プロップ

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プロップ (prop) とは、映画演劇で使われる物品の意味である。

日本語では「フ゛ロップ」という誤記も散見される。

概要[編集]

プロップとは、正確には“Theatrical property”(演劇用の財産、の意)と呼ばれていたもので、演劇の世界における業界用語であった。これが(Theatrical)propertyと短縮され、更にprop(erty)と略され、この過程で「演劇を上映するために必要な物的財産」という意味から「演劇や映画の上演・撮影に用いる道具」の意味となり、現在使われているような「主に映画の撮影用に使われる道具」の意味となった[1]

日本の映像業界においては「装飾」と呼ばれ、担当する部署は「小道具」と通称される(建物の室内や外観等のセットは「装置」と呼ばれ、「大道具」と呼ばれる部署が担当する)。その中で、腕時計など(携帯電話の普及以後は携帯電話も)の「演者が身につけるもの」を“持ち道具”、それ以外のものを“装飾”と呼んで区別する。

本来的な定義としては“映画撮影や演劇の上映において用いるために準備されたもの”はみなこの「プロップ」であるが、俗語的な用法としては「演者が手に持って使うもの」もしくは「演者が演技上で触れるもの」(壁と一体化した機械の操作盤など)に限定されていることが多く、20世紀以降、特に映画を始めとする映像作品が誕生して以降は、劇用車や、宇宙船などの特殊機械のセットは含めても、オープン/スタジオセット全体を指して“プロップ”とは呼ばないことが、専門用語としても一般的な用法である[2]。また、「演者が手に持って使うもの」「演者が演技上で触れるもの」であっても、「映画撮影や演劇の上映において用いるために製作・用意されたものではなく、制作側の所有・管理下にはないもの(ロケを行った場所に元々存在していた物品や装置など)」はプロップには分類されない。

過去に、模型雑誌において「プロップとは映画の特殊撮影に用いる縮尺模型の事を指す」と長期にわたって誤って記述されたことから誤用されることもあるが、それらはプロップではなくミニチュア(ハリウッドの撮影現場ではトイ(Toy)と呼ばれることもある)と呼ぶのが正しい。

なお、これらのプロップを手がけるスタッフ、もしくはスタジオはプロップメイカー(Prop maker)と呼ばれ、その技術とデザイン能力を高く評価されたデザイナーはプロップアーティスト(Prop Artist)と呼ばれる。また、同一物品のプロップが複数製作された場合、その中でギミックが多く仕込まれたものや、クローズアップ撮影に耐えるように精巧に作られたものを指してヒーロプロップ(Hero Prop)と呼ぶ。

銃器のプロップ[編集]

現代において“プロップ”の代表とされるものは撮影用もしくは舞台用に用いられる「弾薬を用いて人や物の殺傷に用いることを目的としていない銃器」であり、プロップガン、またはステージガンと呼ばれる。

ハリウッドではプロップ用に改造された実銃に空砲をこめて使用する場合が多く、架空の銃のプロップであっても実銃をベースに制作されることが多い。しかし、実銃をベースにしたものは高価で、多数用意するには予算もかかり、空砲とはいえ危険も伴い、またその重量から役者やスタッフが疲れることから、発砲シーン以外では「ラバーガン」と呼ばれる発泡ウレタン樹脂など軟質素材で複製された軽いプロップガンが使用されることも少なくない。ラバーガンは柔らかく安全なため、人を殴る演技などでも使用される。

近年は日本製のモデルガンやエアーガンが使用される例も増えており、映画『ロボコップ』では、一作目にはベレッタM93Rを改造して専用のプロップを制作・利用していたが、2作目以降(同テレビシリーズを含む)は日本の玩具メーカーの発売していたロボコップ専用銃「オート9」の市販モデルが余りに仕上がりが良く、映画用プロップよりも遥かに扱いやすかったことから、発砲の無いシーンでは主にこれを利用していたという逸話もある。

このほか演出のために、映画『プレデター』では航空機や車両に搭載されるM134ミニガンを大幅に軽量化して手持ち火器に改造して登場させる[3]など、実用兵器ではありえない使用方法が行われることもしばしばある。

なお、アメリカでもフルオートマチック(連射)式銃器の市販は認められていないため、映画撮影で使用されるフルオート銃器は、市販のセミオートマチック(単発)式銃器を改造してフルオート化した物が大半である(改造にはライセンスが必要)。

日本でも昔は実銃をプロップガンとして使用していた時代があったが、その後実銃の使用が困難になってからは、美術スタッフの製作した電着銃と呼ばれるプロップガンが主流になる。これは電気で発火する煙火でマズルフラッシュを再現するもので、美術スタッフの創意工夫で様々なものが制作されている。その後、市販モデルガンの性能が向上した頃には、モデルガンを調整することでリアルな排莢とマズルフラッシュを行うと言う、実銃ベースのプロップと変わらぬ視覚効果を生むプロップガンが制作されるに至る。

現代では、市場がモデルガンよりもエアーガンの方が種類が多いため、モデルガンで発売されていない機種はエアーガンをベースに電着銃を制作したり、様々なメカニズムで排莢機構を付け加えたりしたプロップガンも制作されている。

ハリウッドでも、空砲によるプロップガンであっても扱いによっては危険なケースもあり、セーフティーブランクと呼ばれる電着銃と同じ原理の火薬を用いたノンガンと呼ばれる撮影方法も使われるようになった。ブルース・リーの息子ブランドン・リーの事故[4]以来、ノンガンは注目されるようになり、昔から日本では常識的に使われてきた技術にかかわらず、初めてノンガンが使用された際にはアカデミー技術賞が与えられ、特許までとられている。

脚注[編集]

  1. ^ 英語において特にこの「映画の撮影用に使われる道具」を限定して指す場合は、ムービープロップ(Movie Prop)もしくはフィルムプロップ(Film Prop)と呼ぶ。
  2. ^ 「衣装」(Costume)はプロップに含めない場合もあるが、「映画撮影や演劇の上映において用いるために特別に製作・用意されたもの」についてはプロップとして分類されることが多い。
  3. ^ 実際のM134は作動に必要なバッテリーや大量の弾薬を含めると人が手に持てるような重量のものではなく、発砲時の反動も大きいため、いかに体格がよく腕力のある人間でも手持ち火器としては使えない。
  4. ^ 空砲が装填されている銃を用いたはずであったが、銃身の中に実弾が残置しており、空砲の発砲によって残置弾が飛翔、それにより死亡した。

参考文献[編集]

  • SFX映画の世界 完全版1(講談社X文庫)
  • SFX映画の世界 完全版2(講談社X文庫)
  • SFX映画の世界 完全版3(講談社X文庫)
  • SFX映画の世界 完全版4(講談社X文庫)
  • BIG SHOT 日本映画のガン・エフェクト(株式会社コアマガジン)

関連項目[編集]