクヒラタと朝鮮半島産ヒラタクワガタ・ツシマヒラタの子孫にあたる。

チュウゴクヒラタからわかれた点ではどちらもオオヒラタ群ではなく、中型のヒラタクワガタ群と見なせるが、五箇と小島が行った東南アジア各地のオオヒラタ群との交雑試験では、ツシマヒラタおよびツシマ系ホンドヒラタのみにオオヒラタ群との継続妊性が確認された。つまり妊性だけから見ると、ツシマヒラタとツシマ系ホンドヒラタはオオヒラタ群と近縁と見なせる。

この様にホンドヒラタとツシマ系ホンドヒラタは、別種としてよいだけの分布経路・ミトコンドリアDNAの相違・妊性の違いなどがあるが、日本のヒラタクワガタのタイプ標本が紛失していることから、敢えてこの二群を別種として再記載する試みは、分類学者によってまだ行われていない。

こうしたヒラタクワガタ類の地域変異やその分布の成立要因に関して、小島啓史は野外での生態観察や、累代飼育によって得られた情報によって、次のような仮説を展開している。

日本周辺に存在するオオクワガタは一亜種だけだが、これはこの亜種が流木経由で分布を広げにくい「内陸型」のクワガタだからと考えられる。日本と朝鮮半島産オオクワガタは同じ亜種だが、日本産のヒラタクワガタは沖縄では島嶼ごとに分化が進み、島ごとに数万年から10数万年の開きがある。これに関して、ヒラタクワガタ群の幼虫が過湿状態に強い地下生活者であったため、流木経由で分布を拡大できる「低湿地型」のクワガタだったからと仮定している。

日本周辺のヒラタクワガタ群は、氷河期の終わりごとに赤道周辺から北上して、その時々に達した地域を足がかりに分布域を広げたが、熱帯地方出身のため幼虫が冬期、零度以下の温度に耐える耐寒越冬状態になれないため、分水嶺を超えて分布を広げた形跡はない。そのため氷河期がくると分布域を南下させる必要が生じ、日本周辺には、波状に侵入を繰り返した結果と思われる細分化した群が見られる。日本周辺のヒラタクワガタ群は、亜種間によっては10 - 100万年という分化が進んでおり、氷河期と間氷期を調べるのに最適な標本であると考えられている。

[編集] 脚注および参考文献

  1. ^ species: Dorcus titanus (Boisduval, 1835)”. BioLib. 2011年5月2日閲覧。

[編集] 外部リンク

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