プロキオン

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プロキオン
Procyon
プロキオンの位置
プロキオンの位置
仮符号・別名 こいぬ座α星[1]
星座 こいぬ座
視等級 (V) 0.37[1]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  07h 39m 18.11950s[1]
赤緯 (Dec, δ) +05° 13′ 29.9552″[1]
赤方偏移 -0.000011[1]
視線速度 (Rv) -3.2 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -714.59 ミリ秒/年[1]
赤緯: -1036.80 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 285.0 ± 0.7ミリ秒[2]
(誤差0.2%)
距離 11.44 ± 0.03 光年[注 1]
(3.509 ± 0.009 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 2.6[注 2]
物理的性質
スペクトル分類 F5IV-V+DQZ[1]
色指数 (B-V) +0.421[3]
色指数 (U-B) +0.02[4]
別名称
別名称
こいぬ座10番星[1]
BD +05 1739[1], FK5 291[1]
HD 61421[1], HIP 37279[1]
HR 2943[1], SAO 115756[1]
LTT 12053[1]
Template (ノート 解説) ■Project
プロキオンA
仮符号・別名 こいぬ座α星A[5]
位置
元期:J2000.0[5]
赤経 (RA, α)  07h 39m 18.118s[5]
赤緯 (Dec, δ) +05° 13′ 29.97″[5]
固有運動 (μ) 赤経: -716.6 ミリ秒/年[5]
赤緯: -1034.6 ミリ秒/年[5]
物理的性質
半径 2.048 ± 0.025 R[3]
質量 1.478 ± 0.012 M[2]
表面重力 3.96 ± 0.02 cgs[3]
自転周期 23日
スペクトル分類 F5IV-V[3][5]
光度 7.73 L[要出典]
表面温度 6,530 ± 50 K[3]
金属量[Fe/H] -0.05 ± 0.03[3]
年齢 1300~2710 Myr[3]
Template (ノート 解説) ■Project
プロキオンB
仮符号・別名 こいぬ座α星B[6]
視等級 (V) 10.92[6]
分類 白色矮星
軌道の種類 プロキオンAの周回軌道
位置
元期:J2000.0[6]
赤経 (RA, α)  07h 39m 19.7s[6]
赤緯 (Dec, δ) +05° 15′ 25″[6]
固有運動 (μ) 赤経: -709 ミリ秒/年[6]
赤緯: -1024 ミリ秒/年[6]
年周視差 (π) 285.9 ミリ秒[6]
絶対等級 (MV) 13.2[注 2]
物理的性質
半径 0.02 R
質量 0.592 ± 0.006 M[2]
スペクトル分類 DQZ[6]
光度 0.00055 L
表面温度 9,700 K
色指数 (B-V) 0.00
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 4.308 ± 0.002 [2]
近点距離 (q) 9 au
遠点距離 (Q) 21 au
離心率 (e) 0.3979 ± 0.0003[2]
公転周期 (P) 40.840 ±0.022 年[2]
軌道傾斜角 (i) 31.41 ± 0.05°[2]
昇交点黄経 (Ω) 284.8°
前回近点通過 1968.08 ± 0.02[2]
別名称
別名称
BD +05 1739B[6]
Template (ノート 解説) ■Project

プロキオン[7](Procyon)は、こいぬ座α星こいぬ座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。おおいぬ座シリウスオリオン座ベテルギウスともに、冬の大三角を形成している。また、冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。

特徴[編集]

大きさの比較
太陽 プロキオンA
太陽 Exoplanet

薄黄色の恒星で、距離は11.46光年太陽系に非常に近い。実視連星だが、伴星が白色矮星であまりにも暗いため小望遠鏡では分離できない。主星と伴星は、太陽系から観測した角距離にして4.31秒角離れた軌道を、離心率0.40の楕円軌道で40.8年かけて公転している[2]

主星のプロキオンAは、同様に白色矮星の伴星を連れているシリウスと比較するとやや低温 (6,650K) で、一回り大きい(プロキオンの半径は太陽の2.048倍、シリウスは1.68倍)。温度の割に明るい(半径の大きい)恒星であり、主系列星から準巨星へ変化しつつあると考えられている。

主星プロキオンAの年齢27億年に対し、伴星のプロキオンBは13.7億年前に白色矮星に変化したと推定されている。その差約13億年が、核融合で輝く恒星としてプロキオンBが過ごした寿命に相当する。このことから白色矮星になる前のプロキオンBはおよそ1.9~2.1太陽質量の恒星だったと見積もられている[2]。なお現在のプロキオンBの質量は0.59太陽質量だがこれは恒星としての寿命末期に質量の放出が起きるためである。

将来の姿[編集]

0.1 - 1億年以内にはプロキオンは赤色巨星へと進化すると思われる。この段階では、水素の核融合反応により生じたヘリウムが中心核にたまっており、水素の核融合はその周囲で継続しているが、ヘリウムの芯は大きな密度と重力で圧縮されて温度が1億度にも達し、それまで水素の核融合で生じた「灰」であったヘリウムの核融合が始まる為だと思われる。それに従って星の外層は膨張し、大きさは現在の80 - 150倍(半径 0.7 - 1.3 AU)に達する。一方で表面温度は低下するので、赤っぽく見えるようになる。

ヘリウムの核融合は炭素や酸素の原子核を生成するが、プロキオンは質量が小さいため(太陽の1.5倍程度)、それらが核融合を起こす温度には至らず、外層部の水素を大量に放出して惑星状星雲を形成し、残された中心核は白色矮星となって一生を終えると考えられる。

伴星の発見[編集]

プロキオンBはあまりにも暗いため、その存在が示唆されてから実際に姿が観測されるまで半世紀以上の歳月を要した[8]。プロキオンの伴星は1844年にフリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルによってシリウスの伴星と共に提唱された[9]。シリウスと同様に、プロキオンの運動に影響を与える伴星が存在する可能性があるとされた。ベッセルは1840年頃には既にプロキオンに不可視の伴星が存在するというアイデアを持っていたが[8]、論文として正式な形で世に出たのは1844年である。

プロキオンの伴星は当時の技術では視認不可能であり、さらにシリウスと比べて主星の運動に与える影響が小さいため、実在するかどうかすぐにははっきりとしなかった。ベッセルの仮説は1862年のアルトゥル・アウヴェルスによる詳しい研究で確実なものとみなされるようになったが、この時点でもまだ伴星は視認されていない[8]

伴星の姿を捉えたとする最初の確実な報告は1896年で、リック天文台の36インチ望遠鏡を用い観測を行ったジョン・マーチン・シェバーリによるものである[10][8][2]。なおシェバーリ以前にも伴星を発見したという報告があったものの、シェバーリ以降に観測されている伴星と軌道が一致せず、誤りだと考えられている[8]

名称[編集]

学名はα Canis Minoris (略称は α CMi) 。固有名のプロキオン[11] (Procyon[12][13]) は、ギリシア語Προκύων をラテン語表記したもので、「犬に先立つもの[注 3]」を意味する[11][12]。これは、犬の星とされるシリウスが東の地平線から昇ってくる少し前に、プロキオンが姿を現すことに由来する[11][12]。2016年6月30日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Procyon をこいぬ座α星Aの固有名として承認した[13]

アラビア語では、「北のシリウス」を意味する「アッ=シアラー・アッ=シャーミヤ (الشعرى الشامية, aš-ši‘ra aš-šamiyah) 」と呼ばれた[14]。これもまたシリウスが「南のシリウス」を意味する「アッ=シアラー・アル=ヤマーニヤ (aš-ši‘ra al-yamāniya) 」と呼ばれたのに対して命名されたものである[14]

日本では、島根県地方で「色白 (いろしろ) 」と呼ばれる[11]。これに対してシリウスは「南の色白」と呼ばれている[11]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ a b 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ Pro (~の前) + cyon (犬)

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME PROCYON AB. 2017年3月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k Bond, H. E.; Gilliland, R. L.; Schaefer, G. H.; et al. (2015). “Hubble Space Telescope astrometry of the procyon system”. The Astronomical Journal 813: 106. Bibcode2015ApJ...813..106B. doi:10.1088/0004-637X/813/2/106. 
  3. ^ a b c d e f g The diameter and evolutionary state of Procyon A Multi-technique modeling using asteroseismic and interferometric constraints--ArXiv(PDF)
  4. ^ 輝星星表第5版
  5. ^ a b c d e f g SIMBAD Astronomical Database”. Results for alf CMi A. 2017年3月13日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME PROCYON B. 2013年1月17日閲覧。
  7. ^ おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  8. ^ a b c d e See, T. T. J. (1898). “Researches on the system of Procyon”. The Astronomical Journal 19 (439): 57. Bibcode1898AJ.....19...57S. doi:10.1086/102953. 
  9. ^ Bessel, F. W. (1844). “On the variations of the proper motions of Procyon and Sirius”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 6: 136. Bibcode1844MNRAS...6R.136B. doi:10.1093/mnras/6.11.136. 
  10. ^ Schaeberle, J. M. (1896). “Discovery of the Companion to Procyon”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific 8 (53): 314. Bibcode1896PASP....8..314S. doi:10.1086/102953. 
  11. ^ a b c d e 原恵 『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版) 恒星社厚生閣、1996年6月30日、74-75頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  12. ^ a b c Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Pub. Corp.. p. 24. ISBN 978-1-931559-44-7 
  13. ^ a b IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年11月23日閲覧。
  14. ^ a b 近藤二郎 『星の名前のはじまり - アラビアで生まれた星の名称と歴史』 誠文堂新光社、2012年8月30日、68-70頁。ISBN 978-4-416-21283-7 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]