ロープ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ロープとは針金などの細長い物品をさらにより合わせたもの。けん引や支持などを目的とするロープは(つな)ともいい、縛るためのロープは(なわ)ともいう。また、登山の用途に用いるものをザイルと呼ぶことが多いが、これはドイツ語でという意味であり、英語のロープと同義語である。

船舶係留用ロープ

概説[編集]

繊維を撚り合わせて太くして実用に供するものにはなどがあるが、縄やロープというのはそれらに似てより太いものをいう。普通は紐を撚り合わせて作られる。

コイルロープ(Z縒り)

素材としては古来より、つる植物や細長い草類をそのまま用いたり、などのほか生糸が用いられていた。時代が進むと次第にシュロ繊維や、木綿が用いられるようになり、18世紀頃には鉄などの金属ワイヤーが登場する。20世紀になるとナイロンを始めとする化学繊維が開発されて、古来より用いられてきた天然繊維に取って代わるようになった。20世紀後半には、ガラス繊維や高強度かつ高耐久性でありながら柔軟で軽い炭素繊維も実用化されている。

素材による分類[編集]

化学繊維[編集]

ナイロンロープ
強度が高く、伸び易い。伸びが負荷を吸収するので衝撃にもよく耐える。
ポリエステルロープ
ナイロン並みの強度を持つが伸び率はナイロンほど高くない。水に濡れると強度が増す特徴があり、漁具や船舶などで多用されている。水に浮かない。
ポリエチレンロープ
安価で軽い場合が多い。水に浮く。熱や紫外線に弱い場合がある。
ビニロンロープ
安価だが柔軟で扱いやすい。
クレモナロープ
「クレモナ」はクラレが生産するビニロンとポリエステルの混紡糸の商標。
ポリプロピレンロープ(PPロープ)
その他の化学繊維のロープ
アラミド系、非晶ポリアリレート超高分子量ポリエチレンといった素材のロープ(スペクトラロープ)は、高価だがナイロンの倍以上の強度がある。

天然繊維[編集]

天然繊維のロープは化学繊維のそれと比べると破断強度が1/3以下とあまり強くない。

マニラロープ
強度と耐食性に優れるが生産量が少ない。
木綿ロープ
柔らかく作業性がよく安価でもある。腐食しやすく耐久性は低い。
ジュートロープ
繊維が細かく、柔らかいのが特徴。
パームロープ
強度が高く水に強い。水に浮く軽さも特徴。
サイザルロープ
マニラロープの生産量減少に伴い代替品として流通量が増えたロープ。マニラロープより強度は劣るが安価。
ヘンプロープ
白麻ロープとも呼ばれる。強度はマニラロープ以上ともいわれるが水に弱く腐食しやすい。

金属[編集]

炭素鋼
所謂ワイヤーロープ用として最も多く用いられている。
ステンレス
美観が求められる建築部材、酸や食品を扱う機械類用、接水部や原子力用など防食性・耐久性が求められるワイヤーロープに用いられている。

その他[編集]

ガラス繊維
ガラス繊維単体では耐久性に難があるので、化学繊維や合成樹脂と複合して用いられることが多い。高電圧機器や大規模アンテナの補強や展張に用いる。

構造による分類[編集]

縒りロープ[編集]

繊維を縒り合わせた糸(ヤーン)を更に縒り合わせて作った子縄(ストランド)を縒り合わせたロープ。縒り合わせただけだが、ヤーンとストランドの縒りの方向を逆にしてあるため簡単に解けなくなっている。

3本のストランドを縒り合わせた三つ縒りが多い。縒りの方向によりZ縒りS縒りに分類されるがZ縒りの製品が多い。編みロープよりやや硬い。また、よじれができやすい。

編みロープ[編集]

ヤーンやストランドを編んで作ったロープ。筒状に編み込んだ外皮(マントル)で複数のストランドを束ねて作った芯(カーン)を覆う丸編みと、S縒りストランド2本とZ縒りストランド2本を交互に編み上げた角編みに分類される。特に前者、丸編みのものは「カーン・マントル構造」と呼ばれている。素材繊維が同一の場合 編みロープは縒りロープより伸びやすいがキンク(くの字に曲がって戻らなくなった状態のこと)や型崩れが少なく、荷重を掛けたときのねじれや撚りが戻る方向の回転を生じ難いので扱い易い。同じ径の撚り構造のロープより高価である。

登山[編集]

岩登り雪山ケイビングでの、墜落・滑落防止のための確保懸垂下降、荷揚げ、救助、固定(フィックス)ロープやチロリアンブリッジなどのルート作りに使われる。ロープ単体だけでなく、カラビナ下降器などの登攀具と組み合わせることで目的の機能を構築できる。

登攀用ロープは、何れもカーンマントル構造で伸び率10~40%のものが、直径11mm程度のシングルロープ用、9mm程度のダブルロープ用、8mm程度のツインロープ用として国際山岳連盟(UIAA)安全委員会ダイナミックロープ規格に規定されている。長さは一般的に40m~60mが多用されている。これらのロープは墜落時の衝撃を伸びることによって軽減しつつ伸びすぎない適度な弾性を持ち、ダイナミックロープと呼ばれる。

一方、荷揚げやユマーリング、危険箇所の固定ロープケイビング等では、ダイナミックロープと比して伸びの少ないものが専ら用いられており、国際山岳連盟(UIAA)安全委員会規格では、このような用途に適した伸び率4~10%のカーンマントル構造ロープを「ローストレッチロープ」と規定している。

素材は、最初はが用いられていたが、槇有恒が「強度や耐久性は麻よりの方が上」という助言を得て、アルバータ山登頂の際に絹のザイルを初めて使用。その後、絹の代用品として開発されたナイロンに置き換わり現在に至る。

  • フリークライミングでは、シングルロープがよく使われる。
  • アルパインクライミングでは ダブルロープが使われることが多いが、シングル、ツイン共に使用されることがある。
  • ケイビングでは、シングルロープが主に使われており、その技術は Single Rope Techniques 通称SRTと呼ばれている。
  • ショックが少ない条件であれば、雪山沢登りなどの補助ロープとして ø8 mm、長さ20m~30m程度のものを使用する場合もある。
  • 産業用ロープアクセスである特殊高所技術においては、シングルロープが一般的であるが、状況によってはダブルロープが使われる場合もある。
  • その他
    • 鋭利な岩角で切断されやすいので、このような場合はタオルや専用のローププロテクターを挟むなどする。
    • 内部は伸びられるよう、非常に細い繊維の束となっている。長時間の紫外線、アイゼンでの踏みつけ、靴での踏みつけによる土(微細な結晶)の侵入により、細い繊維が切れやすくなるので注意する。
    • 濡れて凍らないよう、防水式のものもある。
    • 日本国内での製造販売、輸入販売については、事業者自らが検査・確認の上、PSCマーク(消費者の生命や身体の安全を守ることを目的とした国による安全規制を満たしていることを証明するマーク・円の中にPSCの三文字がある)を表示しなければならない。これに違反すると事業者は消費生活用製品安全法によって罰せられる。逆に消費者からすれば、このマークが付いていない製品は注意すべきと判断できる。

船舶[編集]

船・船舶では古来より多種多様な用途にロープを用いてきた。現代では大荷重部に金属ワイヤーロープ、漁具のほか弾性を要する用途や人手による取り扱いを要する用途にはナイロンポリエステル等の化学繊維が多用されている。

古くは「纜」(ともづな)や「もやい綱」と呼ばれ 現代の船舶用語ではhawser(ホーサー)と呼ばれている船舶を係留する際に用いるロープは、その時代において最も強度の高い素材が採用されてきた。現代の大型船係留用途のものではナイロン系素材でø120mm、引張強度300トン以上のロープが製造されている。

運送[編集]

運送をする際の荷物の箱の荷造りなどに使われる。

結び方[編集]

縛り[編集]

縄は人を縛るためにも使われる。これを緊縛という。罪人を捕まえる場合、その自由を奪う方法として縄で縛るのがよく行われた。逮捕されることを「お縄」というのはこれに起因する。古くは捕縄術が発達した。

また、日本のSMにおいて緊縛は必須プレイとなっていて、亀甲縛りなど さまざまな縛り方が考案されている。これは第二次大戦後のSM雑誌の発展にその元がある。もともと囚人を捕縛した「責め絵」趣向からはじまったものであるが、昭和43年に発刊したSMマガジン誌における編集者飯田豊一らを中心に次第に縄目の美しさなどへのこだわりから、より複雑なものに発展していった[1]。その影響は漫画など様々な分野にも見られる。

プログラミング[編集]

プログラミングの世界では、文字列やデータ列をストリング(糸)と呼ぶ。ここから、単なる文字列よりも高機能なクラスなどをロープと呼ぶことがある。縄は糸の発展形だからという一種のジョーク。

日本文化の中の縄[編集]

稲藁から作られた縄

日本では古くから道具として縄が使われた。古いものは、アジアで最も古い16000年前の縄の痕が、縄文土器に遺されている。

縄を結うという行為は、材料の葛や藁、すなわち自然界の産物を治めて道具に変えるという神聖なものとして、自然界を治める行為の象徴とされた。日本では人間の力の及ばない「神(八百万の神)」を治め、その力を治める象徴として縄が用いられた。古くは『日本書紀』にもそのような記述があり、弘計天皇の項に「取結縄葛者」とある。(注連縄の項参照)

さらに、江戸時代には、幕末まで、温故堂にて、伝説の縄の発明者葛天氏が和学として、塙保己一塙忠宝親子によって講談されていた。

相撲の世界で横綱が誕生したときに部屋の者全員で横綱の綱を結うのは「神」とされる横綱の力を治めるためであり、日本の神社で神として祭られているものに縄が巻かれていたりするのはそのためである。

また、縄で囲って所有権を主張するのを縄張りといい、現在では縄張り行動として動物生態学用語にも使われている。

格闘技[編集]

格闘技ではリングアウトなどを防ぐためにリングの外周をロープで囲んでいる。

プロレスにおいては、技をかけられている選手がロープを掴んだ場合、逃れることができるルールになっており、これをロープ・ブレイク、ロープ・エスケープまたは単にロープと呼ぶ。ただし、特別ルールによりロープ・ブレイクが認められない場合もあり、これをノーロープ・ルールと呼ぶ。ノーロープは主にロープ自体が使われていないものやロープの代わりに金網有刺鉄線などが使用されているケースが多い。UWFルールではロープ・ブレイクで持ち点が1減点される。

総合格闘技ではロープ・ブレイクは認められておらず、逆に故意に掴んだ場合は反則を取られることもある。ただし、ロープ際での攻防が続く場合はブレイクになる場合がある。

ボクシングでは相手の攻撃を受け続けて、ロープにもたれ掛かった場合、ダウンを取ることがあり、これをロープ・ダウンと呼ぶ。

脚注[編集]

  1. ^ 下川(1995),p.54

参考文献[編集]

  • 和田守健 『ロープの結び方』 舵社、2003年。
  • 下川耿史、「変態の総合デパート『奇譚クラブ』から『SMセレクト』が産声を上げるまで」。『性メディアの50年 欲望の戦後史ここにご開帳!』(1995)。宝島社、別冊宝島240号

関連項目[編集]