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日本の糖尿病学会は、2013年にも腎臓への影響からの糖尿病合併症への懸念から通常の炭水化物の比率(60%前後)を推奨している<ref name="糖尿病学会2013"/>。
日本の糖尿病学会は、2013年にも腎臓への影響からの糖尿病合併症への懸念から通常の炭水化物の比率(60%前後)を推奨している<ref name="糖尿病学会2013"/>。


低炭水化物食による体重減少の効果が[[低脂質食|低脂肪食]]や{{仮リンク|ゾーンダイエット|en|Zone diet}}など他のダイエットより優れているかどうかについては相反する臨床試験の結果が報告されており、2014年の[[メタアナリシス]]の結果によれば効果に差はないと見られる<ref>髙尾哲也、小川睦美、清水史子、石井幸江 [https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000539.html 糖と健康の誤解;糖質制限は正しいか] 最終更新日:2015年8月10日 糖質に関する正しい知識の普及に向けて〜「食と健康に関する講演会」の概要報告〜</ref>。6ヶ月の短期間では{{仮リンク|低脂肪食|en|Low-fat diet}}と比較して体重が減少しているが1年後では差がないなどの報告があり<ref name="pmid12761365"/>、[[便秘]]や[[頭痛]]<ref name="SondikeCopperman2003"/><ref name="YancyOlsen2004"/>、[[口臭]]、[[痙攣|筋けいれん]]、[[下痢]]、[[脱力感]]、[[発疹]]がより頻繁に見られる<ref name="YancyOlsen2004"/><ref name=westman2007>Eric C Westman, Richard D Feinman, John C Mavropoulos, Mary C Vernon, Jeff S Volek, James A Wortman, William S Yancy, and Stephen D Phinney, [http://ajcn.nutrition.org/content/86/2/276.full Low-carbohydrate nutrition and metabolism] (2007)</ref>。
低炭水化物食による体重減少の効果が{{仮リンク|低脂肪食|en|Low-fat diet}}や{{仮リンク|ゾーンダイエット|en|Zone diet}}など他のダイエットより優れているかどうかについては相反する臨床試験の結果が報告されており、2014年の[[メタアナリシス]]の結果によれば効果に差はないと見られる<ref>髙尾哲也、小川睦美、清水史子、石井幸江 [https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000539.html 糖と健康の誤解;糖質制限は正しいか] 最終更新日:2015年8月10日 糖質に関する正しい知識の普及に向けて〜「食と健康に関する講演会」の概要報告〜</ref>。6ヶ月の短期間では低脂肪食と比較して体重が減少しているが1年後では差がないなどの報告があり<ref name="pmid12761365">{{Cite journal| author= Gary D. Foster, Ph. D., Holly R. Wyatt, M.D., James O. Hill, Ph. D., Brian G. McGuckin, Ed. M., Carrie Brill, B.S., B. Selma Mohammed, M.D., Ph. D., Philippe O. Szapary, M.D., Daniel J. Rader, M.D., Joel S. Edman, D.Sc., and Samuel Klein, M.D. | title=A Randomized Trial of a Low-Carbohydrate Diet for Obesity | journal=[[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン|New England Journal of Medicine]] | year=2003 | volume=348 |pages=2082–90 | url=http://content.nejm.org/cgi/content/short/348/21/2082 | pmid=12761365 | doi=10.1056/NEJMoa022207 | issue= 21 }}</ref>、[[便秘]]や[[頭痛]]<ref name="SondikeCopperman2003">{{cite journal|last1=Sondike|first1=Stephen B.|last2=Copperman|first2=Nancy|last3=Jacobson|first3=Marc S.|title=Effects of a low-carbohydrate diet on weight loss and cardiovascular risk factor in overweight adolescents|journal=The Journal of Pediatrics|volume=142|issue=3|year=2003|pages=253–258|issn=00223476|doi=10.1067/mpd.2003.4}}</ref><ref name="YancyOlsen2004">{{cite journal |author=Yancy WS, Olsen MK, Guyton JR, Bakst RP, Westman EC |title=A low-carbohydrate, ketogenic diet versus a low-fat diet to treat obesity and hyperlipidemia: a randomized, controlled trial |journal=[[アナルズ・オブ・インターナル・メディシン|Ann. Intern. Med.]] |volume=140 |issue=10 |pages=769-777 |date=May 2004 |pmid=15148063 |doi= |url=}}</ref>、[[口臭]]、[[痙攣|筋けいれん]]、[[下痢]]、[[脱力感]]、[[発疹]]がより頻繁に見られる<ref name="YancyOlsen2004"/><ref name=westman2007>Eric C Westman, Richard D Feinman, John C Mavropoulos, Mary C Vernon, Jeff S Volek, James A Wortman, William S Yancy, and Stephen D Phinney, [http://ajcn.nutrition.org/content/86/2/276.full Low-carbohydrate nutrition and metabolism] (2007)</ref>。


===長期間の安全性について===
===長期間の安全性について===
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== 中心静脈栄養 ==
== 中心静脈栄養 ==
必須脂肪酸欠乏、代謝性アシドーシス、微量元素欠乏、肝機能障害といった合併症が知られている。
必須脂肪酸欠乏、代謝性アシドーシス、微量元素欠乏、肝機能障害といった合併症が知られている。

==菜食==
2009年にアメリカ栄養士会は、適切な菜食が、病気の予防だけででなく、さらに特定の病気では治療においても利点があるとしている<ref>Craig WJ, Mangels AR: Position of the American Dietetic Association: vegetarian diets. J Am Diet Assoc. 109 (7):1266-1282(2009) PMID 19562864.</ref>。

菜食による糖尿病に関する論文を探索して、臨床試験では通常の糖尿病食よりも主として体重減少によって血糖値制御が大きく改善されており、アテローム性動脈硬化症の進行も抑制しており、他の治療法に匹敵することが示された<ref name="Vegediets">{{cite journal |authors=Barnard ND, Katcher HI, Jenkins DJ, Cohen J, Turner-McGrievy G |title=Vegetarian and vegan diets in type 2 diabetes management |journal=Nutrition Reviews |volume=67 |issue=5 |pages=255–63 |year=2009 |pmid=19386029 |doi=10.1111/j.1753-4887.2009.00198.x }}</ref>。

2014年の2型糖尿病患者に対するランダム化比較試験では、[[マクロビオティック]](玄米菜食)の食事法は推奨される標準食と比較して、代謝を大きく改善する結果が得られた<ref name="pmid25302069">{{cite journal |authors=Soare A, Khazrai YM, Del Toro R, et al. |title=The effect of the macrobiotic Ma-Pi 2 diet vs. the recommended diet in the management of type 2 diabetes: the randomized controlled MADIAB trial |journal=Nutr Metab (Lond) |volume=11 |issue= |pages=39 |year=2014 |pmid=25302069 |pmc=4190933 |doi=10.1186/1743-7075-11-39 }}</ref>。データは解析され、標準食よりも優れ、インスリン抵抗性と炎症の指標を低下させる安全な手法であった<ref name="pmid25852946">{{cite journal |authors=Soare A, Del Toro R, Roncella E, et al. |title=The effect of macrobiotic Ma-Pi 2 diet on systemic inflammation in patients with type 2 diabetes: a post hoc analysis of the MADIAB trial |journal=BMJ Open Diabetes Res Care |volume=3 |issue=1 |pages=e000079 |year=2015 |pmid=25852946 |pmc=4379741 |doi=10.1136/bmjdrc-2014-000079}}</ref>。2010年の報告では、既にがんをわずらっている場合には議論があり、注目される症例の報告はその治療効果を裏付けているが、有効性を証明するには不十分であるとされている<ref name="pmid21139126">{{cite journal |authors=Lerman RH |title=The macrobiotic diet in chronic disease |journal=Nutr Clin Pract |volume=25 |issue=6 |pages=621–6 |year=2010 |pmid=21139126 |doi=10.1177/0884533610385704}}</ref>。。イタリアの多施設の[[ランダム化比較試験]]の2012年の報告では、乳がんの再発率を低下させる可能性があることがわかった<ref name="pmid22495696">{{cite journal |authors=Villarini A, Pasanisi P, Traina A, et al. |title=Lifestyle and breast cancer recurrences: the DIANA-5 trial |journal=Tumori |volume=98 |issue=1 |pages=1–18 |year=2012 |pmid=22495696 |doi=10.1700/1053.11494}}</ref>。2016年のイタリアの腫瘍内科学会の見解では、がんにおけるマクロビオティックや完全菜食は栄養状態を悪化させる可能性があるため推奨できないとしている<ref name="pmid26819635">{{cite journal |authors=Caccialanza R, Pedrazzoli P, Cereda E, et al. |title=Nutritional Support in Cancer Patients: A Position Paper from the Italian Society of Medical Oncology (AIOM) and the Italian Society of Artificial Nutrition and Metabolism (SINPE) |journal=J Cancer |volume=7 |issue=2 |pages=131–5 |year=2016 |pmid=26819635 |pmc=4716844 |doi=10.7150/jca.13818}}</ref>。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==

2016年7月13日 (水) 08:46時点における版

食餌療法(しょくじりょうほう、食事療法とも、medical diet)とは、食事の量やバランス、また成分を調節することによって、病気の療養をはかったり、病気の臓器を守り健康管理をはかること。糖尿病腎臓病高血圧症などで行われる。

栄養状態の評価

[誰?] 栄養の評価は体重、上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)、上腕周囲長(AC)、血清アルブミン値、その他ラピッドターンオーバープロテインなどで評価されることが多い。アルブミンは肝臓で合成されるため肝障害時、また炎症を伴う場合、アルブミン以外の蛋白合成がされるため栄養状態の尺度とならないこともある。

項目 アルブミン トランスサイレチン
(プレアルブミン)
トランスフェリン レチノール結合蛋白 リンパ球
半減期 約21日 3〜4日間 7〜10日間 12〜16時間
高値群 脱水 腎不全、甲状腺機能亢進症、妊娠 鉄欠乏性貧血、妊娠 慢性腎不全、過栄養性脂肪肝
低値群 栄養障害、肝障害、ネフローゼ症候群、感染症、悪性腫瘍 栄養障害、肝障害、感染症 栄養障害、肝障害、ネフローゼ症候群、感染症、膠原病 栄養障害、肝障害、感染症、ビタミンA欠乏症、甲状腺機能亢進症
栄養正常 3.5g/ml以上 2000以上
軽度栄養障害 3.1-3.5 1200〜2000
中等度栄養障害 2.1-3.0 〜120 800〜1200
高度栄養障害 -2.0 〜800

エネルギー調整食

主に糖尿病の治療目的に用いられる食事である[誰?]。2型糖尿病の場合は肥満によるインスリン抵抗性を改善するため、エネルギーを制限することが望ましいと考えられている。1日あたりの総エネルギー量の目安は、

総エネルギー量=標準体重×生活活動強度指数
標準体重(Kg)=身長(m)×身長(m)×22¥
  • 生活活動強度指数
    • 軽労働(主婦・デスクワーク):25〜30kcal/kg
    • 中労働(製造・販売業・飲食店):30〜35kcal/kg
    • 重労働(建築業・農業・漁業):35kcal/kg

で計算し、食事量を決める。エネルギー量の計算は、80kcalを1単位として計算する方法が簡単で、一般的である。例えば、デスクワークの多い成人男性では、1500kcal〜1600kcal(約20単位)ということになる。

『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2004年版』には以下のような記載がある。

  • グリセミック指数の低い全粒穀物のような炭水化物を選択することが、海外の研究で知られている[1]
  • 食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)をとる[1]
  • 砂糖で甘くなった食べもの、果物をとりすぎないようにする[1]

食生活の気をつける点としては[誰?]

腹八分目とする。
食品の種類をできるだけ多くする。
脂肪を控えめに
食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)をとる。
朝食、昼食、夕食を規則正しくとる。
ゆっくりよくかんで食べる。

などがあげられる。

なお、インスリン導入後は低血糖の防止のため補食するのも可能であり、補食の場合はインスリンを打たないこともよくある。しかし食事をとらなかった場合も基礎分泌を保つため定時に通常の半量〜2/3量のインスリンの注射が必要である。

低炭水化物ダイエット

日本の糖尿病学会は、2013年にも腎臓への影響からの糖尿病合併症への懸念から通常の炭水化物の比率(60%前後)を推奨している[2]

低炭水化物食による体重減少の効果が低脂肪食ゾーンダイエットなど他のダイエットより優れているかどうかについては相反する臨床試験の結果が報告されており、2014年のメタアナリシスの結果によれば効果に差はないと見られる[3]。6ヶ月の短期間では低脂肪食と比較して体重が減少しているが1年後では差がないなどの報告があり[4]便秘頭痛[5][6]口臭筋けいれん下痢脱力感発疹がより頻繁に見られる[6][7]

長期間の安全性について

世界保健機関の2007年の報告では、タンパク質の多い食事は腎臓疾患や糖尿病性腎不全を悪化させる[8]。世界保健機関の2003年の報告は、肥満や糖尿病を予防する原因に全粒穀物を挙げている[9]。国際糖尿病連合は、糖尿病の治療には低いグリセミック指数の食品を挙げており、これは全粒穀物などがあてはまる[10]。ハーバード大学公衆衛生学教室の調査[11]では、20年間の調査で冠疾患の増加リスクはないとされている。日本の糖尿病学会は2013年に、たんぱく質の腎臓への影響による糖尿病合併症への懸念から、炭水化物は通常の食事摂取基準で示される50~60%程度の比率を推奨している[2]

塩分制限食

高血圧心不全慢性腎臓病(CKD)や肝不全といった浮腫性疾患の治療の際に用いられる治療食である。

  • 腎臓は、食餌から摂取した量とほぼ等量のナトリウムを尿中へ排泄する。ナトリウムを多く摂取すると、排泄し終わるまで心臓は腎臓へ血液を送り出し、腎臓は高い糸球体内圧で血液を濾過し続けなければならない。ナトリウム制限を行うと、血圧は下降し、腎糸球体への負担は軽減される。
  • 心血管疾患予防のためにはナトリウムの一日摂取量は6g/日以下が推奨される[12]
  • 高血圧に対する食事療法として、米国政府はダッシュダイエットを推奨している。

カリウム制限食

腎不全、透析の際に用いられる食事である。

ヨウ素制限食

甲状腺の疾患の際に用いられる食事である。

鉄制限食

C型肝炎の際に用いられる食事である。

糖尿病の食事療法

保存期糖尿病時の食事療法

基本的にはエネルギー調整食を心掛ければよい。糖尿病の食品交換表、ダッシュダイエット、カーボカウント、糖質制限食なども提唱されている。

糖尿病性腎症の食事療法

窒素制限(実際には蛋白制限)が必要となることがある。

糖尿病予防の観点から血糖値上昇を抑制させる可能性のある食物

叢法滋によると血糖値上昇を抑制させる作用のある食物には、次がある[13][信頼性要検証]

腎臓病の食事療法

急性腎不全の食事療法

エネルギー
(kcal/kg/day)
蛋白質
(g/kg/day)
食塩
(g/day)
カリウム
(g/day)
水分
35〜40 0.5〜0.8 <7 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 尿量+不感蒸泄量+腎以外の経路の喪失量

急性腎不全は原因によって病態が著しく異なる。そのため上記の図は参考にすぎない。状況によって変えていくべきである。急性期で消化器症状が強い場合はIVH管理になることが多い。蛋白制限量は内科的疾患の時は0.5〜0.8g/kg/dayであるが、外科的な疾患の場合は、特に腎後性腎不全の場合は0.7〜1.0g/kg/day程度になる。また急性腎不全で透析療法を併用している場合は0.9〜1.2g/kg/dayの制限でよい。また高カリウム血症は急性腎不全の予後を決定する因子のひとつである。血清K値が5.5mEq/l以上で制限食に切り替え、血清K値が6.5mEq/l以上でカリウム交換樹脂の併用を行う。

保存期腎不全の食事療法

エネルギー
(kcal/kg/day)
蛋白質
(g/kg/day)
食塩
(g/day)
カリウム
(g/day)
水分 リン
(mg/day)
35 0.6〜0.7 <7 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 Ccr15ml/min以下のとき制限 尿中P排出量500mg/day以上で制限

Ccr70ml/min以下の保存期慢性腎不全患者においては低蛋白食を中心とした食事療法が推奨されている。一日の蛋白摂取量の目標値は健康成人の最低蛋白摂取量である理想体重当たり0.6gとし0.7g未満であれば目標は達成である。また高血圧が増悪因子であることから食塩制限も行い、一日食塩7gの制限とする。Ccr71ml/min以上の患者でも将来腎機能が低下し、末期腎不全に進行する可能性がある場合は低蛋白食に移行してもかまわないとされている。こういった場合は0.8〜1.0g/kg/dayの蛋白制限から始める場合が多い。日常の食生活を調べ、一般の蛋白摂取量を1.3g/kg/dayを超えることがないように指導しなければならない。カリウムやリンに関しては基本的には低蛋白食ができていれば、通常は制限の必要はないとされている。しかし検査値に異常がみられる場合は新たに制限を加えることがある。カリウムならばバナナなどカリウムを多く含む食品を避けて、野菜をゆでて食べるようにすればある程度摂取量を減らすことができる。リンに関してはタンパク質に付随して摂取されることが多く、制限が不要なことが多いが、レバー、チーズ、豆腐、アーモンド、ソフトドリンクなどに多く含まれていることからこれらを避けるようにすることが望ましい。Ccrが低値であったりネフローゼ症候群が見られる場合は水分も制限する。その場合は尿量と不感蒸泄分のみの摂取となる。エネルギー制限に関しては35kcal/kg/dayでは高齢者や女性では多すぎることがあるため28〜40kcal/kg/dayの幅がある。これらを目安とするには高エネルギー低蛋白とするという保存期腎不全の原則のために設けられている。

透析導入後の食事療法

維持透析には血液透析腹膜透析に大別される。透析患者の平均余命が改善したことを受けて、透析患者の食事も変わりつつある。 週3回の血液透析の場合。

総エネルギー
(kcal/kg/day)
蛋白質
(g/kg/day)
食塩
(g/kg/day)
カリウム
(g/day)
食事以外水分
(ml/kg/day)
リン
(mg/day)
カルシウム
(mg/day)
30〜35 1.0〜1.2 0.15 1.5 15 700 600

食塩に関しては0.15g/kg/dayが原則であるが残腎尿量100mlにつき0.5g/dayの増量が可能である。また食事以外の水分に関しても15ml/kg/dayが原則だが残腎尿量分の増加が可能である。

持続式携帯型腹膜透析の場合。

総エネルギー
(kcal/kg/day)
蛋白質
(g/kg/day)
食塩
(g/day)
カリウム
(g/day)
食事以外水分
(ml/day)
リン
(mg/day)
カルシウム
(mg/day)
29〜34 1.1〜1.3 CAPD除水量(l)×7.5 2.0〜2.5 CAPD除水量 700 600

CAPDの場合は食塩摂取量はCAPD除水量(l)×7.5g/dayであるが残腎尿量100mlにつき0.5g/dayの増量が可能である。また食事以外の水分に関してもCAPD除水量が原則だが残腎尿量分の増加が可能である。なお総エネルギーは透析液からの腹膜吸収分を含む。

急性腎炎症候群の食事療法

病期 エネルギー
(kcal/kg/day)
蛋白質
(g/kg/day)
食塩
(g/day)
カリウム
(g/day)
水分
乏尿期 35 0.5 0〜3 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 前日尿量+不感蒸泄量
利尿期 35 0.5 0〜3 血清K値が5.5mEq/l以上で制限 前日尿量+不感蒸泄量
回復期 35 1.0 3〜5 制限せず 制限せず

乏尿期と利尿期に関しては食事療法は変化しない。急速進行性糸球体腎炎も食事療法では急性腎炎症候群に含まれる。

ネフローゼ症候群の食事療法

経腸栄養剤

経腸栄養剤には天然濃厚流動食、人工濃厚流動食、病態別経腸栄養剤がある。人工濃厚流動食には半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤が存在する。天然濃厚流動食、半消化態栄養剤は窒素源が蛋白質であるが、消化態栄養剤はオリゴペプチドであり成分栄養剤はアミノ酸である。細かくなるほど流動性、残渣という点では好ましくなるが、味、香りの面で劣りまた高浸透圧となるため管理が難しくなってくる。細かくなると腸管免疫の維持という点では好ましくなくなると考えられている。ラコール、ツインラインはビタミンKが60μg以上含まれているために抗凝固療法では注意が必要である。

天然濃厚流動食

天然濃厚流動食としてはオクノス流動食やファイブレンYHなどがこれに該当する。正常な消化吸収能が必要であるため、パーキンソン病患者など、経口摂取障害、嚥下障害で用いられる。粘度が極めて高いため太い経管栄養チューブが必要である。浸透圧が高いため開始後に下痢を起こしやすい。

半消化態栄養剤

半消化態栄養剤としては多少の消化機能を要するが易吸収性で適応範囲は極めて広い。浸透圧が低めで下痢を起こしにくく、味も栄養剤の中では比較的良い。栄養成分の添加もされており欠乏症のリスクは低い。エンシュアリキッド、エンシュアH、ラコール、ハーモニックM、ハーモニックFなどが有名である。腸管安静が必要な病態や消化管機能が高度に障害されている場合は適応はない。術前術後の栄養管理、熱傷、神経因性食欲不振症、意識障害など中枢神経疾患、悪性腫瘍による化学療法や放射線療法の施行時や口腔、咽頭、食道の狭窄や機能障害の時に用いられる。エンシュアリキッドやエンシュアHは高濃度経腸栄養剤と言われ、水分制限が必要な時や異化亢進時に好まれる傾向がある。

消化態栄養剤

消化態栄養剤ととしてはツインラインが非常に有名である。食品としてはエンテルードなどが知られている。小腸機能まで障害された際によく用いられる。短腸症候群、放射性腸炎、蛋白アレルギー、吸収不良症候群などに適応がある。流動性が高いため細いチューブで投与可能だが、腸管免疫の低下、腸管機能の低下、浸透圧性下痢、味、香りがよくないといった欠点がある。また菌交代症による敗血症も起こる可能性がある。

成分栄養剤

成分栄養剤としてはエレンタール及び小児用のエレンタールPが知られている。脂肪が著しく少ないため必須脂肪酸欠乏症に注意が必要である。それ以外の注意事項は消化体栄養剤と殆ど同内容となるが、更に程度は強い。クローン病潰瘍性大腸炎、大腸手術の前処置として用いられることがある。

GFO®

GFO®はグルタミン、食物繊維、オリゴ糖の頭文字から命名された。グルタミンが小腸を栄養し、食物繊維とオリゴ糖が大腸を栄養する。GFOの投与によって腸管の免疫能を促進する方法をGFO療法という。

オキシーパ®

ARDSに対して使用される免疫調節経腸栄養剤である。抗動脈硬化作用、抗炎症作用の知られるEPAなどが含まれている。

末梢静脈栄養

ビーフリード®やイントラリポス®を用いることで末梢静脈から1000Kcal以上の投与が可能である。ビーフリード2000ml(840Kcal)と20%イントラリポス200ml(400Kcal)の投与で1240Kcalの投与となる。

中心静脈栄養

必須脂肪酸欠乏、代謝性アシドーシス、微量元素欠乏、肝機能障害といった合併症が知られている。

菜食

2009年にアメリカ栄養士会は、適切な菜食が、病気の予防だけででなく、さらに特定の病気では治療においても利点があるとしている[14]

菜食による糖尿病に関する論文を探索して、臨床試験では通常の糖尿病食よりも主として体重減少によって血糖値制御が大きく改善されており、アテローム性動脈硬化症の進行も抑制しており、他の治療法に匹敵することが示された[15]

2014年の2型糖尿病患者に対するランダム化比較試験では、マクロビオティック(玄米菜食)の食事法は推奨される標準食と比較して、代謝を大きく改善する結果が得られた[16]。データは解析され、標準食よりも優れ、インスリン抵抗性と炎症の指標を低下させる安全な手法であった[17]。2010年の報告では、既にがんをわずらっている場合には議論があり、注目される症例の報告はその治療効果を裏付けているが、有効性を証明するには不十分であるとされている[18]。。イタリアの多施設のランダム化比較試験の2012年の報告では、乳がんの再発率を低下させる可能性があることがわかった[19]。2016年のイタリアの腫瘍内科学会の見解では、がんにおけるマクロビオティックや完全菜食は栄養状態を悪化させる可能性があるため推奨できないとしている[20]

参考文献

関連項目

脚注

  1. ^ a b c 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2004年版』 日本糖尿病学会。(Minds医療情報サービス
  2. ^ a b 日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言(日本糖尿病学会)
  3. ^ 髙尾哲也、小川睦美、清水史子、石井幸江 糖と健康の誤解;糖質制限は正しいか 最終更新日:2015年8月10日 糖質に関する正しい知識の普及に向けて〜「食と健康に関する講演会」の概要報告〜
  4. ^ Gary D. Foster, Ph. D., Holly R. Wyatt, M.D., James O. Hill, Ph. D., Brian G. McGuckin, Ed. M., Carrie Brill, B.S., B. Selma Mohammed, M.D., Ph. D., Philippe O. Szapary, M.D., Daniel J. Rader, M.D., Joel S. Edman, D.Sc., and Samuel Klein, M.D. (2003). “A Randomized Trial of a Low-Carbohydrate Diet for Obesity”. New England Journal of Medicine 348 (21): 2082–90. doi:10.1056/NEJMoa022207. PMID 12761365. http://content.nejm.org/cgi/content/short/348/21/2082. 
  5. ^ Sondike, Stephen B.; Copperman, Nancy; Jacobson, Marc S. (2003). “Effects of a low-carbohydrate diet on weight loss and cardiovascular risk factor in overweight adolescents”. The Journal of Pediatrics 142 (3): 253–258. doi:10.1067/mpd.2003.4. ISSN 00223476. 
  6. ^ a b Yancy WS, Olsen MK, Guyton JR, Bakst RP, Westman EC (May 2004). “A low-carbohydrate, ketogenic diet versus a low-fat diet to treat obesity and hyperlipidemia: a randomized, controlled trial”. Ann. Intern. Med. 140 (10): 769-777. PMID 15148063. 
  7. ^ Eric C Westman, Richard D Feinman, John C Mavropoulos, Mary C Vernon, Jeff S Volek, James A Wortman, William S Yancy, and Stephen D Phinney, Low-carbohydrate nutrition and metabolism (2007)
  8. ^ 『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年05月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007
  9. ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases 2003
  10. ^ 食後血糖値の管理に関するガイドライン』国際糖尿病連合
  11. ^ ニューイングランド医学雑誌2006年11月9日号p1991
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外部リンク