「アルデバラン」の版間の差分

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[[北半球]]の中緯度地域では、[[12月]]上旬頃には、ほぼ一晩中アルデバランを観察することができる。また、春の夕方や、秋の明け方にも見えることができる。[[黄道]]のすぐそばにあるため、毎年[[5月]]下旬から[[6月]]上旬には太陽がすぐそばを通り、この頃は地上からは全く観測することができない。同じように、惑星や月も頻繁にそばを通過する。時には月に隠されてしまう([[星食]])こともある。1等星のなかで、月に隠されることがある恒星は、他に[[レグルス]]、[[スピカ]]、[[アンタレス]]がある。
[[北半球]]の中緯度地域では、[[12月]]上旬頃には、ほぼ一晩中アルデバランを観察することができる。また、春の夕方や、秋の明け方にも見えることができる。[[黄道]]のすぐそばにあるため、毎年[[5月]]下旬から[[6月]]上旬には太陽がすぐそばを通り、この頃は地上からは全く観測することができない。同じように、惑星や月も頻繁にそばを通過する。時には月に隠されてしまう([[星食]])こともある。1等星のなかで、月に隠されることがある恒星は、他に[[レグルス]]、[[スピカ]]、[[アンタレス]]がある。


アルデバランの周囲には、地球に比較的近い[[星団]]である[[ヒアデス星団]]がV字型に広がって見え、アルデバランもそれに属するように見える。[[双眼鏡]]でアルデバランを見ると、周囲にたくさんの星が輝いていて大変美しい。しかし、ヒアデス星団は地球から151光年離れており、アルデバランの2倍以上遠い。実際には、アルデバランは独立した恒である
アルデバランの周囲には、地球に比較的近い[[星団]]である[[ヒアデス星団]]がV字型に広がって見え、アルデバランもそれに属するように見える。[[双眼鏡]]でアルデバランを見ると、周囲にたくさんの星が輝いていて大変美しい。しかし、ヒアデス星団は太陽から151光年アルデバランの2倍以上離れており、アルデバランはヒアデス団には属していない


[[占星術]]では、アルデバランは富と幸福の前兆となる幸運の星だと考えられてきた。[[ペルシア]]人にとっては、[[紀元前3000年]]頃から、[[アンタレス]]、[[フォーマルハウト]]、[[レグルス]]と並んで、ロイヤル・スター(王家の星)の1つだった。<!-- Stregheria について未訳 -->
[[占星術]]では、アルデバランは富と幸福の前兆となる幸運の星だと考えられてきた。[[ペルシア]]人にとっては、[[紀元前3000年]]頃から、[[アンタレス]]、[[フォーマルハウト]]、[[レグルス]]と並んで、ロイヤル・スター(王家の星)の1つだった。<!-- Stregheria について未訳 -->
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== 名称 ==
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アルデバランという名前は、[[アラビア語]]のアッ・ダバラーン({{lang|ar|الدبران}} ; {{unicode|ad-dabarān}}、ad は定冠詞 al の連接形)に由来する。これは、「後に続くもの」という意味であり、アルデバランが東の[[地平線]]から昇ってくるときに、[[プレアデス星団]]の後に続いて昇ってくることからの命名である。また、コル・タウリ({{lang|la|Cor Tauri}})という名前もあり、これは[[ラテン語]]で「牡牛の心臓」という意味である。アルデバランは心臓に当たる場所にあるわけではないが、アルデバランのオレンジ色が心臓を連想させたのだろう。[[英語]]では、ブルズ・アイ({{lang|en|Bull's Eye}})「牡牛の目」と呼ばれる。
アルデバランという名前は、[[アラビア語]]のアッ・ダバラーン({{lang|ar|الدبران}} ; {{unicode|ad-dabarān}}、ad は定冠詞 al の連接形)に由来する{{R|Kunitzsch}}。これは、「後に続くもの」という意味であり、アルデバランが東の[[地平線]]から昇ってくるときに、[[プレアデス星団]]の後に続いて昇ってくることからの命名である{{R|Kunitzsch}}{{R|Hara}}。また、コル・タウリ({{lang|la|Cor Tauri}})という名前もあり、これは[[ラテン語]]で「牡牛の心臓」という意味である。[[英語]]では、ブルズ・アイ({{lang|en|Bull's Eye}})「牡牛の目」と呼ばれる{{R|Allen}}


日本では、後星(あとぼし)、統星の後星(すばるのあとぼし)、統星の尾の星などという、アラビア語と同じ発想の名前が見られる。また、赤星という、色に着目した名前もある。
日本では、後星(あとぼし)、統星の後星(すばるのあとぼし)、統星の尾の星などという、アラビア語と同じ発想の名前が見られる{{R|nojiri2}}。また、赤星という、色に着目した名前もある{{R|Hara}}


== 脚注 ==
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2016年1月18日 (月) 10:05時点における版

アルデバラン
Aldebaran
仮符号・別名 おうし座α星[1]
星座 おうし座
見かけの等級 (mv) 0.985[1]
0.75 - 0.95(変光)[2]
変光星型 脈動変光星(LB)と推測[2]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  04h 35m 55.23907s[1]
赤緯 (Dec, δ) +16° 30′ 33.4885″[1]
赤方偏移 0.000181[1]
視線速度 (Rv) 54.11km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: 63.45 ミリ秒/年[1]
赤緯: -188.94 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 48.94± 0.77ミリ秒[1]
距離 66.61 ± 1.06光年[注 1]
(20.43 ± 0.33パーセク)[注 1]
絶対等級 (MV) -0.567[注 2]
アルデバランの位置
アルデバランの位置
物理的性質
半径 44.2R
質量 2.5M[3]
自転周期 643日
スペクトル分類 K5III[1]
光度 350L
表面温度 4,100K
色指数 (B-V) +1.54[4]
色指数 (U-B) +1.90[4]
色指数 (R-I) +0.94[4]
金属量 70%
他のカタログでの名称
おうし座87番星[1]
Parilicium, Cor Tauri
BD +16 629[1], FK5 168[1]
HD 29139[1], HIP 21421[1]
HR 1457[1], SAO 94027[1]
LTT11462[1]
Template (ノート 解説) ■Project
アルデバラン B
Aldebaran B
見かけの等級 (mv) +13.50
物理的性質
半径 0.04R
質量 0.15M
絶対等級 (H) 11.98
光度 0.00014L
表面温度 3.050K
Template (ノート 解説) ■Project
アルデバランAを周る天体
Companion of Aldebaran A
発見
発見年 1997年
発見者 Hatzes et al.
発見方法 分光学
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 1.35~2AU
離心率 (e) 0.182±0.065
公転周期 (P) 653.8±10.1日
昇交点黄経 (Ω) 290.2±4.9°
物理的性質
質量 11MJ
Template (ノート 解説) ■Project

アルデバラン(Aldebaran)は、おうし座α星おうし座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。

概要

オリオン座γ星からプレアデス星団の中間に位置する。オリオン座の真ん中に並んでいる3つの星を、東から西(北半球では、左から右)に結んで延長していくと、最初に突き当たる明るい星がアルデバランである。

北半球の中緯度地域では、12月上旬頃には、ほぼ一晩中アルデバランを観察することができる。また、春の夕方や、秋の明け方にも見えることができる。黄道のすぐそばにあるため、毎年5月下旬から6月上旬には太陽がすぐそばを通り、この頃は地上からは全く観測することができない。同じように、惑星や月も頻繁にそばを通過する。時には月に隠されてしまう(星食)こともある。1等星のなかで、月に隠されることがある恒星は、他にレグルススピカアンタレスがある。

アルデバランの周囲には、地球に比較的近い星団であるヒアデス星団がV字型に広がって見え、アルデバランもそれに属するように見える。双眼鏡でアルデバランを見ると、周囲にたくさんの星が輝いていて大変美しい。しかし、ヒアデス星団は太陽から151光年とアルデバランの2倍以上離れており、アルデバランはヒアデス星団には属していない。

占星術では、アルデバランは富と幸福の前兆となる幸運の星だと考えられてきた。ペルシア人にとっては、紀元前3000年頃から、アンタレスフォーマルハウトレグルスと並んで、ロイヤル・スター(王家の星)の1つだった。

特徴

視等級は0.85等と表記する資料が多いが、変光星であり、肉眼で変光を確認するのは難しい。しかし、光電測光を用いなくても写真観測で僅かに変光するのが分かる。

アルデバランと太陽の比較

アルデバランがオレンジ色をしているのは、核融合の燃料となる水素を使い果たして主系列星から赤色巨星に移行しているからであり、現在はヘリウムを核融合させている段階である。LB型の脈動変光星であり、0.75等から0.95等までわずかに明るさを変える。

アルデバランは連星であり、13.5等級の小さな赤色矮星が主星から数百auのところを回っていて、地上から見ると31角離れて見える。1997年には、巨大な惑星か小さな褐色矮星を持っている可能性が報告された。質量は最小で木星の11倍であり、アルデバランから1.35auの軌道を回っている。

アルデバランは、固有運動が比較的大きい星である。1718年アテネ509年にアルデバランの星食が起こったという記録を調べていたエドモンド・ハレーは、彼の時代のアルデバランの位置では星食は起こらず、当時のアルデバランは数角だけ北にずれていたはずだということに気づいた。現在では、アルデバランは、1年間に0.2秒角の速度で南南東に動いており、秒速54kmで太陽系から遠ざかっていることが分かっている。

初めて太陽系を離脱し、外宇宙に旅立ったアメリカの木星無人探査船・パイオニア10号は、現在おおよそアルデバランの方向へ飛行中である。アルデバラン付近に到達するのは、今から約200万年後と推定されている。

名称

学名はα Tauri(略称はαTau)[1]

アルデバランという名前は、アラビア語のアッ・ダバラーン(الدبران ; ad-dabarān、ad は定冠詞 al の連接形)に由来する[5]。これは、「後に続くもの」という意味であり、アルデバランが東の地平線から昇ってくるときに、プレアデス星団の後に続いて昇ってくることからの命名である[5][6]。また、コル・タウリ(Cor Tauri)という名前もあり、これはラテン語で「牡牛の心臓」という意味である。英語では、ブルズ・アイ(Bull's Eye)「牡牛の目」と呼ばれる[7]

日本では、後星(あとぼし)、統星の後星(すばるのあとぼし)、統星の尾の星などという、アラビア語と同じ発想の名前が見られる[8]。また、赤星という、色に着目した名前もある[6]

脚注

注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算(誤差も同様)、光年はパーセク×3.26より計算。各有効桁小数第2位
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。有効桁小数第3位

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME ALDEBARAN. 2013年1月17日閲覧。
  2. ^ a b GCVS”. Results for alf Tau. 2015年10月12日閲覧。
  3. ^ Extrasolar Planets Encyclopaedia”. Planet Aldebaran b. 2013年1月17日閲覧。
  4. ^ a b c イェール輝星目録第5版
  5. ^ a b Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern Star Names. Sky Publishing. p. 54. ISBN 978-1-931559-44-7 
  6. ^ a b 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂)恒星社厚生閣、1996年6月30日、219-220頁。ISBN 978-4769908258 
  7. ^ Richard Hinckley Allen. “Star Names, their lore and meaning”. p. 384. 2015年12月23日閲覧。
  8. ^ 野尻抱影『日本星名辞典』(七)東京堂出版、1986年4月10日、127-128頁。ISBN 978-4490100785 

関連項目