共同募金

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共同募金(きょうどうぼきん)とは日本募金活動のひとつであり、社会福祉法(旧・社会福祉事業法)第113条に定義される第1種社会福祉事業である。

赤い羽根をシンボルとした募金活動のため「赤い羽根共同募金」「赤い羽根募金」と称される。

概要

赤い羽根共同募金。駅の前
自動販売機

毎年10月1日 - 翌年3月31日の間(都道府県により期間は前後する[1])、主に各市町村の共同募金委員会(支会・分会)を経由して自治会学校企業で募金を募る。共同募金は都道府県ごとに行われ、都道府県を単位に社会福祉法人である共同募金会が組織されている。これら募金をとりまとめ、連絡調整をするのが社会福祉法人中央共同募金会である。この運動は1947年度にスタートした。呼びかけに応じて拠出をすると、協力者の証明としての羽を赤く着色した物をもらえることから、「赤い羽根」「赤い羽根共同募金」とも呼ばれている。

この赤い羽根は、アメリカにおいて共同募金の象徴(勇気の印として、ロビン・フッドあるいはアメリカ先住民の戦いの勝者にのみ赤い羽根を着ける権利が許されたという故事に由来するというのが、2019年12月27日放送の『チコちゃんに叱られる!』で取り上げられた[2])として使われていたものを、日本でも戦後の混乱期に、当初金属製のバッジだったものを、コスト削減のために赤い羽根に変更する形で、戦災者への募金の象徴として援用したのがはじまりである。

アメリカの共同募金は自主的なものであるが、GHQの指示でそれを日本でも行う際、募金を自主的に行う団体が立ち上がるまでの暫定措置として自治体やその関係機関で募金を行っていたところ、占領が終わって自主団体が立ち上がらないまま現在に至っているものである。

赤い羽根は衣服に刺せるようにがついているものと、シールで衣服に貼るシール式と2種類ある。初日の10月1日(平日放送の帯番組で、同日が週末の場合は10月最初の放送日)のテレビニュース番組などで、アナウンサーが上着の襟に赤い羽根を付けて出演することが多い。

地域によって募金グッズとして募金バッジ、ハンカチや図書カードなどのプリペイドカードによる募金を行っているところもあり全国一斉ではあるが地域の実情に応じた募金活動がなされている。

各都道府県では12月1日から歳末たすけあい募金として各地域主体で募金活動を行っているが(行なわない所や共同募金と一本化している所もある)、中央共同募金会ではNHKと連携して歳末たすけあい募金を行っている。なお、同時期にはNHKと日本赤十字社の共催による海外たすけあい募金も実施される。

集められた募金は社会福祉施設社会福祉協議会に配分され、国内の高齢者障害者に対する福祉の充実、地域福祉活動の啓発や推進のために使われている。最近では子育て支援活動やDV被害者支援活動にも使われることも多くなってきた。ただし、各都道府県内で「共同募金」に寄付したお金は基本的に寄付した都道府県内の社会福祉に使われ、県外や国外に使うことはできない。しかしながら、2000年より災害等準備金制度が創設され、国内で大規模災害が発生した場合には、県外の被災地の災害ボランティアセンター等の運営を支援するために拠出することができるようになった。

共同募金会に対する寄付金については株式会社等法人からの寄付金は「全額損金算入」、個人からの寄付金は所得税および住民税にかかる「寄付金控除の対象」となっている。

なお、共同募金委員会の事務局は各市町村の社会福祉協議会の事務局が兼務することが多い。

1991年より使用されているマスコットキャラクターの「愛ちゃんと希望くん」は漫画家の樫本学ヴがデザインを務めている[3](元々は公募によるデザインを同じく漫画家の藤子不二雄がキャラクター化したもの[4][5])。

共同募金は目標額を定める「計画募金

共同募金は、地域ごとの福祉課題解決に必要な金額を事前に定めてから寄付を募る「計画募金」という方法をとっている。

計画募金」とは、各地域の社会福祉協議会や福祉団体、ボランティア等からの福祉活動実施のための助成要望を基に助成計画を立案し、その計画に基づき、福祉活動の実施に優先的に必要とされる金額を「目標額」としてを定め、寄付を募る方法である。なお、その「目標額」を事前に厚生労働省へ届出をし、厚生労働大臣の告示により募金活動をすることが可能となる。

なお、地域によって福祉活動に必要な金額が異なるため、募金の際に提示される一世帯あたりの「目標額」(募金目安額・募金期待額ともいわれる)は地域によってばらつきがある。

強制的な動員・徴収への疑問

社会福祉法116条では「共同募金は、寄附者の自発的な協力を基礎とするものでなければならない」と定められ、共同募金会も「寄付する人も募る人もボランティア」とするビジョン[6]を掲げているように共同募金の募金活動や寄付は自発的なものであるべきとされている。

しかし、現実には共同募金は行政自治会組織を通して集める戸別募金の占める割合が高く、募金活動を行う募金ボランティアも事実上の強制動員になっている場合がある(自治会の持ち回り班長などが、「自治会の当番」として共同募金の戸別募金に回るよう強制されてしまう)。自治会の当番による戸別募金では断りにくい状況で強制感を伴う徴収となるケースが多発し、以前から自治会に集めさせる戸別募金は自発的な参加で行われるべき募金活動の精神に反するものとして問題視されてきた[7]

また、中には市区町村の事務局を通じ「一世帯○○○円を目安に」など、所得や世帯構成を考慮しない「目標額」を提示し募金を集めているケースも見られる[8]

自治会によっては当番を戸別募金に回らせることが困難なため、予め自治会費に共同募金などへの寄付分を上乗せしている場合がある。しかし2007年8月にはこうした自治会費への寄付分上乗せは寄付を強制するもので違法とする判決[9]が出され、翌年確定した。

自治会を通して募金活動や寄付が事実上強制されている状況に対しては、2009年春に青森市内の自治会長らの団体が「寄付集めは自治会本来の業務ではない」として自治会に各種寄付を集めさせるやり方を見直すよう求める提言をまとめるなど自治会の側からも見直しを求める動きが出てきている[10]。また、強制性を弱めるために当番による戸別募金をやめて寄付したい人が役員の所に持参する方式や回覧と共に募金袋を回し寄付したい人が自ら入れる方式に改めた自治会もある。

募金額の減少

募金総額は1995年度の約265億7,935万円がピークで、以降、前年比3-4%程度の割合で減少する傾向にある[11][12][13]

減少の原因としては半ば強制的な集金の手法に対する反感、集金した金の配分額や決定プロセスが不透明であることが指摘されている[14]

なお、2019年度の募金総額は、173億6569万3358円である[15]

歴代共同募金運動ポスター

共同募金の歴代イメージソングを歌った歌手(主なもの)

2010年からは近野陽瀬の「ココロの羽根」が使用され続けている。

羽根を用いた募金の種類

現在行われてる募金活動
終了した募金活動

脚注

  1. ^ 2011年(平成23年)9月1日厚生労働省告示第312号「平成二十三年度における共同募金の実施期間を定める件」(PDFファイル)
  2. ^ チコちゃんに叱られる!「拡大版SP!イチョウ並木・氷の謎・イラスト一挙公開!」”. TVでた蔵 (2019年12月27日). 2019年12月29日閲覧。
  3. ^ 樫本学ヴのTwitterでのツイートより
  4. ^ 樫本学ヴから今賀俊へのTwitterでのリプツイートより
  5. ^ 樫本学ヴからおおばあつしへのTwitterでのリプツイートより
  6. ^ 共同募金?
  7. ^ 厚生白書(昭和36年度版)
  8. ^ 赤い羽根共同募金の一戸あたりの目標額について - 島根県サイト
  9. ^ 大阪高裁判決文(PDFファイル)
  10. ^ 河北新報 2009年2月27日
  11. ^ 募金額の推移(PDFファイル)
  12. ^ 地域をつくる市民を応援する共同募金への転換、P58(PDFファイル) - 中央共同募金会企画・推進委員会,平成19年
  13. ^ 地域をつくる市民を応援する共同募金への転換、P2((PDFファイル))
  14. ^ 厚生労働省、第6回 社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会 議事概要
  15. ^ 昭和22年度~令和元年度 一般募金・歳末たすけあい募金の目標額と実績額の推移(PDFファイル)

関連項目

  • 社会福祉協議会
  • リメンブランス・デー -イギリスの第一次世界大戦戦勝記念日。その日に赤いポピーを身に着けるイギリスの戦災救済募金がある。
  • コミックリリーフ (慈善団体) - 1985年にコメディアンと脚本家が発足させたイギリスの慈善団体。毎年3月に Red Nose Day(赤い鼻の日)として募金を呼び掛けている。同様の試みがアメリカ・ドイツ・ロシアなどに広まっている。

外部リンク