リゲル

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リゲル[1]
Rigel[2][3]
仮符号・別名 オリオン座β星A[4]
星座 オリオン座
視等級 (V) 0.13[4]
0.17 - 0.22(変光)[5]
変光星型 はくちょう座α型変光星(ACYG)[5]
分類 4重連星
位置
元期:J2000.0[4]
赤経 (RA, α) 05h 14m 32.27210s[4]
赤緯 (Dec, δ) -08° 12′ 05.8981″[4]
赤方偏移 0.000059[4]
視線速度 (Rv) 17.8 km/s[4]
固有運動 (μ) 赤経: 1.31 ミリ秒/年[4]
赤緯: 0.50 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 3.78 ± 0.34 ミリ秒[4]
距離 862.43 ± 85.24 光年[注 1]
(264.55 ± 26.15 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -6.983[注 2]
Orion constellation map.png
Cercle rouge 100%.svg
リゲルの位置
物理的性質
半径 78.9 ± 7.4 R[6]
質量 23 M[7]
表面重力 1.75 ± 0.10 (log g)[7]
自転速度 25 ± 3 km/s[7]
スペクトル分類 B8Iae[4]
光度 120,000+25,000
−21,000
L[7]
表面温度 12,100 ± 150 K[7]
色指数 (B-V) -0.03[8]
色指数 (U-B) -0.66[8]
色指数 (R-I) -0.02[8]
金属量[Fe/H] -0.06 ± 0.10[9]
年齢 800 ± 100 万年[9]
別名称
別名称
アルゲバル
オリオン座19番星[4]
BD -08 1063[4]
FK5 194[4], HD 34085[4]
HIP 24436[4], HR 1713[4]
SAO 131907[4]
Template (ノート 解説) ■Project
オリオン座β星B/C
β Orionis B/C
仮符号・別名 オリオン座β星B[10]
リゲルB/C[11]
星座 オリオン座
視等級 (V) 6.80[12]
7.50 / 7.60[12]
分類 分光連星[10]
BとCの軌道要素
軌道要素と性質
離心率 (e) 0.1[13]
公転周期 (P) 9.860 [13]
準振幅 25.0 km/s[13]
位置
元期:J2000.0[10]
赤経 (RA, α) 05h 14m 32.049s[10]
赤緯 (Dec, δ) -08° 12′ 14.78″[10]
物理的性質
質量 3.84 / 2.94 M[14]
スペクトル分類 B9+B9[10]
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リゲル[1] (Rigel[2][3]) は、オリオン座β星オリオン座恒星で全天21の1等星の1つ。冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。

概要[編集]

β星ではあるが、平均視等級の数字ではα星のベテルギウスよりも明るい。ベテルギウスは半規則型変光星でありこの極大期にのみ明るさが逆転する[注 3]。平均視等級は0.13等[4]で、地球からは約860光年離れている。

主星(リゲルA)は、明るすぎて正確な視差の測定が困難とされてきた青色超巨星で、銀河系において肉眼で見える最も明るい恒星のひとつであり、太陽の12万から27万9000倍の光度を持つ。質量が非常に大きいため、中心核での水素核融合は既に終了し、現在はヘリウムからなる中心核が収縮している段階にある[11]。そのため、半径は太陽半径の79倍から115倍まで膨張している。はくちょう座α型変光星 (ACYG) に分類され、およそ22~25日で変則的に0.03~0.3の範囲で等級を変化させる。伴星を持っており、主星よりも500倍暗く、望遠鏡でしか観測出来ない。伴星はそれ自体が分光連星であり[11]、両者共にB型主系列星であり、それぞれ太陽の3.9倍と2.9倍の質量を持つ。それぞれの恒星は、リゲルB(オリオン座β星B)とリゲルC(オリオン座β星C)と呼ばれている[11]

物理的特徴[編集]

コンピューターで描いた、リゲルと太陽の大きさを比較した画像。左端の小さな円が太陽。

数千万年でヘリウムの核融合が始まって赤色超巨星となり、更に重い元素の中心核が形成され、超新星爆発を起こすと言われている。一方で、恒星風によって表層から大量のガスが急速に失われており、数百万年経過すると超新星爆発を起こせなくなるほど質量が減り、最後はネオン酸素で構成された白色矮星となって星としての生涯を終えるという予測もある[18]

連星系[編集]

リゲルは、少なくとも1822年には、フリードリッヒ・フォン・シュトルーベによって実視連星として観測されている[19]。しかしβ星Bは、数百倍明るいリゲルに近すぎて邪魔され、150ミリクラス以下の望遠鏡で観測するのは困難である[20]。リゲルとβ星Bは平均2,500au以上離れた軌道を25,000年以上の周期で周っているものと考えられている[11]。β星Bはそれ自体が分光連星[11][12]、2つのB型主系列星が平均約100au離れた軌道を約400年掛けて互いの共通重心を周回している[11]。さらにこの3つの星の外側、11,500au離れたところをK型主系列星が250,000年掛けて周回しているものと考えられている[11]

名称[編集]

バイエル符号での名称は、オリオン座β星である。リゲルの名称が、最初に記録されているのは1252年に作成されたアルフォンソ天文表である。

固有名[編集]

リゲル
  • 語源
アラビア語で「足」を意味する rijl (رجل, [リヂル]) が変化したもので、この星のアラビア名 Rijl al-Jawzā' ([リヂル・アル=ジャウザー]、「ジャウザーの足」 の意)に由来する[2]。10世紀末から見られる、アラビア語起源の星の西洋名の一つである[2]2016年6月国際天文学連合(IAU)は恒星の固有名に関する[21]ワーキンググループ(WGSN)を組織した。2016年6月30日、国際天文学連合の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Rigel をオリオン座β星の固有名として正式に承認した[3]
  • 表記と発音
日本での「リゲル」は、原綴りを綴字読み(ローマ字読み)したものからきている。英語では [ライジェル] というように発音される。
アルゲバル
リゲルの別名としては、同じアラビア語起源のアルゲバル (Algebar) またはエルゲバル (Elgebar) がある。これは、アラビアでの別名 Rijl al-Jabbār ([リヂル・アル=ヂャッバール]、「巨人の足」 の意)から来たものである。リゲルが天文学でも広く使われていることもあり、アルゲバルは、現在では、ほとんど用いられることはない。

和名[編集]

『日本星名辞典』に掲載された図と注釈の再現

リゲルの和名は「源氏星」(げんじぼし)とされている[22][23][24][25][26][27]

この和名は源平合戦にちなむ紅白に由来するものだが、当初は現在と逆の解釈があった。

岐阜県において、平家星・源氏星という方言が見つかっている[26][28][29]。 これは昭和25年に、野尻抱影に報告された方言であり[注 4]ベテルギウスの赤色とリゲルの白色を源氏平家の旗色になぞらえた表現に由来したと解釈されている。野尻は農民の星の色を見分けた目の良さに感心し、それ以後は渋谷のプラネタリウムで解説する際には、平家星・源氏星という名称を使用するようになった[28][29]

天文誌、図鑑、野尻抱影や藤井旭の著書をはじめ、多くの本で、リゲルの和名を「源氏星」と特定した上で、岐阜の方言であるとしている[26][28][29][31][32](ただし、岐阜県の揖斐郡横蔵村(現揖斐川町)においてリゲルを平家星とする村の古老が一名いたことが野尻抱影によって紹介されており [28][29]、民俗学の見地から異論を唱える研究者もいる[注 4])。

また、増田正之は昭和60年に、富山県高岡市の市立伏木小学校において、リゲルを源氏星とした方言を見つけている[33]

また、滋賀虎姫(現・長浜市)でリゲルを銀脇(ぎんわき)とする方言が発見されている。これは、オリオン座の三つ星の脇にある関係とベテルギウスの金色とリゲルの白色とを見分けた表現から来ている。このように星を色で見分けた表現は、世界的に類を見ないと言われている[28]

その他、リゲルが関係するアステリズムの方言はリゲル関係の方言を参照。

北尾浩一の見解
北尾浩一は、著書の中で揖斐地方で発見された平家星(へいけぼし)をリゲルとして分類している[30][注 4]
多くの書籍で、源氏星がリゲルを示す岐阜の方言とされている事について、野尻抱影の著書における村の古老の証言と逆であると指摘している。北尾浩一は、再調査を行い、発見地とされる揖斐地方では一般的に認識されているの旗印の色とは逆であったことを確認している[34]。この見解が最初に発表されたのは2005年であり、野尻は既に亡くなっていた。野尻は、源氏星をリゲルと特定したが、香田より第一報を受けた後、1000回を超えるやり取りの後、初めて信用したと証言されている[34]

中国名[編集]

中国では参宿第七星(參宿七)。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算(誤差も同様)、光年はパーセク×3.26より計算。各有効桁小数第2位
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。有効桁小数第3位
  3. ^ 『2008年 天文観測年表』の175頁に掲載されている半規則型及び不規則型変光星の一覧表ではベテルギウスの変光範囲は0.0等 - 1.3等となっており[15]、同書182頁に掲載されている5.05等より明るい恒星の一覧表[16]及び189頁に掲載されている3.0等より明るい恒星の一覧表[17]ではリゲルの明るさは0.12等となっており、極大期に限りベテルギウスはバイエル符号の順番通りオリオン座で最も明るく輝く。
  4. ^ a b c 北尾は発見者を香田としている[30]。香田まゆみ(または寿男)は昭和25年に平家星をリゲルと特定した古老の存在を野尻に報告している[28][29]

出典[編集]

  1. ^ a b 原恵 『星座の神話 - 星座史と星名の意味』 (新装改訂版第4刷版) 恒星社厚生閣、2007年2月28日、226頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  2. ^ a b c d Paul Kunitzsch; Tim Smart. A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Publishing. p. 46. ISBN 978-1-931559-44-7. 
  3. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年12月16日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Ori. 2016年12月16日閲覧。
  5. ^ a b GCVS”. Results for bet Ori. 2015年10月12日閲覧。
  6. ^ Moravveji, Ehsan; Guinan, Edward F.; Shultz, Matt; Williamson, Michael H.; Moya, Andres (March 2012). “Asteroseismology of the nearby SN-II Progenitor: Rigel. Part I. The MOST High-precision Photometry and Radial Velocity Monitoring”. The Astrophysical Journal 747 (1): 108–115. arXiv:1201.0843. Bibcode 2012ApJ...747..108M. doi:10.1088/0004-637X/747/2/108. 
  7. ^ a b c d e Przybilla, N. (2010). “Mixing of CNO-cycled matter in massive stars”. Astronomy and Astrophysics 517: A38. arXiv:1005.2278. Bibcode 2010A&A...517A..38P. doi:10.1051/0004-6361/201014164. 
  8. ^ a b c 輝星星表第5版
  9. ^ a b Przybilla, N.; Butler, K.; Becker, S. R.; Kudritzki, R. P. (January 2006). “Quantitative spectroscopy of BA-type supergiants”. Astronomy and Astrophysics 445 (3): 1099–1126. arXiv:astro-ph/0509669. Bibcode 2006A&A...445.1099P. doi:10.1051/0004-6361:20053832. 
  10. ^ a b c d e f SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Ori B. 2016年12月16日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h Kaler, James. “Rigel”. STARS. 2012年1月19日閲覧。
  12. ^ a b c The Washington Visual Double Star Catalog (Mason+ 2001-2014)”. VizieR. 2016年12月16日閲覧。
  13. ^ a b c Sanford, Roscoe F. (1942). “The Spectrographic Orbit of the Companion to Rigel”. Astrophysical Journal 95: 421. Bibcode 1942ApJ....95..421S. doi:10.1086/144412. 
  14. ^ Tokovinin, A. A. (1997). “MSC - a catalogue of physical multiple stars”. Astronomy & Astrophysics Supplement Series 124: 75. Bibcode 1997A&AS..124...75T. doi:10.1051/aas:1997181. 
  15. ^ 天文観測年表編集委員会 編 『天文観測年表〈2008〉』 地人書館2007年11月、175頁。ISBN 978-4805207895 
  16. ^ 天文観測年表編集委員会 編 2007, p. 182.
  17. ^ 天文観測年表編集委員会 編 2007, p. 189.
  18. ^ Fred Schaaf (2008-04-21). The Brightest Stars. Wiley. p. 159. ISBN 978-0-471-70410-2. 
  19. ^ Washington Double Star Catalogue”. US Naval Observatory. 2017年1月1日閲覧。
  20. ^ Burnham, Robert, Jr. (1978). Burnham's Celestial Handbook. New York: Dover Publications. pp. 1300. ISBN 978-0486235677. 
  21. ^ IAU Working Group on Star Names (WGSN)”. 2017年1月1日閲覧。
  22. ^ 三省堂『大辞林』810項
  23. ^ 日本大百科全書』23巻リゲル項
  24. ^ 野尻抱影 著 『新星座巡礼』 19項
  25. ^ 野尻抱影 著 『星三百六十五夜』上巻(1978年)38項
  26. ^ a b c 『月刊天文ガイド』2007年2月号134項
  27. ^ 講談社『日本語大辞典』(リゲル項)2063項/平凡社『マイペディア』(リゲル項)1502項/ポプラ社『ポプラディア』第10巻(リゲル項)/学研の図鑑『星・星座』75項
  28. ^ a b c d e f 野尻抱影 『日本星名辞典』 東京堂出版1973年1月、154-155頁。ISBN 978-4490100785
  29. ^ a b c d e 野尻抱影 著 『星の方言集 - 日本の星』 中央公論社、1957年、265-269頁
  30. ^ a b 学術出版会 北尾浩一著 『天文民俗学序説 - 星・人・暮らし』39項の表より
  31. ^ 藤井旭 著 『宇宙大全』441項/同著『全天星座百科』150項/同著『星座大全』35-36項
  32. ^ 講談社林完次 著 『21世紀星空早見ガイド』50項
  33. ^ 増田正之『ふるさとの星 続越中の星ものがたり』15項および、巻末 富山県星の一覧表3項
  34. ^ a b 北尾浩一 「『源氏星』と『平家星』」 - 星・人・暮らしの博物館東亜天文学会天界』2005年11月号648頁

関連項目[編集]

外部リンク[編集]