「万葉線MLRV1000形電車」の版間の差分

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{{鉄道車両
{{鉄道車両
|車両名 =万葉線MLRV1000形電車
|車両名=万葉線MLRV1000形電車<br />アイトラム (AI-TRAM)
|社色 = red
|社色=red
|画像 =MLRV1000_at_imizu.jpg
|画像=Manyosen MLRV1001 201608.jpg
|pxl =280px
|pxl=280px
|画像説明=MLRV1000形第1編成 (MLRV1001)<br />(2016年8月 [[能町口停留場]]付近)
|画像説明 =万葉線 1000形「アイトラム」
|編成=1両編成(2車体連接車)
|unit =self
|営業最高速度=40
|編成 = 1両編成(2車体連接車)
|起動加速度 =
|設計最高速度=70
|営業最高速度 =40km/h
|起動加速度=2.5
|減速度(常用最大)=4.6
|設計最高速度 =70km/h
|最高速度 =
|速度(非常)=5.0
|編成定員=80人(座席30人)
|定格速度 =
|全長=18,400
|減速度(常用最大)=
|全幅=2,400
|減速度(非常) =
|全高=3,745
|編成定員 =
|編成質量=21.0 [[トン|t]]
|車両定員 =座席30人/計80人
|軌間=1,067
|編成長 =
|電気方式=[[直流]]600 [[ボルト (単位)|V]]([[架空電車線方式]])
|最大寸法 =
|主電動機=[[かご形三相誘導電動機]] 100 [[ワット|kW]]×2基
|全長 =18,400mm
|駆動装置=[[車体装架カルダン駆動方式|車体装荷式直角カルダン軸駆動方式]]
|全幅 =2,450mm
|歯車比=6.789
|全高 =3,047mm
|制御装置=[[パルス幅変調|PWM制御]][[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]]<!--[[半導体素子|素子]]-->-[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御方式]] 1C1M×2群
|車体長 =
|台車=独立車輪式[[ボルスタレス台車]] ×2台
|車体幅 =
|ブレーキ方式=[[回生ブレーキ|回生]]・[[発電ブレーキ|発電]]併用電気ブレーキ<br />油圧式[[ディスクブレーキ]]
|車体高 =
|製造初年=2003年
|編成質量 =21.0t
|製造メーカー=[[新潟トランシス]]
|車両質量 =
|備考=出典:[[#rst98|『鉄道車両と技術』98号]]・[[#n2004|『鉄道ピクトリアル』通巻753号]]
|軸配置 =
|軌間 =1,067mm
|電気方式 =直流600V
|出力 =
|主電動機 =形式:BAZu3650<br />出力:100kW
|モーター出力 =
|機関出力 =
|編成出力 =
|定格出力 =
|定格引張力 =
|駆動装置 =
|歯車比 =6.789
|変速段 =
|台車 =形式:3EGS100000-5845
|制御装置 =[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]][[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]] 1C1M×2群 (MAP-102-60VD118)
|ブレーキ方式 =油圧式ディスクブレーキ、電磁吸着式トラックブレーキ
|保安装置 =
|製造メーカー =[[新潟トランシス]]<br />(製造初年:[[2003年]])
|備考 =鉄道車両年鑑2004年版(鉄道ピクトリアル2004年10月臨時増刊号)より
|備考全幅 =
}}
}}
'''万葉線MLRV1000形電車'''(まんようせんMLRV1000がたでんしゃ)は、[[万葉線|万葉線株式会社]]が保有する[[路面電車]][[鉄道車両|車両]]である。2車体連接・2台車方式の[[超低床電車]]で、「'''アイトラム'''」 (AI-TRAM) の愛称を持つ。形式名は単に「'''1000形'''」とも表記される。
[[ファイル:Man'yōsen MLRV1005-B Doraemon Densha.jpg|thumb|right|300px|1000形ドラえもんトラム]]
'''万葉線1000形電車'''(まんようせん1000がたでんしゃ)は[[万葉線]]に在籍する[[路面電車]]である。


万葉線株式会社が運営する万葉線([[万葉線高岡軌道線|高岡軌道線]]・[[万葉線新湊港線|新湊港線]])で使用される。営業運転の開始は[[2004年]](平成16年)1月。[[2009年]](平成21年)までに6編成(6両)が導入された。[[2012年]](平成24年)からは、6編成のうち1編成が[[ドラえもん]]のキャラクターを車体内外に描いた「'''ドラえもんトラム'''」として運行されている。
形式は1000形であるが、車体に表記された車号には「MLRV」と付されている。「MLRV」は「'''M'''anyosen '''L'''ight '''R'''ail '''V'''ehicle」の頭文字。


== 導入までの経緯 ==
愛称は、2004年5月に公募でつけられた「'''アイトラム''' (AI-TRAM)」。由来は[[富山湾]]から吹く「あいの風」に、路面電車を表す「トラム」を組み合わせたもの。また、「アイ」には「愛される」の意味も込めている。[[富山県]]で導入が進む[[ライトレール|LRT]]のうちのひとつ
万葉線株式会社が運営する[[万葉線高岡軌道線|高岡軌道線]]・[[万葉線新湊港線|新湊港線]](あわせて「万葉線」と称する)は、[[富山県]]の[[高岡市]]と[[射水市]](旧[[新湊市]])を結ぶ約13キロメートルの鉄道路線である<ref name="rf626">[[#rf626|服部重敬「都市交通新世紀6 万葉線」]]</ref>。高岡市内区間の大部分が道路上を走る[[併用軌道]]であるという特徴を持つ<ref name="rf626"/>。


万葉線は1970年代以来乗客の減少が続き経営が厳しく、国からの欠損補助や沿線自治体からの支援によって存続しているという状況であり、1990年代末には同線を運営してきた加越能鉄道(2012年[[加越能バス]]へ改称)から廃止・バス転換の方針が出されていた<ref name="rf626"/>。廃止方針に対して沿線の高岡・新湊両市では、万葉線は住民の生活路線であり都市の個性の象徴でもあるなどと路線の存在意義を認めて[[第三セクター鉄道|第三セクター方針]]による路線存続を決定<ref name="rf626"/>。これを受けて[[2001年]](平成13年)に受け皿となる万葉線株式会社が市や県、沿線企業・団体などの出資によって設立され、翌[[2002年]](平成14年)4月、万葉線は加越能鉄道より新会社に引き継がれた<ref name="rf626"/>。
== 概要 ==
[[ボンバルディア]]社の[[ブレーメン形]]超低床電車を基本に、[[新潟トランシス]]で製造された[[岡山電気軌道9200形電車|岡山電気軌道9200形「MOMO」]]をベースとする2車体[[連接台車|連接]]の100%低床車である。外見上もっとも大きな違いは「MOMO」では3か所だった出入口を2か所としていることで、これは運用上左側からのみの降車となっているのと、冬の寒さを考えての設計変更である。コーディネートデザインは[[インダストリアルデザイナー|工業デザイナー]]の[[佐藤康三]]によるもので、基本コンセプトのキーワードは「情熱」「元気」。車体色は真紅の[[赤]]になっており、車体前面には[[高岡市]]の伝統工芸である[[螺鈿]]細工で作られた万葉線の社章があしらわれている。2004年度[[グッドデザイン賞]]受賞(受賞番号04A11056)。


万葉線株式会社が加越能鉄道より引き継いだ電車は、[[加越能鉄道デ7000形電車|デ7000形・デ7060形・デ7070形]]の計11両であった<ref name="rst98p46">[[#rst98|「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(上)」]]46-48頁</ref>。ところがこれらの車両はいずれも[[1961年]](昭和36年)から[[1967年]](昭和42年)までに製造されたもので、当時老朽化進んでいた上に[[冷房装置]]の搭載がなかった<ref name="rf626"/>。このことから会社では新型車両の導入を決定し<ref name="rf626"/>、2002年10月23日、[[新潟鐵工所]](当時。鉄道車両部門は翌年[[新潟トランシス]]となる)が製造する超低床電車の導入を発表した<ref name="rj435">[[#rj435|「RAILWAY TOPICS 万葉線がドイツタイプの超低床車導入」]]</ref>。こうした過程を経て導入された車両がMLRV1000形である。導入に際して国からの近代化設備整備費補助金の交付や富山県、高岡・新湊両市からの援助を受けている<ref name="rj450">[[#rj450|平澤崇「万葉線に元気を 新型超低床電車MLRV1000デビュー」]]</ref>。
2009年4月現在、MLRV1001-A・B - MLRV1006-A・Bの6編成が在籍している。


== 車体・主要機器 ==
第1編成は[[2003年]](平成15年)12月に竣工し、[[2004年]](平成16年)[[1月21日]]に、第2編成は同年[[8月7日]]に営業運転を開始している。
=== 車種と車両コンセプト ===
[[ファイル:Kumamoto City Tram 9702.jpg|thumb|[[熊本市交通局9700形電車|熊本市交通局9700形]]]]
[[ファイル:Okayama Electric Tramway 9200.jpg|thumb|[[岡山電気軌道9200形電車|岡山電気軌道9200形]]]]


MLRV1000形は、[[新潟トランシス]]の製造による2車体2台車式・100%低床構造の超低床電車である<ref name="rst98">[[#rst98|「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(上)」]]</ref>。
しかし、2004年の運行開始当初より、ブレーキ故障や[[列車脱線事故|脱線事故]]が続発し、同年[[9月30日]]から[[2005年]](平成17年)[[3月13日]]まで2本とも[[休車]]となった。


新潟トランシスによる超低床電車製造は、前身の旧[[新潟鐵工所]]時代にさかのぼる<ref name="ex03_p6">[[#ex03|堀切邦生「特集・リトルダンサーと日本の超低床車」]]6-7頁</ref>。日本への超低床車導入を目指す同社は、[[ドイツ]]の[[AEG]](当時、後に再編により[[アドトランツ]]を経て現・[[ボンバルディア・トランスポーテーション|ボンバルディア]]<ref name="ex03_p6"/>)と[[業務提携]]し、AEGの製造する超低床車「[[ブレーメン形]]」を日本市場へ導入することとなった<ref name="rst46">[[#rst46|大野真一「日本における低床式路面電車の導入について」]]32-33頁</ref>。導入方法は、新潟鐵工所がAEGに代わって日本仕様の車体を設計・製作し、AEGから量産品の電機品・台車を輸入しそれらを車体に艤装して車両を製造する、というものである<ref name="rst46"/>。[[車軸]]のない独立車輪を用いることで低床化を実現するという特徴を持ち、[[1997年]](平成9年)に[[熊本市交通局]]へ納入された[[熊本市交通局9700形電車|9700形]]がこの車両の導入第1号となった<ref name="ex03_p6"/>。
かつての万葉線の路線は旧[[富山地方鉄道射水線]]時代に新湊駅(現[[六渡寺駅]])から[[日本国有鉄道|旧国鉄]][[貨物列車]]が乗り入れていた経緯から、旧型車両の[[加越能鉄道デ7000形電車|デ7000形]]は鉄道線規格の車輪の輪縁([[フランジ]])裏面の間隔(バックゲージ)が990mmの仕様になっていたが、本形式は路面電車規格の車輪の輪縁(フランジ)裏面の間隔(バックゲージ)が1,000mm仕様で導入されていた。その為脱線事故のあった[[分岐器|ポイント]]は、旧型車両での長年の走行による磨耗で本形式の車輪の輪縁(フランジ)が噛み合わなかった為に脱線の原因となった。そこで運行再開に際して、両編成とも各台車の車輪の輪縁(フランジ)をライセンス元のドイツから鉄道線規格の物を輸入し、各台車本体を[[富山地方鉄道]]の稲荷町工場へ持ち込んで交換作業が行われ、車輪裏面の間隔(バックゲージ)を1,000mmから990mmにしたことで、この問題は一応解決された。現在は通常車両と同様に運行されている。


熊本に続いて[[2002年]](平成14年)に[[岡山電気軌道]]へ納入された[[岡山電気軌道9200形電車|9200形]]では、アドトランツが新開発した超低床電車シリーズ「[[インチェントロ]]」の車体デザインを取り入れることにより、車体が丸みを帯びたものに変更された<ref name="ex03_p19">[[#ex03|「特集・リトルダンサーと日本の超低床車」]]19頁</ref>。以後新潟トランシスが製造する超低床車は「ブレーメン形」の足回りに「インチェントロ」の車体を組み合わせた仕様が標準となっており、これら2形式に続く新潟トランシス製超低床電車となったMLRV1000形もこの仕様で製造されている<ref name="ex03_p19"/>。
なお、この件で万葉線株式会社は本形式の長期間の運休により損害を受けたとして、車両を製造した新潟トランシスに対し、[[損害賠償|賠償]]請求を行ったが、2005年9月21日に、事故の復旧に関わる人件費、運休時の代替交通手段への手数料、長期運休に対する迷惑料などを合わせた約325万円の支払いと、運行再開に際して改造に使用した部品の無償譲渡という条件で、[[示談]]が成立した。


車両導入決定後の[[2003年]](平成15年)1月より、万葉線株式会社では地元高岡市と縁の深い工業デザイナーの[[佐藤康三]]に委嘱して車両のトータルデザインの開発・監理を行い、同年9月1日に最終デザインを決定した<ref name="rj446">[[#rj446|「RAILWAY TOPICS 万葉線の超低床車 真赤のデザイン決定」]]</ref>。独自性を打ち出し他都市の車両との差別化を図るべく車両のコンセプトは「情熱」「元気」とされ<ref name="rj446"/>、このコンセプトに基づき基本デザインに対して内外装あわせて84か所を変更している<ref name="rj450"/>。
また、当初は2005年度と[[2006年]](平成18年)度にも2本ずつ本形式を導入し、旧型車両を置き換える計画だったが、2005年度は[[分岐器|ポイント]]の整備などに[[設備投資]]を集中させたため、本形式の増備は2006年度まで見送られた。2年ぶりの増備車である第3編成は2006年12月に入線し、[[2007年]](平成19年)[[3月18日]]から営業運転を開始した。第3編成から前照灯が4灯中内側2灯が[[HIDランプ]]に変更されている。
{{-}}


=== 車体 ===
[[2008年]](平成20年)[[1月24日]]第4編成が入線し、同年[[3月19日]]より営業運転を開始した。第4編成から座席の色が[[緑|グリーン]]から[[青|ブルー]]に変更された。
MLRV1000形は2車体を連接した車両であり、パンタグラフを置く[[越ノ潟駅]]側の車両を「A車」、反対側の[[高岡駅]]側の車両を「B車」と称する<ref name="rst98"/>。車体は耐久性と保守性への考慮から[[耐候性鋼|耐候性鋼板]] (SPA) 製で、ほかに[[ステンレス鋼|ステンレス鋼板]]を屋根と床板に<ref name="rst100">[[#rst100|「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(下)」]]</ref>、[[繊維強化プラスチック|ガラス繊維強化プラスチック]] (GRP) を前頭部に用いる<ref name="rst98"/>。車体塗装は基本色に[[赤]]、アクセントのラインに[[灰色|グレー]]と[[黒]]、グラフィックデザインに[[白]]を採用する<ref name="rj446"/>。


前頭部には4つの[[前照灯]]が並ぶ。2007年に登場した第3編成以降はそのうち内側の2灯に[[HIDランプ]]を採用する<ref name="rp852">[[#rp852|室哲雄「日本の路面電車各社局現況 万葉線」]]</ref>。[[尾灯]]は[[パッシング]]と[[方向指示器|ウィンカー]]の機能を併せ持つ<ref name="rst98"/>。また地場産業の活用として、先頭部分に高岡市の伝統工芸[[螺鈿]]細工による万葉線のシンボルマークを埋め込んでいる<ref name="rj446"/>。
最終増備車である第5・第6編成は[[2009年]](平成21年)[[3月23日]]に入線し、これで当初納入予定の6編成すべてが揃った。同年の[[4月16日]]に第5・第6編成の発車式が行われ、同年[[4月18日]]に営業運転を開始した。


連結部分を除いた各車の全長は8.74メートルで、編成の全長は18.4メートルである<ref name="rst98"/>。車体の最大幅は2.4メートル、車体の高さ(パンタグラフ折りたたみ高さ)は3.745メートル、自重は21トン<ref name="rst98"/>。
これにより、日曜日は6運用あるすべての列車が本形式での運行が可能となった。平日は運用本数6本中5本が基本だが、一部点検などで、旧型車両での運行となる場合もある。従って、日曜日以外はアイトラムの本数が1本以上減る場合があるので注意が必要である。


=== 車内 ===
[[2012年]][[9月3日]]は高岡市出身の漫画家[[藤子・F・不二雄]]の代表作[[ドラえもん]]の誕生100年前にあたる日となるため、一編成がドラえもんのキャラクターや主な道具でラッピングした「ドラえもん電車」にリニューアルされた<ref>http://ameblo.jp/takaokacitytouristassoc/entry-11349306923.html</ref>。当初1年間の予定を2年延長し、2015年8月には更に3年延長して2018年8月末までとなった<ref>http://www.yomiuri.co.jp/local/toyama/news/20150803-OYTNT50445.html</ref>。
[[ファイル:Manyosen MLRV1006A interior.jpg|thumb|連結部から運転台側に向って撮影した第6編成A車 (MLRV1006A) の車内。(2016年8月)]]
土日はこの電車に乗るために海王丸駅までの乗降客が増えている。更に、「ドラえもん」人気の高い台湾やタイなどからの観光客も増えている。万葉線でドラえもん電車で海王丸駅で降り、海王丸パークで遊び、その後、エレベーターを目指して徒歩5分の、あいの風プロムナードに行き、[[新湊大橋]]を渡って対岸に渡り、徒歩5分の新港東口駅から[[富山県営渡船]]フェリーに乗って下からの大橋の巨大な眺望を楽しみ、越ノ潟駅から万葉線で帰るというコースが考えられる。
{{Double image aside|right|Manyosen MLRV1006A seats.jpg|200|Manyosen MLRV1003B seats.jpg|200|台車上部分の座席(左)と運転台後部の座席(右)。座席のモケットは第4編成以降が青色(左)、第3編成までが鶯色(右)(2016年6月)}}


100%低床構造の超低床車であり、車内通路部分におけるレール上面から床面までの高さは36センチメートルで、乗降口部分ではさらに低い30センチメートルとなっている<ref name="rst100"/>。内装は白を基調とした明るい配色とされ<ref name="rst98"/>、座席の[[モケット]]は[[鶯色]]<ref name="rst98"/>、2008年に登場した第4編成以降は[[青|青色]]を採用する<ref name="rp852"/>。
== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}{{Reflist}}


ドアは電動スライド・両開き式の[[プラグドア]](有効幅1.25メートル)を片側2か所ずつ計4か所に設置する<ref name="rst100"/>。配置は左右非対称・点対称で、進行方向に向って左側では各車の前寄り、右側では後ろ寄りにある<ref name="rst100"/>。列車の運行時間が長く座席定員を確保する必要があることから、先の岡山電気軌道9200形とは異なってドアが片側2か所とされた<ref name="rj435"/>。
== 関連項目 ==

* [[富山ライトレールTLR0600形電車]] - 通称ポートラム。[[富山市]]の富山ライトレールで走る、ほとんど同型の車両。
編成の定員は80人<ref name="rst100"/>。座席定員は30人で岡山電気軌道9200形に比べて6席増加した<ref name="rst98"/>。編成図によると、車体中央部および運転台後部に[[クロスシート]]、連結部側ドアの反対側に[[ロングシート]]を配する<ref name="rst100"/>。座席の幅は広く取られており公称の座席定員以上の着席が可能である<ref name="rst100"/>。運転台後部は[[車椅子スペース]]でもあり、この部分の座席は折りたたみ式となっている<ref name="rst100"/>。
* [[富山地方鉄道9000形電車]] - 通称セントラム。富山市の富山地方鉄道富山都心線(環状線)で走る、ほとんど同型の車両。
{{-}}

=== 台車・床下機器 ===
[[鉄道車両の台車|台車]]は各車中央部に1台ずつ、車輪同士を繋ぐ[[車軸]]を省いた独立車輪4輪からなる[[ボルスタレス台車|ボルスタレス式]][[ボギー台車]]を配する<ref name="rst100"/>。台車枠・車体間の[[枕バネ]]および車輪・台車枠間の軸バネにはゴムバネを使用(軸バネにはコイルバネも併用)し、車輪にはゴムを挟み込んだ[[弾性車輪]]を用いる<ref name="rst98"/>。車輪を台車枠に対して保持する軸箱支持方式はスイングアーム式と呼ばれるもの<ref name="rst100"/>。車輪直径は660ミリメートル<ref name="rst100"/>。車輪は連結部寄りが[[駆動輪|動輪]]、先頭部寄りが従輪であるが、動輪だけで駆動力・ブレーキ力双方をまかなうことから、枕バネの取り付け位置を連結部寄り(=動輪側)にずらして[[粘着式鉄道|粘着力]](車輪とレールとの間にはたらく摩擦力)を確保する<ref name="rst100"/>。

[[主電動機]]は出力100[[ワット|キロワット]]の[[かご形三相誘導電動機]](形式名:BAZu3650/4.6<ref name="n2004-189">[[#n2004|「鉄道車両年鑑2004年版」]]189頁</ref><!--ボンバルディア製と思われる-->)を搭載<ref name="rst100"/>。台車ではなく車体の座席下に装荷されており、駆動力は主電動機から[[自在継手]](ユニバーサルジョイント)、[[プロペラシャフト|推進軸]](スプライン軸)、台車の[[かさ歯車]]、2段減速平歯車装置という経路で片側の動輪に伝わり、さらに駆動軸(ねじり軸)を介して反対側の動輪へと伝えられる<ref name="rst100"/>([[車体装架カルダン駆動方式|車体装荷式直角カルダン軸駆動方式]])。

台車は[[ボンバルディア・トランスポーテーション|ボンバルディア]]製で<ref name="rst98"/>、[[ドイツ]]からの輸入品である<ref name="rj462"/>。ただしメーカーの新潟トランシスが[[2007年]](平成19年)にボンバルディアより技術供与を受けて[[ライセンス生産]]によって台車を自社生産する体制を整えており<ref>「石播系、加社とライセンス契約、新型路面電車を一貫生産」『[[日本経済新聞]]』2007年1月17日付朝刊</ref>、2009年導入の最終増備車(第5・第6編成)については同時期の[[熊本市交通局0800形電車|熊本市交通局0800形]]とともに台車を国内生産として輸入品を主電動機などの一部機器に限定している<ref>[[#rj514|「RAILWAY TOPICS 熊本市電に新型超低床電車0800形が登場」]]</ref>。

[[鉄道のブレーキ|ブレーキ]]は、主電動機を用いる電気ブレーキ([[回生ブレーキ|回生]]・[[発電ブレーキ|発電]]併用)があり、これで8[[キロメートル毎時]]まで減速し、それ以降は機械ブレーキであるバネ作用・油圧緩め式の[[ディスクブレーキ]]が作動して停止する<ref name="rst100"/>。ディスクの取り付け位置は台車ではなく主電動機の出力軸である<ref name="rst100"/>。これらが常用ブレーキで、ほかにも別系統で[[二次電池|蓄電池]]駆動の[[電磁吸着ブレーキ]](トラックブレーキ)を[[保安ブレーキ]]として備えており、各台車に2組ずつ機器を設置する<ref name="rst100"/>。また制動距離確保のため[[砂まき装置]]を装備しており、適宜手動で砂を散布できるほか、滑走時や非常ブレーキ・保安ブレーキ使用時には自動的に散布するようになっている<ref name="rst100"/>。

設計最高速度は70[[キロメートル毎時]]である<ref name="rst98"/>。<!--主要事項につき本文明記-->

=== 屋上機器 ===
A車の屋根上には[[集電装置]]や[[電気車の速度制御|主制御装置]]など、B車の屋根上には蓄電池や補助電源装置などをそれぞれ配置し、各車屋根上に[[エア・コンディショナー|冷房装置]]を設置する<ref name="rst100"/>。

集電装置はシングルアーム式パンタグラフで、ばねの力で上昇し、電動機で下降するタイプである<ref name="rst100"/>。主電動機への供給電力を制御する主制御装置は[[パルス幅変調|PWM制御]]・[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT素子]]による[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御方式]]であり、冗長性を高めるため2群のインバータを搭載し1群のインバータにつき主電動機1基を制御する(1C1M方式)<ref name="rst100"/>。主制御装置は[[三菱電機]]製<ref name="rst100"/>(形式名:MAP-102-60VD118<ref name="n2004-189"/>)。補助電源装置はIGBT素子による[[静止形インバータ]] (SIV) である<ref name="rst98"/><ref name="rst100"/>。

=== 運転台関連機器 ===
[[マスター・コントローラー]]は右手扱いのワンハンドル式を採用する<ref name="rst100"/>。

車体の[[バックミラー]]は車外確認用の小型カメラで代用されており、その映像は運転台左右に配置された車外モニターに表示される<ref name="rst100"/>。運転席のモニターは他にも車内モニターがあり、運転士は後方車両に取り付けられたカメラからの映像も確認できる<ref name="rst100"/>。

== 運行開始と増備 ==
=== 第1・第2編成の導入と愛称設定 ===
MLRV1000形の第1編成 (MLRV1001) は、[[2003年]](平成15年)[[12月12日]]、高岡市内にある万葉線株式会社米島車庫に搬入された<ref>「真っ赤な欧風車両 高岡市・万葉線に搬入 超低床 1月21日から営業運転」『[[富山新聞]]』2003年12月13日付朝刊</ref>。竣工は12月14日付<ref>[[#n2004|「鉄道車両年鑑2004年版」]]222頁</ref>。車両価格は2億2,000万円である<ref name="rj450"/>。営業運転開始に先立ち[[2004年]](平成16年)1月17日に高岡市長の佐藤孝志をはじめとする富山県や沿線自治体の招待者約160人による試乗会が行われ<ref>「超低床車両、評価は上々『乗りやすい』『音静か』など 万葉線で試乗会、21日から営業」『北國・富山新聞』2004年1月18日付朝刊</ref>、翌18日には公募で集まった市民約150人による試乗会も開催されている<ref>「公募の市民が新車両を楽しむ 万葉線で試乗会」『富山新聞』2004年1月19日付朝刊</ref>。営業運転は[[1月21日]]より開始され、当日は米島車庫での発車式ののち、高岡駅前発越ノ潟行きの列車より営業に投入された<ref>「活性化への願い乗せ 万葉線、新型車両が営業運行」『富山新聞』2004年1月22日付朝刊</ref>。

営業運転開始後同年3月に万葉線株式会社は車両愛称を公募し、5月7日、県内外からの計893点の応募の中から「'''アイトラム''' (AI-TRAM)」を愛称に採用すると発表した<ref name="news20040508">「『アイトラム』よろしく!万葉線新型車両の愛称決まる」『[[北日本新聞]]』2004年5月8日付朝刊</ref>。同社によると、愛称は[[富山湾]]から吹く風「あいの風」に、英語で路面電車を意味する「トラム」を組み合わせたもので、加えて「アイ」には「愛される」に通じ愛着を持って利用してほしいとの思いを込めている、と述べている<ref name="news20040508"/>。

2004年[[8月2日]]、第1編成と内外装ともに同一仕様の第2編成 (MLRV1002) が米島車庫に搬入された<ref name="news20040803">「アイトラム2両目到着 万葉線 13日から通常通行」『北日本新聞』2004年8月3日付朝刊</ref>。竣工は[[8月6日]]付<ref>[[#n2005|「鉄道車両年鑑2005年版」]]225頁</ref>。車両価格は第1編成と同じく2億2,000万円である<ref name="news20040803"/>。翌[[8月7日|7日]]に米島車庫前で発車式が開催され、運転が開始された<ref>「夢を乗せ2両目運行開始 高岡 万葉線アイトラム」『北日本新聞』2004年8月8日付朝刊</ref>。

2004年10月には、MLRV1000形は[[日本デザイン振興会]]の「[[グッドデザイン賞]]」を受賞した(2004年度、受賞番号:04A11056)<ref>「[https://www.g-mark.org/award/describe/30517?token=CXn4uik78u 2004年度グッドデザイン賞 万葉線超低床車両 [アイトラム MLRV1000 ]]」(グッドデザイン賞公式サイト)、2016年10月4日閲覧</ref>

=== 脱線事故による運休 ===
MLRV1000形は運転開始当初よりトラブルが相次いだ。

まず第1編成については、営業運転から1か月に満たない2004年2月11日に[[米島口停留場]]の分岐器で[[列車脱線事故|脱線]]した<ref name="rj462">[[#rj462|「RAILWAY TOPICS 脱線事故の万葉線「アイトラム」試運転を継続中」]]</ref>。これは[[融雪剤|路面凍結防止剤]]の影響でスリップしたためですぐに原因が判明して当日には運行を再開している<ref name="rj462"/>。第2編成についてはより深刻で、出発式から一夜明けた同年8月8日に早速[[中新湊駅|中新湊]] - [[東新湊駅|東新湊]]間で脱線事故を起こした<ref name="rj462"/>。脱線原因は不明とされ、第1編成とともに運休の措置が採られた<ref name="rj462"/>。

事故後の試験走行の結果、異常が見られないことから1か月半後の9月30日にMLRV1000形は営業運転に復帰した<ref name="rj462"/>。ところが復帰当日、第2編成が[[急患医療センター前停留場|本丸会館停留場]]付近で再び脱線事故を起こしてしまい、両編成そろって再度運行から外された<ref name="rj462"/>。

9月の事故後の調査では、脱線原因は[[ドイツ]]製台車のバックゲージ([[車輪]]の内面間の距離)が在来車よりも10ミリメートル広くなっている点にあるのではないかと推定された<ref name="rj462"/>。バックゲージが異なることで、在来車の運行によって[[分岐器]]部分に生じていた溝とかみ合わなかったことが原因ではないか、というものである<ref name="news20041225">「30日から試運転 万葉線新車両 車輪交換が完了」『北日本新聞』2004年12月25日付朝刊</ref>。このためバックゲージを1,000ミリメートルから在来車と同じ990ミリメートルに修正することになり<ref name="rj462"/>、在来車と同型の車輪をドイツから輸入の上、設備が整う[[富山地方鉄道]][[稲荷町テクニカルセンター]]([[富山市]])にて交換作業を実施した<ref name="news20041225"/>。交換作業は12月24日に終了<ref name="rj462"/>。30日より車両の試運転を始め、並行して分岐器の接触面を一部削る、急カーブ地点6か所に[[脱線防止ガード]]などを新設する、といった線路の改良工事を進めた<ref name="news20050311">「13日に運転再開 万葉線のアイトラム 脱線から5カ月 当面午後のみ運行」『富山新聞』2005年3月11日付朝刊</ref>。

800キロメートルに及ぶ試運転の結果安全面に問題がないと確認されたことから、[[2005年]](平成17年)[[3月13日]]より5か月半ぶりに第1編成・第2編成ともに営業運転が再開された<ref>「『アイトラム』運行再開 万葉線 脱線から5ヵ月半ぶり」『北日本新聞』2005年3月14日付夕刊</ref>。一連の脱線事故に関し、万葉線株式会社から車両メーカーの新潟トランシスに対し[[損害賠償]]請求が起こされたが、同年9月21日に示談が成立。新潟トランシス側は万葉線株式会社に対して賠償金325万円(内訳は復旧作業などにからむ人件費、代替バスの借り上げ費用、検査費および解決金)を支払い、定期的に取り替えが必要な車両の消耗部品類130万円相当を無償提供することとなった<ref>「損害賠償金は325万円 万葉線脱線 事故から1年ぶり、車両会社と示談成立」『富山新聞』2005年9月27日付朝刊</ref>。

=== 第3 - 第6編成の導入 ===
[[ファイル:Manyosen MLRV1006 201504.jpg|thumb|第3編成以降は前照灯の一部に[[HIDランプ]]を採用している。<br />(写真は第6編成、2015年4月・[[市民病院前停留場 (富山県)|市民病院前停留場]]付近)]]

当初のMLRV1000形の導入計画では、2003年度と2004年度に1編成ずつ、2005・2006年度に2編成ずつ導入し合計6本とする予定であったが<ref name="rj435"/>、実際には第3編成以降は2006年度から2009年度にかけての導入となった。その第3編成 (MLRV1003) は[[2006年]](平成18年)[[12月20日]]付で竣工<ref>[[#n2007|「鉄道車両年鑑2007年版」]]231頁</ref>。[[2007年]](平成19年)[[3月19日]]のダイヤ改正にあわせて米島車庫前で出発式が開かれ営業運転を開始した<ref>「アイトラム3号発車! 万葉線 赤い車体沿線彩る 日中運行半分が新型に」『北日本新聞』2007年3月19日付朝刊</ref>。

続く第4編成 (MLRV1004) は[[2008年]](平成20年)[[1月31日]]付で竣工<ref>[[#n2008|「鉄道車両年鑑2008年版」]]252頁</ref>。同年[[3月19日]]に出発式を行って同日より営業運転を開始した<ref>「赤い新車両、軽快運行 アイトラム4両目を導入 万葉線」『北日本新聞』2008年3月20日付朝刊</ref>。

第5編成 (MLRV1005) および第6編成 (MLRV1006) は、そろって[[2009年]](平成21年)[[3月25日]]付で竣工した<ref>[[#n2009|「鉄道車両年鑑2009年版」]]225頁</ref>。同年[[4月16日]]に両編成の出発式が開催され、同日より営業運転に開始したことで、MLRV1000形は導入計画通り6編成がそろった<ref name="news20090417">「アイトラム5、6号発車 万葉線 関係者ら祝う」『北日本新聞』2009年4月17日付朝刊</ref>。この最終増備によって4月18日のダイヤ改正後からは<!--2014年3月29日のダイヤ改正で所要時間が伸びて6→7運用になった模様-->、日曜日はすべての列車を、それ以外の曜日は6運用中5本の列車をこのMLRV1000形で運行できるようになった<ref>[[#n2009|「鉄道車両年鑑2009年版」]]124頁</ref>。

MLRV1000形の導入により旧型車の廃車が進み、加越能鉄道から万葉線株式会社が引き継いだ3形式([[加越能鉄道デ7000形電車|デ7000形・デ7060形・デ7070形]])計11両のうちデ7000形・デ7060形は全廃された<ref name="rp852"/>。2011年4月時点では、万葉線の車両はMLRV1000形6編成に対し旧型車はデ7070形のみが5両残る、という体制となっている<ref name="rp852"/>。

== ドラえもんトラム ==
[[ファイル:Manyosen MLRV1004 201608.jpg|thumb|第4編成による「ドラえもんトラム」<br />(2016年8月・[[能町口停留場]]付近)]]

[[2012年]](平成24年)より、MLRV1000形のうち1編成を充てて、[[藤子・F・不二雄]]の漫画「[[ドラえもん]]」のキャラクターを車内外に描いたラッピング電車「'''ドラえもんトラム'''」が運転されている。

この「ドラえもんトラム」は、万葉線の沿線高岡市が藤子・F・不二雄の出身地であることから市と高岡商工会議所、万葉線株式会社からなる実行委員会によって企画され、漫画の主人公[[ドラえもん (架空のキャラクター)|ドラえもん]]の生誕([[2112年]][[9月3日]])100年前を記念して[[2012年]](平成24年)[[9月8日]]より運転を開始した<ref name="dora">「[https://www.city.takaoka.toyama.jp/bunsou/shise/koho/citybrand/doraemon.html ドラえもんトラム]」(高岡市公式サイト)、2016年10月4日閲覧</ref>。同車両の車体は本来の赤色からドラえもんをイメージした青色に、内装も同様青基調に変更され、車内外各所にキャラクターが描かれている<ref name="dora"/>。運行は当初[[2013年]](平成25年)8月末までの1年間の予定であったが、国内外から観光客を集めて「ドラえもんトラム」の乗客だけで同年5月に10万人を突破したことから、[[2015年]](平成27年)8月末まで2年間の運行期間延長が決まった<ref>[[#ex04|清水省吾「再び生まれ変わる万葉線」]]</ref>。期限の2015年8月には運行期間の再延長が決まり、運行は[[2018年]]8月末までの予定となっている<ref name="dora"/>。

「ドラえもんトラム」は2012年の運行開始当初は第5編成 (MLRV1005) によって運転されていたが<ref>[[#n2013|「鉄道車両年鑑2013年版」]]119頁</ref>、検査の関係で2013年7月から車両が変わり<ref>[[#n2014|「鉄道車両年鑑2014年版」]]136頁</ref>、第2編成 (MLRV1002) で運行されるようになった<ref name="rp921">[[#rp921|「Topic Photos 万葉線『ドラえもんトラム』3代目登場」]]</ref>。さらに[[2016年]](平成28年)4月からは、同じく車両検査の都合で第4編成 (MLRV1004) が新たに3代目の「ドラえもんトラム」になっている<ref name="rp921"/>。
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== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
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== 参考文献 ==
* 『[[鉄道ピクトリアル]]』各号
** {{Cite journal|和書|author=室哲雄 |title=日本の路面電車各社局現況 万葉線 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第61巻第8号(通巻852号) |publisher=[[電気車研究会]] |date=2011-08 |pages=190-193 |ref=rp852 }}
** {{Cite journal|和書|author= |title=Topic Photos 万葉線『ドラえもんトラム』3代目登場 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第66巻第9号(通巻921号) |publisher=電気車研究会 |date=2016-09 |pages=105 |ref=rp921 }}
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** {{Cite journal|和書|title=鉄道車両年鑑2004年版 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第54巻第10号(通巻753号) |publisher=電気車研究会 |date=2004-10 |ref=n2004 }}
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** {{Cite journal|和書|author=編集部 |title=万葉線超低床車MLRV1000形の概要(下) |journal=鉄道車両と技術 |volume=第10巻第9号(通巻100号) |publisher=レールアンドテック出版 |date=2004-09 |pages=42-46 |ref=rst100 }}
* 『路面電車EX』各号
** {{Cite journal|和書|author=堀切邦生 |title=特集・リトルダンサーと日本の超低床車 |journal=路面電車EX |volume=vol.03 |publisher=イカロス出版 |date=2014-05 |pages=3-20 |ref=ex03 }}
** {{Cite journal|和書|author=清水省吾 |title=再び生まれ変わる万葉線 |journal=路面電車EX |volume=vol.04 |publisher=イカロス出版 |date=2014-11 |pages76-79 |ref=ex04 }}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Man'yosen MLRV 1000}}
* [http://www.urban.ne.jp/home/yaman/lrvshogen5.htm#manyousen 路面電車とLRTを考える館 日本のLRV・画像・三面図・諸元5]
* [http://www.urban.ne.jp/home/yaman/lrvshogen5.htm#manyousen 路面電車とLRTを考える館 日本のLRV・画像・三面図・諸元5]
* [http://www.kozodesign.com/ 株式会社コーゾーデザインスタジオ 佐藤康三]
* [http://www.g-mark.org/search/Detail?id=30517&sheet=outline Good Design Award]


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[[Category:日本の電車]]

2016年10月11日 (火) 10:28時点における版

万葉線MLRV1000形電車
アイトラム (AI-TRAM)
MLRV1000形第1編成 (MLRV1001)
(2016年8月 能町口停留場付近)
基本情報
製造所 新潟トランシス
製造初年 2003年
主要諸元
編成 1両編成(2車体連接車)
軌間 1,067
電気方式 直流600 V架空電車線方式
最高運転速度 40
設計最高速度 70
起動加速度 2.5
減速度(常用) 4.6
減速度(非常) 5.0
編成定員 80人(座席30人)
編成重量 21.0 t
全長 18,400
全幅 2,400
全高 3,745
台車 独立車輪式ボルスタレス台車 ×2台
主電動機 かご形三相誘導電動機 100 kW×2基
駆動方式 車体装荷式直角カルダン軸駆動方式
歯車比 6.789
制御装置 PWM制御IGBT-VVVFインバータ制御方式 1C1M×2群
制動装置 回生発電併用電気ブレーキ
油圧式ディスクブレーキ
備考 出典:『鉄道車両と技術』98号『鉄道ピクトリアル』通巻753号
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万葉線MLRV1000形電車(まんようせんMLRV1000がたでんしゃ)は、万葉線株式会社が保有する路面電車車両である。2車体連接・2台車方式の超低床電車で、「アイトラム」 (AI-TRAM) の愛称を持つ。形式名は単に「1000形」とも表記される。

万葉線株式会社が運営する万葉線(高岡軌道線新湊港線)で使用される。営業運転の開始は2004年(平成16年)1月。2009年(平成21年)までに6編成(6両)が導入された。2012年(平成24年)からは、6編成のうち1編成がドラえもんのキャラクターを車体内外に描いた「ドラえもんトラム」として運行されている。

導入までの経緯

万葉線株式会社が運営する高岡軌道線新湊港線(あわせて「万葉線」と称する)は、富山県高岡市射水市(旧新湊市)を結ぶ約13キロメートルの鉄道路線である[1]。高岡市内区間の大部分が道路上を走る併用軌道であるという特徴を持つ[1]

万葉線は1970年代以来乗客の減少が続き経営が厳しく、国からの欠損補助や沿線自治体からの支援によって存続しているという状況であり、1990年代末には同線を運営してきた加越能鉄道(2012年加越能バスへ改称)から廃止・バス転換の方針が出されていた[1]。廃止方針に対して沿線の高岡・新湊両市では、万葉線は住民の生活路線であり都市の個性の象徴でもあるなどと路線の存在意義を認めて第三セクター方針による路線存続を決定[1]。これを受けて2001年(平成13年)に受け皿となる万葉線株式会社が市や県、沿線企業・団体などの出資によって設立され、翌2002年(平成14年)4月、万葉線は加越能鉄道より新会社に引き継がれた[1]

万葉線株式会社が加越能鉄道より引き継いだ電車は、デ7000形・デ7060形・デ7070形の計11両であった[2]。ところがこれらの車両はいずれも1961年(昭和36年)から1967年(昭和42年)までに製造されたもので、当時老朽化進んでいた上に冷房装置の搭載がなかった[1]。このことから会社では新型車両の導入を決定し[1]、2002年10月23日、新潟鐵工所(当時。鉄道車両部門は翌年新潟トランシスとなる)が製造する超低床電車の導入を発表した[3]。こうした過程を経て導入された車両がMLRV1000形である。導入に際して国からの近代化設備整備費補助金の交付や富山県、高岡・新湊両市からの援助を受けている[4]

車体・主要機器

車種と車両コンセプト

熊本市交通局9700形
岡山電気軌道9200形

MLRV1000形は、新潟トランシスの製造による2車体2台車式・100%低床構造の超低床電車である[5]

新潟トランシスによる超低床電車製造は、前身の旧新潟鐵工所時代にさかのぼる[6]。日本への超低床車導入を目指す同社は、ドイツAEG(当時、後に再編によりアドトランツを経て現・ボンバルディア[6])と業務提携し、AEGの製造する超低床車「ブレーメン形」を日本市場へ導入することとなった[7]。導入方法は、新潟鐵工所がAEGに代わって日本仕様の車体を設計・製作し、AEGから量産品の電機品・台車を輸入しそれらを車体に艤装して車両を製造する、というものである[7]車軸のない独立車輪を用いることで低床化を実現するという特徴を持ち、1997年(平成9年)に熊本市交通局へ納入された9700形がこの車両の導入第1号となった[6]

熊本に続いて2002年(平成14年)に岡山電気軌道へ納入された9200形では、アドトランツが新開発した超低床電車シリーズ「インチェントロ」の車体デザインを取り入れることにより、車体が丸みを帯びたものに変更された[8]。以後新潟トランシスが製造する超低床車は「ブレーメン形」の足回りに「インチェントロ」の車体を組み合わせた仕様が標準となっており、これら2形式に続く新潟トランシス製超低床電車となったMLRV1000形もこの仕様で製造されている[8]

車両導入決定後の2003年(平成15年)1月より、万葉線株式会社では地元高岡市と縁の深い工業デザイナーの佐藤康三に委嘱して車両のトータルデザインの開発・監理を行い、同年9月1日に最終デザインを決定した[9]。独自性を打ち出し他都市の車両との差別化を図るべく車両のコンセプトは「情熱」「元気」とされ[9]、このコンセプトに基づき基本デザインに対して内外装あわせて84か所を変更している[4]

車体

MLRV1000形は2車体を連接した車両であり、パンタグラフを置く越ノ潟駅側の車両を「A車」、反対側の高岡駅側の車両を「B車」と称する[5]。車体は耐久性と保守性への考慮から耐候性鋼板 (SPA) 製で、ほかにステンレス鋼板を屋根と床板に[10]ガラス繊維強化プラスチック (GRP) を前頭部に用いる[5]。車体塗装は基本色に、アクセントのラインにグレー、グラフィックデザインにを採用する[9]

前頭部には4つの前照灯が並ぶ。2007年に登場した第3編成以降はそのうち内側の2灯にHIDランプを採用する[11]尾灯パッシングウィンカーの機能を併せ持つ[5]。また地場産業の活用として、先頭部分に高岡市の伝統工芸螺鈿細工による万葉線のシンボルマークを埋め込んでいる[9]

連結部分を除いた各車の全長は8.74メートルで、編成の全長は18.4メートルである[5]。車体の最大幅は2.4メートル、車体の高さ(パンタグラフ折りたたみ高さ)は3.745メートル、自重は21トン[5]

車内

連結部から運転台側に向って撮影した第6編成A車 (MLRV1006A) の車内。(2016年8月)
台車上部分の座席(左)と運転台後部の座席(右)。座席のモケットは第4編成以降が青色(左)、第3編成までが鶯色(右)(2016年6月) 台車上部分の座席(左)と運転台後部の座席(右)。座席のモケットは第4編成以降が青色(左)、第3編成までが鶯色(右)(2016年6月)
台車上部分の座席(左)と運転台後部の座席(右)。座席のモケットは第4編成以降が青色(左)、第3編成までが鶯色(右)(2016年6月)

100%低床構造の超低床車であり、車内通路部分におけるレール上面から床面までの高さは36センチメートルで、乗降口部分ではさらに低い30センチメートルとなっている[10]。内装は白を基調とした明るい配色とされ[5]、座席のモケット鶯色[5]、2008年に登場した第4編成以降は青色を採用する[11]

ドアは電動スライド・両開き式のプラグドア(有効幅1.25メートル)を片側2か所ずつ計4か所に設置する[10]。配置は左右非対称・点対称で、進行方向に向って左側では各車の前寄り、右側では後ろ寄りにある[10]。列車の運行時間が長く座席定員を確保する必要があることから、先の岡山電気軌道9200形とは異なってドアが片側2か所とされた[3]

編成の定員は80人[10]。座席定員は30人で岡山電気軌道9200形に比べて6席増加した[5]。編成図によると、車体中央部および運転台後部にクロスシート、連結部側ドアの反対側にロングシートを配する[10]。座席の幅は広く取られており公称の座席定員以上の着席が可能である[10]。運転台後部は車椅子スペースでもあり、この部分の座席は折りたたみ式となっている[10]

台車・床下機器

台車は各車中央部に1台ずつ、車輪同士を繋ぐ車軸を省いた独立車輪4輪からなるボルスタレス式ボギー台車を配する[10]。台車枠・車体間の枕バネおよび車輪・台車枠間の軸バネにはゴムバネを使用(軸バネにはコイルバネも併用)し、車輪にはゴムを挟み込んだ弾性車輪を用いる[5]。車輪を台車枠に対して保持する軸箱支持方式はスイングアーム式と呼ばれるもの[10]。車輪直径は660ミリメートル[10]。車輪は連結部寄りが動輪、先頭部寄りが従輪であるが、動輪だけで駆動力・ブレーキ力双方をまかなうことから、枕バネの取り付け位置を連結部寄り(=動輪側)にずらして粘着力(車輪とレールとの間にはたらく摩擦力)を確保する[10]

主電動機は出力100キロワットかご形三相誘導電動機(形式名:BAZu3650/4.6[12])を搭載[10]。台車ではなく車体の座席下に装荷されており、駆動力は主電動機から自在継手(ユニバーサルジョイント)、推進軸(スプライン軸)、台車のかさ歯車、2段減速平歯車装置という経路で片側の動輪に伝わり、さらに駆動軸(ねじり軸)を介して反対側の動輪へと伝えられる[10]車体装荷式直角カルダン軸駆動方式)。

台車はボンバルディア製で[5]ドイツからの輸入品である[13]。ただしメーカーの新潟トランシスが2007年(平成19年)にボンバルディアより技術供与を受けてライセンス生産によって台車を自社生産する体制を整えており[14]、2009年導入の最終増備車(第5・第6編成)については同時期の熊本市交通局0800形とともに台車を国内生産として輸入品を主電動機などの一部機器に限定している[15]

ブレーキは、主電動機を用いる電気ブレーキ(回生発電併用)があり、これで8キロメートル毎時まで減速し、それ以降は機械ブレーキであるバネ作用・油圧緩め式のディスクブレーキが作動して停止する[10]。ディスクの取り付け位置は台車ではなく主電動機の出力軸である[10]。これらが常用ブレーキで、ほかにも別系統で蓄電池駆動の電磁吸着ブレーキ(トラックブレーキ)を保安ブレーキとして備えており、各台車に2組ずつ機器を設置する[10]。また制動距離確保のため砂まき装置を装備しており、適宜手動で砂を散布できるほか、滑走時や非常ブレーキ・保安ブレーキ使用時には自動的に散布するようになっている[10]

設計最高速度は70キロメートル毎時である[5]

屋上機器

A車の屋根上には集電装置主制御装置など、B車の屋根上には蓄電池や補助電源装置などをそれぞれ配置し、各車屋根上に冷房装置を設置する[10]

集電装置はシングルアーム式パンタグラフで、ばねの力で上昇し、電動機で下降するタイプである[10]。主電動機への供給電力を制御する主制御装置はPWM制御IGBT素子によるVVVFインバータ制御方式であり、冗長性を高めるため2群のインバータを搭載し1群のインバータにつき主電動機1基を制御する(1C1M方式)[10]。主制御装置は三菱電機[10](形式名:MAP-102-60VD118[12])。補助電源装置はIGBT素子による静止形インバータ (SIV) である[5][10]

運転台関連機器

マスター・コントローラーは右手扱いのワンハンドル式を採用する[10]

車体のバックミラーは車外確認用の小型カメラで代用されており、その映像は運転台左右に配置された車外モニターに表示される[10]。運転席のモニターは他にも車内モニターがあり、運転士は後方車両に取り付けられたカメラからの映像も確認できる[10]

運行開始と増備

第1・第2編成の導入と愛称設定

MLRV1000形の第1編成 (MLRV1001) は、2003年(平成15年)12月12日、高岡市内にある万葉線株式会社米島車庫に搬入された[16]。竣工は12月14日付[17]。車両価格は2億2,000万円である[4]。営業運転開始に先立ち2004年(平成16年)1月17日に高岡市長の佐藤孝志をはじめとする富山県や沿線自治体の招待者約160人による試乗会が行われ[18]、翌18日には公募で集まった市民約150人による試乗会も開催されている[19]。営業運転は1月21日より開始され、当日は米島車庫での発車式ののち、高岡駅前発越ノ潟行きの列車より営業に投入された[20]

営業運転開始後同年3月に万葉線株式会社は車両愛称を公募し、5月7日、県内外からの計893点の応募の中から「アイトラム (AI-TRAM)」を愛称に採用すると発表した[21]。同社によると、愛称は富山湾から吹く風「あいの風」に、英語で路面電車を意味する「トラム」を組み合わせたもので、加えて「アイ」には「愛される」に通じ愛着を持って利用してほしいとの思いを込めている、と述べている[21]

2004年8月2日、第1編成と内外装ともに同一仕様の第2編成 (MLRV1002) が米島車庫に搬入された[22]。竣工は8月6日[23]。車両価格は第1編成と同じく2億2,000万円である[22]。翌7日に米島車庫前で発車式が開催され、運転が開始された[24]

2004年10月には、MLRV1000形は日本デザイン振興会の「グッドデザイン賞」を受賞した(2004年度、受賞番号:04A11056)[25]

脱線事故による運休

MLRV1000形は運転開始当初よりトラブルが相次いだ。

まず第1編成については、営業運転から1か月に満たない2004年2月11日に米島口停留場の分岐器で脱線した[13]。これは路面凍結防止剤の影響でスリップしたためですぐに原因が判明して当日には運行を再開している[13]。第2編成についてはより深刻で、出発式から一夜明けた同年8月8日に早速中新湊 - 東新湊間で脱線事故を起こした[13]。脱線原因は不明とされ、第1編成とともに運休の措置が採られた[13]

事故後の試験走行の結果、異常が見られないことから1か月半後の9月30日にMLRV1000形は営業運転に復帰した[13]。ところが復帰当日、第2編成が本丸会館停留場付近で再び脱線事故を起こしてしまい、両編成そろって再度運行から外された[13]

9月の事故後の調査では、脱線原因はドイツ製台車のバックゲージ(車輪の内面間の距離)が在来車よりも10ミリメートル広くなっている点にあるのではないかと推定された[13]。バックゲージが異なることで、在来車の運行によって分岐器部分に生じていた溝とかみ合わなかったことが原因ではないか、というものである[26]。このためバックゲージを1,000ミリメートルから在来車と同じ990ミリメートルに修正することになり[13]、在来車と同型の車輪をドイツから輸入の上、設備が整う富山地方鉄道稲荷町テクニカルセンター富山市)にて交換作業を実施した[26]。交換作業は12月24日に終了[13]。30日より車両の試運転を始め、並行して分岐器の接触面を一部削る、急カーブ地点6か所に脱線防止ガードなどを新設する、といった線路の改良工事を進めた[27]

800キロメートルに及ぶ試運転の結果安全面に問題がないと確認されたことから、2005年(平成17年)3月13日より5か月半ぶりに第1編成・第2編成ともに営業運転が再開された[28]。一連の脱線事故に関し、万葉線株式会社から車両メーカーの新潟トランシスに対し損害賠償請求が起こされたが、同年9月21日に示談が成立。新潟トランシス側は万葉線株式会社に対して賠償金325万円(内訳は復旧作業などにからむ人件費、代替バスの借り上げ費用、検査費および解決金)を支払い、定期的に取り替えが必要な車両の消耗部品類130万円相当を無償提供することとなった[29]

第3 - 第6編成の導入

第3編成以降は前照灯の一部にHIDランプを採用している。
(写真は第6編成、2015年4月・市民病院前停留場付近)

当初のMLRV1000形の導入計画では、2003年度と2004年度に1編成ずつ、2005・2006年度に2編成ずつ導入し合計6本とする予定であったが[3]、実際には第3編成以降は2006年度から2009年度にかけての導入となった。その第3編成 (MLRV1003) は2006年(平成18年)12月20日付で竣工[30]2007年(平成19年)3月19日のダイヤ改正にあわせて米島車庫前で出発式が開かれ営業運転を開始した[31]

続く第4編成 (MLRV1004) は2008年(平成20年)1月31日付で竣工[32]。同年3月19日に出発式を行って同日より営業運転を開始した[33]

第5編成 (MLRV1005) および第6編成 (MLRV1006) は、そろって2009年(平成21年)3月25日付で竣工した[34]。同年4月16日に両編成の出発式が開催され、同日より営業運転に開始したことで、MLRV1000形は導入計画通り6編成がそろった[35]。この最終増備によって4月18日のダイヤ改正後からは、日曜日はすべての列車を、それ以外の曜日は6運用中5本の列車をこのMLRV1000形で運行できるようになった[36]

MLRV1000形の導入により旧型車の廃車が進み、加越能鉄道から万葉線株式会社が引き継いだ3形式(デ7000形・デ7060形・デ7070形)計11両のうちデ7000形・デ7060形は全廃された[11]。2011年4月時点では、万葉線の車両はMLRV1000形6編成に対し旧型車はデ7070形のみが5両残る、という体制となっている[11]

ドラえもんトラム

第4編成による「ドラえもんトラム」
(2016年8月・能町口停留場付近)

2012年(平成24年)より、MLRV1000形のうち1編成を充てて、藤子・F・不二雄の漫画「ドラえもん」のキャラクターを車内外に描いたラッピング電車「ドラえもんトラム」が運転されている。

この「ドラえもんトラム」は、万葉線の沿線高岡市が藤子・F・不二雄の出身地であることから市と高岡商工会議所、万葉線株式会社からなる実行委員会によって企画され、漫画の主人公ドラえもんの生誕(2112年9月3日)100年前を記念して2012年(平成24年)9月8日より運転を開始した[37]。同車両の車体は本来の赤色からドラえもんをイメージした青色に、内装も同様青基調に変更され、車内外各所にキャラクターが描かれている[37]。運行は当初2013年(平成25年)8月末までの1年間の予定であったが、国内外から観光客を集めて「ドラえもんトラム」の乗客だけで同年5月に10万人を突破したことから、2015年(平成27年)8月末まで2年間の運行期間延長が決まった[38]。期限の2015年8月には運行期間の再延長が決まり、運行は2018年8月末までの予定となっている[37]

「ドラえもんトラム」は2012年の運行開始当初は第5編成 (MLRV1005) によって運転されていたが[39]、検査の関係で2013年7月から車両が変わり[40]、第2編成 (MLRV1002) で運行されるようになった[41]。さらに2016年(平成28年)4月からは、同じく車両検査の都合で第4編成 (MLRV1004) が新たに3代目の「ドラえもんトラム」になっている[41]

脚注

  1. ^ a b c d e f g 服部重敬「都市交通新世紀6 万葉線」
  2. ^ 「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(上)」46-48頁
  3. ^ a b c 「RAILWAY TOPICS 万葉線がドイツタイプの超低床車導入」
  4. ^ a b c 平澤崇「万葉線に元気を 新型超低床電車MLRV1000デビュー」
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(上)」
  6. ^ a b c 堀切邦生「特集・リトルダンサーと日本の超低床車」6-7頁
  7. ^ a b 大野真一「日本における低床式路面電車の導入について」32-33頁
  8. ^ a b 「特集・リトルダンサーと日本の超低床車」19頁
  9. ^ a b c d 「RAILWAY TOPICS 万葉線の超低床車 真赤のデザイン決定」
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(下)」
  11. ^ a b c d 室哲雄「日本の路面電車各社局現況 万葉線」
  12. ^ a b 「鉄道車両年鑑2004年版」189頁
  13. ^ a b c d e f g h i j 「RAILWAY TOPICS 脱線事故の万葉線「アイトラム」試運転を継続中」
  14. ^ 「石播系、加社とライセンス契約、新型路面電車を一貫生産」『日本経済新聞』2007年1月17日付朝刊
  15. ^ 「RAILWAY TOPICS 熊本市電に新型超低床電車0800形が登場」
  16. ^ 「真っ赤な欧風車両 高岡市・万葉線に搬入 超低床 1月21日から営業運転」『富山新聞』2003年12月13日付朝刊
  17. ^ 「鉄道車両年鑑2004年版」222頁
  18. ^ 「超低床車両、評価は上々『乗りやすい』『音静か』など 万葉線で試乗会、21日から営業」『北國・富山新聞』2004年1月18日付朝刊
  19. ^ 「公募の市民が新車両を楽しむ 万葉線で試乗会」『富山新聞』2004年1月19日付朝刊
  20. ^ 「活性化への願い乗せ 万葉線、新型車両が営業運行」『富山新聞』2004年1月22日付朝刊
  21. ^ a b 「『アイトラム』よろしく!万葉線新型車両の愛称決まる」『北日本新聞』2004年5月8日付朝刊
  22. ^ a b 「アイトラム2両目到着 万葉線 13日から通常通行」『北日本新聞』2004年8月3日付朝刊
  23. ^ 「鉄道車両年鑑2005年版」225頁
  24. ^ 「夢を乗せ2両目運行開始 高岡 万葉線アイトラム」『北日本新聞』2004年8月8日付朝刊
  25. ^ 2004年度グッドデザイン賞 万葉線超低床車両 [アイトラム MLRV1000 ]」(グッドデザイン賞公式サイト)、2016年10月4日閲覧
  26. ^ a b 「30日から試運転 万葉線新車両 車輪交換が完了」『北日本新聞』2004年12月25日付朝刊
  27. ^ 「13日に運転再開 万葉線のアイトラム 脱線から5カ月 当面午後のみ運行」『富山新聞』2005年3月11日付朝刊
  28. ^ 「『アイトラム』運行再開 万葉線 脱線から5ヵ月半ぶり」『北日本新聞』2005年3月14日付夕刊
  29. ^ 「損害賠償金は325万円 万葉線脱線 事故から1年ぶり、車両会社と示談成立」『富山新聞』2005年9月27日付朝刊
  30. ^ 「鉄道車両年鑑2007年版」231頁
  31. ^ 「アイトラム3号発車! 万葉線 赤い車体沿線彩る 日中運行半分が新型に」『北日本新聞』2007年3月19日付朝刊
  32. ^ 「鉄道車両年鑑2008年版」252頁
  33. ^ 「赤い新車両、軽快運行 アイトラム4両目を導入 万葉線」『北日本新聞』2008年3月20日付朝刊
  34. ^ 「鉄道車両年鑑2009年版」225頁
  35. ^ 「アイトラム5、6号発車 万葉線 関係者ら祝う」『北日本新聞』2009年4月17日付朝刊
  36. ^ 「鉄道車両年鑑2009年版」124頁
  37. ^ a b c ドラえもんトラム」(高岡市公式サイト)、2016年10月4日閲覧
  38. ^ 清水省吾「再び生まれ変わる万葉線」
  39. ^ 「鉄道車両年鑑2013年版」119頁
  40. ^ 「鉄道車両年鑑2014年版」136頁
  41. ^ a b 「Topic Photos 万葉線『ドラえもんトラム』3代目登場」

参考文献

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    • 「Topic Photos 万葉線『ドラえもんトラム』3代目登場」『鉄道ピクトリアル』第66巻第9号(通巻921号)、電気車研究会、2016年9月、105頁。 
  • 「鉄道車両年鑑」(『鉄道ピクトリアル』臨時増刊号)各号
    • 「鉄道車両年鑑2004年版」『鉄道ピクトリアル』第54巻第10号(通巻753号)、電気車研究会、2004年10月。 
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    • 「RAILWAY TOPICS 脱線事故の万葉線「アイトラム」試運転を継続中」『鉄道ジャーナル』第39巻第4号(通巻462号)、鉄道ジャーナル社、2005年4月、95頁。 
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    • 服部重敬「都市交通新世紀6 万葉線」『鉄道ファン』第43巻第9号(通巻626号)、交友社、2003年9月、120-125頁。 
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    • 編集部「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(上)」『鉄道車両と技術』第10巻第7号(通巻98号)、レールアンドテック出版、2004年7月、46-49頁。 
    • 編集部「万葉線超低床車MLRV1000形の概要(下)」『鉄道車両と技術』第10巻第9号(通巻100号)、レールアンドテック出版、2004年9月、42-46頁。 
  • 『路面電車EX』各号
    • 堀切邦生「特集・リトルダンサーと日本の超低床車」『路面電車EX』vol.03、イカロス出版、2014年5月、3-20頁。 
    • 清水省吾「再び生まれ変わる万葉線」『路面電車EX』vol.04、イカロス出版、2014年11月。 

外部リンク