ヒラタケ

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ヒラタケ
Pleurotus ostreatus, Japan 1.JPG
野生ヒラタケ
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
: ハラタケ綱 Agaricomycetes
: ハラタケ目 Agaricineae
: ヒラタケ科 Pleurotaceae
: ヒラタケ属 Pleurotus
: ヒラタケ P. ostreatus
学名
Pleurotus ostreatus
(Jacq.:Fr.) P.Kumm.
和名
ヒラタケ(平茸)
英名
oyster mushroom

ヒラタケ(平茸、学名 Pleurotus ostreatus)はヒラタケ科ヒラタケ属の食用キノコである。別名カンタケ

概要[編集]

傘は、径5 - 15cmの半円形。中央が窪んでじょうご型になるものもある。色は黒色→灰色→褐色→白色と変化。表面は平滑でぬめりはない。は白色で柄に垂生する。は側生、偏心生、中心生。短く、無柄の場合もある。基部には白毛が密生する。胞子は8 - 11×3 - 4μmの円柱形。

培地の条件により成長時の外観が変わり、天然条件や切り株栽培の場合は傘は中心生よりも偏心生が多く、毒キノコツキヨタケに似た形状にもなる。おがくず菌床栽培の場合は円柱状(とっくり)の軸の上に傘と言うホンシメジの様な典型的なキノコの外観をもつ。

かつては、本種をビン栽培して株立ち状に仕立てたものが「シメジ」を名乗って流通していたが、その後キシメジ科シロタモギタケ属ブナシメジが「ホンシメジ」を騙って流通するようになり、品質でも名称でも劣るヒラタケの「シメジ」は徐々に姿を消していった(現在はブナシメジも「ホンシメジ」を名乗ることが事実上禁止されている)。ヒラタケはその後、袋栽培などによって、ビン栽培よりも傘が大きい野生の形状に近い姿に仕立てることによって、再び市場に出回るようになった。

近縁種に同じく食用のウスヒラタケ学名:Pleurotus pulmonarius )、同属にエリンギPleurotus eryngii)がある。

全世界の温帯の山林で普通に自生する。晩秋から春にかけて、広葉樹(まれに針葉樹)の朽木や切り株に、いくつか重なり合って発生する。

食用[編集]

本種は味にも香りにも癖がなく、汁物鍋物炊き込みご飯天ぷらうどんなどさまざまな料理に利用でき、また加工食品にも用いられる。栽培品は全国的に流通しており、長野県産は「信州しめじ」の名前でも流通している。ただしブナシメジの流通量拡大におされ流通及び生産量は減少している。

日本での歴史[編集]

古くから親しまれた食用菌であり、平安時代中期には食用にされていた。

藤原実資小右記』には、遊興の際の食物の一つとして「平茸一折樻」が記録されているほか、「近来往々食茸有死者、永禁断食平茸、戒家中上下」と、毒キノコによる死亡事故の多発を理由に家中にヒラタケを食べることを禁じる旨が記されている[1]。また、『今昔物語集』には、受領藤原陳忠が谷底に落ちたついでにヒラタケを採ったという巻二十八「信濃守藤原陳忠落入御坂語」をはじめ、ヒラタケの登場する説話が複数存在する。『梁塵秘抄』巻第二にも、「聖の好むもの、比良の山をこそ尋ぬなれ、弟子遣りて、松茸、平茸、滑薄、…」という歌があり、マツタケエノキタケと並んでヒラタケが挙げられている。

岡村稔久は、平安時代の文献にヒラタケの話が多くマツタケの話が少ない理由として、平安時代前期ごろまでは平安京周辺に広葉樹林が多く残っており、中期以降にマツ林が増えていったことを述べている[2]

鎌倉時代以降も食材として親しまれ、『平家物語』巻八「猫間」、『宇治拾遺物語』巻一ノ二「丹波国篠村平茸生の事」、『古今著聞集』巻十八「飲食 観知僧都」などに登場するほか、『庭訓往来』や現存最古の茶会の記録である『松屋会記』などにヒラタケを使った料理が記載されている。

類似の毒キノコ[編集]

よく似た毒キノコにツキヨタケがある。ツキヨタケに関しては毎年食中毒者が出ており注意を要する。見分け方は、ツキヨタケはを裂くと黒色のシミが確認できる[3]が、ヒラタケにはない点である。『今昔物語集』巻二十八「金峯山別当食毒茸不酔語」にも、ヒラタケと偽ってツキヨタケの汁物でもてなす毒殺未遂の説話が記載されている。

栽培[編集]

主に菌床栽培であるが、原木栽培では「短木」「普通長木」「伐根」法で栽培され、天然物と同様のきのこが栽培できる。さまざまなメーカーから種菌が販売されており、家庭栽培も容易である。2010年(平成22年)に日本では2,535トン、11億円のヒラタケが生産された[4]

原木栽培に使える樹種はブナサクラトチヤナギリンゴネムノキモミジミカンカキなど、広葉樹であればほとんど利用できる。ただし、クリのように木質が硬い木、芯が多い木や精油成分の多い木は不適である。

また、人家周辺の木、例えば街路樹の幹や根元、公園の木などにも発生する身近なきのこである。

栽培特性[編集]

  • 温度、最適温度は25℃前後、子実体の発生温度は10 - 20℃、適温は13 - 16℃。菌糸体はpH3 - 11 の範囲で伸長するが、pH 6.5 付近が菌糸体伸長最適である[5]
  • 炭酸ガス濃度、子実体の生育に最適な濃度は0.1%以下。0.3%を超えると柄の徒長や傘の展開不良を起こし、0.6%を超えると傘の奇形や生育停止となる。
  • 光、子実体発生時の光量は、200 - 500 ルクス
  • 湿度、80%以上

画像[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 『小右記』は東京大学史料編纂所のデータベースから読むことができる。(東京大学史料編纂所→データベース検索→データベース選択画面→古記録フルテキストデータベース画面で「平茸」と入力して検索)
  2. ^ 岡村稔久 『日本人ときのこ』 山と渓谷社〈ヤマケイ新書〉、2017年。
  3. ^ ただし、ツキヨタケでも若い子実体などで黒いシミが無い個体もあるため、絶対的な判別方法とは言えない。
  4. ^ 林野庁「平成22年の主要な特用林産物の生産動向」、2011年。2013年1月閲覧。
  5. ^ きのこの栽培方法 -ヒラタケ- (PDF) - 特許庁

関連項目[編集]