三菱・i

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三菱・i
HA1W型
フロント(前期型)
Mitsubishi i.jpg
リア(前期型)
Mitsubishi i rear.jpg
室内
Mitsubishi i interior.jpg
販売期間 2006年1月 - 2013年9月
設計統括 福井紀王(プロダクトエグゼクティブ)
デザイン 竹屋正道(エキスパート・プロジェクトマネージャー)
乗車定員 4 人
ボディタイプ 5ドアハッチバック
エンジン 3B20型:0.66 L 直3 MIVEC
駆動方式 MR
ビスカスカップリング式フルタイム4WD
最高出力 52 PS(NA) / 64 PS(ターボ
変速機 4速AT
サスペンション 前:マクファーソンストラット
後:3リンクド・ディオン式
全長 3,395 mm
全幅 1,475 mm
全高 1,600 mm
ホイールベース 2,550 mm
車両重量 890 - 960 kg
-自動車のスペック表-

i(アイ)は、三菱自動車工業2006年から2013年にかけて製造・販売していた軽自動車である。2003年フランクフルトモーターショーに出展した同社のコンセプトカーが原型となっている。

概要[編集]

近年の軽乗用車としては珍しく、5ドアのボディでありながらエンジンをリア・ミッドシップマウントし、高効率なパッケージングを採りながら、重量配分の最適化により操縦安定性、走行性能を高めている。かつて経営の提携関係にあったダイムラー・クライスラースマートの技術ノウハウが活かされていると思われがちだが、プラットフォームは三菱自動車の独自開発である。先行開発は2000年、正式な開発は2001年1月から始まっている。途中2度も開発が停止する事態に陥りながらも、2004年のダイムラー・クライスラーとの提携解消後の再建計画の中で、最終的に商品化に向けての開発が認められることになったという経歴を持つ[1]

三菱自動車の軽自動車では、派生車を除くとeKワゴン以来4年3ヶ月ぶりのニューモデルである。

iの開発を指揮したのは、2代目パジェロでプロジェクトエンジニア、現プロジェクトエグゼクティブである福井紀王。

コンセプトは「居住性」「衝突安全性」「斬新なデザイン」を統合したプレミアムスモール。三菱がパジェロミニで先鞭を付けた「プレミアムな付加価値を持つ軽自動車」を発展させたものである。ダイムラー・クライスラーとの提携以前より企画され、2001年から開発がスタートしたが、そもそも競合車種が無いゆえに需要があるのか、市場はあるのかを経営陣に納得させることに苦労したとされる。2003年頃には経営難から開発が一旦停止されたものの、半年後に開発を再開した際のモーターショーでの発表において手応えを得たことから、開発は加速したという。しかし、提携先であるダイムラー・クライスラーの商品であるスマートの市場とバッティングするという理由から、2004年初頭に開発が再度停止されてしまう。当時、提携関係にあったダイムラー・クライスラーの企画本部長を、1日中軽自動車に乗せて東京を案内し、狭い路地に入っていける利便性や軽自動車の意義を理解してもらうことなど、商品性を理解してもらうよう努力が払われたが、それがかえって仇となった格好である。その後、ダイムラー・クライスラーとの提携解消後の再建計画の中、同年5月に新しい三菱を象徴する先進的なクルマとして商品化が認められることとなった。自動車業界の傾向として新車開発期間が大幅に短縮される中(トヨタや日産は従来で4年とされていた開発期間を、全くの新規プラットフォームでも24ヶ月、あるいは18ヶ月とすることを目標としていた)、途中2回も開発が停止したこともあり、5年の開発期間を掛けての発売となった。

発売当初はターボエンジン搭載モデルのみをラインナップし、車両本体価格は128万円以上だった。2006年10月に自然吸気エンジンモデルが登場し、2009年8月発売の最廉価「Limited 2WD」は99.8万円から購入できるようになった。元々高価なモデルではあるが、エンジン形式、駆動方法を別とすると、メーカーオプションの範囲が狭く、グレード間での差異の少ない車である。こと安全装備に関しては、全グレードがほぼ共通であり、唯一フロントディスクブレーキの径だけ、Tグレードが1インチ大きいのみとなっている。

生産は、岡山県倉敷市の三菱自動車工業 水島製作所で行われていた。

スタイル・機構[編集]

2台のi

エンジン[編集]

新規に開発された直列3気筒DOHC12バルブ、可変バルブ機構"MIVEC"付き3B20型自然吸気、またはインタークーラーターボエンジンを搭載する。ターボは低回転域からトルクが発生するようチューンされている。

このエンジンのダイムラーへの供給契約が締結されており、排気量を999ccに変更して2007年モデルチェンジの次期型スマートに搭載している。

レイアウト[編集]

リア・ミッドシップを採用することでホイールベースは2012年12月現在、既存の軽自動車としては最長の2,550mmである(次点でホンダ・N BOX、およびホンダ・N-ONEの各2,520mm)。フロントにエンジンが無いことからステアリングの切れ角を大きく取れ、ロングホイールベースにも関わらず最小回転半径は4.5mとなっている。

国内の軽自動車では唯一、後面オフセット衝突にも対応している。

エンジンを45度傾斜させた上でリア・アクスルに載せるような形でマウントすることで、広い室内空間を実現している。独特のエンジン配置によって荷物室の床の地上高は約70センチと他車より高めである。そのため、積載空間は他車より若干狭い。荷物室の床には防熱対策が手厚く施してあり、エンジンの熱が荷物に影響することはない。

エンジンのリア・ミッドシップレイアウト、同じ三菱製の小型乗用車コルトよりも長いロングホイールベース、大径の15インチホイールの採用によって、従来の軽自動車に比べてシャープなハンドリング特性を持つ。2006年10月のマイナーチェンジで、フロントにネガティブキャンバーを付加したセッティングになり、さらに軽快なハンドリングが体感できる。自動車評論家の中にもこの独特のハンドリングを評価する声が多い。

エンジンがリアにある事で、構造上ブレーキング時にノーズダイブが起こりにくく、四輪に均等に荷重のかかった非常に安定したブレーキングを可能としている。

関連特許を持つホンダからの技術供与により、運転席下に燃料タンクを置くセンタータンクレイアウトを採用している(カタログに記載)。

全高は1.60m。都心の機械式立体駐車場に多い、1.55mが上限の場合は進入することができない。

駆動[編集]

二輪駆動モデルは後輪駆動。四輪駆動モデルはオンデマンド方式フルタイム4WDシステムでビスカスカップリング式フルタイム4WDを採用し、路面や走行状況に応じて後輪から前輪に駆動力を最適配分、すべりやすい路面でのスムーズな発進・加速と優れた走行安定性を得ている。

後輪荷重が多くかかる為に安定性を重視し、ミッドシップらしい軽快なハンドリングの両立の為、前輪145/65R15、後輪175/55R15と、後輪に大径ワイドタイヤを採用している。タイヤ径が異なる為にスペアタイヤは搭載されずパンク修理キットが搭載されており、スタッドレスタイヤも前後2本ずつ購入する(本車専用の組み合わせ)事となる。

特別仕様車[編集]

Bloom Edition Bloom Edition
Bloom Edition
  • i-Play Edition(2006年5月17日 - 9月)
    • Mをベースに、アップルコンピュータのオーディオプレイヤー「iPod nano」専用スロットなどを装備するほか、アイのロゴマークが刻印されたiPod nanoを進呈。
  • Limited(初代)(2006年7月1日 - 10月)
    • S(初期)をベースに、専用AM/FMラジオ付CDプレーヤー+4スピーカー、UVカット機能付プライバシーガラスを標準装着化。Sよりも低価格。
  • i倉敷(2006年12月14日 - 2007年3月)
    • S (NA) をベースに、ジーンズ柄シート生地、専用AM/FMラジオ付CDプレーヤー+4スピーカー、UVカットプライバシーガラス、“i倉敷”専用デカールを装備。岡山三菱自動車のみで100台限定販売。
  • 1st Anniversary Edition(2007年1月16日 - 9月)
    • LとMをベースに、インテリアではブラックのドット柄を採用したシート、インパネ、トリム、カーゴルームカーペットや後席用シートポケット、専用キーホルダーなどを、エクステリアでは水滴防止ドアミラー、左右フロントドアガラスの撥水コーティングとUV&ヒートプロテクトガラス(フロントウィンドウ)などを追加装備する。
  • Casual Edition(2007年6月19日 - 12月)
    • S (NA) をベースに、バニティミラー(運転席・チケットホルダー付)、プライバシーガラス(リヤドア・テールゲート)、UV&ヒートプロテクトガラス(フロントウィンドウ)を追加装備する。
  • Sport Style Edition(2007年9月20日 - 12月)
    • LXまたはGをベースとして、外装にROAR製のグリル一体型フロントエアロバンパーやルーフスポイラー、マフラーカッターを装飾。内蔵には、専用色センターパネルや本革巻きのステアリング、シフトノブを装備する。
  • Bloom Edition(2007年12月25日 - 2008年12月)
    • Lをベースに、UV&ヒートプロテクトガラス、ボディと同色の電動格納式リモコンドアミラー、助手席側バニティミラーなどを追加装備。インテリアには、同仕様車専用のミント&ブラウンインテリアを採用。
  • Limited(2代目)(2009年8月19日 - )
    • Sをベースに、装備を厳選。スタイリッシュなエクステリアと便利機能をパッケージしたコンフォートパックも設定。ベースグレードの「S」は2009年11月の一部改良で廃止されたものの、本グレードは一部改良を受け、販売を継続。

コンセプトカー・i[編集]

市販型のiの原型となった同名のコンセプトカーは、2003年の第60回フランクフルトモーターショーにおいて初公開されている。エンジンレイアウト、サスペンション機構は市販型と同一であるが、軽自動車ではなく排気量1000ccのコンパクトカーとして発表されていた。(軽自動車である市販型iが開発中であったにもかかわらず、コンセプトカーは寸法を拡大されコンパクトカーとして発表された)

エクステリアデザインは、リヤ・ウインドーがルーフ側にまで回り込んでいることと、細部が幾分未来的なデザインにされていることを除けば市販型とほぼ同一のイメージであるが、外寸は全長3516×全幅1505×全高1514mmと一回り大きく、低い。車体構造もコンセプトカーらしく、アルミ製スペースフレームに樹脂製のパネルを組み合わせて、さらにサスペンションやブレーキローターとキャリパーまでもアルミ化することにより、リッターカーながら790kgの軽量ボディを実現している。空気抵抗削減にも気を配り、Cd値は0.24に達している。

エンジンは、アルミブロックの1000cc3気筒DOHC12バルブ。吸排気とも可変バルブタイミング機構MIVECを採用しており、さらにアイドリングストップ機構を備えている。最高出力は68ps/6000rpm、最大トルクは9.4kgm/3500rpmを発生する。これにCVTを組み合わせて、3リッターカーの基準を満たすCO2排出量89g/km(燃費3.8L/100km)を達成するとともに、排出ガス規制でEURO4を達成することにより、排出ガス・燃費ともFIA Eco Test史上初の5つ星を取得している。

HA1W(2006年-2013年)[編集]

2003年9月
フランクフルトモーターショーで、コンセプトテストカー『i』を出品。
2003年10月
第37回東京モーターショーに出品。
2005年5月
車種名を『i(アイ)』に正式決定。
2005年11月
ケンタッキーフライドチキン(KFC)のCM2005年クリスマスキャンペーンパーティバーレル篇』に発売前であるが「出演」。これは日本KFC三菱商事の関連会社のため。
2006年1月5日
TBSのドラマ「一週間の恋」に登場。
2006年1月24日
販売開始。当初はターボエンジン搭載グレードのみを用意。目標月間販売台数は5,000台と発表されている。
2006年5月17日
特別仕様車「i-Play Edition」を発売。
2006年7月1日
特別仕様車「Limited」を発売。
2006年7月25日
ハローキティ特別仕様車「PrincessKitty i」限定1台を日本橋三越で販売。
2006年10月11日
電気自動車i-MiEV」を開発。
2006年10月17日
J.D.パワーによる「2006年日本軽自動車初期品質調査」において1位を記録(ダイハツ・ムーヴラテと同点の61PP100)。[1]
2006年10月24日
マイナーチェンジ。自然吸気エンジン(NA)搭載グレード発売。ターボ車も一部改良。ネガティブキャンバーをつけたことによりハンドリングが向上。
2006年10月25日
グッドデザイン大賞受賞(軽自動車としては初。乗用車としては、プリウス以来2度目)。[2]
2006年10月31日
J.D.パワーによる「2006年日本軽自動車商品性評価調査」において調査開始以来最高得点で1位を記録。[3]
2006年10月31日
2007 日本自動車殿堂カーデザインオブザイヤー受賞。[4]
2006年11月1日
カービュー・カー・オブ・ザ・イヤー2006~2007 国産部門受賞。[5]
2006年11月14日
2007年次 RJCカー・オブ・ザ・イヤー受賞。
2006年11月18日
第27回日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞「Most Advanced Technology」受賞。
2006年11月30日
第1回あなたが選ぶカー・オブ・ザ・イヤー大賞を受賞。
2006年12月14日
倉敷ナンバー」のご当地ナンバー認証を記念した特別仕様車「i倉敷」を発売。
2007年1月16日
特別仕様車「1st Anniversary Edition」を発売。
2007年6月19日
特別仕様車「Casual Edition」を発売。
2007年9月6日
特別仕様車「Sport Style Edition」を発売。
2007年12月20日
マイナーチェンジ。UV&ヒートプロテクトガラスや、電動格納式リモコンドアミラー、キーレスオペレーションシなどで装備グレードを拡大。ボディーカラーに「サクラピンクメタリック」と「ドーンシルバー」を追加するほか、ターボ搭載グレードのバンパーをボディ同色に変更。このほか、前席シート形状の改良やシート生地の変更、パワーステアリング「EPS+」追加装備、など。
2007年12月25日
特別仕様車「Bloom Edition」を発売。
2008年12月24日
マイナーチェンジ。グレード体系を見直し、廉価グレード「S」、充実グレード「Vivace(ビバーチェ)」、ターボ車「T」の3グレードに集約。上級グレードにあったドアサッシュのブラックアウト処理を廃止し、ボディ同色とする。ボディカラーは「ライトブルーメタリック」「ライトイエローソリッド」「ペールベージュソリッド」を廃止し「オーシャンブルーメタリック」「ラズベリーレッドパール」「サンフラワーイエローソリッド」を新たに追加。インテリアカラーは「レッドインテリア」を廃止し、「グレーインテリア」「ミント&ブラウンインテリア」「ブラックインテリア」に整理。
2009年6月5日
電気自動車「i-MiEVの法人向け販売を同年7月下旬から開始すると発表。一般向け販売も2010年4月から開始する計画と発表された[6]
2009年7月30日
特別仕様車「Limited」を発表(8月19日発売)。
2009年11月5日
マイナーチェンジ。走行抵抗の低減を行い、さらにNAエンジン車はエンジンの改良とオートマチックトランスミッションの制御見直しを行い、全グレードで燃費を向上。これにより、「Vivace」の2WD車で平成22年度燃費基準+15%を達成。このほか、ステアリングホイール下にETCユニットの装着スペースとしても使用できるアンダートレイを追加し、シート地をニットに変更。「Vivace」で選択可能だった「ミント&ブラウンインテリア」を廃止し、「グレーインテリア」に統一。「i-MiEV」で採用されているエアロワイパーブレードを装備し、カタロググレードではオートライトコントロールシステムも装備。メーカーオプションのMMESは省電力性・耐衝撃性に優れたSSDに変更し、SDカードスロットやUSB端子を装備した。ボディカラーは「ジンジャーブラウン」と「ドーンシルバーメタリック」を廃止し、「ミスティックバイオレットパール」を新たに追加。グレード体系は廉価グレードの「S」を廃止し、「Vivace」と「T」のシンプルな構成となった。なお、特別仕様車の「Limited」は好評につき、ベース車に準じる一部改良を受け販売を継続する。
2010年8月5日
マイナーチェンジ。メーター部分に低燃費運転をサポートするECOランプを追加。充実グレードの「Vivace」をベースにSSD方式のMMES(三菱マルチエンターティメントシステム)とリアドアスピーカーを標準装備した新グレード「Vivace+navi」を新設。これにより、「Vivace」に設定されていたMMESのメーカーオプション設定を廃止した。さらに、5年目以降の車検入庫時に保証延長点検(24ヶ月定期点検相当)を受けることを条件に適用される「最長10年10万km特別保証延長」の対象車種となった。
2011年12月
仕様変更。グレード体系の整理に伴い、「Vivace+navi」を廃止。
2012年7月6日
マイナーチェンジ。安全に関する法規制強化に対応し、ヘッドレストを大型化するとともに、ISO-FIXチャイルドシートアンカーを標準装備。さらに、ドアミラーを大型化して視認性を向上させた。
2013年2月27日
スポーツモデル「ロアコンプリート」生産終了。
2013年6月6日
車種整理、eKシリーズのフルモデルチェンジに伴うラインアップ集約の為、トッポと共に生産終了[2][3]。なお、本車種をベースとした電気自動車のi-MiEVは継続生産される[3]
2013年9月27日
販売終了。ホームページの掲載も終了した。

受賞歴[編集]

車名の由来[編集]

『I(自分)』、『』、および『innovation(革新)』、『imagination(想像)』、『intelligence(知性)』の頭文字から。

2008年12月から追加された新グレード「Vivace」とは、イタリア語で『いきいきと、活発に』を意味する。

備考[編集]

インドバンガロールにある鉛電池搭載電動マイクロカーのメーカーである「REVA」(リーバ)が「i」という車名のマイクロカーを製造販売しているが、完全に無関係である。

関連項目[編集]

脚注・出典[編集]

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外部リンク[編集]