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介護ロボット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

介護ロボット(かいごロボット)とは、介護をされる者の自立を助けたり、介護職の行っている業務の手助けをするロボット

2024年6月、経済産業省厚生労働省は「介護テクノロジー利用の重点分野」(旧称:ロボット技術の介護利用における重点分野)を改訂し、従来の6分野に加え、機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症生活支援・認知症ケア支援の3分野を新たに追加した。これは、高齢化社会の進行に伴う介護需要の多様化と、介護現場の人手不足に対応するためである[1][2][注釈 1]

経済産業省では「生活支援ロボット」という呼称を使用する場合もある[3]

概要

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高齢者人口の増加や介護職の不足により、日本政府によって開発や導入が進められてもいる。日本政府は2015年より介護ロボットの利用料の9割を介護保険で補助するなど、普及を促進している。

経済産業省の試算によれば、日本国内の介護ロボット市場は2015年は167億円であり、高齢化がさらに進む2035年には4,000億円にまでなる見込みとのこと。

2013年には国際標準化機構によって介護ロボットの国際安全基準として、サービスロボットや生活支援ロボットの安全規格(ISO13482)が日本主導で作られ、2014年2月1日に発行された。すでに国内メーカーでは、12機種のロボットがこの規格を取得している[4]

厚生労働省は介護ロボットを実用化させるという事業を実施している。厚生労働省によれば、急激な高齢化による介護の増加、核家族化の進行など状況は変化してきており、介護者においても腰痛などの問題が指摘されるなど、人材確保をする上で働きやすい職場環境を構築することが重要となっている。このような中で日本の高度なロボット技術を介護に活用することが期待されている[5]

しかし介護ロボットは高価であり、介護現場における設備として導入が順調に進んでいる状況とは言えない。老人ホームなどでは徐々に普及はされているものの、一般の家庭への導入は現段階では難しいとされている。厚生労働省は、2020年8月より介護現場及び、介護ロボットの開発企業に対する相談窓口や介護ロボットの実証を支援するリビングラボ、その他200以上の協力施設から構成されるプラットフォームを始動し、開発と普及の促進に取り組んでいる[6]

今後、日本は超高齢化社会に突入し、2036年には65歳以上の人口が33.3%(3人に1人)に到達、その後も割合は増え続けると予想される。介護士の不足や負担の増加、老々介護、ワンオペ介護などのさまざまな問題に直面すると考えられるため早急な開発と普及が求められている[7]

分類

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  • 移動支援 - 高齢者の屋内移動、または屋外移動を補助する。装着型と非装着型に分類される。
    • aLQ(アルク) - 装着型。
    • 体重支持型歩行アシスト(HONDA製) - 装着型。
    • ロボットアシストウォーカーRT.1 - 非装着型。
    • RoboCart(サイバーダイン社製) - 非装着型。
  • 排泄支援 - トイレ誘導・排泄物の処理・排泄動作支援に分類。
  • 入浴支援 - 浴室から浴槽に移動する際や、湯船につかるまでの一連の動作を支援。
    • バスリフト(TOTO製) - 電動でシートが昇降することで、入浴介助の負担を軽減する。
    • Wells(積水ホームテクノ株式会社製) - 介護用浴室。
    • 美浴(びあみ)シリーズ(エア・ウォーター産業・医療ガス株式会社制) - 介護用シャワー入浴装置。
    • SATBATH(サットバス)(がまかつ社製) - 移乗支援機器。
  • 介護業務支援 - 介護ロボットが収集した情報(見守り・移動支援・排泄支援データ)を蓄積し、高齢者への支援に活用する機器。
    • SCOP(善光総合研究所製) - 無料で使えるスマート介護プラットフォーム。
    • FTCare-i(エフティーケア・アイ)(エフトス社製) - 業務支援システム。
  • 機能訓練支援 -
    • SATWALKER(サットウォーカー)(がまかつ社製) - 体幹支持式歩行トレーニング装置。
  • 食事・栄養管理支援 -
  • 認知症生活支援・認知症ケア支援 -

脚注

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注釈

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  1. ^ ロボット技術の介護利用における重点分野
    1、移乗支援
    2、移動支援
    3、排泄支援
    4、見守り・コミュニケーション
    5、入浴支援
    6、介護業務支援

    2024年6月の改訂により、以下3分野が追加。
    7、機能訓練支援
    8、食事・栄養管理支援
    9、認知症生活支援・認知症ケア支援

    名称を「介護テクノロジー利用の重点分野」へ変更。

出典

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  1. ^ 2024年6月|「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました”. 厚生労働省. 2025年5月20日閲覧。
  2. ^ 介護ロボットの基礎知識”. 厚生労働省. 2025年5月20日閲覧。
  3. ^ 経済産業省. “世界初!日本の生活支援ロボットが国際安全規格(ISO13482)認証を取得しました”. 2014年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月16日閲覧。
  4. ^ 医療ロボット・介護ロボットは現場をどう変える?現状や最新事例、今後の課題は? 連載:世界のロボット新製品”. ビジネス+IT(SBクリエイティブ) (2018年4月24日). 2025年6月1日閲覧。
  5. ^ [1]
  6. ^ 足立圭司.柴田創一郎"介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム".日本生活支援工学会誌Vol.20No.2.2020-12,(参照2022-6-19)
  7. ^ "第1節高齢化の状況(1)".内閣府,(参照2022-6-19) 
  8. ^ 【介護ロボット】種類は6つ!各種導入効果も解説します”. 介護のコミミ (2024年12月18日). 2025年5月20日閲覧。
  9. ^ 介護ロボットの6種類13項目をそれぞれわかりやすく解説!”. TOPPAN BiZ. 2025年5月20日閲覧。
  10. ^ 排泄予測支援機器「DFree」とは?|2022年4月から介護保険適用に”. 2ndLabo(セカンドラボ) (2025年4月28日). 2025年6月7日閲覧。
  11. ^ 膀胱内の尿量確認デバイスを介護向けに、リリアム大塚”. 日経クロステック (2018年11月21日). 2025年6月7日閲覧。
  12. ^ ロボット大賞 「第6回 ロボット大賞」受賞一覧”. ロボット大賞. 2025年6月11日閲覧。
  13. ^ ロボット大賞でTOTOベッドサイドトイレ優秀賞”. リフォーム産業新聞 (2014年11月4日). 2025年6月7日閲覧。
  14. ^ 真空式水洗ポータブルトイレ キューレット(アロン化成株式会社)”. 介護ロボットポータルサイト(AMED). 2025年6月7日閲覧。
  15. ^ 排泄動作支援機器 SATOILET(株式会社がまかつ)”. 介護ロボットポータルサイト(AMED). 2025年6月7日閲覧。
  16. ^ ポータブルトイレに組み込まれた排泄支援ロボット(株式会社岡田製作所)”. 介護ロボットポータルサイト(AMED). 2025年6月7日閲覧。
  17. ^ 医療ロボット・介護ロボットは現場をどう変える?現状や最新事例、今後の課題は?|介護・介助支援:洗浄後のお尻を拭くロボット便座”. ビジネス+IT(SBクリエイティブ) (2018年4月24日). 2025年6月7日閲覧。
  18. ^ セコムとDeNAがつくる"まどろっこしい"ロボット 高齢者とつながる「あのね」”. Impress Watch (2023年3月23日). 2025年6月16日閲覧。
  19. ^ 高齢者見守りサービス・見守りシステム「いまイルモ」”. ソルクシーズオンラインストア. 2025年6月16日閲覧。
  20. ^ シルエット見守りセンサ”. キング通信工業オンラインストア. 2025年6月16日閲覧。
  21. ^ 次世代予想型見守りシステム「ネオスケア」”. ノーリツプレシジョン株式会社オンラインストア. 2025年6月16日閲覧。
  22. ^ パルロって何?”. 富士ソフトオンラインストア. 2025年6月16日閲覧。
  23. ^ 「BOCCO emo LTEモデル Powered by ネコリコ」は、 人と人をつなぐコミュニケーションロボット。”. 合同会社ネコリコオンラインストア. 2025年6月16日閲覧。
  24. ^ 販売中 小さなLOVEが、世界を変える。LOVEをはぐくむ家族型ロボット、LOVOT[らぼっと]”. GROOVE X 株式会社オンラインストア. 2025年6月16日閲覧。
  25. ^ Romi(Lacatanモデル)デビュー”. MIXIオンラインストア. 2025年6月16日閲覧。

関連項目

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