隕石衝突

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
衝突のイメージ

隕石衝突(いんせきしょうとつ)とは、小惑星彗星といった宇宙にある天体が、地球など他の天体に衝突することである。隕石落下とも言われる。

概要[編集]

地球のように大気のある惑星に他の天体が衝突する場合、一般的に衝突する天体が大きく、遅いほど蒸発に時間がかかる。大気圏内での空気との摩擦でも分解・気化(蒸発)しきらず、地上まで形を保つものもある。そうした隕石陸地に落ちた場合、人類に発見されたり、衝撃によってクレーターを形成したりすることがある。

地球のように大気の存在する惑星に、大規模なクレーターができるような隕石衝突が起きた場合、隕石によって供給された物質と、隕石衝突の衝撃で衝突された側の惑星から飛散した物質とが、大気中に舞い上がる。これが降り積もって、衝突された側の惑星の地表の広い範囲に新たな地層が形成されることがある。なお、こうしてできた地層を、イジェクタ層(エジェクタ層、ejecta)と呼ぶ。なおこの地層には、衝撃変成作用英語版を受けた鉱物が含まれている。また地球では、イリジウム異常英語版が観察されたりすることで知られている。

大規模な隕石衝突は高熱衝撃波を発生させる。落下地点が海洋である場合は津波を、比較的浅い水域や陸地である場合は舞い上がった粉塵が太陽光を遮断することによる気温の低下(隕石の冬)を引き起こし、人類を含む生物に甚大な被害を与える。過去の生物大量絶滅では、恐竜などが絶滅した当時のK-T境界のように、隕石衝突が原因と推定されるものもある。

さらに巨大な天体が衝突してきた場合、様々な影響が起こり得ると考えられている。例えば、衝突された側の地球型惑星の表面全体が融解するのではないかとも言われている。他にも、のような衛星ができるとする仮説(ジャイアントインパクト説)が存在する。さらに、天王星自転軸が大きく傾いているのは、過去に巨大な天体が衝突したためとも言われている。

衝突のエネルギー[編集]

ニュートン力学では、等速直線運動をする物体の運動エネルギーは、エネルギー E、質量 m、速さ vとして

である。よって、質量 mと速さ vの2乗に比例する。つまり、速さが2倍になればエネルギーは4倍になる。

質量は隕石が球体であれば、ρを隕石の密度、Rを半径とすれば、

である。よって質量 mは直径 2Rの3乗に比例する。つまり、直径が2倍になれば、質量及びエネルギーは8倍になる。

衝突が地球に与える影響[編集]

小型の隕石であれば、衝突しても影響は限定的であるが、大型の場合は被害は甚大になることもある。

さらにK-T境界大量絶滅の仮説の1つ、隕石衝突説では、直径約10kmの隕石が、メキシコユカタン半島に衝突し、その衝撃により恐竜アンモナイトは絶滅したとされる。 地球に衝突する確率及び予測被害状況を表す尺度にトリノスケールというものがある。

過去の隕石衝突[編集]

以下は、近代の主な隕石衝突、および過去の隕石衝突と推測されている事例である。

2013年チェリャビンスク州の隕石落下
人口密集地帯上空を隕石が通過し、衝撃波により多数の人が負傷した。原因が隕石と確定している中では初の大規模災害。
2008 TC3
直径4.1m。隕石が地球衝突前に小惑星として観測された初の事例。衝撃力はTNT火薬換算で1.1〜2.1キロトン(戦術核兵器級)。
ツングースカ大爆発
隕石衝突が原因とは断定されていないものの、隕石衝突が原因であろうと推測されている。仮に隕石が原因であった場合、直径60m〜100m。衝撃力はTNT火薬換算で10〜15メガトンビキニ水爆級)と推定される。しかし、僻地であったため人的被害は起こらなかった(爆発直後には十分な調査が行われなかったため長らく原因が断定されなかったが、科学的再調査の結果2012年に隕石破片を発見、2013年には隕石であったことが確定された)。
中国の古文書に記録された隕石衝突
最古の記録は隋書にある616年1月14日の隕石で、反乱軍陣地の攻城塔が破壊され10名が死亡。Yauらは中国の古文書を調査し、7件の隕石衝突とみられる記述を報告している[1]1490年の山西省での隕石では1万人以上の犠牲が記録されている。[要出典]
カーリ・クレーター
紀元前660年頃、現在のエストニア、バルト海のサーレマー島に直径約100mのカーリ・クレーターを代表とする、少なくとも9つのクレーター群が形成される。古代バイキングの叙事詩には恐ろしい悲劇と描写され、人的被害があったと考えられている。
コフェルスインパクト(Köfels’ Impact)
紀元前3123年。観測記録が残されている最古の隕石衝突。ソドムとゴモラを滅ぼした原因との説がある。詳細はソドムとゴモラを参照。
ケビラ・クレーター
約2800万年前、現在のエジプトに直径約31kmのクレーターが形成。古代エジプト人が装飾に使用したリビアングラスの生成原因について、かつては彗星衝突説などもあったが、2008年に当クレーターが発見されたことにより隕石衝突説が確定したとされる。
チクシュルーブ・クレーター
メキシコのユカタン半島にある約6550万年前の小惑星衝突跡。直径10〜15km。衝撃力は広島原爆10億倍。恐竜絶滅の原因とされている(ただし、シバ・クレーターを形成した隕石が恐竜絶滅の原因とする説もある)。
シバ・クレーター(Shiva crater)
インドのムンバイ西海底にある約6550万年前の小惑星衝突跡であると、一部の古生物学者が主張する地形。長さ600km、幅400kmの長方形の形状。白亜紀の動植物絶滅の原因とする者もいるが、地球科学者は衝突痕とは認めていない。
ウィルクスランド・クレーター
約2億5100万年前の隕石衝突によってできた直径490~500kmのクレーターが南極大陸氷床下にあると、2006年に報告された。隕石の直径は50km以上と推定される。地質年代区分的にはP-T境界と呼ばれる、ペルム紀末の大絶滅の原因と考えられ、研究が進められている。
ジャイアントインパクト説
地球誕生直後の衝突で、の生成起源の有力な説である。

地球に衝突する可能性のある小惑星[編集]

太陽系には多数の小惑星が存在しているが、その中には地球の公転軌道と近接した軌道を公転している小惑星も幾つか存在していることが知られている。このような小惑星を地球近傍小惑星(Near Earth Asteroid, NEAs)と言う。また、その中でも地球への衝突リスクが高い小惑星は潜在的に危険な小惑星(Potentially Hazardous Asteroid, PHA)に分類されている。過去には2014年に接近する(143649) 2003 QQ472029年に接近するアポフィス2048年に接近する2007 VK184、2880年に接近する(29075) 1950 DAが地球に衝突するのではと騒がれたこともあったが、後に衝突確率はほぼゼロとなっている。2014年4月時点では衝突リスクを示すトリノスケールにおいて全ての天体が0となっている。

小惑星を含む地球近傍天体は他からの影響によって軌道などが大きく変化することも知られている。基本的に太陽に近いほど公転速度は速くなければならない(そうでないと太陽に落下する)ため、地球近傍天体は頻繁に水星、金星、地球、火星などに接近しやすい。こういったより大きな天体の持つ引力の影響で、地球近傍天体は軌道が変化し得ることが指摘されている[誰によって?]。また、これらの天体とは比べものにならないほど強い引力を持った木星などの引力の影響を受けて軌道が変化する可能性もある[要出典]。したがって、衝突リストは不変ではない。

なお、前述のトリノスケールでは「局所的大被害が起こり得る衝突は数百年から数千年に1回」、「全地球的大被害の起こり得る衝突は1万年〜10万年に1回」の発生確率としている。ちなみに、2008TC3程度の非常に小型の隕石であれば、年間2〜3個の割合で地球に落下している。

隕石衝突への警戒と対策[編集]

小さいため未発見の地球近傍小惑星も多いと考えられるため、既知小惑星の追跡観測だけでなく、新規発見への努力が続けられている。日本では美星スペースガードセンター岡山県井原市)が取り組んでいる。地球に衝突する可能性が高い小惑星が見つかった場合を想定した避難などの対策も検討されている。国際宇宙航行アカデミー(IAA)は小惑星衝突対策を議論する国際会議「PLANETARY DEFENSE CONFERENCE」を開催しており、日本は第5回会議(2017年5月15日 - 19日)の会場となった[2]

この会議で日本側責任者を務めた吉川真JAXA(宇宙航空研究開発機構)准教授によると、アメリカ航空宇宙局(NASA)欧州宇宙機関(ESA)国際連合では隕石衝突への対策組織を設けている。地球衝突への10年程度前に発見できれば、現在の技術でも回避が可能であるという[3]

小惑星の地球衝突を未然に防ぐ対策としては、人類が打ち上げた宇宙機の微小な重力による牽引や接触で軌道を変更する、核爆発などで破砕するといった方法が提案されている[4]が、2017年時点で実行された例はない。

隕石衝突を扱った作品[編集]

人為的に隕石の衝突を回避させようとする計画を描いたSFが多く発表されている。自然の天体を、地球などに落下させる兵器として利用(隕石爆撃)する作品もある。

映画[編集]

アニメ[編集]

ゲーム[編集]

漫画[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ Meteorite falls in China and some related human casualty events”. 2013年2月17日閲覧。
  2. ^ 小惑星衝突から地球守れ 東京で国際会議開幕”. 産経新聞ニュース 2017年5月15日. 2017年5月19日閲覧。
  3. ^ “<そこが聞きたい>天体の地球衝突 宇宙航空研究開発機構准教授・吉川真氏”. 『毎日新聞』朝刊. (2017年6月19日). http://mainichi.jp/articles/20170619/org/00m/070/004000c 
  4. ^ 小惑星衝突回避”. 京都大学宇宙総合学研究ユニット資料. 2017年5月19日閲覧。

関連項目[編集]