コンテンツにスキップ

シジミチョウ科

この記事は良質な記事に選ばれています
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シジミチョウ科
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 鱗翅目(チョウ目) Lepidoptera
階級なし : 有吻類 Glossata
階級なし : 異脈類 Heteroneura
階級なし : 二門類 Ditrysia
上科 : アゲハチョウ上科 Papilionoidea
: シジミチョウ科 Lycaenidae
学名
Lycaenidae Leach, 1815[1]
タイプ属
ベニシジミ属[2]
Lycaena Fabricius, 1807[1]
和名
シジミチョウ科[2]
亜科

本文参照

シジミチョウ科学名Lycaenidae; 漢字表記:小灰蝶科[3])はチョウのひとつ。

形態は多様だが、いっぱんに成虫は小型で、幼虫ワラジムシ型の種が多い。アリと関係の深い分類群としても知られる。本科の分類にかんしては議論があり、シジミタテハ科 Riodinidae亜科として含む分類体系などがあるが、本項では基本的にシジミタテハ科を含めない(狭義の)シジミチョウ科を扱う。

分布と多様性

[編集]

世界からおよそ 5200が知られる[4][注釈 1]南極大陸以外のすべての大陸ニュージーランド、および小笠原諸島ハワイ諸島タヒチなどのいくつかの海洋島に分布する[7]。種多様性は熱帯で高い[7][8]生物地理区別に見ると、種多様性がもっとも高いのは東洋区で、次いでエチオピア区で高い[7]新熱帯区にも多数の種が分布するが[8]旧世界と比べ、分類群(ここではおよび)に大きな偏りが見られる。新熱帯区を多様性の中心とするシジミタテハ科とは対照的な分布パターンを示すことから、両科の起源と分散の過程が異なる可能性が示唆されている[7]

DeVries (1991) による、本科とシジミチョウ科の地域別の種多様性の推定[注釈 2]
科 和名 オーストラリア区 アジア
東南南アジア[9]
旧北区 アフリカ
マダガスカルを含む[9]
北米 新熱帯区
シジミチョウ科 420 1200 >95 1300 >100 1100
シジミタテハ科 21 32 10 13 20 1200

日本に分布する種

[編集]

日本にはヒメシジミ亜科 39種、ミドリシジミ亜科 36種、ベニシジミ亜科アシナガシジミ亜科ウラギンシジミ亜科がそれぞれ 1種ずつ分布するとされる[10][注釈 3]。一部の種は環境省によって絶滅危惧種に指定されており、そのうちオガサワラシジミ Celastrina ogasawaraensis は2021年時点で絶滅状態にある可能性が高いとされている[11]

形態

[編集]

成虫はいっぱんに小型のチョウであり、前翅開帳が最小で 6-7 mmになる Brephidium exilisMicropsyche ariana といった、世界最小とされる種も含まれる[12]。後翅には尾状突起を有する種が多く[13]、特にミドリシジミ亜科で多く見られる。この尾状突起は捕食者の攻撃から身を守るために役立っていると考えられており、特に、捕食者からの攻撃をそらせるための「偽の頭部(false head)」として機能しているという仮説がよく知られているが[14][15]、尾状突起の形状は多様であり、また、被食回避効果を実際に検証・評価した研究はすくない[15]。翅の斑紋には性的二型が見られる種が多い[16]

本科の形態は多様であり、形態的特徴から厳密に定義づけるのはむずかしいとされている[17][18][19]。たとえば、本科においては多数の成虫の前脚跗節退化することが知られているが、これは科内で普遍的に見られる特徴ではなく、雄の前脚が退化しない属も多い[20]。シジミタテハ科を含む(広義の)本科の成虫は、触角の基部と密接した複眼が部分的に凹むことによって定義づけることができるとされる[18]

幼虫は後述する一部の下位分類群を除き、いっぱんにワラジムシのような形態(onisciform)を示し[19][21]、発達した前胸の下に頭部をひっこめて隠すことのできるものが多いが[21][22][23]、幼虫期が未知の種も多い[21]

本科の形態
Pseudolycaena damo, メキシコ. 本種の尾状突起は「偽の頭部」として機能している可能性が高い[15]
Lycaeides melissa samuelis の老齢幼虫(下面), アメリカ

生態

[編集]

アリとの関係

[編集]
Arhopala centaurus pirithous 幼虫, インド. 多数のアリを随伴させている.

本科に属する種のうち生活史が部分的にでも明らかにされているのは全体のおよそ20%にとどまるが、完全な生活史が明らかになっている種のうちおよそ 75%が好蟻性、すなわち生活史のすくなくとも一部においてなんらかのかたちでアリと共生的な関係を形成することが知られており[24]、本科は鱗翅目の中でも特にアリと関係が深い分類群として有名である[23][25][26][27][28][29][30]。アリとの生物間相互作用英語: biological interaction は本科の多様化と進化につよい影響を与えてきたと考えられており、さまざまな観点から調査研究の対象になっている。科内での好蟻性英語: myrmecophilyの程度や様式はさまざまだが、本科のアリとの関係はおおむね以下の三種類に大別できる[31]

Pierce et al. (2002) による、シジミチョウ科の幼虫とアリとの相互作用の分類
  • 義務的関係[28](obligate assosiation)
:生活史のすくなくとも一部において常にアリと関係し、アリがいなければ生育することができない。基本的に寄主アリに対して高い寄主特異性を示し、通常は特定の種または属のアリに依存する。アリとの関係は相利共生的なものと寄生的なものの両方が見られる[31]。完全な生活史が知られている種の 30%が該当し、日本ではキマダラルリツバメ Spindasis takanosisクロシジミ Niphanda fuscaゴマシジミ Maculinea teleiusオオゴマシジミ M. arionidesムモンアカシジミ Shirozua jonasi の5種が該当する[32]
  • 任意的関係[28](facultative assosiation)
:アリとの関係は空間的にも時間的にも断続的であり、アリを伴わなくても生存することができる。アリとの関係は非特異的かつ相利共生的なものがほとんどだが、一部の種でアリを捕食する行動が観察・報告されている[31]。完全な生活史が知られている種の 45%が該当し、日本ではムラサキシジミ Narathura japonica など多くの種が該当する[32]
  • アリと関係を持たない(non-ant-associated, mymecoxenous)
:アリからの世話を受けず、積極的に関係しない。捕食者であるアリの攻撃から身を守るための防御手段などを持たないわけではない。完全な生活史が知られている種の 25%が該当する[31]。日本にも分布するベニシジミ Lycaena phlaeas などが該当する[33]


本科の好蟻性はアリの行動を操作することで成立しており、アリの操作はすくなくとも三つの方法、すなわちアリの攻撃性の抑制、アリを引き付けて近くにとどめること、アリに自らを守らせること、で行われる。アリの行動を操作する基盤となるのが音響的化学的、あるいは視覚的信号であり、それらの信号を生成・伝達するための特殊化した器官を好蟻性器官(myrmecophilous organs, ant-associated organs)と呼ぶ[23][28][34]。化学的信号の伝達にかかわる好蟻性器官のうち、もっとも基本的な三つ[23][29]を以下に概説する。これら三種の好蟻性器官はいずれも外分泌性であり、アリに対する栄養源の提供や化学擬態英語: chemical mimicryのために機能すると考えられるが、分泌物の正確な性質などにかんしてはわかっていないことも多い。また、PCOs を除き、科内で好蟻性器官が普遍的に見られるわけではなく、たとえばアシナガシジミ亜科は基本的に伸縮突起および蜜腺を欠く[23][29][34]

オジロシジミ Euchrysops cnejus 幼虫. 後端近くに伸縮突起が見える.
幼虫の基本的な好蟻性器官
  • PCOs[23](pore cupola organs)
:体表全体に散在する。アリノスシジミ Liphyra brassolis を除く[注釈 4]、幼虫期が既知の本科すべてで観察されている。炭化水素アミノ酸を分泌してアリの攻撃を抑制するために機能している可能性が考えられている[23][29][34]
  • 伸縮突起[23](tentacle organs)
:第8腹節背側部に対になって存在する。アリの行動を操作する揮発性物質を分泌する、または物理的ないし視覚的な刺激をアリに与えるために機能している可能性がある[23][34]
  • 蜜腺[23](dorsal nectary organ)
:第7腹節背面に存在する。とアミノ酸を含む液滴[注釈 5]を分泌し、アリに与える[23][29][34]

これらの基本的な好蟻性器官にくわえ、樹状突起[23](dendritic setae)などの付加的な好蟻性器官や音響信号を発生させる機構などが見られる場合もあり、通常は複数の器官・機構が複合的に機能することで好蟻性が維持される[35]

Iridomyrmex 属のアリを随伴させる Jalmenus evagoras 蛹, オーストラリア.

好蟻性は期においても見られる例がすくなくない。蛹化の際に幼虫の好蟻性器官の多くは失われると考えられるが、体表炭化水素(cuticular hydrocarbons)の模倣による化学擬態によってアリからの攻撃の抑制したり[30]摩擦による発音英語: stridulation によってアリを誘引したりする例[36]が知られている。

アリは多くの場合、本科の成虫を獲物として扱う。アリの巣中で蛹化する種では、羽化直後の成虫は脱落しやすい鱗粉に覆われており、巣を出るまでアリの攻撃から身を守ることができるようになっている。一部の種では成虫期においてもアリの行動を操作する手段を有している可能性が報告されており、たとえば Ogyris genoveva は寄主植物の根元にアリが形成するシェルター内で幼虫期を過ごし、羽化直後の成虫はアリに攻撃されることなくシェルターの近くで翅を伸ばすことができるという。また、成虫がアリを交尾産卵のきっかけとして利用する例も知られている。たとえば、Jalmenus evagoras の雌成虫はアリを目印にして産卵を行い、雄成虫はアリを目印にして同種の雌成虫を探すとされる[37]

食性

[編集]

他の鱗翅類と同様、本科においても、幼虫期に生きた植物組織のみを摂食して生育する植物食は一般的な食性である。一方で本科においては、幼虫期の一部または全期間において昆虫由来の栄養源を利用する種がすくなからず知られている[38]。科内では植物しか食べない種からアリのみを摂食する種、成長段階で利用する餌資源を切り替える種までがひろく見られるが、次節でも概説するとおり、食性は下位分類群ごとにある程度異なる傾向がある[39][40]

生きた植物組織を摂食する種において、著しい広食性を示す種はすくなく、本科においては 21科46属の植物を摂食した記録のある Strymon melinus がもっとも食草範囲の広い種とされている[41]。本科は窒素を多く含む植物を食草とする種が多く、マメ科のほか、窒素固定を行うことが知られている既知の植物の多くで本科の幼虫による摂食が記録されている[27]。中には、ソテツ類食(Eumaeus 属、および Luthrodes 属と Theclinesthes 属の一部)[42]などの、チョウの中でもめずらしい食性を示すものも知られており[43]地衣類食者(コケシジミ亜科)、落葉やその他の枯れた植物組織を食べるもの(Calycopidina亜族の一部)、キノコ子実体を摂食するもの(Electrostrymon denarius)も報告されている[44]。多くの場合、植物組織は外側から摂食され、摂食部位は果実など多岐にわたるが、植物部位の内部に食い入る穿孔性・潜葉性英語: leaf mining を示す種も知られる[43]

本科に属する種のうち、およそ 300種が、生活史の一部またはすべてにおいて昆虫由来の栄養源に依存することが記録、または疑われている。昆虫由来の栄養源への依存とは、具体的には次のようなもの、すなわちアリの、幼虫、蛹の捕食myrmecophagy)、アリから口移しで給餌を受ける(trophallaxis)、同翅類昆虫の捕食(homopterophagy)、同翅類昆虫の排泄する甘露honeydew)の摂取、他のシジミチョウ科幼虫の捕食(faculative cannivalism, pradation)などが該当する。このような食性を示す種の大半がアシナガシジミ亜科と Lepidochrysops 属(ヒメシジミ亜科)に属しており、他の系統に属するのは 40種程度とされる。昆虫由来の栄養源に依存する鱗翅類のうち半数以上を本科が占めるため、アシナガシジミ亜科の多くはアリと積極的関係をもたないものの、本科における食性の進化はアリと深く関係していると考えられている[45]

成虫は基本的に花から吸蜜する種が多いが、コケシジミ亜科やアシナガシジミ亜科、ミドリシジミ亜科の一部の種は訪花せず、花外蜜腺英語版 や同翅類の甘露に依存する。アリノスシジミは口吻が退化し、成虫は餌を取ることがないと考えられる[16]

シジミチョウ科のさまざまな食性
Sedum 属の花を食べる Incisalia mossii 幼虫, アメリカ
食草の葉に食い入る Talicada nyseus 幼虫, インド
Virachola isocrates 幼虫, インド. ザクロの果実に穿孔して食害する.
Spalgis epius 幼虫, インド. アリが好む同翅類を捕食する[46].
Spathoglottis plicata の花外蜜腺から吸蜜する Loxura atymnus 成虫, インド
地面から吸水英語: puddling する Polyommatus icarus 成虫, カナダ
動物のから吸汁する Polyommatus bellargus 成虫, フランス

その他

[編集]

特に温帯に分布する種は、どの発育段階越冬するか(越冬態)が基本的にはっきり決まっている[12]

分類

[編集]
本科の系統樹の一例

Pentilini

Liptenini

コケシジミ亜科 Lipteninae

ホウセキシジミ亜科 Poritinae

アリノスシジミ亜科[47]Liphyrinae

Lachnocnemini

Spalgini

Tarakini

Miletini

アシナガシジミ亜科 Miletinae

ウラギンシジミ亜科 Curetinae

Ogyrini

Arhopalini

Theclini

Zesiini

Amblypodiini

Aphnaeini[注釈 6]

Iolaini

Remelanini

Hypolycaenini

Oxylidini

Hypotheclini

Catapaecilmatini

Loxurini

Horagini

Cheritrini

Luciini

Deudorigini

Tomarini

Eumaeini

ミドリシジミ亜科 Theclinae

ベニシジミ亜科 Lycaeninae

Lycaenesthini

Candalidini

Polyommatini

Niphandini

ヒメシジミ亜科 Polyommatinae
ELIOT (1973) によるもの[48][注釈 7]。この系統樹はおおむねひろく受け入れられたものの、提唱された後にいくつかの修正を経ており[31][49]、近年の分子系統学的研究もさらなる修正の必要があることを示唆している[50][51]

本科の分類にかんしては議論が多く、流動的である[19][49][50]。特にシジミタテハ科 Riodinidae との系統的関係にかんしては、本科に亜科として含めるものから、本科よりもむしろタテハチョウ科 Nymphalidaeと近縁である可能性を指摘するものまでさまざまな見解がある[49][52]。近年の分子系統学的観点にもとづく分類では、シジミタテハ科は本科の姉妹群として、本科とは独立した科として扱われることが多い[51][52][9]

ここでは、John Nevill Eliot の提唱した本科の暫定的な高次分類体系 (ELIOT 1973) にもとづいた亜科の概説と、本科の下位分類の変遷を紹介する。ELIOT (1973) は、多少の変更を加えながらもシジミチョウ科の分類体系として長らくよく参照されてきたが[24][49][53]、近年の分子系統学的研究は、Eliot の提唱した複数の下位分類群が多系統群である可能性を示しており、今後も分類の見直しが続く可能性は高い[50][51]

ELIOT (1973) によるシジミチョウ科の高次分類体系と亜科の概説[注釈 7]
シジミチョウ科 Lycaenidae Leach, 1815 sensu ELIOT 1973
:近年は次科に含める場合がある[50][51]。幼虫は地衣類や微細な真菌を餌とし、房状の毛を有しドクガ科に似るという。エチオピア区にのみ分布する[47][54]。好蟻性は知られていない[31]
:幼虫期はほとんど知られていないが、既知の例では維管束植物の葉を摂食し[55]、コケシジミ亜科と同様にドクガ科に似ており、群生するという。東洋区に分布する[56]。好蟻性は知られていない[31]
:近年は基本的に次科に含める[31][50][51][55][57]。幼虫期が既知のすべての種で、幼虫が昆虫由来の栄養源に依存する。多様性の中心はアフリカであり、オーストラリア区と東洋区にも少数が分布する[56][58]
:幼虫期が既知のすべての種で、幼虫が昆虫由来の栄養源に依存する[40][57][59]。蜜腺と伸縮突起を持たないが、アリと関係する種も知られる。アフリカと東洋区で多様であり、全北区に分布する種はわずかである[60][61]
:ウラギンシジミ属 Curetis のみによってなる単型亜科[53][62][63]。特異な幼虫形態を示す[53]。東洋区を分布の中心とし、旧北区とオーストラリア区にも数種が分布する[61]
:種数のうえでは本亜科とヒメシジミ亜科がシジミチョウ科のほとんどを占める[64]。分布は汎世界的で、南極区を除くすべての生物地理区で見られる[61][65]
:分布は汎世界的で、種多様性は旧北区で高い[66]。ほとんどの種は好蟻性を示さない[67]
:ミドリシジミ亜科と並ぶ大きな亜科であり[64]、同様に汎世界的な分布を示す[61][68]
シジミチョウ類の分類体系[注釈 7][注釈 8]
文献 CLENCH (1955);
Shirôzu & Yamamoto (1957)
ELIOT (1973) ELIOT (1990);
Pierce et al. (2002)
Brower (2007-2008)
狭義のシジミチョウ科 Lycaenidae sensu stricto シジミチョウ科 Lycaenidae シジミチョウ科 Lycaenidae シジミチョウ科 Lycaenidae
下位分類群 ※ 複数の群(group)
コケシジミ亜科 Lipteninae
  • 族 Pentilini
  • 族 Liptenini
ホウセキシジミ亜科 Poritiinae
アリノスシジミ亜科[47]Liphyrinae
アシナガシジミ亜科 Miletinae
  • 族 Miletini
  • 族 Tarakini
  • 族 Spalgini
  • 族 Lachnocnemini
ウラギンシジミ亜科 Curetinae
ミドリシジミ亜科 Theclinae
  • 族 Luciini
  • 族 Theclini
  • 族 Arhopalini
  • 族 Ogyrini
  • 族 Zesiini
  • 族 Amblypodiini
  • 族 Catapaecilmatini
  • 族 Oxylidini
  • 族 Hypotheclini
  • 族 Loxurini
  • 族 Horagini
  • 族 Cheritrini
  • 族 Aphnaeini[注釈 6]
  • 族 Iolaini
  • 族 Remelanini
  • 族 Hypolycaenini
  • 族 Deudorigini
  • 族 Tomarini
  • 族 Eumaeini
ベニシジミ亜科 Lycaeninae
ヒメシジミ亜科 Polyommatinae
  • 族 Lycaenesthini
  • 族 Candalidini
  • 族 Niphandini
  • 族 Polyommatini
シジミタテハ亜科[63]Riodininae
  • 族 Stygini
  • 族 Hamearini
  • 族 Euselasiini
  • 族 Corrachiini
  • 族 Riodinini
キララシジミ亜科[63]Poritiinae
  • 族 Pentilini
  • 族 Liptenini
  • 族 Poritiini
アシナガシジミ亜科 Miletinae
  • 族 Liphyrini
  • 族 Lachnocnemini
  • 族 Spalgini
  • 族 Miletini
ウラギンシジミ亜科 Curetinae
ベニシジミ亜科[63]Lycaeninae
  • 族 Theclini
  • 族 Aphnaeini[注釈 6]
  • 族 Lycaeini
  • 族 Polyommatini
ウラギンシジミ亜科 Curetinae
ホウセキシジミ亜科 Poritiinae
アシナガシジミ亜科 Miletinae
亜科 Aphnaeinae[注釈 6]
ヒメシジミ亜科 Polyommatinae
ベニシジミ亜科 Lycaeninae
  • Lycaenini
  • Heliophorini
ミドリシジミ亜科 Theclinae
コケシジミ科 Liptenidae
下位分類群
亜科 Pentilinae
亜科 Durbaniinae
亜科 Lipteninae
亜科 Thestorinae
アリノスシジミ科 Liphyridae
下位分類群
亜科 Liphyrinae
  • 族 Liphyrini
  • 族 Deloneurini
  • 族 Lachnocnemini
亜科 Gerydinae
亜科 Spalginae
亜科 Poritiinae
ウラギンシジミ科 Curetidae
※ ウラギンシジミ属 Curetis 単型
シジミタテハ科 Riodinidae シジミタテハ科 Riodinidae シジミタテハ科 Riodinidae
下位分類群
亜科 Hamearinae
  • 族 Hamearini
  • 族 Zemerini
亜科 Euselasiinae
  • 族 Euselasiini
  • 族 Stibogini
亜科 Riodininae
  • 族 Abisarini
  • 族 Helicopini
  • 族 Riodinini
  • 族 Theopini
亜科族不明 Incertae sedis
ELIOT (1973) はシジミタテハ科の下位分類には触れていない
亜科 Euselasiinae
亜科 Riodininae
亜科 Nemeobiinae
Stygidae
※ 属 Styx 単型

人との関係

[編集]

他のチョウの科と比べて小型種が多く、生活史の複雑さから飼育が困難な種も多いため、(コレクターによるものを除き)商業目的での採集昆虫施設での生体展示はあまり行われない傾向がある[73]

アリと義務的関係を持ち、昆虫由来の栄養源に依存する種は生態系の攪乱英語: ecological disturbance生息地の喪失英語: habitat lossに対して脆弱である傾向が特につよく[74]人間活動の影響による絶滅が危惧されている種も多い[74][75]

一方で、いくつかの種は害虫と見なされる場合がある。たとえば、アフリカ南部が原産の Cacyreus marshalli20世紀末にヨーロッパに侵入したのち南部で急速に分布を拡大し、ベゴニアペラルゴニウムの栽培の脅威になっている[76]。また、アフリカから中東にかけて分布する Deudorix livia はザクロやナツメヤシなどさまざまな果物を食害する害虫として重視されている[77]。日本でもウラナミシジミ Lampides boeticus によるマメ科作物への被害[78]クロマダラソテツシジミ Chilades pandava(syn. Luthrodes pandava[42])によるソテツへの被害[79]がときに問題となる。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ シジミタテハ科を亜科として含む場合、本科の種数は6000種を超え、チョウ全体の三分の一を占める[5][6]
  2. ^ 1991年時点の推定であり、2022年現在の種数とは異なる。また、ELIOT (1973) とは異なり、もっとも種多様性が高い地域はアフリカであるとしている。
  3. ^ 亜科については#分類節を参照。
  4. ^ Dupont et al. (2016) はアリノスシジミ幼虫の体表に特殊化した PCOs が存在する可能性を示している[29]
  5. ^ 同翅類排泄する甘露honeydew)と同一視されることも多いが、こちらは分泌物であることから、Pierce et al. (2002) は両者を区別している[34]
  6. ^ a b c d キマダラルリツバメ族[70]Aphnaeini の分類学的地位にかんしては議論が多い。ELIOT (1973) は本族をミドリシジミ亜科に含めたものの、亜科内における本族の系統的地位の決定が困難であることを示している[69][71]。本族の系統的地位が他の族とは異なる可能性は生物系統地理学的研究[72]分子系統学的研究からも示唆されており[9][51][69]、したがって、本族を亜科に格上げし、亜科 Aphnaeinae として扱う研究者も多い[50][69]
  7. ^ a b c 亜科和名は特記のない限り、Shiraiwa (1996-2021) を参照した。また、和名は併記しないものとした。
  8. ^ 以下の下位分類群は一部を除いて省略した。シジミタテハ科の下位分類についての詳細は シジミタテハ科 および species:Riodinidae を参照。

出典

[編集]
  1. ^ a b ELIOT 1973, p. 422.
  2. ^ a b 日本産蝶類和名学名便覧 2010-2013a.
  3. ^ 高野 1907, pp. 218–220.
  4. ^ van Nieukerken et al. 2011.
  5. ^ New 1993, pp. 1–4.
  6. ^ Pierce et al. 2002, p. 734.
  7. ^ a b c d ELIOT 1973, pp. 457–465.
  8. ^ a b DeVries 1991.
  9. ^ a b c d Espeland et al. 2015.
  10. ^ 猪又 & 松本 2006, p. 138.
  11. ^ 苅部 (2020-2021).
  12. ^ a b New 1993, p. 1.
  13. ^ New 1993, p. 8.
  14. ^ ELIOT 1973, pp. 398–399.
  15. ^ a b c Novelo Galicia, Luis Martínez & Cordero 2019.
  16. ^ a b New 1993, p. 7.
  17. ^ ELIOT 1973, pp. 375–381.
  18. ^ a b DE JONG, VANE-WRIGHT & ACKERY 1996.
  19. ^ a b c Shiraiwa (1996-2021).
  20. ^ ELIOT 1973, pp. 394–396.
  21. ^ a b c ELIOT 1973, pp. 409–414.
  22. ^ Pierce et al. 2002, pp. 737–738.
  23. ^ a b c d e f g h i j k l JERATTHITIKUL et al. 2013.
  24. ^ a b Pierce et al. 2002, p. 734-737.
  25. ^ New 1993.
  26. ^ Pierce et al. 2002.
  27. ^ a b Pierce 1985.
  28. ^ a b c d 寺山 & 丸山 2007, pp. 20–26.
  29. ^ a b c d e f Dupont et al. 2016.
  30. ^ a b Mizuno, Hagiwara & Akino 2018.
  31. ^ a b c d e f g h Pierce et al. 2002, pp. 734–737.
  32. ^ a b 寺山 & 丸山 2007, pp. 10–11, 20–26.
  33. ^ Pierce et al. 2002, p. 753.
  34. ^ a b c d e f Pierce et al. 2002, pp. 737–739.
  35. ^ Pierce et al. 2002, pp. 743–744.
  36. ^ Pierce et al. 2002, pp. 737–739, 743.
  37. ^ Pierce et al. 2002, pp. 741–742.
  38. ^ Pierce et al. 2002, p. 737.
  39. ^ New 1993, pp. 5–7.
  40. ^ a b Pierce et al. 2002, pp. 748–754.
  41. ^ New 1993, pp. 5–8.
  42. ^ a b Whitaker & Salzman 2020.
  43. ^ a b New 1993, pp. 1, 5–8.
  44. ^ Nishida & Robbins 2020.
  45. ^ Pierce et al. 2002, pp. 737, 753–754.
  46. ^ Pierce et al. 2002, pp. 749–751.
  47. ^ a b c d 磐瀬 1954.
  48. ^ ELIOT 1973, pp. 377, 471.
  49. ^ a b c d New 1993, pp. 1–2.
  50. ^ a b c d e f Brower (2007-2008).
  51. ^ a b c d e f Espeland et al. 2018.
  52. ^ a b Wahlberg et al. 2005.
  53. ^ a b c 森下 1978.
  54. ^ ELIOT 1973, pp. 422–423, 457–465.
  55. ^ a b Kaliszewska et al. 2015.
  56. ^ a b ELIOT 1973, pp. 425, 457–465.
  57. ^ a b MASCHWITZ et al. 1988.
  58. ^ Pierce et al. 2002, pp. 748–755.
  59. ^ ELIOT 1973, p. 426.
  60. ^ ELIOT 1973, pp. 426, 457–465.
  61. ^ a b c d Pierce et al. 2002, pp. 754–755.
  62. ^ ELIOT 1973, p. 428.
  63. ^ a b c d ELIOT 1990.
  64. ^ a b New 1993, p. 1-4.
  65. ^ ELIOT 1973, pp. 428–429, 457–465.
  66. ^ ELIOT 1973, pp. 441, 457–465.
  67. ^ Pierce et al. 2002, pp. 734–737, 754–755.
  68. ^ ELIOT 1973, pp. 441–442, 457–465.
  69. ^ a b c d BOYLE et al. 2015.
  70. ^ 日本産蝶類和名学名便覧 2010-2013b.
  71. ^ ELIOT 1973, p. 470, footnote.11.
  72. ^ Pierce et al. 2002, pp. 758–759.
  73. ^ New 1993, pp. 8–9.
  74. ^ a b Pierce et al. 2002, pp. 753–754.
  75. ^ New 1993, pp. 9–19.
  76. ^ CABI 2021.
  77. ^ Abbes et al. 2020.
  78. ^ 横浜植物防疫所 2010.
  79. ^ 沖縄県 2017.

参考文献

[編集]

和文

[編集]
  • 猪又敏男(編・解説)、松本克臣(写真)『蝶』〈山溪フィールドブックス : 新装版 ; 5〉、山と溪谷社、2006年。
  • 猪又敏男; 植村好延; 矢後勝也; 上田恭一郎; 神保宇嗣「Lycaenidae シジミチョウ科: 属一覧」『日本産蝶類和名学名便覧』2010年–2013年。2021年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月21日閲覧
  • 磐瀬太郎他山の石(10)」『蝶と蛾』第5巻第3–4号、1954年、30–31頁。doi:10.18984/lepid.5.3-4_30
  • 沖縄県農林水産部森林管理課「4.クロマダラソテツシジミ」『沖縄のみどりに発生する主要な病害虫 診断・防除の現状』(レポート)、2017年、44–46頁。
  • 苅部治紀オガサワラシジミ衰亡から学ぶべきこと」『NACS-J 日本自然保護協会』2020年–2021年。2021年11月27日閲覧
  • Kojiro Shiraiwaシジミチョウ科のページ」『ぷてろんワールド』1996年–2021年。2021年11月21日閲覧
  • 高野鷹蔵『蝶類名称類纂 : 附・日本産蝶類目録』警醒社、1907年。doi:10.11501/832754
  • 寺山守、丸山宗利「日本産好蟻性動物仮目録」『蟻 ARI』第30号、2007年、1–53頁。
  • 森下和彦「ウラギンシジミ」『やどりが』第1978巻第93–94号、1978年、3–17頁。doi:10.18984/yadoriga.1978.93-94_3
  • 横浜植物防疫所『ウラナミシジミのPRA報告書 (PDF)』(レポート)、2010年、1–2頁。

英文

[編集]

外部リンク

[編集]

シジミチョウ科一般

[編集]

好蟻性

[編集]

関連項目

[編集]