すぐき

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すぐき(酸茎)、または酸茎漬け(すぐきづけ)は、京都市の伝統的な漬物(京漬物)の一種。カブの変種である酸茎菜すぐきな、別名酸茎蕪(すぐきかぶら)の葉とかぶらを原材料とする。現代の日本では数の少ない本格的な乳酸発酵漬物で、澄んだ酸味が特徴である。

概要[編集]

柴漬」、「千枚漬け」と合わせて京都の三大漬物と呼ばれている。

冬に酸茎菜を収穫し、塩水による下漬け(1晩)、塩をまぶした本漬け(約7日間)を経て、室の中で約8日間発酵をさせるとできる。漬けあがったものは、葉や茎は鼈甲色や飴色に近くなり、かぶらは黄色がかった乳白色になる。すぐきは冬(息が見える頃)が最もおいしい旬であると言われる。旬の漬け上がりに食べるとさわやかな酸味であるが、古漬けになるとかなり酸っぱくなる。

なお、京都のすぐきはを用いるのに対し、高冷地である長野県木曾地方すんき漬けカブナが材料)は塩を使用せずに乳酸発酵させて作り、調味なしの日本唯一の自然漬物ともいわれる。

いわゆる善玉菌である乳酸菌食物繊維を豊富に含むことから、整腸作用があるとされる。すぐき漬けにはザワークラウトなどに含まれるラクトバシラス属の菌の亜種 Lactobacillus brevis subsp. coagulans(通称ラブレ菌)が含まれ、この亜種にもインターフェロン増産作用があることがわかっているが、通常の量のすぐき漬けを食べても、免疫機能が向上するわけではない。

原料[編集]

原料の酸茎菜は、京都市北区賀茂別雷神社(上賀茂神社)で栽培したのが発祥とされている。しかし、その歴史についてはいまだに定かにはなっていない。約350年前の『日次紀事』(1667年)への記載をはじめ、数々の本草書、詩文などにその名前が載っている。明治時代になりその栽培が一般農家にも広がり、販売されるようになった。

古来、酸茎菜の栽培と生産は、東西を賀茂川高野川にはさまれた三角州の中で、北端を深泥池とする地区に限られ、ここで生育されたものだけが「すぐき」と名が付けられる。

酸茎菜の種蒔きは8月末に行われ、11月下旬ごろから12月初旬に収穫される。栽培する家によって、の太さや長さ、 かぶら(胚軸)の丸みなどが異なり、各自が自慢しあう様子は、「わ(我、輪)がええ、わがええ、桶屋さん」という冗談で表現される[1]

作り方[編集]

下漬け

12月初旬、収穫した酸茎菜のかぶらの皮を剥き(面取りし)、ころし桶という容器で下漬けをする。濃い塩水を入れたころし桶に山盛りに入れ、独特の「天秤押し」というやり方で、長さ4~5mほどの丸太棒の一方を固定させ、もう一方の先に重石を下げて樽のフタを押さえる、「てこの原理」(第2種てこ)を利用した方法で行う。下漬けは一晩で、翌朝取り出して、ていねいに水洗いする。

本漬け

かぶらが直接桶肌や別のかぶらに触れて傷つくことがないように、葉でくるみ、ころし桶に、隙間なくきっちりと並べ、一段ごとに塩を振りかける。上まで重ねると、天秤押しして7日間程度漬ける。塩加減と天秤押しの重石の利かせ方は味を左右するため、経験が必要で、家ごとの特徴がでる[2]

室入れ

本漬けの後、室に入れ保温し、8日間ほど発酵をさせる。室の中の周囲に桶をならべ、中央では炭火に灰をかぶせた鍋を天井から吊るして温度を保ち、乳酸発酵を促進する。発酵によってふくらみ、桶からあふれるほどになると、室から出して冷やす。

時候熟れ

発祥の頃は、室入れの代わりに時候熟れ(じこうなれ)の技法が用いられていた。時候熟れとは、収穫して本漬したすぐきを家の軒下に置き、自然の気温で発酵させる技法である。この時候熟れの技法で生産すると、すぐきの食べごろは春から初夏になる。現在は衛生上の問題(雑菌の繁殖)や、京都の気温の上昇によりこの漬け方をすることはほぼ無い。

完成

重しを外さずに冷やすと、漬け汁が分離するが、重しを外した後、汁が再び戻らないように注意する。収穫してから3週間程度の期間で、あめ色のすぐきが完成する。酸茎菜の収穫と漬け込みは年明けまで繰り返し続き、2月末ごろにはその年の漬け込みは終了する。

食べ方[編集]

一般に、葉、茎とかぶらは別々に切る。葉、茎は刻むか、長めに切るが、かぶらは半月状の薄切りにする。そのまま食べるほか、好みで醤油などで味を調えて、ご飯のおかずにすることが多い。

他に、細かく刻んで、サラダに混ぜたり、うどんスパゲティカルパッチョなどのトッピングに使ったり、炒飯焼きそば卵焼き味噌汁などに入れて加熱して食べたりすることもできる。

脚注[編集]

  1. ^ 日本の食生活全集京都編集委員会編、『日本の食生活全集26 聞き書京都の食事』p63、1985年、東京、社団法人農山漁村文化協会、ISBN 4-540-85006-7
  2. ^ 日本の食生活全集京都編集委員会編、『日本の食生活全集26 聞き書京都の食事』p64、1985年、東京、社団法人農山漁村文化協会、ISBN 4-540-85006-7

外部リンク[編集]

関連項目[編集]