エゴノキ
エゴノキ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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エゴノキ(横浜市・2006年5月)
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Styrax japonica Siebold & Zucc., 1837 | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
エゴノキ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Japanese snowbell |
エゴノキ(Styrax japonica)とはエゴノキ科の落葉小高木である。北海道-九州・沖縄まで、日本全国の雑木林に多く見られる。
和名は、果実を口に入れると喉や舌を刺激してえぐい(えごい)ことに由来する[3]。チシャノキ、チサノキなどとも呼ばれ[4]、歌舞伎の演題『伽羅先代萩』に登場するちさの木(萵苣の木)はこれである。
「齊墩果」が漢名とされる場合があるが、これは本来はオリーブの漢名である[5]。ロクロギとも呼ばれる[5][4]。現代中国語では「野茉莉」と呼ぶ[6]。
特徴[編集]
高さは10mほどになる。樹皮は赤褐色できめが細かい。葉は両端のとがった楕円形で互生。花期は5月頃、横枝から出た小枝の先端に房状に白い花を下向きに多数つけ、芳香がある。花冠は5片に深く裂けるが大きくは開かずややつぼみ加減で咲き、雄しべは10本。品種により淡紅色の花をつける。
果実は長さ2cmほどの楕円形で、大きい種子を1個含む。熟すと果皮は不規則に破れて種子が露出する。 果皮に有毒なエゴサポニンを多く含む。ピーク時には果実にも同量のサポニンを蓄えるが、11月を過ぎると急激に減少する[3]。エゴサポニンは胃や喉の粘膜に炎症を起こし、溶血作用もある。
利用[編集]
庭木などとして栽培もするほか、緻密で粘り気のある材を将棋のこまや和傘のロクロ[7][4]などの素材とされロクロギの別名はこれに由来する。 また、蜜源植物としても利用される場合がある[8]。
園芸種としては桃色花の品種「ピンクチャイム」や枝がしなる「シダレエゴノキ」などの改良種もある。また盆栽としても楽しまれており中には手のひらサイズのミニ盆栽もある。
昔は若い果実を石鹸と同じように洗浄剤として洗濯などに用いた[4]。またサポニンには魚毒性があるので地方によっては魚の捕獲に使ったといわれる[4]が、同様に毒流し漁に用いられたと言われるサンショウの樹皮との比較実験からエゴノキのサポニンの魚毒性の強さは漁に使えるほどのものではないのではないかと疑問視する見解もある。
動物との関係[編集]
ヒゲナガゾウムシ科の甲虫・エゴヒゲナガゾウムシ(ウシヅラカミキリ) Exechesops leucopis(Jordan, 1928)が果実に穴を開けて産卵し幼虫が種子の内部を食べて成長するが落下種子内で休眠中の成熟幼虫を「ちしゃの虫」と呼び1935年ごろからウグイ、オイカワなどの川釣りの釣り餌として流通している。この昆虫の発生が見られる地点は散在的でありかなり稀であるが、発生地の種子の寄生率は70%にも及ぶという。
新梢にはしばしば菊花状の構造が認められるが、これはエゴノネコアシと呼ばれる虫こぶである。イネ科のアシボソを一次寄主としエゴノキとの間で寄主転換を行うアブラムシ、エゴノネコアシアブラムシ Ceratovacuna nekoashi(Sasaki, 1907)が春に二次寄主であるエゴノキに移動してきて新芽を変形させてこれを形成する。
子供が、エゴノキの花を「セッケン花」「シャボン花」などと称し、花を多数摘み、それを手で揉んで泡立てて遊ぶことがある。この行為自体に危険はないが、口に入れると有害なのでその点に注意を要する。泡立てた手を水で洗い流せば特に害は無いが、きちんと洗い流さずに菓子類やオニギリなどを手づかみで食べるなどすると有害物質であるエゴサポニンなどを摂取しかねない危険がある。
脚注[編集]
- ^ エドワード・ジョン・マイヤーズ (1851–1930) 動物学者 or ジョン・マイヤーズ (1789–1879) 植物学者
- ^ POWO (2019). Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:826818-1 Retrieved 9 May 2020.
- ^ a b 羽根田治『新装版・野外毒本:被害実例から知る日本の危険生物』山と渓谷社 2014年、ISBN 9784635500357 p.142.
- ^ a b c d e 仲野良典 (2013年7月29日). “用途の広いエゴの実”. 京都民報Web. 2020年5月8日閲覧。
- ^ a b 牧野, 富太郎『牧野日本植物圖鑑』北隆館、1940年、223頁。
- ^ アレン・コーンビス 著、濱谷稔夫 翻訳・監修『木の写真図鑑 完璧版』日本ヴォーグ社、1994年、299頁。4-529-02356-7
- ^ “みのひだ写真館:和傘の未来支えたい ロクロ職人に32歳が弟子入り /岐阜”. 毎日新聞. 2020年5月8日閲覧。
- ^ 添田隆典 (2020年5月2日). “<食卓ものがたり>蜂蜜(東京都あきる野市) 魅惑の甘み自然と共に”. 2020年5月8日閲覧。