厚生経済学

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厚生経済学(こうせいけいざいがく、: Welfare economics)は、現実的あるいは仮想的な経済システム経済政策を批判的に検討し、人々の福祉の観点からその性能を改善するために、代替的な経済システムや経済政策の設計および実装を企てる経済学の一分野である[1]ミクロ経済学の主要な一分野でとして位置づけられ、記号論理学の手法が積極的に用いられる[2]


歴史[編集]

「厚生経済学」の名称はアーサー・セシル・ピグー1920年に出版した著書『厚生経済学』において初めて使用されたが、現代ならば厚生経済学と称されるであろう研究は少なくともアリストテレスの時代から連綿と道徳哲学ないし倫理学として継承されてきた[3][4]。ピグーの研究は18世紀ジェレミー・ベンサムニコラ・ド・コンドルセらの研究を綜合したものであったが、誕生からわずか10年余りでライオネル・ロビンズの批判に直撃されて瓦解した[5]。これらの研究は旧厚生経済学と呼ばれる[5]。旧厚生経済学に対し、1930年代を席巻した序数主義的経済学の情報的基礎と接合した、ジョン・ヒックスらの補償原理学派やケネス・アローらの社会厚生関数学派は新厚生経済学と呼ばれる[5]

ノーベル経済学賞[編集]

ジョン・ヒックス1972年)、ケネス・アロー(1972年)、アマルティア・セン1998年)らが、厚生経済学に関する業績によってノーベル経済学賞を受賞している[6][7]

厚生経済学の基本定理[編集]

厚生経済学の基本定理(: fundamental theorems of welfare economics)とは、完全競争下の均衡状態における資源配分とパレート効率的な資源配分との対応関係を述べる定理であり[8]、次の2つの定理から成る。

  • 厚生経済学の第1定理 - 市場の普遍性(: universality of market)と完全競争(: perfect competition)の仮定が満たされるとき、ワルラス均衡が実現する資源配分はパレート効率的である[9]
  • 厚生経済学の第2定理 - 市場の普遍性、完全競争、凸環境(: convex environment)の仮定が満たされるとき、一括型(: lump-sum)の適当な課税・補助金によって、任意のパレート効率的な資源配分がワルラス均衡として実現される[10]

厚生経済学の基本定理は、ドーフマンサミュエルソンソローによって1958年に出版された『線型計画と経済分析』の中で示された定理であり、これまでの厚生経済学の研究から導きだされたものである。[要出典]

脚注[編集]

  1. ^ 鈴村 2009, p. 451。
  2. ^ Feldman & Serrano 2006は「厚生経済学は記号論理学の一部である」とまで述べている(p.1)。
  3. ^ 鈴村 2009
  4. ^ 蓼沼 2011, p. 169。
  5. ^ a b c 鈴村 2009
  6. ^ The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 1972、Nobel Foundation。2015年12月最終閲覧。
  7. ^ The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 1998、Nobel Foundation。2015年12月最終閲覧。
  8. ^ 鈴村 2009
  9. ^ 奥野 2008, pp. 163-164。
  10. ^ 奥野 2008, pp. 177-178。

参照文献[編集]

  • 鈴村興太郎 『厚生経済学の基礎』 岩波書店〈一橋大学経済叢書〉、2009年ISBN 9784000099165 
  • 奥野正寛 『ミクロ経済学』 東京大学出版会、2008年ISBN 9784130421270 
  • 蓼沼宏一 『幸せのための経済学:効率と衡平の考え方』 岩波書店〈岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ〉、2011年ISBN 978-4005006885 
  • Feldman, Allan; Serrano, Roberto (2006), Welfare Economics and Social Choice Theory (2nd ed.), Springer 川島大邦; 福住太一(訳) 『厚生経済学と社会選択論』 シーエーピー出版、2009年ISBN 9784916092908 

関連項目[編集]