スマート農業

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

スマート農業(スマートのうぎょう)とはロボット技術やICT等の先端技術の活用による新たな農業である[1]

概要[編集]

センサー技術や情報技術、ロボット技術等を高度に活用して、少人数で多数の圃場を的確に管理する技術としてスマート農業がある。スマート農業では、肥料農薬・水・エネルギー・労力を過不足なく使用し、かつ収穫・品質を確保するため、営農サイクルの主要な意思決定において作物や圃場の実態に関する空間情報を用いる。一見、均一にみえる圃場において空間的・時間的に気温土壌肥沃度や土壌水分がばらつく事を前提としてそれを認識して制御することで収量等を改善を目指す。従来は長年に培われた農業従事者の経験に基づいて意思決定していたが、それを暗黙知から形式知に変えるために、情報通信技術を積極的に導入することにより、各要素を数値化して管理を行う手法を導入する。農業のスマート化は、画像解析リモートセンシングなどを活用することで農場の状態情報を数値化して、ビッグデータを様々な視点・知見から分析することで、単位面積毎の収穫量の増加や低農薬化、高付加価値化、省力化などを実現する[2]

一例として農作物の波長別の反射係数と生育状況の間には相関があることが知られており[3]、これまでは、作物の生育状況を把握するためには葉緑素計(SPAD)を使って、葉を一枚一枚挟んで色を測り、生育状況を見ていたが、それでは手間がかかりすぎ、一部しか測定できないので多波長カメラを搭載することで作物の生育度のデータを収集する農業用無人航空機の利用も視野に入れている[4]。これまでは類似の用途には衛星写真が使用されてきたが、小回りの利く無人航空機を使用する事により、より手軽に圃場内での高精度の情報を入手できると期待される。

背景[編集]

日本国内の農業従事者は、持続的に減少し(過去20年間にほぼ半減)するとともに、高齢化が進み(2015年の平均年齢は66.3歳)、耕作放棄地は2015年に40万haを超えている。また農業では、技術の修得に時間を要し、マニュアル化が難しいノウハウ的な技術が多いため、次世代に継承されにくいという問題がある。これらの問題を解決し、若者や女性など、様々な人々に農場に参加してもらうためには、作業を楽にするとともに、経験の少ない人でも農業を取り組める環境を整えていく必要がある。そのためにスマート農業の考えが始まった[5]

機材[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 山下直樹「スマート農業の実現に向けて」『電気設備学会誌』第36巻第10号、電気設備学会、2016年、691-694頁、doi:10.14936/ieiej.36.691ISSN 0910-0350NAID 130005421178 
  2. ^ 『日本型精密農業を目指した技術開発』2016年11月2日。 オリジナルの2017年3月28日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20170328045322/https://www.monsantojournal.jp/%E3%81%AA%E3%81%9C%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E3%81%AB%E5%85%88%E7%AB%AF%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B%E2%80%95%E2%80%95%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%80%8C%E7%B2%BE%E5%AF%86/2022年3月12日閲覧 
  3. ^ 農業分野でのハイパースペクトルイメージデータの利用” (PDF) (2011年11月17日). 2022年3月12日閲覧。
  4. ^ 空から農業を一変させる。 リモートセンシングと無人ヘリで切り開く農業の未来とは?”. ヤンマー (2016年11月24日). 2022年3月12日閲覧。
  5. ^ 井上吉雄, 横山正樹「ドローンリモートセンシングによる作物・農地診断情報計測とそのスマート農業への応用」『日本リモートセンシング学会誌』第37巻第3号、日本リモートセンシング学会、2017年、224-235頁、doi:10.11440/rssj.37.224ISSN 0289-7911NAID 130006327356 

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]