ノコギリクワガタ
| ノコギリクワガタ | |||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ノコギリクワガタの成虫(雄)
|
|||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||
| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Prosopocoilus inclinatus (Motschulsky, 1857) |
ノコギリクワガタ(鋸鍬形 Prosopocoilus inclinatus)は、コウチュウ目・クワガタムシ科・ノコギリクワガタ属の1種で、5亜種に分類されている。日本国内に広く生息している代表的なクワガタムシである。鋸のように歯が数多く並んでいることから名付けられた。また、種小名のinclinatusは「傾斜の」という意味であり、大アゴの形に由来している。比較的個体数も多く、人々によく親しまれている種。
目次 |
[編集] 形態
体長はオスが26 - 74.5mm、メスが19.5 - 41mm。
オスは体格による個体変異が顕著で、体長が50mm台後半以上の大型個体では大きく屈曲した長い大アゴを持つが、中型個体では大アゴが ゆるやかな湾曲となり、小型個体では大アゴが直線的になり、内歯は均一なノコギリ状となる。体色は赤褐色から黒褐色である。しばしば「水牛」に例えられるオスの大アゴは、樹液をめぐるカブトムシとの闘いに勝つために進化したのではないかと考えられている。メスは体色は赤褐色(まれに黒色)で、足も全体的に赤い。アゴはミヤマクワガタのメスに比べて細い。
[編集] 分布
日本(北海道から屋久島まで)、韓国(朝鮮半島、済州島、鬱陵島)
[編集] 生態
平地から山地までの広葉樹の森林、都市郊外の小規模の林にまで生息していて、生息数はやや多い。成虫は、活動期が6月上旬から10月である。広葉樹の樹液などを餌としていて、クヌギ・コナラ・ミズナラ・ヤナギ・ハンノキ・ニレ等に集まる。基本的に夜行性であるが、昼間でも木陰などで見ることができ、樹木の根際や樹皮下よりも、樹上の高い所で休んでいることが多い。成虫での寿命は2 - 3ヵ月である。一般に大アゴの力が弱いと言われることもあるが、闘争本能が強く、活発であることから、他のクワガタムシよりも有位な地位を占めることが多い。生息数も多く、樹を蹴ると、跗節の感覚毛で震動を感じ擬死して落下してくることから、この習性を利用して古くから少年達に採集されてきた。
メスは、広葉樹の立枯れの地中部、倒木の埋没部やその周辺に産卵し、卵から孵化までは約1ヵ月である。幼虫は、その朽木を食べて育ち、2回の脱皮を経て終齢である3齢幼虫となる。幼虫期間は約1-3年である。蛹になるために、春から夏にかけて蛹室(ようしつ)を作り始めて、約1ヵ月かけて蛹となり、蛹から羽化までは約1ヵ月である。初夏までに羽化した成虫は、その夏に活動を開始するが、晩夏から秋に羽化した成虫は、そのまま越冬し、翌年に蛹室を出て活動を開始する。オオクワガタ属等と異なり、本種のオスは朽木に脱出口を掘ることができないため、蛹室は あらかじめ朽木の外に出て土中に作られる場合が多い。また、低山地から亜高山帯ではミヤマクワガタと混生する地域もある。
[編集] 分類
- ノコギリクワガタ・原名亜種 Prosopocoilus inclinatus inclinatus (Motschulsky, 1857)
- 北海道・本州・九州・四国・伊豆諸島(大島・利島)・佐渡島・対馬・壱岐・種子島・屋久島・朝鮮半島・済州島・鬱陵島。オス26 - 74.5mm、メス25 - 41mm。
- 伊豆大島では大型化する。四国・九州型では大アゴは細長く、体は細い。屋久島型では大アゴの湾曲が強く、赤味が強い。
- クロシマノコギリクワガタ
- P. i. kuroshimaensis Simizu et Murayama, 2004
- 黒島(三島村)。オス31 - 69.5mm、メス25 - 41mm。
- 原名亜種に比べて大アゴは短く湾曲が強い。体は光沢が強く、脚が細長い。完全な黒化型も出現する。
- ミシマイオウノコギリクワガタ
- P. i. mishimaiouensis Simizu et Murayama, 1998
- 硫黄島(三島村)。オス27.5 - 68.5mm、24.5 - 35mm。
- 原名亜種に比べて大アゴは太く、やや湾曲が弱い。体は光沢がやや強く、付節が細長い。
- クチノエラブノコギリクワガタ
- P. i. kuchinoerabuensis Simizu et Murayama, 1998
- 口永良部島。オス28.5 - 68.5mm、メス19.5 - 38.5mm。
- 原名亜種に比べて大アゴは細く湾曲が弱い。体は細く、光沢がやや強い。
- ミヤケノコギリクワガタ(ノコギリクワガタ伊豆諸島南部亜種)
- P. i. miyakejimaensis Adachi, 2009
- 新島・式根島・神津島・三宅島・御蔵島。オス24.0 - 65.0mm、メス22.0 - 36.0mm。
- 原名亜種に比べて雄は大腮が内側に湾曲し、太く短い。頭の発達が悪い。黒化したものが多く、体が太い。前胸の縁が丸みを帯びる。雌も黒化したものが多い。オオバヤシャブシの樹液に集まる。灯火にも良く集まる。
[編集] 飼育
ノコギリクワガタは、児童向けの昆虫書籍やデパートのペット売り場での名札では、しばしば「ノコギリ」という接頭語を付けず、単に「クワガタムシ」ないし「クワガタ」と記され、また昆虫図鑑の表紙にも度々なり、日本産クワガタムシ中、最もポピュラーかつ代表的な大型種である。そして、カブトムシ、スズムシなどと同様に古くから子供達の愛玩動物として飼育されてきた。活動成虫の寿命は短く、「ひと夏のおもちゃ」であり、カブトムシと「相撲」を取らせたりして遊ばれた。21世紀に入ると、オオクワガタブームに端を発するクワガタ飼育用品の普及によって、大人、子供をとわぬ飼育対象となり、累代飼育の技術も発達する。
成虫の飼育は、市販の水槽、床材(マット)、昆虫用エサや、木材を用いて簡単に飼育できる。クヌギ、コナラ、ヤナギなどの湿気の多い朽木をマットに埋めておくと、メスは その下面やマットそのものに産卵する。
幼虫の飼育は、餌となる木屑を空き瓶などに詰めておこなうが、オオクワガタなどで使用されている「菌糸ビン」では、必須栄養素の種類や消化吸収機能が異なっているため、大きな効果はない。しかし、3週間から1ヶ月ほど経ったものは水分が多くなっているためノコギリクワガタにとっても適したものとなる。このため、大型個体を生ませるには、ブナ科の樹木の粉末に小麦粉などを添加した「発酵マット」が餌として使用される。ただし、大型個体を望まないのであれば、無添加の広葉樹のマットで十分で、また、そのほうが幼虫の死亡率も低い。人の生活する室内は一年中暖かいので、なるべく涼しい環境(野外やガレージ等)に飼育ビンを置き、幼虫を長期間、脱皮、変態させないまま育てる方が、大型個体が生まれる。
[編集] 参考文献
- 「特集 クワガタムシ・クロツヤムシ」、『昆虫と自然』2003年3月。
- 「日本のクワガタムシ大特集」、『ビー・クワ』2007年夏号 (No. 24)。
- 「[1]」『月刊むし』2009年9月号、むし社。